産経新聞Podcastでお送りするスポーツここが知りたい。担当は産経新聞運動部の森田恵史です。
今回は、公益財団法人笹川スポーツ財団の常務理事、玉澤雅則さんにお話を伺います。
笹川スポーツ財団は、スポーツに関する調査、研究や政策提言を行うなど、日本のスポーツ政策をリードするスポーツシンクタンクです。
東京オリンピック・パラリンピックが行われた2021年には、設立30年を迎えました。
玉澤さんは、1999年に日本船舶振興会、今の日本財団に入会され、国際協力などの分野で活躍されました。
2009年からは、笹川スポーツ財団で経営戦略などをご担当され、2021年から常務理事をなさっています。
今回は財団の歩みを振り返っていただくとともに、東京五輪・パラリンピックの後の日本のスポーツ界はどうあるべきか、
財団の次の10年とその先の展望などについてお話を伺いたいと思います。
玉澤さん、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
まず伺いますけれども、笹川スポーツ財団の設立は1991年の3月というふうに伺っています。
財団が設立に至った時代背景ですとか、初めの10年でどのような活動を展開されたのか、
それからその活動を通して見えた日本のスポーツ界の課題などに関してもお伺いできますでしょうか。
私たち笹川スポーツ財団、一般に我々自分たちでもSSF、笹川スポーツファウンデーションの頭文字とってSSFと言っていますので、
SSFと使わせていただきますけれども、
SSFの設立は1991年の3月で、時代的な背景で言うと高度経済成長期が成熟期に入って、
右肩上がりで成長していた経済が若干落ち着いて、ポジティブな面で言えば、
個々人が自由に使える余暇の時間が増えて、
スポーツをやったりだとか、音楽芸術活動だとかと言うことに目が行くような時代、
あるいはフィットネスクラブだとか、あるいはエオロビクスだとかというような言葉が普及し始めたというのが80年代後半。
それがポジティブな面だとすると、ネガティブな面で言うと、少子高齢化がもちろん見えてきて、
高齢者の方々にとっては健康問題がすごく身近な課題とされてきたといったところだとか、
年間が進んだ社会においては便利になりすぎた生活様式の中で、
体を動かさないと不健康になるというようなことも顕著になってきた時代で、
91年の3月の時には、我々の親元と言いますか、女性元になる日本財団の笹川会長が、
スポーツを地域で応援している小さなスポーツ団体、スポーツクラブさんに対して、
活動助成をするような助成制度、助成金制度を立ち上げようということで、笹川スポーツ財団を設立をして、
スポーツエイド、助けるという意味でのスポーツエイドという女性授業制度を同時にスタートさせたということになります。
全国のスポーツ団体、まだまだ法人格も持っていないような小さな団体が多かったんですけれども、
そういった団体を応援することによって、地域のスポーツ活動、あるいはスポーツ愛好者の方々が、
より健康的に活発に活動できる社会を作っていこうという理念で、スポーツエイドを始めました。
一方で、そうしたスポーツ団体に対する助成金を出すにあたっては、
実際、現在の日本人のスポーツライフがどのような状況であるのかということを調査する必要もあるだろうということで、
国民のスポーツライフに関する全国調査というのも同時にスタートして、
日本人がどういったスポーツをどれぐらいの頻度で、どれぐらいの強度で、どういった場所でやっているかということを定点で、
2年に1度全国調査するというスポーツライフに関する全国調査も始めて、この2つの大きな事業を柱として、
日本全体の地域スポーツの活性化を図るために設立されたということになります。
日本は新型コロナウイルス禍の中で、去年の東京オリンピック、
パラリンピックを成功させました。
アスリートへの尊敬が高まったというのは非常に大きなことだったと思いますし、
もう一方で障害者スポーツへの理解というのも深まったと思うんですよね。
その一方で、子どもや青少年のスポーツ離れですとか、
あるいは経済的な問題によるスポーツ格差とか、
あるいは地域格差という言葉なんかも聞くようになりました。
社会課題の解決という視点で、SSFにかかる期待も大きいと思うんですけれども、
玉澤さんは、これからの日本のスポーツ界が抱える課題をどういうふうにご覧になって、
財団がそれの課題にどう取り組んでいくのかということもお聞きしたいんですけれども。
日本の大きな社会課題の一つに少子高齢化があると思うんですね。
それに加えて子どもたちが減っていくと、
すごく至近な話で言えば、近所の子どもたちだけで遊んだりだとか、
あるいは喧嘩したりだとか、
我々本当に小さい頃だったら三角ベースで野球の原型のようなことをやったりだとか、
親がほったらかしてた子どもたちが、
いわゆる運動だとか運動遊びスポーツのようなことをやってたんですけど、
簡単に言うと、今はほったらかしできない社会になっちゃって、
そうすると、子どもたち同士でスポーツ活動を通じていろんなことを学んでいたり、
上層が発達したりだとか、
その社会が親がしなくても勝手にやってくれてた教育の部分が機械としてもないわけです。
そういった状況の中でどうすればいけないかというと、
やっぱり子どもを見守る大人が大事に何かしなければいけないということです。
4歳から11歳のスポーツライフに関する2021年の調査の結果を分析した
スポーツライフ調査委員会のメンバーでもある
日本スポーツ協会のスポーツ科学研究室の青野さんという委員の方がいらっしゃいます。
この方の分析によると、
家族と一緒に運動スポーツをしている子どものほうが、
家族と一緒に運動スポーツをしていない子どもよりも活動的であるという傾向が
調査結果によってわかるということです。
数字的にも、家族と一緒に運動スポーツをしている子どものうち、
18%に近い子どもたちが毎日合計で60分以上スポーツをしています。
家族と一緒に運動スポーツをしていないという、
自分たちだけでやっていますという子どもたちは13%ぐらいに
その率がとどまってしまっている。
さらに言えば、コロナ禍で外で遊ぶ活動に制限がかかっていけば、
こういった傾向がどんどん迫真にかかっていくのかと思います。
こういった課題に対してどうSSF、シンクタクチで取り組んでいくのか。
この活動も2020年にスタートしているんですけど、今でも継続して、
2021年にはスポーツ庁の長官からも非常に優れて取り組められたことで表彰されるビデオが、
そういった結果にもつながって、我々庁もそれを推奨して、よかったなというふうに思っています。
我々シンクタンクの一番大事なところは、まさにその角田で成功したこの事例を、
うまく他の自治体に対しても、良いところ悪いところを含めて共有をして、
うまく良いところを各自治体の事情に合わせて、少しずつアジャストして、適切な政策に落とし込んでもらう。
そういう活動もしていかないといけないなというふうに思って、今活動しています。
玉澤さんはスポーツのご経験というのは?
そうですね。私自身は小学生の頃から、私は生まれた岩手県。
我々の時代は新一鉄釜石が7連覇した時代。
非常にラグビーが盛んで、当時はサッカースクールよりもラグビースクールの方が集まる。
そこからラグビーを始めて、結局大学までラグビーをずっと続けるようなことになりました。
ラグビーは1フォアウォール、5フォアワン、15のポジションがあるので、どこかにはフィットするというのが、
私自身もあまり運動神経の良い方ではなかったので、ラグビーを長く続けてこれれたところなのかなと。
仕事でもスポーツフォーウォールというのは、どこかには誰かにフィットする楽しさがあるということを伝える仕事をしているというのは、
なんとなくそこにご縁を感じているところだったなというふうに思っています。
今、本当に世の中の変化が早くて、この先の10年どころか、5年先もかなり見通しにくい状況だと思うんですけれども、
その中であえて伺わせていただきたいのですけれども、
笹川スポーツ財団の次の10年とその先ですよね。
この展望に関してどのようなものを描いていらっしゃいますか。
すごく難しい質問なんですけど、やっぱり次の10年も、あるいはその先も今もですけど、
やっぱり社会をより良くする最適なツールの一つとして、スポーツがあるということを多くの人たちに認めてもらうこと、
そのためにやっぱりスポーツ分野のシンクタークとして我々が取り組んでいくということが大事かなと。
それはあまり変わらないのかなと。
つまりスポーツが持っている多様な価値が多くの国民の皆さんに認めてもらうような取り組みをしていかなければいけないということだと思っています。
スポーツをすると健康になって、結局健康寿命が延伸をして、
高齢者になってもなかなか寝たきりにならなくて元気のままでいるから、
結果、介護費だとか医療費だとかといった社会保障に関するお金がセーブされますよ。
それが本当かといったところを、多くの人たちがエビデンスをちゃんと示して、
そこまで証明ができるかというと、そこまでたぶん十分にはできていないと思うんです。
そういうところをきちんとエビデンスに基づいて、
わかりやすくスポーツをすると、そういった部分の社会課題の解決にもつながるということが、
エビデンスをもって証明されていますということが、
誰の目でもあるいは誰の口を通じても説明ができるようにしていくことが、
結果、スポーツに対して多額の税金を投入することになったとしても、
あるいはスポーツ政策というものが、他の分野の政策と同じぐらい重要だから、
それを通じて社会をより良くするということが大事なことなんだというふうに
支えてもらえる人たちを育てていくというのが、
シンクタンクの一番大きな使命なんじゃないかなというふうに思っています。
今の時代、本当にスポーツにお金をかけるということがようやく理解されてきた時代だと思うんですよね。
ボランティアだけじゃなくて、選手許可にしてもそうですけれども、
その地域のスポーツ活動にも公の金を投入する意味があるんだということを、
多くの方に理解してもらうためには、やはりSSFの皆様の調査・研究によって、
より多くの有効な政策につながるような理解を求める上では、
すごく大事な役割になると思うんですけれども。
そこがやっぱり我々として一番大事なところだと思っていて、
今でもやっぱり自治体のスポーツ政策を立案される担当の多くは、
教育委員会にその部門があることが多いです。
もちろん市長さん、町長さん、直下の文章が立案されるケースも多いんですけれども、
いまだにやっぱり教育委員会の職員の方々が作られる。
その方々はやっぱり、昨年までは先生だったりというローテーションなんですね。
初めて自分の自治体のスポーツ基本計画を作らなきゃいけないといったときに、
どのエビデンスを持って、何が有効なんだということを、
ゼロからスタートされる方が多いわけです。
そこにおいて、我々のようなシンクタンクがスポーツにちゃんと公金を投入をして、
より良いスポーツ政策を立案すると、こういった立案の仕方をすると、
こういった効果が生まれてますよ、ということを分かりやすく、
そういった方々にすぐ情報提供できるような、
そういった存在になっていくということが、今森さんがおっしゃったように、
スポーツに対して正しいお金を投入することは、
より良い社会をつくることにつながるということの理解を広めていく、
大事なシンクタンクの役割になっていくだろうなと思っています。
私も個人的に、体育がこれだけ広く多くの国民が、
必ずやっぱり現体験としてスポーツに触れる場としての体育が、
単純に体力、運動能力の基礎的なものを身につけるという場だけではなくて、
スポーツが苦手でも、体を動かすことが下手でも、
例えばチームスポーツの中で戦略戦術を考える立場であったりだとか、
自分のチームメイトがやっている試合を見ながら、
客観的にアドバイスをする役割だったりだとか、
何か自分たちもこのスポーツに対して見たり話したりすることで貢献して、
楽しかったなと。
体育を通じてスポーツの楽しさ、
それはするだけじゃなくて見たり支えたりというようなスポーツの楽しみ方を学んだら、
スポーツにはやっぱり価値があるなということを感じられるような体育の授業を、
これからは展開していく、開発していくということが、
もう一つは大事なんじゃないかと。