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2021-07-28 09:59

#339 オーストラリアの言語(逆受動) from Radiotalk

[!!]トーク中の「主格型言語」というのは、「対格型言語」あるいは「主格対格型言語」が正しいです。訂正します。

関連トーク
はじめての能格言語
https://radiotalk.jp/talk/450848
フランシスコ・ザビエルはバスク人
https://radiotalk.jp/talk/285476

参考文献
オーストラリア原住民語 (言語学大辞典第1巻所収、角田太作、三省堂)
Basic Linguistic Theory Volume 3: Further Grammatical Topics (R. M. W. Dixon, Oxford University Press)

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育 #オーストラリア
00:02
前回のトークで、受動態をテーマにトークを配信したんですよね。
受動態っていうのは、日本語で言えば、れる、られるがつく形だし、
英語だと、be動詞プラス過去分詞形で表されますよね。
で、その受動態には典型的には3つの特徴があって、
1つは目的語が主語になる。
2つ目は、さっき言ったように動詞に何らかの変化があるということですね。
れる、られるがついたり、過去分詞形を使ったりすると。
3つ目の特徴として、もともと主語であったものが周辺的なものになったり、現れなかったりすると。
こういう3つの特徴があるっていうのをお話ししました。
詳しくは前回のトークを聞いていただけたらと思います。
始まりました。4月15日のツボ。
で、今回はその受動態に対して逆受動っていうものをテーマに取り上げたいと思います。
逆受動、あるいは逆受動態。
英語だとパッシブっていうのが受動態なので、アンティパッシブっていうのが逆受動態っていうことなんですね。
これは聞いたことない人がほとんどではないかなと思います。
皆さんが学習の機会があるような言語にはおそらくないんじゃないかなと思いますね。
で、どういった言語で見られるかというと、よくこの逆受動態の話になる時に、話になる時にっていうかその本とかでね、見ると。
ジルバル語っていうのがよく出てくるんですね。
このジルバル語っていうのはオーストラリア先住民語で、オーストラリアのクイーンズランド州っていうところで話されている言語です。
オーストラリアも元々言語の多様性がすごい豊かなところで、
現在でも200ほどの言語が話されているんですけど、かつては600ほどあったんですね。
それがヨーロッパ人の捉えによってそのほとんどが死語となってしまったり、今でも消滅危機言語となったりしています。
オーストラリアっていうと英語が話されてるねとか言ってね、オーストラリア英語ってこういう特徴があるんだよとか言って、それで終わってしまう人が多いと思うんですけど、
そこはちょっとね、僕なりに苦言を呈したいと思いますね。
オーストラリアっていうのは英語が話されている国である以前にですね、
何百もの言語が話されていたし、今でも話されている地域であって、
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そういった言語には、いわゆる大言語には見られないような特徴もいくつも有しているものが多いんですよね。
そういう言語の多様性に見向きもしない人が多いと思うので、
このトークをきっかけにそういったことも知っていただけたらなぁと思います。
日本にもね、そのオーストラリア先住民の言語を研究している研究者の先生はいらっしゃいます。
角田多作先生とかね、有名な先生はいらっしゃるんですけど、
繰り返しになりますけどね、これを機にオーストラリアの言語は英語だけじゃないっていうことを気づいていただけたらなぁと思います。
ジルバル語っていうのはどういった言語かっていうと、まず能覚型の言語なんですね。
これがいきなりハードルが高いんですけど、
これね、過去のトークで多分能覚型言語についてはお話ししていると思います。
フランスとスペインのその国境で話されているバスク語っていうのがあるんですけど、
それも能覚型言語であると言われてますね。
で、この能覚型言語っていうのはどういうものかというと、
自動詞の主語と目的語が同じように扱われて、他動詞の主語だけ別語に扱われます。
何のこっちゃって感じですよね。
日本語をはじめ、皆さんが学習する機会のある言語の多くは主覚型言語と言われるもので、
これはどういう言語かというと、自動詞の主語と他動詞の主語が同じように扱われて、
目的語だけ別語に扱われるものですよね。
つまり日本語だったら自動詞にしろ他動詞にしろ、主語だったらがっていうのがついて、目的語だったらをというのがつきます。
で、能覚型言語はそうではなくて、
例えば日本語がもしジルバル語のように能覚型言語であったとしたら、
自動詞の主語には何もつきません。
例えば来るっていうのは自動詞なので、太郎来たみたいな言い方になるんですね。
で、これが他動詞になった場合、他動詞の主語にだけがっていうのがついて、
他動詞の目的語には何もつかず、つまり自動詞の主語と同じように扱われます。
二郎が太郎を見た。
これが能覚型言語なんですね。
で、この自動詞の主語、太郎来たの太郎とか、他動詞の目的語、二郎が太郎を見たのこれも太郎ですけど、
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こういう何もつかないことが絶対格みたいな言い方をします。
一方、二郎が太郎を見たみたいに、他動詞の主語を表すものを能覚というふうに言うんですね。
で、日本語だと主覚と対覚みたいな言い方をするんですけど、
能覚型言語だと今言ったように絶対格と能覚という言い方をします。
この時点でかなり頭ごっちゃになると思うんですけど、
まあよろしかったらね、補足として関連トークも聞いていただけたらと思います。
で、ここからですね、逆受動というのが何なのかというのをお話しするとですね、
受動態と似てると言えば似てるんですね。
受動態っていうのは目的語を自動詞の主語にしてたんですけど、
逆受動態っていうのは何をするかというと、他動詞の主語を自動詞の主語にするんですね。
これは全然ね、日本語で考えても無理なんですね。
何でかというと、日本語は自動詞だろうと他動詞だろうと主語だったらがっていうのを使うので、
だからまあ主語が主語になるって言われてもよくわからないんですが、
ジルバル語みたいな能覚型言語の場合、
自動詞の主語は何もつかないけど、他動詞の主語には何かしらつくっていうことなので、
同じ主語でも、まあ自動詞と他動詞で全然違うんですね。
さっきの仮想能覚型言語の日本語みたいな場合だと、
二郎が太郎を見た。
この二郎がの他動詞の主語を自動詞の主語にするので、
二郎がから何もつかない、二郎っていう絶対格の名詞になるということなんですね。
受動態と同じように、見たの方も動詞の形が変わるので、
例えば見まめたみたいな形になると。
最後にこれも受動態の時と同じように、
まあ同じようにっていうか平行的に考えられるんですけど、
もともとあった目的語は出てこなくていいということになるんですね。
あるいは周辺的なものになるということです。
なので、二郎が太郎を見たっていう他動詞文が、
二郎を見まめたみたいな言い方になると。
これは日本語みたいな主覚型言語だと、
ががつく名詞っていうのがトップにあるんですね。
イメージとしては一番格上で、目的語をがのつく名詞にする、
つまり主語にするっていうのが受動態です。
一方、ジルバル語みたいな能格型言語の場合は、
何もつかない形、絶対格が一番格上なので、
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その能格がついている他動詞の主語を絶対格に押し上げるのが、
逆受動態ということができます。
受動態にしろ逆受動態にしろやっていることは、
どちらも自動詞化ということができるかなと思います。
多動詞文が元にあって、それを自動詞にすると。
ただそのとき主語になるのが目的語なのか、
あるいは他動詞の主語なのかで、
受動態と逆受動態は違うということになっています。
これはなかなかこんがらがるとこだと思うので、
逆受動態でどうだろうな、
Wikipediaとか見てみてもいいかもしれません。
というわけで、今回のトークはここまでということで、
最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次回のトークでお会いいたしましょう。
ごきげんよう。
09:59

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