これね、それこそ傘の話なんですよ、傘っていうタイトルだから。
あんま言うとあれだけど、ビニール傘の話だよね。
そうなんです。言ってしまえば、そのビニール傘って皆さん、人生に一度や二度忘れちゃった経験ありますよね。
そうそう、あるある。
それのビニール傘ってどう塗ってるんだっけみたいなのを、ちょっと切なく明るくマジカルに書いた一作でございます。
いやだからさ、石ころの話とかさ、傘の話とかさ、生活圏内にあって、結構見てるものから、こんなにその話って膨らむんだなみたいな。
そうなんです。
なんか、この読み味はなかなか他にないなと思いながら。
傘はですね、僕がネーム一発OK出したという。
他の3作は、やっぱり横山さんも、編集と作品作り、他の編集部で読み切りもいくつか出されてるんですけど、
ほぼ初めての状態だったっていうのもあるので、結構編集のディレクションが、実は、名刺集はお静かにもそうですし、とんだおせっかにも結構あるんですけど、
やっぱそれを経て、じゃあ書き下ろしの読み切りお願いしますって言って、何回か打ち合わせして、ポンって出てきたネームがここの傘だったんですけど、
あまりに良すぎて、一発OKしたんです。
何も直さなかったんですか?
何も直さなかったです。
何のアドバイスもしないの?
もうそのプロットとか、今回こういう話書くんです。
で、プロットの時に、なんかこういう方向性の作品見せたらどうかなみたいな感じの話し合いをしたんですけど、
ネーム段階で、もっとこうしたらみたいなのは一切なく。
もうプロットの時だけで。
へー。
その別冊雑誌の第2週に入っている、その分厚いガラスに頬をつけてっていう作品も、同時に動いてたので、
そこのネームの経験とかを、やっぱりこう、横山さんなりにこう蓄えて出したのが、この傘っていうのもあるので、
なんかそこら辺の背景を知りながら読むと、またこれも面白いんですよ。
だからあの、分厚いガラスの方のネームは、傘よりも先に完成してるんですね。
そうなんですね。
そこなんていうか、堀さんと一緒に、いやここのモノローグいらないんじゃないとか、
こういう小回りにした方がいいんじゃないみたいな、めちゃくちゃディレクションした、
それで結構漫画の、自分なりの漫画の書き方みたいなのがある程度横山さんが確立してた、果てに辿り着いた1個の短編が傘なんですよ。
だからこれを本当に読んでいただきたい、そこも含めて。
なるほど。
我が家さんにとって、横山さんってどんな漫画家さんですか?
横山さんはやっぱりその、やっぱ体の動きが、漫画的体の動きをやっぱり捉えてる作家さんなんですよね。
漫画的体の動き。
これは本当になんていうか、身体の動きってメディアによって違うと思うんですよ。
映画的な体の使い方と演劇的な体の使い方、あとやっぱ小説とか朗読とかもそうだと思うんですけど、
やっぱりこうメディアによって体の映され方とか体の捉え方っていうのは全然違って、それがメディアの違いの面白さだと僕思ってるんですけど、
やっぱ漫画もそうだと思うんですよね。漫画で書く身体、線ですよね。
っていうのが、やっぱり際立ってるのが僕は個性的な漫画家さんだと思っていて、横山さんはやっぱりその体の動きが横山さんの体の動きなんですよね。
それが僕はすごく好きなんで、そういうのを存分に出してくださいみたいなディレクションをずっとしてて、
それやっぱ傘は、これ体の動きって人間だけじゃないんですよね。物もそうだと思うんですよ。
なるほど。
身体性みたいなのもあって、そういうのを捉える力がやっぱり横山さんはその一番最初にお声掛けした時のインディーズの作品、同人誌とか読んだ時にもやっぱりそこがすごく僕的にはビビッときて、
この方すごくいい体の捉え方をしてるというか、見る、なんか体をこう切り取り方がいいなと思って、
物語よりもそっちの良さが出るような物語を書くべきだみたいな感じで、一応僕はディレクションしていたつもりで。
最初の惚れ込みポイントあそこなわけね。
ポイントあそこで、横山さんはまずよすみができる前からご一緒してる作家さんなんで、本当に第一号なんですよ。僕が一番最初にお声掛けした作家さんなんですよ。
よすみやるぞってなった時ね。
一番最初にコミティアでお声掛けした作家さんなんで、こうして作品集が一発目に横山さん出るっていうのも、結構僕的には感動ポイントというか、ようやくできたねみたいな感じで、
ちょうどだから出会ってから2年後って感じですかね、ちょうど。そういう背景を知るとまた、この作品集は面白くなるんじゃないかなっていうね。
全部好きでしょうけど、特にお気に入りとかあるんですか?
僕はやっぱ傘は一番好きかも。一番読んでほしいかもと思って。横山さんの良さが一番詰まってるのはやっぱ傘だと思うんですけど、いわゆる漫画を読む喜びというか、
漫画を読んで、こういう感情あったなとか、こういう思い忘れてたけど、掘り起こされたなみたいな、いわゆる一番よすみらしい作品は地球滅亡前だと思うんですね。
すごく好きだし、やっぱ結構強い感想をもらえますね、ほんとに。
強い感想?
強い感想。これ読んで、自分の生まれ故郷に行っちゃったみたいなの、結構いろんな人から、社内もそうだし、読者からも結構そういう声が届いてて、行きたくなっちゃったみたいな。
ちょっとあらすじ説明しておきます、そしたら。
地球が滅亡するのは決まってまして、
避けられないんですね。
避けられなくて、世界中の人間が計画的に火星に移住するんですよ。
あらかたたぶん8、9割くらいの人たちが、乗り込みを終えて、主人公のイガラシという大学生の男は、ギリギリまでバイトをしていて、
バイト先のそば屋のおっちゃんが、常連のために最後に店を開けせてみたいな。
それで、残り1か月くらいあって、どうしようかなみたいな、最終便に、ロケットの最終便に乗り込むんで、どうしようかなと思ったら、
お隣さんの女性が、今から、お世話になった各地をお礼参りに行くけどどうかって言われて、
ひまなしついていくかって言って、九州が舞台なんですけど、車でいろんなとこ行って、お世話になったところに、ありがとうって言うだけの旅をしてくる。
そう、頭下げに行くだけだからね。
頭下げで何かするわけじゃなくて、お世話になりましたって言って、最初なんか変だなって思ってたんですよ。
イガラシもなんかよく、人がいいなこの人って思ってるんだけど、やってくうちにだんだん自分の思い出がよみがえってきて、
僕たちは地球滅亡前に火星に移住して、命は救われるけど、もう二度とこの地球には戻ってこれないってことを悟り始めるんですよね。
遅ればせながらね。
そうそう。
ギリギリまでそば屋でバイトしてるだけあるよね。
そうそう。
ちょっと遅ればせがあるんだよね。
でもなんかだんだん、お礼していくたびに、なんか自分もお礼したくなっちゃう。
ただ本当に頭下げに行くだけなんですよ。
でも頭下げに行くときに、あのときの記憶、故郷の記憶みたいなのがどんどん思い出されてきて、っていう話なんですよ。
やっぱこれ読むと、めぐりたくなっちゃうらしくて、僕もちょっと実家戻って、なんかやっちゃったりとかやっぱしちゃうくらい、
なんか行動変容がされるっていうのは、やっぱ漫画のすごいところだなと思って。
いいね。
ちょっとその読者とか社内の人間からの感想を聞いたとき、ちょっと僕は嬉しくなりましたね。
あーなんか、漫画をずっと読み続けてほしいわけじゃなくて、漫画を読んで、例えばちょっと実家に戻ってみるとか、
そういうこう行動が変容されるのって、めっちゃパワーだと思うんですよ。
漫画だけじゃなくて、まあフィクションが持ってるパワーだと思うんですけど、
そういう意味で、よすみが今後編集していきたい作品のお手本みたいなような感じの作品ではあるかなと思いますね。
いや、まさにあれじゃん、豊かであるためにだし、めぐり届いてるじゃん。
うん、いやほんとにそうなんですよ。
いいね、なんかやっぱり漫画って忙しい日々の、なんていうか、暇つぶしでもいいんだけど、
ちょっと自分の人生が変わったりとか、その行動が変わったりとかするパワーを持った作品もあるし、
やっぱりそういうものに出会えると嬉しいし、
そうですね。
私はまあ漫画は人生の参考書ってずっと言ってますけど、
その教科書って言っちゃうとその通りにしなくちゃいけない感があるから、これはあんまり言いたくなくて、
でも参考書だったら、こうつまみ食いをするようにというか、
そうですよね。
ある意味都合よく自分の人生をより良くするために、その漫画を使うっていう、実用品だと思ってるんで、
自分にとって大事な場所ってどこだったっけとか、ちょっと時間があって行けそうだから行ってみよう。
行ったところで、ただありがとうございましたというだけ言って帰ってくるっていうことの、
このある種の人からすれば意味がないことと、なんという豊かさよっていう、
そうですよね。
この無意味と思う人もいるけど、ぐるっと反転させると、こんなに豊かなことはないっていうふうになる。
この豊か側の、参考書としての機能、人を動かす機能みたいなのが、四隅にある。
あるいは横山さんの作品にあるんだとすると、そりゃ幸せなことだよ。
横山さん自身がそういう豊かさに、すごくちゃんと持ってる人なんですよね。お話ししてても。
やっぱりこだわりもすごく、適度なこだわりをちゃんと持っていて、かつ豊か。
読み方を狭めたりとか、そういうことはあまりしたくないみたいな。
今回、ジャングルジムの眺めっていう、タイトルにしたのにもそういう思いがあって、
地球滅亡前とか、面接中もそうなんですけど、全体にちょっとノスタルチ的に消費されることを、お互い拒みたかったんですよ、僕も横山さんは。
ジャングルジムの眺めって、どういう命名なのかっていうと、ジャングルジムからの眺めっていうタイトルにしてもよかったんですよ。
からのね。
ジャングルジムからの眺めって、みんなたぶん知ってるんですよ。みんなジャングルジムに一回登ったことあるし、幼少期の思い出の風景じゃないですか、からの眺めって。
だけど、ジャングルジム、同じ風景はたぶんみんな持ってないんですよ。それぞれのジャングルジムからの眺めを持ってるんですよね。
住んでるエリアも違うから。でも、ジャングルジムからの眺めはみんな持ってるけど、それぞれ風景が違う。
でも、なんでからのをつけなかったかっていうと、ジャングルジムという、ずっとそこに佇んでるジャングルジムの眺め、ジャングルジムが見ている風景っていうものは、変わってるようで変わってないところもあるっていう。
だから、時間の経過みたいなものを、やっぱり大切にしてるんですよね。ノスペルジーとか懐かしむ気持ちって、やっぱりちょっと、なんていうか、脳内刺激みたいな感じ。
はい。
だから、気持ちいいと思うんですけど。
まあね、エモくて気持ちいいみたいなね。
後にも先にも、まあ響かない。その場限りの感情だと思うんですよ。懐かしいって。だから、懐かしい気持ちに実はならないんですよね。横山さんの作品って。
あー。
むしろ、今それを思い出すことによって、たとえばその場所に行ってみようになると。
今の自分に戻ってくるっていうかね、全部が。
ビニール傘とか忘れちゃうよね、みたいなことじゃなくて、ビニール傘って忘れたらどうなっちゃうんだろうってなったときに、ビニール傘をどういうふうに持つかとか、やっぱり過去が現在を照らすみたいなものでいきたいよね、みたいな話をずっとしてて。
だから、ノスタルジーじゃないくしたいから、ジャングルジムからの眺めになっちゃうと、ちょっとノスタルジー引き起こしちゃうから、いや、ジャングルジムが見てる風景って、結構長い時間かけてる。で、登ってくる小学生たちってみんな違ってくる。
そういう、雄大な時の流れみたいなものとかも、ちゃんと意味を入れたいね、みたいなので、ジャングルジムの眺めという、絶妙なタイトルをつけたっていう、実は裏話でございまして。
からのと、のの違いね。
あってあって。
みなさん、こんなとこまで考えてるんですよ、マンゴーを作る人はさ、絵を描くだけじゃなくてさ、いや、えらいことだ。
これはもしかしたらね、書店イベントとかもいくつかやるので、そこでもまた改めてね、話すかもしれないんですけど、わりとマルヒ情報。
マルヒ制作秘話ということで。
これを聞いて、また読み直してみたら、そうかもって思ってほしいですよね。
そのノスタルジーというものが、実は周到に回避されているっていうところをね、読むっていう。
気持ちで作ってるっていう感じなんで。
まあ、どう読んだっていいんだけど。
そうそう、全然懐かしいんでもいいんですよ。
だけど、しかしっていうね、そういう工夫が。
懐かしの奥に何かあれば、それを感じ取ってもらえたら、それが豊かさのヒントになるんじゃなかろうかという。
一応、黒身で編集した作品になっております。