00:05
スピーカー 2
カランコローン
いらっしゃいませ。喫茶クロスロードへようこそ。
スピーカー 1
いよいよ週も後半。 ちょっと疲れたなぁ。
スピーカー 2
今週もなんだかバタバタしていたなぁ。 そんな気持ちが膨らんでくる頃ではないでしょうか。
そんな時こそ一休み。 ここでのんびりしていきませんか。
喫茶クロスロードでは、毎週木曜日、 月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。
今月のテーマは、夏休み。 田舎でののんびりした時間や、頭を抱えた宿題。
今日は、幼い頃の懐かしい夏休みの記憶を、 私、しほがお届けします。
スピーカー 2
それではどうぞ。 夏休みの思い出
沢ちゃん、私の夏休みの思い出は、 おばあちゃんの家。
夜遅くまで働く昭和サラリーマンの父と、 専業主婦の母。
私、妹、弟の三人兄弟。
スピーカー 1
となれば、ワンオペという言葉のない時代でも、 母はそりゃ、夏休みには自分の実家に行こう、となるのは、
自分が二児の母親になった今なら納得。 私が幼い頃は、小学校の夏休みが始まると同時に、
おばあちゃんの家に行くのが恒例だった。 おばあちゃんの家は、いわゆる田舎町で。
庭や畑、蔵がある昔からの広い家。 そんなおばあちゃん家での過ごし方といえば、
スピーカー 2
午前中は、兄弟や年の近いいとこたちと座敷の大きな座宅に並んで、 夏休みの宿題やドリルをしていた。
百マス計算のタイムを縮めるのが楽しかったり、 工作や絵を描くのは大好きだった。
午後は庭でザリガニを釣ったり、 近くのお寺でセミをとったり、夏野菜をとったり。
03:02
スピーカー 2
市民プールにもよく行った。 真っ黒に日焼けして毎日遊んでいた。
そして曜日間隔がなくなったある朝、 起きてくると、
スピーカー 1
母から、 「誕生日おめでとう!」
と言われて、 今日が8月3日だと知る。
スピーカー 2
そしてまた、いつものように外で遊ぶ日々。 それが私の夏休みの記憶。
スピーカー 1
夏休みの宿題の話に戻る。 夏休みの宿題といえば、
絵日記、工作、ポスター、自由研究、 そして、
読書感想文。 本を読むのは嫌いじゃないけど、
スピーカー 2
読書感想文は苦手だった私。 なぜなんだろうと考えてみた。
スピーカー 1
感想って? 本に書いてあることをまとめるのではないらしい。
本を読んで感じた自分なりの意見がいるようだ。
うーん、私の考え?主張?
スピーカー 2
ここで思考が止まる。 原稿用紙がちっとも埋まらない。
本を読んで何も感じなかったはずじゃないのに、 いつもここでつまずいていた。
今ならなんとなくわかる。 私には自分の思いを言葉にする力が弱かったのだ。
スピーカー 1
今も言語家は得意ではないけれど、 表現方法に個性があるように、
スピーカー 2
言葉よりも表情、文章よりも絵、 文字よりも音、
スピーカー 1
そういう方が私には合っていたのかもしれない。 伝わらないことに時にもどかしく歯がゆくなることもあるけれど、
それも自分なんだと今なら思える。 私が自然の中でつかんだ感覚なのか、
親がのびのびと育ててくれたおかげなのかわからない。 けれど、
スピーカー 2
私も二人の息子たちの自由な表現を育みながら、 世界は広くて可能性に満ちていることを伝えていきたい。
06:00
スピーカー 2
いかがでしたか? さて名残惜しいですが、閉店のお時間です。
スピーカー 1
今後も喫茶クロスロードは、あなたがほっこりした時間を過ごせるよう、 毎週月曜日と木曜日、
夜9時よりゆるゆる営業していきます。 それでは本日はお越しいただきありがとうございました。
スピーカー 2
またお待ちしております。