00:05
スピーカー 1
いらっしゃいませ。喫茶クロスロードへようこそ。
いよいよ週も後半。ちょっと疲れたなぁ。今週もなんだかバタバタしていたなぁ。そんな気持ちが膨らんでくる頃ではないでしょうか。
そんな時こそ、ひと休み。ここでのんびりしていきませんか。
スピーカー 2
喫茶クロスロードでは、毎週木曜日、月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。
スピーカー 1
今月のテーマは、【食欲の秋】。
あれも食べたい。これも食べたい。ついつい手が伸びてしまう、おいしいものたちをつづった雪のエッセイを、私、池町がお届けします。
スピーカー 2
それでは、どうぞ。
スピーカー 1
食べ物にまつわる記憶
雪、食欲の秋。食べ物にまつわる記憶を掘り起こして、思い出に浸ってみたい。
私が小学校低学年の頃、母が人参クッキーを作ってくれたことがあって、ミッキーマウスのお料理の本がうちにあって、そこに載っていたレシピを見て作ってくれた。
私と妹は、「味見、味見。」と言いながら、味見の段階でほとんど全部食べてしまったことを今でも覚えている。
スピーカー 2
また、同じく小学生の頃、いとこの家に泊まりに行くと、翌朝にはたいてい、おばさんがホットケーキを焼いてくれた。
スピーカー 1
私たちが泊まりに来たから、特別に用意してくれたのだと思うわ。
スピーカー 2
当時は、「朝からホットケーキが出てくるうちはいいなぁ。」と羨ましく思っていた。
スピーカー 1
ちなみに、現在の我が家では、娘の熱いリクエストにより、毎週末ホットケーキを焼いている。
毎週食べているので、外でも食べたいとはさすがに思わなくなったが、それでも朝からホットケーキを食べると毎回ウキウキしてしまう。
03:04
スピーカー 1
うちのおばあちゃんが亡くなって、今年で十年になる。
おばあちゃんは鹿児島の出身だった。
よく田舎から食べ物が送られてきて、それを私たちにも食べさせてくれた。
かるかん、あくまき、ぼんたんあめ
かるかんは、山芋と砂糖と米粉で作ったしっとりしたお菓子。
あんこが入っているものもあるが、私はあんこが入っていない四角い形のかるかんが好きだ。
あくまきは、もち米をあくに浸した後、竹の皮で包んで煮たお菓子である。
タンゴの節句に食べるもので、鹿児島の人はあくまきをちまきと呼んでいるそうだ。
うちのおばあちゃんもそう呼んでいたので、私もちまきとはあくまきのことだとずっと思っていたし、
スピーカー 2
甘いお団子を笹の葉で包んだ関西のちまきの存在は、大人になるまで知らなかった。
スピーカー 1
あくまきには、きなこや醤油をつけて食べる。
独特の風味があるので、子供のころはあくまきが苦手だった。
大人になってからアンテナショップで見かけたので買って食べてみたら、
なつかしさもあいまっておいしく感じた。
私が子供のころは、地方のお菓子は手に入りにくかったが、今はどこにいても購入できる時代になった。
あくまきも年中手に入るようになった。今度またあくまきを買いに行こう。
私たちがたずねると、おばあちゃんはよく芋きんとんを作ってくれた。
大鍋でさつまいもをふかしてつぶしてふきんできんとんにする。
栗があるときはきんとんの上に栗をちょんとかざる。
市販のお菓子にくらべると甘さは控えめで見た目もじみだったから、
当時はそんなに好きだった記憶はない。
おばあちゃんは私たちに芋きんとんを作りながら、
06:00
スピーカー 1
ふるさとの鹿児島に思いをはせていたのかもしれない。
スピーカー 2
私もいつか鹿児島を訪れてみたい。
スピーカー 1
おばあちゃんがなくなって、おじいちゃんがひとり暮らしになって、
ヘルパーさんが来てお料理をしてくれるようになった。
ヘルパーさんの前ではおいしいと言って食べているらしいが、
私たちの前ではヘルパーさんの料理飽きてきたとぽろっとこぼすこともあった。
おじいちゃんはもともと天ぷらが大好物で、
うどん屋さんに行くといつも天ぷらうどんを注文していた。
きんぴらごぼうをちんぴらごぼうと言って私たちを笑わせてくれる。
ひょうきんでやさしい人だった。
そんなおじいちゃんも最後はゼリーみたいな流動食しか食べられなくなった。
病院で流動食を一生懸命食べていたおじいちゃんの姿が目に焼きついている。
やっぱり食べられるときに食べたいものを食べておこう。
秋に食べたいものといえば酒といくら。
なぜかというと私の好きな漫画ゴールデンカムイ13巻に
みんなで酒といくらのごちそうを囲むシーンが出てくるのだ。
登場人物たちが料理を通じて心を通わせる描写があり胸が熱くなった。
ゴールデンカムイは明治時代の北海道で近海争奪戦を繰り広げる漫画なのだが、
スピーカー 2
グルメの話も結構出てくる。
スピーカー 1
ただし針で仕留めてきた動物の脳みそを生で食べるとか、
スピーカー 2
ラッコの鍋とか、現代の日本社会に暮らす人間には再現できない料理も多い。
スピーカー 1
そんな中で酒といくらはなじみのある食材なのでおいしそうだと素直に思えた。
北海道のアイヌの人々は酒を主食にしていたそうで酒を神の魚とも呼んでいたらしい。
スピーカー 2
作中ではとれたての新鮮な酒といくらを使って酒はたたきや串焼きにし、
09:07
いくらはおかゆに入れたり茹でたじゃがいもと混ぜたりして食べられていた。
スピーカー 1
現代では季節を問わず食べられるがせっかくなら秋に食べてみたい。
さて食欲の秋、
スピーカー 2
懐かしい記憶をたどって思い出に浸れるようなものを食べてみるのもいいかもしれません。
スピーカー 1
はたまた好きな本や漫画に登場する料理を作ってみてもいいかもしれません。
スピーカー 2
あなたは何を食べたいですか?いかがでしたか?
さて名残惜しいですが閉店のお時間です。
スピーカー 1
今後も喫茶クロスロードはあなたがほっこりした時間を過ごせるよう
スピーカー 2
毎週月曜日と木曜日夜9時よりゆるゆる営業していきます。
スピーカー 1
それでは本日はお越しいただきありがとうございました。またお待ちしております。