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2024-07-23 09:46

heldio #3. 「塵も積もれば山となる」に対応する英語の諺

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おはようございます。heldio、英語史ラジオの堀田隆一です。 今回は、日本語のことわざ、「塵も積もれば山となる」に対応する英語のことわざについて取り上げます。
先にこの答えを言ってしまいますと、英語では many a little makes a mickle ということわざになります。
たくさんの小さいことを重ねると makes a mickle ですね。mickle というのが大きいことということで、大きいことにつながるというようなことです。
趣旨としては、日本語の塵も積もれば山となると全く同じことです。 まずこの日本語の塵も積もれば山となるということわざですが、これ自体は非常に良くできたことわざですよね。
ことわざというのは、まずリズムが良くなければ覚えていられないということですね。 リズムを重視するのがことわざです。もちろんその中に知恵、人生の知恵というのが含まれています。
この意味とリズムですね。これが合わさったところで人々の記憶に残って、代々受け継がれて現代にまで至るということだと思うんですね。
この塵も積もれば山となるという日本語は、まず持って七五調です。 七五調といえばもう日本語のリズムですね。
ここにはまると日本語耳にとってはフィット感がある。 はまったという感じがあるわけです。
塵も積もれば山となるという七五調になっています。 しかもここには塵も積もれば山となる。
塵も積もれば山となるということで、この地、津という繋がりもなかなかリズム感が出ているのではないかなと私は思うんですね。
塵、積もる、これは統合的意味的にも縁語といいますか、当然関わりの深い語ですね。
そして音としても地、津となる。 これが七、前半部分なんですが、後半の山となるという五の部分ではむしろですね、
山となるという柔らかい音、あだんが続きますね。 それから山というのも非常に柔らかいです。
前半の地、津というのが比較的固い音に聞こえるのに対して、山となるというのは非常に大らかで大きなものになっていくという雰囲気がありますよね。
なのでまさにこの知恵が教えてくれる通りですね。 小さなものが積み重なると大きな山となるという雰囲気が、
音であるとかリズムも共にですね、この意味を後押ししているというような優れたことわざだと思います。
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そのために受け継がれてきたということだと思うんですね。 塵も積もれば山となるということです。
ことわざというのは日本語に留まらずですね、 英語でも他の言語でも同じような特徴を持っています。
つまりまずリズム感があるということですね。 そしてもちろん意味、人生の知恵を教えてくれるということです。
大体これはですね、洋の東西を問わず世界中に似たような意味を表す人生の知恵というのはあるもので、
大体対応することわざというのはあるものなんですね。 英語の場合、この日本語の塵も積もれば山となるに対応するものは冒頭に述べましたように、
many a little makes a mickle という表現になっています。
改めて小さいものを多く集めればそれはミックル、大きいものとなるということですね。
この英語のことわざも非常に優れたことわざなんだと思うんですね。 これは意味だけではなくて、いろいろリズム感が非常に整ったことわざだと考えられます。
まずですね、細かく見ていきますと、many a little というのがありますね。 これ普通、many っていうのはですね、たくさんのですからその後に複数形がきそうなものですね。
例えば many times 何度もという意味で使いますが、many times って言いますよね。
ところが古くはですね、これ many times という代わりに many a time という言い方もあって、現在ですら少し古風ですが使います。
many a time みたいな、many の後になぜか a という単数形が来るっていうことですね。
これは他には例えば every っていうのはみんなという意味でありながら、実際には everyone であるとか every man であるとか単数形が来るのと実は同じ発想です。
たくさんの、確かに複数形、意味は複数形なんですけれども、これを表すのに個々のものを一つずつ指差すようにして、
合わせてたくさんのという雰囲気で、単数形を伴う使い方があるんですね。
まさにこのことわざの many a little っていう部分はこれです。
many littles ではなくて many a little で、少し古風になりますが、たくさんの小さなもの、複数という意味になります。
これは形としては単数形扱いですので、everyone と一緒です。なので makes というふうに三単元の s がつきます。
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そして何を作るかというと a mickle ということになりますね。
この mickle というのは、このことわざ以外にはほとんど出てこないのではないかと思いますが、これは語源的には match と一緒なんです。
mickle という単語ですが、match と一緒で大きいもの、たくさん、多数という意味ですね。
これ自体も a mickle と a で受けて、一つの大きいもの、日本語のことわざで言えば、これ一つの山になるというような、そういうイメージなわけですよね。
そしてこのことわざ、英語のことわざの面白いところはですね、
まず全体が強弱強弱というリズムの組み合わせでなっているということです。
改めて読んでみますね。 many a little makes a mickle となります。
強弱のリズムが繰り返されています。これは非常に典型的な英語のリズムです。
これにハマると英語としては気持ちいいということになるわけですね。
ちょうど日本語で七五調とか五七調にハマるとフィット感があるというのと同じように英語ではこの many a little makes a mickle というこのリズム感が整うと、ドンピシャリ、ハマったという感じがあるわけです。
まずこの点だけでもことわざとしては優れている。非常に記憶されやすい、覚えやすいし、受け継がれやすいということになります。
それだけではなくですね、このことわざに関する限りもう一つのあるテクニックが使われています。
それはですね、頭で韻を踏む、頭韻というアリタレーションと言いますが、これは何のことかと言いますと、強弱、強弱と続くこの強ですね、強いアクセントがある部分の単語の最初の死韻ですね、最初の音が同じ音であるということなんですね。
強弱が4つ続いています。このことわざ。 many a little makes a mickle というふうに強い部分が4回現れるんですが、この1つ目と3つ目と4つ目がすべてmで始まっているんですね。
これによって英語はこのアリタレーション、この頭韻のリズムを作り出しているということです。
many a little makes a mickle ということです。many a little makes a mickle というふうにmの音が響いているということです。
この2つの技巧、テクニックですね。強弱、強弱というものが繰り返されるという1つのルールと、もう1つは、その中でも強のところで同じm音がですね、4つのうち3つの部分で使われているということ。
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これによって英語のリズム感はある意味MAXに達するんですね。
しかももちろん、意味が載っている。人生の知恵という意味が載っているという意味では、これ非常によくできたことわざだと思います。
日本語の地にも積もれば山となるもそうですが、英語のmany a little makes a mickle これも中はパーフェクトと言っていいことわざと言えると思います。
ではまた。
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