産経新聞が音声でお届けするスポーツ、ここが知りたい、担当する運動部の田中充です。
今回は、アメリカンフットボール界が高校生を対象にした新たな取り組みについて、
日本アメリカンフットボール協会で常務理事を務め、
ご自身も大学、そして社会人でも日本一になった経験がある森清幸さんにお話を伺いたいと思います。
本日はよろしくお願いいたします。
森さんの経歴を簡単に紹介させていただきますと、
名古屋市の生まれで、中学・高校時代はバスケットボール部で活動されていて、
京都大学に進学後、アメリカンフットボールと出会われたというふうに伺っています。
守備のラインバッカーとして活躍されて、兄弟の黄金時代と呼ばれた1980年代後半に、
大学日本一を決める甲子園ボール、そして社会人との日本一決定戦であるライスボールを連覇。
その後は社会人のXリーグの朝日ビール・シルバースさんなどのコーチを歴任され、
鹿島のヘッドコーチ時代には指導者として再び日本一にも輝いていらっしゃいます。
2017年からは東京大学アメフト部でヘッドコーチを務めていらっしゃいます。
森さん、今回は日本アメリカンフットボール協会が7月から9月にかけて、
東京や大阪など全国6地区で開催をされた高校生の運動能力を測定するクロスオーバー測定会についてお話を伺っていきたいと思います。
まずはこうした測定会をアメリカンフットボール会が開催した背景を教えていただけますでしょうか。
まずは一番大きな流れとしては、これは運動部だとかアメリカンフットボールに限ったことではないんですけれども、
少子化という大きな流れがありまして、どんどん子供の数が減ってきているわけですよね。
その中で、当然パイが小さくなれば競技人口も減ってくるわけで、これは何とかしないといけない。
それに加えて、近年、脳震盪の問題というのが非常にクローズアップされてきまして、
コンタクトスポーツを軽減するような一部動きもあるということで、
このまま指を加えて見ていても、もう先細りの一方なので、何とかしないといけないということは、
これは今に始まったことではなくて、ずいぶん前から思っていることなんですけれども、
その中でアメリカンフットボールという競技は、競技人口って大体ピラミッド型なんですよね。
小さい子が多くて、だんだん年齢が上がってくるごとに競技のレベルもアップして、
その度にだんだんやる人が絞られてくるというような形になります。
野球なんか一番当たりやすいですね。
そうですね。少年野球が多くて、最後プロになるのがひと握り。
だいたいこういうふうにピラミッド型になっているんですけれども、
アメリカンフットボールというのは逆ピラミッド型なんですよね。大学が一番多いですよね。
カレッジスポーツとして非常に人気がありますよね。
まだまだアメリカンフットボールという競技は、それこそ野球やサッカーやバスケットやバトミントンや卓球とかと比べると、
マイナーなスポーツであることは間違いないんですけれども、
カレッジスポーツというか大学のスポーツに限って言うと、
かなりメジャーな観客動員もそうだし、それなりの人数もやってますし、割と盛んなんですよね。
競技進行ってちなみに大学だとどれくらいですか?
大学は全部で1万5千弱くらいですよね。
全世代で。
一番多かった頃は2万人以上いましたので、これでもだいぶ減っているのが減っているんですよね。
高校でアメリカンフットボール部があるところは、東京と関西、大都市エリアに限られていますし、
そもそもやっている学校の数が少ないですよね。
それがさらに中学校、小学校になると、なかなか身近にはスポーツ自体を知っていてもやる機会がないという形なんですよね。
一方で、先ほど申し上げましたように野球だったりサッカーだったりバスケットだったりというのは、
ピラミッド型でも全ての競技の中でもメジャースポーツで、各年代で。
競技進行から言うと、僕らの10倍以上なんですよね。
それぐらいありますか?
ただ、何十倍というスポーツもあると思うんですよね。
例えば、高校から大学に進学するときに、10分の1だとか5分の1だとか半分だとか、そういうレベルで減っていくわけですよね。
高校で競技として大学で続けるのは限界があるような学生さんはそこで。
競技を続けても本格的にやるのはなかなか難しいということで、サークルでやったり趣味でやったりとか、
そういうことで本格的に競技スポーツとして取り組む人数というのは、高校から大学に行く時点でもガクンと減るわけですよね。
アメリカのフットボールという競技は、割と講師交代が自由で専門性が高いんですよね。
万能は立ちなくても、自分は体が小さいけど足は速いなとか、ボールを取ることが上手いとか、
逆に球技は苦手だけれども体が大きくて力があるからっていう、
それぞれの個性に合わせて専門職のようなポジションがあってですね。
その組み合わせなんですよね。
ルール上は講師交代、何度でもフィールド上に同時に11人いれば何回交代してもいいというルールがあって、
その結果として専門性が高い。
ですから万能じゃなくてもいいということは、比較的短期間でそれなりのレベルになれるという競技特性。
これ、学術的に言うと後期専門型のスポーツというところに分類されるんですよね。
始める年齢が遅くともそれなりのレベルになる。
例えばこれはフィギュアスケートだとか、最近卓球とかもそうなんですかね、体操だとかって、
本当に小さい頃からいわゆる英才教育のようなことをしていた人がオリンピックでメダルを取ったりとか、
そういう早くからやらないといけないスポーツというのと、
それから遅くから始めてもいいですよというスポーツと、かなりこれはスポーツごとに個性が違っていて、
アメリカンフットボールというのはその後期専門型であり、先ほど言ったように競技人口も逆ピラミッド型になっているので、
これはですね、僕自身もそうなんですけども、ずっとバスケットをやっていて、
全くアメリカンフットボールなんてやったこともなかったし、
スポーツのこういう競技があるという認識があるぐらいで、
勧誘されてたまたま始めたんですけど、それなりにいい指導者がいて、
いい環境があればそれなりのレベルでできるという、自分自身が身をもって体験していることなので、
これはですね、チャンスだと。他の競技から、実際の今の日本代表に選ばれるような選手でも、
野球だとかサッカー、高校までやっていて、大学から始めたという選手もいますので、
例えば十数万人から数万人レベルに高校から大学で減る、
10万人近くが本格的にやらなくなったと。
その中の本当に0.1%でも1%でも、もしアメリカンフットボールに出会って、
これ面白いと思ってやってくれる人がいたら、
たかだか今、先ほど触れましたけれども、全部合わせても1万5千人にも満たないような競技人口なので、
本当に1000人増えるだけでも相当大きいですね、割合としては。
だからこれは今後は少子化の流れは、これはもう僕らだけでは、努力ではいかんともしがたいですけれども、
そのパイ自体を広げてですね、いろんなところからアメリカンフットボールに興味を持ってくれてですね、
残念ながら高校から大学に行くときに本格的にそのスポーツをやるのは諦めた人たちがですね、
じゃあ違うスポーツでという選択肢の一つにアメリカンフットボールを挙げてもらってですね、
1人でも2人でも来てくれるとですね、競技自体のレベルアップもします。競技人口が増えますし、
これ自体はスポーツ全体にとってもすごくいいことではないかなという気はして、
是非クロスオーバーな他の多競技、多種目の選手でこういうアメリカンフットボールを知ってもらって、
こういう選択肢もあるよと、これは強制はできませんから、あくまで僕らは選択肢を提示すると。
でも知らないまま食わず嫌いじゃないですけれども、知らないまま自分がその才能があったりだとか、
チャンスがあったりだとかに気づかないままですね、本格的なスポーツを諦めてしまう人たちが、
ちょっとでも振り向いてくれればなというところで。
そういう受け皿の入り口として、こういうクロスオーバー測定会という形で、
自分の何か特性であったり特異な分野が発掘できればいいんじゃないかと思います。
やっぱりアメリカンフットボールはアメリカのスポーツなので、アメリカなんかですと大体シーズン制でいろんなスポーツをするんですよね。
例えば春は野球、夏は水泳、秋になるとアメリカンフットボールやる、陸上やる、レスリングやる、冬はサッカーやるとかって、
シーズン制でいろんなスポーツを掛け持ちしているので、レベルが上がるごとに少しずつ絞って、
最終的に自分の一番合うスポーツに絞るというようなのが一般的なんですよね。
それに近いような形で今回やられた。
そうですね。そういうこともアメリカでも目の当たりにしていますので。
一方、日本ではね、どちらかというと一回決めたらそれをずっとやり通さないといけないみたいなね。
僕はそれは素晴らしいと思うんですよ。
僕自身も大学以降はずっとアメリカンフットボールをやってますし、長くやることで分かってくること、見えてくることもありますし、
それはそれで否定するものではないです。自分自身もそうですし、素晴らしいことなんですけれども。
それだけがね、一つのことをやることだけがいいという価値観はちょっと違うかなと。
新しい可能性があればっていうことですね。
そうですね。まずいろんなことをやらないと自分の才能、自分がどういうスポーツに向いているのかも分かりませんし、
その中で一番いい選択をしていく。今、多様性という言葉がすごく注目されてますけど、まさにそれで。
選択肢のたくさんある中からいろいろやってみて、最終的に自分に一番合うものを選ぶという文化が
日本にももう少しあってもいいかなと。
なるほどですね。実際この測定会では40ヤード走とか、垂直跳び、立ち幅跳び、アメフトのボールをキャッチするような項目なんかも実施されていて、
私もちょっと東京地区の測定会の時の取材に行ったんですけども、この今収録させていただいているのが9月の半ばというところで、
すでに全国6地区のうちの5会場での測定会を終えています。
ここまでの参加者数とか、測定会に参加してくれた高校生のレベル感というのは森さんの中ではどういうふうに映っているんですか?
今まだ30人とか40人のレベルですね。参加している。レベルもばらつきあります。ものすごくすごいというような、
今アメフト会に来ても本当にトップクラスの数字を叩き出している人もいれば、ごくごく普通のレベルの人もいるということで。
未経験者が多いんですか?
全員未経験者です。野球出身の子だったりだとか、素晴らしいアスリートがいました。