西崎健さんが最後、後掛けのような形で寄せる文章があるので、そこからの情報を少しずつ伝えていきたいなと思います。
正直、最初に読んじゃった方がいいですね。もしこの本を読むんだったら、最後にジーン・リースのピクニックっていう西崎健さんの文章が入っているんですけど、
これを多分読む前に読んでしまった方が、だいぶこの話、短編集の理解が深まると思います。
ちなみに私は半分ぐらい読んだ時にこれを読みました。
そうなんですよ。僕はもう、もう真っ先に。
最初から言った?
いや、もう真っ先に後書きから読みましたね。
なるほど。私は大体海外文学の作品は途中まで読んで、ちょっとこれ何回言いそうだなとか、ちょっと自分の中に落ちてこないなって思った時は、後書きを読むっていうスタイルをよく取るんで、
それでやったんですけど、真っ先に読むべきだと思って後書きしましたね。
結構、なかなかちょっとこれを知らんじゃ入ってこなかった部分があるんで、まあそのあたりもちょっと伝えていきます。
えっと、ジン・リンスさん自体はですね、日本ではそこまで有名ではないみたいなんですけど、海外では知名度の高い作家になっています。
代表作はサルガストンの広い海となっています。
これ私は生けざまな月さんの世界文学全集で入ってるのを見て、こういう本があるんだっていうのを知ってる程度でした。
だから読んでませんね。このサルガストンの広い海というのが成功作品としてられており、ポストコロニアリズムとフェミニズムの文脈では重要な作家とされております。
このジン・リンス短編集なんですけど、ジン・リンスの短編集が出るのは日本で初めてとなっております。
これ自体もいくつかの短編集の中からピックアップしている作品になるので、本オリジナルかなという形になります。
ジン・リンスさんなんですけど、本当波乱万丈で、もう差別と貧困というものに苦しんだ人生だったようです。
で、晩年に作家として成功していくという形になっています。
生まれはですね、1890年ドミニカで生まれました。
バージニアウルフやキャサリン・マンスフィールドと同じ同世代の作家になります。
高校入学を機にイギリスに渡ります。
で、植民地から来た女性ということで学校生活は楽しいものではなかったようでしたが、演劇の才能があり、高校を卒業後はロンドンの超面目の演劇学校に入学します。
ただ、どうしてもですね、彼女は発音の名前というのが強制できずに、その大学を退学し、舞台の仕事や歌手というものになっていきます。
上流階級の男性と付き合いがあって、経済的な援助を受けたりはするようなんですが、フランス人のスパイなんかと駆け落ち結婚をしたりと、また波乱万丈な人生が続いてきます。
夫がですね、軍の仕事で金を不正利用してクビになったりして、夫婦で逃亡などをしたりするという、ドラマのような人生ですね。
リースはパリの編集者と恋中になり、自身の書室を次々と出版していきます。
で、最初の夫とは離婚します。
リースは出版関係のエージェントの男性と2度目の結婚をして、書室を発表していくんですが、このタイミングで飲酒がどんどん増えていきます。
これから作品をちょっと具体的に話していきたいんですが、やっぱりこの作品の魅力、今回短編集なんで全部紹介できないんで、まずはこの作品の魅力についてちょっと話していきたいと思います。
何度も話している通り、これは辞伝的要素の強い小説なので、この作者・リースの境遇というのが色濃く反映されています。
で、一読して私は強く感じたのは、誰も信用しないトゲのようなものがすごくあって、登場人物たちの会話もなんかすごくギスギスしてて、結構強烈に人を怒らせる言葉なんか出てきたりとかして、
まあ本当面食らったんですよね。で、何というかこれ人を簡単に信用することができなかった人生っていうのを強く感じますし、そういう空気感っていうのはこの作品の中には非常に出てるなと思いますね。
居場所がないというか居心地が悪いというか、そういう感じ、寄り目のなさのようなものが全体的に漂っていて、
なんていうんですかね、この感覚を持ちながら生きるっていうのはどういう状況なんだろうなみたいなのをちょっと考えてしまって、
自分のなんか想像を超えた人生だったんだろうなぁと、本当に強く思うような作品でした。
そうですね、なんかあの思っていた話と違うみたいなですね、あのことがよく書かれたりするんですけども、
まあそれがこんな人物いないだろうと思うようなですね、なんかすごい口が悪いような人がいたりとか、
まあでもそれがジン・リースの見てきた世界なんだなと思うとですね、結構自伝的要素が強いと思うんですけども、
そのジン・リースのやっぱり見ていたのとなんか同じのをですね、ちょっと見せられているかのような、そんな感覚というのはありましたね。
そうですね、あとですね、話自体が結構短い作品ばっかりで、今回短編集なんで、それもあると思うんですけど展開がやたら早いというか、
あっという間に話が展開していて、なんか結構読んでるといつの間にかとんでもない場所に放り込まれているような感覚があります。
個人的な感覚なんですけど、ちゃんと読んだつもりでもなんか気づいたら状況がわけわからなくなっていることが多くて、
これ結構訳すのめっちゃ難しかったんじゃないかなって、読んでると思いましたね。
そうですよね、もちろん文脈ってあったとは思うんですけども、本当に結構スラスラ読めてしまう文章なんで、逆に入ってこないというかですね、
読めるんですけど、イメージが追いつかないというか、よくわからない展開になっていくんですけども、
これも見方によっては、綺麗に整理されたストーリーとかではなくて、そんなよくわからない展開で物事が進んでいくんだっていう、
そこに何かリアルなものがあるのかもしれないなっていうのは思いましたね。
やっぱりどうしても特殊な作家なんだなっていうのは非常に感じました。
で、やっぱりこれ何度か読まないと落ちてこないなって感じがしますね。
今回ちゃんと紹介した、まぁみえさんがあらすじ言ってくれましたけども、あいつらにジャズって呼ばせておけば、2回目読んだ時の方がだいぶ話が入ってきて、
まぁちょっと解説読んだっていうのもあるんですけど、描かれてることと作品に対しての理解度っていうのが、ちょっとやっぱり乖離した状態で読んでたなっていうところが最初あったんで、やっぱり何度か読まないとダメなんだろうなと思いました。
で、正直植民地出身のこととか、日本人からするとちょっとイメージできない部分ってのはどうしてもあって、まぁ現代に生きる私みたいな立場からするとですね。
やっぱりどこにも所属できないとか、夜部の無さっていうのは、多分レベル感が、あの感じたことがあったとしてもレベル感がだいぶ違うんだろうなぁとは思います。
ただ、日本でも強力にそれを感じてる人ってのは多分いると思うので、まぁそういう人はもし読んでみたらかなりマッチするんじゃないかなと思います。
で、この本からはですね、誰も信用してないとか、まぁ信用されてないみたいな独特の、なんていうか寂しさのようなものを感じました。
で、結局そこから生まれる強さのようなものを感じたので、あんまり自分は今まで触れたことのないものだったので、今回はちょっと貴重な機会だなと思いました。
なので、自分みたいにですね、そういうことに触れたことがないって人は、ぜひこの本を読んでみて感じてみるのはアリなんじゃないかなと思います。
そうですね、僕も本当に読んでいくのが難しくてですね、書かれている文章自体は平易なんでスラスラと読むのはできるんですけど、
ただ何の話をしているのかっていうのが分からないことが多くて、なかなか頭に入ってきにくかった小説ではありました。
ただ見方によってはその分からなさみたいなところが、このジーン・リースさんの素外観っていうのを表しているんじゃないかなと思いましたし、
何度も読んだりですね、じっくり読んだりすると話がちょっと分かってくるところがあってですね、そうなるとやっぱ結構面白いなとはなりました。
やはりこのジーン・リースさんの見てきた世界っていうのを追体験するような読書ができたというのではすごく貴重な小説だったのかなと思いました。
おそらくすごくアウトローな作家さんだと思うんですけども、一人の人が見た世界っていうのが知れるという点では貴重かなと思いますので、
興味を持たれた人はですね、どんなものか読んでみてほしいなと思いました。
ありがとうございます。じゃあ次回予告して終わりたいと思います。
次回はですね、また久しぶりに日本の作家をご紹介します、小川さとしさんの鉄と拳という作品になります。
結構骨太そうな作品なのでお楽しみにしていただければなと思います。
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