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2020-05-11 12:16

【第8夜】「ディスタンス・スマイル」をどう訳す? 読みやすい海外作品の見つけ方

「海外小説がなんとなく苦手」「つい敬遠してしまうけど、打破する方法は?」というご相談。翻訳ものを読むのって、面白いとわかっていても少し気力がいりますね。今夜、ご紹介するのは片岡義男さんと鴻巣友季子さんの『翻訳問答』。「赤毛のアン」などの名作をそれぞれが訳してみせるというガチンコファイトなこの本。同じ原文でも全く異なる二人の邦訳。そこから見える、翻訳ものの奥深き魅力とは……。

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みもれ真夜中の読書会 おしゃべりな図書室へようこそ
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。 おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる
をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。 さて第八夜となりました。皆さんいかがお過ごしですか?
早速、今日のお便りご紹介します。 北海道にお住まいの桃からさんからいただきました。
バタやんさんこんにちは。いつも楽しみに聞かせていただいています。 ありがとうございます。
私は海外小説がなんとなく苦手です。 翻訳のためか文章の流れがたどたどしく感じたり、カタカナが苦手なため登場人物がごちゃごちゃになってしまったりします。
きっと海外の小説にも素晴らしい世界が広がっているんだろうなと思いつつ、ついつい敬遠してしまいます。 この状況を突破できる何かおすすめの方法はありますか?
いただきました。 ありがとうございます。 すごくわかりますね。発音したことがない名前って覚えられなくて、
例えばジョージとかキャサリンとかそういう名前だったら覚えられるんですけど、 復興ミステリーも私好きなんですが、復興ミステリーは本当に名前が難しくて、
主要の人物がシールディルオーリーっていう名前だった本があって、 ちゃんと読めないままなんとかオーリーって思ったまま読み終わったんですけど、
途中でニックネームが入ったりすると本当にアウトですよね。 モモカラさんがおっしゃる通り、翻訳もの、海外作品に好きなものが見つかると、
素晴らしい世界が広がることは確かなんで、いいご質問だなって思いました。 実は私、翻訳家になろうと思って勉強したことがあって、
なろうと思ってなれるもんじゃないけど、 編集者って転職が難しそうだから、手に職をつけなきゃって思った時期があったんですよ。
それで翻訳の通信教育を一時期やってたんです。 でもあまりにベースの英語力がなくて挫折したんですけど、
そんなの始める前から分かってたって話ですけど、 翻訳家ってこんなに大変なんだってことが分かって、すごく面白かったですね。
翻訳ユーモみたいな本もたくさん読みましたし、 文芸の翻訳だけじゃなくて映像翻訳、映画の字幕のジャンルですね。
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映画の字幕の人になったら、戸田夏子さんみたいに、 トム・クルーズもディカプリオも友達だぜみたいな老後がとか妄想したこともありますね。
その話をするとちょっと長いから、またいつか話しますね。 話を戻すと、海外小説の苦手意識を克服する方法なんですが、
好きな翻訳家を見つけるっていうのはお勧めですね。 海外の作家さんの中の好きな人を見つけるじゃなくて、
日本語の翻訳家の方に好みの人を見つけると、 すごく作品が広がっていく気がします。
結局、原文は読まないから、原文と読み比べるわけじゃないから、 日本語になった状態が好みかどうかっていうのがすごく大事だと思うんですよ。
同じ作品でもこんなに翻訳家によって違うんだっていうのがわかる、 面白い本があるので、今日はそちらをご紹介したいと思います。
今日の勝手に貸し出しカードは、片岡芳生さんと河野素幸子さんの 翻訳問答、英語と日本語を言ったり来たりという本にしました。
これは作家で翻訳家の片岡芳生さんと英語文学翻訳家の河野素幸子さんが、 アカゲノアンとか有名な作品の原文の一部をそれぞれが訳してみせるっていう対決本なんですね。
英語の原文があって、二人の和訳が載っているので、 比べて読めるという贅沢な本です。
それでどれを読んでもこんなに違うのかってびっくりしますし、 私の英語力が本当にないからあれなんですけど、原文を一応先に読んで、
こんな話かなって思って河野さんの訳を読んだら、 全然違ってこんなことが書いてあったんだってなるっていうね、そんな本ですね。
簡単に例をちょっとご紹介しようかな。
今、英語の原文を読み上げてみたんですけど、 あまりにこっぱ苦しいからちょっとカットしちゃいました。
高校の授業とかでも本当に一番苦手でした、 当てられて英語の作文というか、教科書を読み上げなきゃいけないので。
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なのでちょっと単語にしますね。
レイモンド・チャンドラーの長いお別れという有名な作品がありまして、 ラカミハルキと訳している作品ですね。
ロボルス・ロイスの助手席に乗っている女の人を表現している一節があって、 そこにディスタンス・スマイルっていう単語が出てくるんですよ。
今流行りのソーシャルディスタンスのディスタンスですね。 ディスタンス・スマイルってどう訳したらいいと思います。
コーノスさんは、よそよそしい微笑みって訳してます。
ディスタンスは遠い距離がある、コミットメントがないっていう意味から、 他人の不利、傍観者、私には直接関係ない、みたいな日本語が出てくるとおっしゃってるんですね。
片岡さんは、心ここにあらざる風情の微笑と訳しています。
ディスタンス・スマイル・オン・ハー・リップスと原文は続くので、 スマイルは唇に乗っていて、目は笑っていないっていうことだから、
ちょっと冷たい印象を躍出した方がいいよね、みたいに2人が話しているんですけど、
高度な話しすぎて、途中途中私もついていけない本なんですが、
なんかよそよそしい微笑みと、心ここにあらざる風情の微笑。
どっちが正解とか、どっちが近いとか、どっちが文学的に優れているかということではなくて、
どっちの言い回しが桃原さんのお好みでしょうかっていう話なんですね。
この本の中で大野さんが、翻訳ものは訳しただけで3割難しくなりますとおっしゃっていて、
嵐が丘の難しさを8とすると、直訳すると11になっちゃう。
3足すから11の難しさになっちゃって、10を振り切っちゃう。
しり滅裂になっちゃうって言って、面白いなと思ったんですけど、
翻訳家の人もちょっと解釈が怪しいところは文を装飾しちゃう、持っちゃうところがあって、
だから凝々しく感じたり、余計ちょっと難しく感じたりするのかもしれないですね。
私は河野さんの文章がすごく好きなので、
このよそよそしい微笑みっていうのを選ぶ河野さんの方が好みっていうか、
原作者の人を知らなくても河野さんが訳している本なら買ってみようかなと思ったりします。
今日はこの本から紙フレーズを紹介したいと思います。
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仮に100%の翻訳というものがあるとしたら、自分は何パーセントくらいの翻訳でいくのかと態度を決めるのです。
伝えられるのは75%だと決めたら、残りの25%は意に返さないことにするのです。
75%で十分に伝わります。
これは片岡さんの言葉なんですが、
100%を目指して全体が伝わらないっていうことは直訳、翻訳によくあることですねって河野さんが返しているんですよ。
この賞の役を受けて、片岡さんご自身の役は80%に届いていないと自己採点されていて、
最初から80点目指して辛くなるから75%だっておっしゃってるんですけど、
その翻訳の話とは全然違うんですけど、
今こうしてコロナでいつもと違う状況で仕事をしたり暮らしたりしてるじゃないですか、
いつもが100%としたら色々できてないことが多いし、
もどかしく思ったりイライラしたりすることも多いんですけど、
でも75%と思ってそれ以外は意に返さないってしたらいいのかもってちょっとこれを読んで思いました。
今どうだろう、75%も言ってないかな、60%かな。
でも片岡さんが言うように自分は何パーセントぐらいでいくのかと態度を決めて、
それ以外は意に返さないっていうと、ある意味ストレスが少ないかもしれないですね。
またこの状況が終わったとしても100%に戻ることはもしかしたらないかもしれなくて、
それはそれで意に返さないっていう態度もありかなと思ったりしました。
桃からさんリクエストありがとうございました。
すいません今日は何かあまりお答えにできてなかったかもしれないと思い、
おすすめの翻訳者とか好きな海外作品はまた次回にでもお話ししたいと思います。
さてそろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで皆さんからのお便りを基にしながら、
いろんなテーマでお話ししたり本をご紹介したり緩やかにやっていきたいと思います。
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また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
今日は最後までお付き合いいただきありがとうございました。
おやすみなさい。おやすみー。
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