また、ユミさんが影響を受けたアーティストとして名前が上がるのが、カシオペア、渡辺貞夫といったジャパニーズフュージョンの顔ぐれ、
そしてパーシーフェイス、ビリー・ジョエル、さらにはリチャード・Tといった名前が聞かれます。
これらの人たちの名前を聞いて気づくことは、コテコテのジャズではなくて、フュージョンのアーティストから影響を強く受けているということ。
そしてまた、インストゥルメンタル、それからピアニストの楽曲も聞いていたということがよくわかります。
ですから、ユミさんの楽曲から感じるジャズの風というのは、フュージョンの風、これを感じることができます。
また、ファーストアルバムのBELIEVE INの録音の時に、ユミさんが休憩時間中にバーシアというアーティストのアルバムを買ってきて、
その録音現場でスタジオでみんなと聞いたというエピソードをよく話されていて、
このバーシアのアルバムがとても好きだということを折に触れて話をするわけですけれども、
前回の谷村ユミの扉でもお話をした、バーシアというユミさんのセレクションアルバムの中にも、
実はこのバーシアのソロナンバーが収録されておりますけれども、
このバーシアというのは元々、マットビアンコというラテンのフュージョンバンドというか、
そういったようなバンドのボーカリストとしてデビューした経緯があって、
このマットビアンコを聞くと、デビューした後のバーシアを聞いているんですけど、
その後きっとこういったバーシア、マットビアンコの影響を多分に受けているんじゃないかなと思われるようなメロディ展開もされていきますので、
またそのタイミングでちょっと触れたいとは思いますが、いろいろなアーティストからの影響を受けております。
さあ、そんなユミさんの楽曲からフュージョンを感じるポイントとして、大きく今日は2つ注目してみたいと思います。
1つはアルバムを作った時のアレンジャーとそのコンセプト。
もう1つはソロパートの充実というところがあります。
まずこのアレンジャーとアルバムコンセプトということですけれども、
ユミさんのアルバムは何枚か出されているわけですけれども、初期3部作と言われるもの。
1枚目のBelievingでは自分のことを信じて、自分のデビューすることに対して、
ちょっといろいろ葛藤を抱えていたユミさんにとって、
このアルバムを出すことで自分自身を信じて自分を表現していくという気持ちの表れとして、
Believing、自分を信じるという音楽を信じるという気持ちを表したタイトルをつけています。
そして2作目のFaceでは自分の顔を覚えてもらう。
自分はこういう楽曲を歌うんだよっていうようなことを紹介する。
そしてHereでは自分の考え方や音楽性を伝えていく。
こういったような3部作になっておりまして、アレンジャーもいろいろな人が関わっています。
こちらのことについて触れていくとちょっと時間が本当になくなってしまうので、
今日はここら辺で止めておきまして、
この3部作を見るだけでもですね、彼女の楽曲からフュージョンを感じることができます。
楽曲の雰囲気もそうなんですけれども、やはりね、ソロパートの充実。
特にサックスのソロパートっていうのが耳に残ります。
この当時のサックス部分を吹いていた人は、実はですね、前回の回でも紹介しました。
元Tスクエア。この後にTスクエアに加入することになるホンダ・マサトさん。
そしてジェイク・コンセプションさん。
このジェイク・コンセプションさんっていう人はですね、スタジオミュージシャンになると思うんですけれども、
フィリピン出身の方で、アジア界隈ではですね、サックスの王様なんて言われるぐらい、
とても有名な方で、本当にいろいろな日本のミュージシャンとね、
共演をして、かげながら名曲のサポートをしている、そういう人なんですけれども、
初期の谷村意美さん、そして後期ですね、にも数曲参加していますけれども、
意美さんの楽曲を支えた名サックスプレイヤーであります。
そしてこの初期の頃に参加していたアレンジャーの中に、西脇達也さんという方がお見えになります。
この方と中期のプリズム、愛は元気です、という作品を2,3曲で作成するわけですけれども、
このアルバムを作るときに、今度はね、自分たちらしさを全面に落ち出した、
オリジナリティを出したアルバムを作りたいということを話し合ったそうです。
そこで出てきたキーワード、コンセプトがフュージョン。
ですから多分にね、フュージョンの風をここで十分に感じることができます。
このまず西脇達也さんという方ですけれども、この方キーボーディストでして、
ご自身でもバンドとかをされていたんですけれども、主にはアレンジャーや編曲家として、
プロデューサーとして活躍をされている方なんですけれども、
あのクラムボンの楽曲を担当している水戸さんにもですね、注目されて尊敬をされているような、
そんな素晴らしいプロデューサーなわけですけれども、
まずこの人自身がですね、キーボーディストとして一流だと思うんですけれども、
もうガンガンにキーボードのソロ部分、シンセサイザーのソロ部分をね、
存分に引き散らかしているっていうところがね、まず一つポイントになってくるかなと思います。
特にもうスタートの1曲目、ブルーじゃいられないっていう楽曲の中でですね、
他の楽器とね、セッションを始めて、もう本当にジャズアルバムの中間にあるセッション、
ソロパートのキュッと時間が短いバージョンぐらいですけども、
熱量がね、それに引きを取らないぐらい熱いプレイを披露しております。
他の楽曲でもね、ちょいちょいキーボードのソロプレイが入ってきたらこの人ですね。
またこの方のアレンジで、このユミさんの魅力をすごく引き出しているって思うのが、
ユミさんをバックコーラスに採用した多重録音。
何重にもユミさんの声が重なり合って、反響するようなバックコーラスをたくさん取り入れていて、
それがね、谷村ユミらしさ、この頃の谷村ユミらしさの1つの特徴にはなっているんですけれども、
先ほど登場したマットビアンコのね、バーシアがやっぱりね、
このサイドボーカルだったりバックコーラスに回った時に、
こういうね、多重録音みたいなアレンジをされていることが多くて、
もちろんバーシアのね、ソロのアルバムの中でもね、そういった演出ってされてるんですけど、
これを聴くとね、きっとユミさん、西脇さん、このね、マットビアンコやバーシアの楽曲、
聴いてたんだろうなーっていうことをね、感じずにはいられません。
やっぱり自分が聴いてきた、栄養として吸収してきた音楽っていうのが、
やっぱりその人の音楽性になっていくと思いますからね。
きっとこの大好きなバーシアのそういったエッセンスもね、
この頃自分の音楽の中に取り込んでいたんじゃないかな、というようなことを思います。
またですね、他の曲を見ていくと、ユミさんのね、最近の代表曲なんですかね、
Spotifyなんかで見ていると一番上に出てくるのが6月の雨。
こちらはですね、もう、曲の流れ、内容というかね、アレンジがもうザ・フュージョンと言っていいぐらいですね。
曲を通してフュージョンを感じることができる楽曲となっております。
ただね、いまいちユミさんをフュージョンの視点で語ることが少ないっていう理由が、
まずフュージョンにあまり需要がないこと。
これはね、否定ができないところはあるんですけど。
もう一つは、このユミさんの声がポップすぎるですね。
いわゆる彼女の声ってクリスタルボイスって言われるようなね、
透明感のある、透き通った、高くて突き抜けるようなね、
そして明るくて穏やかな歌声っていうのが魅力だと言われるんですけれども、
こういった声がね、どうしてもアイドルっぽさ、
それからJ-POPっぽさを強調してしまって、
現在ではね、シティポップの文脈で語られる要因の一つなのかなっていうようなこともね、
感じなくはないんですけれども、
一旦ユミさんの歌声をちょっとね、脳内でボリュームをスーッと絞っていくと、
この楽曲の中にね、フュージョンをすごく感じることができます。
そのフュージョンを感じた上で、改めてユミさんのボーカルを乗っけていくと、
谷村ユミさんの魅力っていうのがね、しっかり味わえるんじゃないかなというふうなことを思います。
ぜひね、聴いていただきたいなというふうに思います。
この後ですね、ドシルというアルバム、
これが皆さんあまり語られないんですけど、
僕からすると一番大好きなアルバムで、
一番最初に買ったアルバムでもあるんですけど、
ユミさん自身もね、休業中に改めて聴いてね、
なんて素晴らしいアルバムなんだっていうことを、
出前見せながら思ったっていうことをお話ししてますけれども、
作った当初はね、結構マニアックなアルバムだなっていうことを本人も思ったらしいんですけど、
とても素敵なアルバムですよ。
アレンジャーはね、いろんな方が交わる形で、
ちょうどこの中期と後期をつなげるようなアルバムにはなるんですけど、
今までの西脇さんのアレンジの曲もあれば、
この後タッグを組んでいく清水信之さんとのタッグの曲もあります。
私の大好きな退屈な午後っていう楽曲もこの中に入っているんですけど、
この曲だけで2、30分話せちゃいますのでね、
ちょっと一旦置いておいて、
このドシルっていうアルバム、いろんな部分が変わるんですけど、
前作と打って変わってですね、少し落ち着いた印象の楽曲になってきます。
もう少し柔らかい音の印象の曲が多いですね。
そしてプリズム、それから愛は元気ですというね、
この爽やかでキラキラした春から夏に聴くとね、
本当は春がいいと思うんですけどね、新緑の季節に聴くと、
ぴったりするような2枚から打って変わって、
冬に聴くとぴったりくる、そういうアルバムに変わっております。
このアルバムの中からですね、
ぜひとも聴いていただきたいこのジャズを感じる1曲が、
本当の私という楽曲。
この曲は当時コンタクトレンズのCM曲として使われていまして、
マイティアプラスという商品だったと思いますけれども、
テレビを見ているとね、姉妹商品のマイティアCLっていう商品が
主力で売られてまして、CMを流れるのもマイティアCLが8割型。
時々この残りの2割の確率で流れるのがマイティアプラスという商品で、
そこで流れていたのがこの本当の私。
とってもポップで明るいメロディーでね、
ジャズを感じるというよりは、本当にJ-POPの王道の楽曲に聴こえるんですけれども、
この曲のソロパート、サックスソロのパートが
本田雅人さんが吹いているんですけど、
過去一本田さんがバリバリにサックスを吹き散らかしているという曲になって、
フェードアウトで終わっていく曲なんですけど、
このフェードアウトの曲の最後までサックスが鳴り続けています。
その後のサックスプレイがどうなったのかっていうのもすごく気になって、
演奏終わりまで聴きたいなって思っちゃうぐらい、
本当に素晴らしいサックスプレイ。ぜひとも聴いていただきたいと思います。
またですね、この曲のアレンジをしているのが、あの亀田誠二さん。
きっと音楽詳しい方、オタクの方はね、ピンとくると思いますけど、
あの椎名林檎さんのデビューアルバムから東京事変のベースの時まで、
ずっと一緒に活動をしてきた名プロデューサー、
そしてその他にもグレーのプロデューサー、
その他たくさんの有名アーティストのプロデュースを手掛けてきた、
まさに期待のヒットメーカーが、
まだそこまで大きなビッグヒットに恵まれる前に、
忌みさんと組んで作成した曲がこの本当の私ということになっています。
ですからそういった意味でもね、ちょっと音楽マニアとしては見るべき、
聞くべきところのある楽曲なのかなということは思います。
そしてこのドシルを境にですね、もう一曲、もう一枚、
ベストアルバムwith2というのを挟みまして、後期に入っていくわけですけれども、
愛する人へ、アモンクールというね、アルバムを出します。
もうこのアルバムについても話したいことたくさんあるんですけども、
90割割愛しますね。
いい名曲とかたくさんあったり、
アルバムに込められた思いとかね、
喋りたいことは山ほどあるんですけど、
エッセンスだけいきますね。
まず大きな変化として、すべての楽曲で作詞作曲を手掛けるようになります。
またアレンジャーに清水信之さんを迎えて、
ちょっと雰囲気を変えてくるのと同時に、
プロデュースもね、井美さん自身が行っていくようになります。
より自分を、自分の手で表現、
自分らしさを表現していくフェーズに入っていくわけですけれども、
楽曲の雰囲気もね、とても大人な雰囲気に変わっていきます。
この清水信之さんとは、
ドシルンのね、退屈な午後でご一緒してから関係がスタートするわけですけれども、
この方もピアニストでして、
なんか井美さん、ピアニストの方と組むこと多いなと思うんですけれども、
清水さん自身もこの楽曲の中で、
素敵なピアノのプレイをね、披露してくださっておりますけれども、
今まで、このなんていうか、キラキラした、
とってもいろんなことに前向きで、