大気汚染の健康への影響
皆さんこんにちは、ポッドサイエンティスト、こなやです。
今日はですね、大気汚染と脳の機能っていう話をしていこうと思います。
以前よくニュースで出ていたんですけれども、PM2.5っていうのがありますよね。
大気中に非常に細かい粒子が漂っていて、これが健康に大きな影響を与えていると言われているんです。
他にも、一酸化炭素とか二酸化窒素なんかも健康に良くないと言われているんです。
でもこういう物質が原因で肺の病気なんかになったりして、本来よりも早く亡くなる人っていうのがたくさんいるわけなんです。
で、統計を見てみると、世界で年間に880万人の人がそうやって亡くなっていると言われているんですね。
これって相当な数ですよね。
日本ではそんなには多くないんだけど、それでも2万人の人が大気汚染の影響で早く亡くなっているとされているんです。
やっぱり発展途上国で環境汚染による死者っていうのが多くて、特に中国とか南アジアですね。
そういう発展途上国での環境汚染に日本は関係ないかっていうとそうではなくて、
日本を含めて先進国っていうのは多くの製品を輸入しているんですよね。
その製品の生産をしているのが発展途上国であって、そういう生産活動で環境汚染が生じているわけなんです。
だからそういう発展途上国での大気汚染についても先進国も原因があるっていうところなんです。
大気汚染と脳の働きの関係
そういう大気汚染が健康に良くないっていうのは有名な話なんですけれども、それ以外にもですね、脳の働きがおかしくなるっていう話があるんです。
これを僕が最初に聞いたのはですね、フリーコノミクスラジオっていうポッドキャストなんですよ。
その中で警報が出るようなレベルの大気汚染でなくても大幅に知的機能が落ちるっていう話をしていて、
それを聞いた時に本当なの?って思ったんです。
その中でいくつかの研究の話をしていたんです。
その一つがですね、労働者の生産性を調べた研究なんですね。
単純な農作業とかコールセンターの仕事の研究があるんですけれども、大気汚染のひどい日だと生産性が落ちるっていうことが報告されているんです。
さらにもっとハイレベルなスキルを調べた研究もあって、ちょっと面白い研究なんですけど、野球の審判の研究っていうのがあるんです。
これ少し前のこの番組のエピソードで話したんですけど、野球のピッチャーが投げたボールの軌道を正確に測定する装置があるんですね。
それを使って審判の判定がどれだけ正確なのかっていうのを調べた研究なんですよ。
これを試合が行われた都市の環境汚染のレベルと比較していったっていう、そういう研究です。
その結果なんですけれども、PM2.5とか一酸化炭素の濃度が上がると数%審判の判定の正確性が落ちるっていう、そういう結果が出ていたんです。
これって結構大きな影響のあるレベルの変化で、警報が出ないレベルの待機汚染であってもそれだけ影響があるっていうことを示していたんです。
さらにですね、ブレイントレーニングゲームって言ってたんですけど、言ってみればノートレみたいなゲームで、環境汚染のレベルの違いでどれだけそういうゲームのパフォーマンスが変わるかみたいな研究もあって、
これでもやっぱりPM2.5の濃度によってゲームの成績が変わるっていう、そんな結果が報告されているんです。
でもちょっと出典の論文なんかを見てみたんですけど、これって新しい話で、まだまだ限定的だっていう印象ではあるんです。
排ガスと脳の活動
あと、もともと脳っていうのはPM2.5みたいな物質からは守られているっていう考えもあって、
短時間待機汚染にさらされてそれで大きな影響があるとは思われていなかったっていうのもあるんです。
なんですけど、最近になってですね、さらに別の視点から根拠になるような研究が発表されていて、今日はちょっとその話をしていこうと思います。
この研究なんですけれども、人に排ガスを吸わせて脳の活動がどうなっているかを、脳をスキャンして調べたっていう、そういう研究なんです。
いくつか似たような研究があるんですけれども、今回はですね、ブリティッシュコロンビア大学のジョーディ・ガウリラックっていう人のグループがやった研究を話していきます。
具体的に何をやったかなんですけれども、25人被験者を集めてきて、排ガスを2時間吸わせるっていうのと、きれいな空気を2時間吸わせるっていうのをやった後に、ファンクショナルMRIっていう装置で脳を測定しているんです。
このファンクショナルMRIっていうのは、脳の画像を連続的に取得して、それでもって脳のどの場所がいつ活動しているのかっていうのを調べることができる装置なんです。
これでもって脳の何を見たかというとですね、デフォルトモードネットワークというものなんです。
特に何かしている時ではなくて、ただぼんやりしている時でも脳っていうのは活動しているんですね。
というかむしろそういう時の方が脳がより活動しているそうなんです。
こういう活動をしている時に働いているのがデフォルトモードネットワークって呼ばれるもので、脳の特定の領域いくつかが同期して働いているそうなんです。
これが記憶とか考えを整理するのに大事で、アイデアが浮かんだりするような創造性に大切だと言われているんです。
だからですね、スマホばっか見ていないでたまにぼーっとした方がいいって言われることもあります。
大雑把に言うとですね、デフォルトモードネットワークの部位がよく同期していると機能的な結びつきが強い状態で、
だからこのデフォルトモードネットワークがよく働いているっていう状態だそうなんです。
大気汚染と脳機能低下
この研究では、灰ガスを吸ったときと綺麗な空気を吸ったときで比較をしているんですね。
その結果なんですけれども、灰ガスを吸うと脳の機能的な結びつきが弱くなってたそうなんです。
つまりデフォルトモードネットワークの働きが弱まっていたということなんです。
でですね、人に健康被害が起きるような灰ガスを吸わせるのは倫理的に問題があるわけなんですよ。
だからこの研究では、環境基準よりも低い、健康被害がないだろうと言われている濃度の灰ガスを吸わせているんですね。
それでもこのデフォルトモードネットワークの働きに違いがあったということなんですよ。
この研究では脳の機能のうちデフォルトモードネットワークを測っているんですけど、他の脳機能にも影響があるという可能性は残されているわけなんです。
それからPM2.5がどういうふうに脳に影響を及ぼすのかというのは今のところわかっていないみたいなんです。
動物モデルの実験なんかでは、鼻にある神経から直接脳に入ってきて、脳に炎症を起こすという話もあって、
人間でも同じようなことが起きている可能性があるということです。
今回の結果で、灰ガスを吸うことによって脳の機能的な結びつきが悪くなるということがわかったわけなんですけれども、
以前から脳の機能的な結びつきが悪くなると、記憶が低下して生産性が低下しているということがわかっていたんですね。
だから灰ガスがあると仕事の生産性の低下が起きるという研究の結果があったわけなんですけれども、今回の研究結果でもってその間がわかったということなわけなんです。
だから間がわかることによって灰ガスによって生産性が低下するという話がより信頼できるものになったというところがあるわけなんです。
環境格差の問題
これらの研究からいくつか考えられることがあるわけなんですよ。
一つはですね、一般的に環境が悪いところに貧困層の人が多く住んでいるという現状があるんですね。
こうなっていると、そこに住んでいる人というのは脳の働きが悪くなるということなわけで、そうするとより貧富の格差というのが固定化するという可能性が一つ考えられるわけです。
近年はですね、発展途上国の方が待機汚染がひどいという状態なんですよね。
だから他にもいろいろあるんだけど、それはなおさら発展途上国を不利にしているという、そういう状況があると考えられます。
日本って割と空気綺麗なんですよね。
でも脳の働きを調べた研究なんかは、結構低レベルの待機汚染でも脳に影響があるということを示しているわけなんです。
待機汚染の影響って肺の病気とか寿命が縮まるということをよく考えるわけなんですけれども、脳の働きが悪くなるってあまり考えないんですよね。
でも最近の研究はそういうところを示していて、脳の影響もあるということも考えなきゃいけないなという、今日はそんな話をしていきました。
最後までお付き合いありがとうございました。