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第2位、怪談作家の宇都郎しかたろうです。
この番組では、私が行っている怪談売買所で買い取った、世にも奇妙な体験をされた方のお話をお届けします。
今回も前回に引き続き、私が主催したイベント、1話100円100物語で、英治さんが語られた怪談をお送りします。
英治さんは以前、介護のお仕事をされていました。
介護と一口に言っても様々なものがありますが、英治さんがついていたのは訪問介護、いわゆるホームヘルパーと呼ばれるものでした。
寝たきりであったり、体が不自由になった方の自宅に赴き、その方の生活を援助するというものです。
これは、そこで彼女が見聞きした不思議なお話です。
これは、私が以前、訪問介護の仕事をしていた時の話ですが、当時、Kさんというオタクのところに訪問に行っていたのですが、
Kさんは何年か前に奥さん亡くされた人で、そんなに高齢ということでもなくて、まだ60代後半ぐらいの男性でした。
Kさんは、体が不自由になって介護保険を受けるようになってから、自分の体が不自由なので、なかなか気分も良くないので、
そういうのをヘルパーに当たる癖のある方だったんですよ。
私も入らせてもらうようになって、だんだんと声かけしているうちに、Kさんの気持ちもほぐれてきて、
最初は全く何も答えてくれない方だったんですけど、だんだんいろいろ話してくれたりするようになっていたんですけど、
その日も、Kさんの気分が悪くて、私に当たって、お前も帰れ、みたいな感じになって、
そういう時はそれ以上、現状を続けることができないので、事務所に連絡したら、すぐ帰ってくださいと言われた。
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Kさんのところはわりと私の家に頻繁に入っていたので、翌日もまたお仕事に入りますけど、
できますかと言われたので、大丈夫ですよと言って、次にまたKさんの家に訪問したんですよ。
そしたら、Kさんはすっかり機嫌は治っていて、とにこした感じで、
昨日はごめんな、あんた全然悪くないのに、私の気分で当たってもて、ほんまにごめんなって、
これにコリントを着てくれるやろうって言ったから、大丈夫ですよ、危機してないですよって言って、
そしたら、昨日、妻に、嫁にめっちゃ怒られて、奥さんに?って言ったら、
うん、夜中、あれからふて寝みたいなのをしていたら、夜中そのまま知らん間に寝てもうたんや、
でも何かふっと気配を感じて、パッと目を開けたら、嫁さんが私の枕元に正座して座っているんや、
それで、ものすごいお説教をくらって、もう長いこと怒られたわ、はっはっはって笑ってて、
えー、奥さん出てきはったんやって言ったら、うーん、あんたらにこうやって当たった日はな、
必ずな、嫁さんの説教をわし受けるんやって、すごい笑ってはったんですよ。
だから、やっぱり向こうの世界に行っても、ちゃんと奥さん見てはるんやなって思った体験がありました。
日本が抱える問題はさまざまありますが、そのうちの一つに少子高齢化が挙げられます。
全人口から見て子どもや若い世代の割合が少なく、高齢者の割合が高い状況を言います。
日本では1970年に高齢化社会に突入し、その後も高齢化率の上昇はとどまらず、
1994年に高齢社会、2007年には世界でも類を見ない超高齢社会に入ったとされています。
超高齢社会とは、65歳以上の人口が全人口に対して21%を超えた状態のことです。
このような傾向は今後もさらに顕著になっていくと考えられており、
日本社会が抱える喫緊の課題として早急な対策が求められています。
そのような社会で大いに必要とされている仕事の一つが介護職です。
介護にもさまざまな種類があり、利用者の自宅で生活を援助する者もあれば、
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施設に来られる利用者を支援する者、利用者が外出する際に手助けする者もあります。
いずれにしても、介護職は一人で生活することが困難な人の生活を支える仕事なのです。
Hさんは利用者の自宅に赴いて支援する訪問介護を行っていました。
訪問介護を行う介護職はホームヘルパーとも呼ばれます。
ホームヘルパーはその人の生活の場である自宅に直接入り、
食事の支度や後片付け、掃除、洗濯等身の回りの世話全般を行います。
そんなふうにして他人の家に頻繁に入ることになると、
その家で起きる怪異を介護職も体験してしまうこともあるようです。
実は介護職から聞く怪異体験というのは少なくありません。
現代社会に必要とされている仕事ですので、
その職に就く人の割合が増えているということももちろんあるでしょう。
しかしそれだけではないように思えます。
介護職は実に様々なお宅に入りますが、中には不気味な雰囲気をまとった家もあるのです。
私がこれまでに聞いたものだとこんな話がありました。
年老いた姉妹が二人で暮らしている家なのですが、
二人とも寝たきりであり並べたベッドに常に寝ています。
その二人はたいそう仲が悪く、ヘルパーが来ているときでも口論が絶えません。
そんな二人と罵り合いが始まると、
誰もいないはずの二階から階段を降りてくる足音が聞こえてくるのです。
他にもこんな話がありました。
その家は寝たきりのおじいさんの一人暮らし。
ヘルパーは毎日入るのですが、ある頃から夕方になると、
ベッドのある部屋の隅の暗がりから影が立つようになりました。
大柄な男の影。
それは日ごとに少しずつ少しずつベッドに近づいてくるのです。
その影を見始めて二週間ほど経ったある日、
その影はついにベッドに横たわるおじいさんの枕元に到達しました。
そしてその夜、おじいさんが亡くなったという連絡が入るのでした。
映画ジオンでも呪われた家で一人暮らしをする老人を訪ねてきたホームヘルパーが恐ろしい体験をするというくだりがあります。
映画的に誇張されてはいますが、あのような例は少なくはありません。
監督の清水隆氏はジオンを制作する際、実話会談の数々をベースにその恐怖場面を構成しました。
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だからこそ、あのシリーズに描かれる会はリアリティがあるのです。
他人の家に入るということは、他人の生活を近くから覗き見るということになります。
そこでは実に様々なことが起きているものなのです。
さて、栄一さんのお話の場合はどうでしょうか。
栄一さんが担当された利用者、Kさんは、機嫌が悪いとヘルパーを怒鳴りつけるということでしたが、こういった事例はよくあることです。
中には暴力傾向がある方もおり、そういう意味でも介護という仕事は大変なのです。
人は年を取ると偏屈になってしまいがちです。
特に介護を必要とされている方は、これまで当たり前のようにできていたことができなくなってしまっているわけですから、
そのせいでフラストレーションが募り、その反動で近くにいる人につい当たってしまうようになることがあるのです。
ただ、このKさんの場合、栄一さんが次に言った時には素直に謝っています。
これはその時の気分もあるのでしょうが、彼が言うには、亡くなった奥さんから前の晩、説教されたとのこと。
そのようなことを平然と言ってしまうところには、うつ気味悪さを感じずにはいられません。
が、同時にKさんと奥さんとの関係性が垣間見えるようで、微笑ましくもあります。
このKさんは、若い頃から怒りっぽいところがあったのでしょう。
ちょっとしたことで怒りだすといったことがよくあったのかもしれません。
そんな時は奥さんが勇める。
それでKさんは自分の非を悟って反省する。
そんなことをずっと繰り返してきたに違いありません。
そんなこの夫婦のかつての日常の一端が透けて見えるようです。
そしてもう一点印象的なのが、この話を語る英知さんの優しい眼差しです。
怒鳴られ、悪態をつかれながらも、相手の立場に立って考え、決して声を荒げず自然に流す。
どうしようもない時は事務所の指示を仰ぎ、それ以上の援助が無理なら速やかに辞去する。
その静かな行動の裏には英知さんの相手を思う気持ちがあるように感じられます。
それが彼女の語り口から滲み出しているように思えるのです。
会議の裏には悲しい私別があり、その私別のさらに向こうには幸せだった日々の温かな記憶があります。
そしてその会議が会談として語られる時、語る者の人柄や思いがそこに反映されます。
この会談は会議を引き起こす者とそれを体験した者、そしてそれを語る者、この三者三様の姿と人間模様が見事に表現されています。
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会談は文芸なのです。
この番組ではあなたの体験した会談をオンラインで買い取っています。
詳細は概要欄のリンクよりお待ちしています。
それではまた次回お会いしましょう。