雨漏りした水が、今どこに落ちているか
米の卸売業者が大量の在庫を抱えて投げ売りするしかなくなっている、という話がXのトレンドに出ていた。
これに「高い時に買い占めたんだから自業自得だ」「ザマーみろ」というコメントがとにかく多い。
気持ちはわからなくもない。少し前まで米は高かったし、儲けていたはずの業者が損をすれば溜飲が下がる。
ただ、これは米問題の本質から外れている。
たとえれば、屋根から雨漏りがしている。その水滴が頭の上に落ちてくる。これが米が高かった時代だ。
今、その同じ水が卸売業者の頭の上に落ちている。次はまたこっちに落ちてくるかもしれない。
大切なのは、どこに水が落ちるかではなく、屋根を直すことだ。
「買い占め」という言葉が、実態に合っていない
卸売業者は、農家やJAから米を仕入れて、スーパーや飲食店に卸す。仕入れて在庫を持って売るのは商売そのものだ。
彼らが高く買ったと言うが、好きで買ったわけではない。
米の値段は農家への支払いの段階で決まっていて、卸はその値段でしか仕入れられない。安い米はその時売っていない。
スーパーに米が並ぶのは、卸が間に入って調整しているからだ。みんなが個別に農家と交渉する話にはならない。
去年の秋に新米を仕入れた時点では、誰もこの暴落を予想できていなかった。直前まで米が足りないと言われていたのだ。
それが豊作と米離れ、在庫統計の発表と重なって相場がひっくり返った。それだけの話だ。
ボラティリティの高さそのものが問題
米相場は、減反政策、補助金、消費量の減少など、いろんな要素が複雑に絡んで乱高下する。
ボラティリティ、つまり上下の振り幅がとても大きい。これはこれからも直らない。
少し需給が崩れるだけで値段が跳ねたり崩れたりする。
このボラティリティの高さそのものが問題で、誰かが買い占めたから悪い、という話ではない。
その先にある、もっと大きな問題
問題のさらに先には、日本で米作りを続けられるのか、という大きな問題がある。
これは待ったなしで、もうタイマーが鳴りそうな時間制限付きの課題だ。
主食を輸入に頼るのはめちゃくちゃ危ない。ウクライナの戦争で、小麦の穀倉地帯ゆえに影響を受けた国は多い。
主食を人質に取られると、相手国に強いことを言えなくなる。
日本のカロリー自給率は4割に満たないが、米だけはほぼ自分たちでまかなえている。
小麦は2割を切り、大豆や油はもっと低い。何かあった時に米がある、というのはすごく重要なのだ。
米を作る力が、どんどん落ちている
その米を作る力が落ちている。補助金を出すから作るな、という歪な減反政策もあった。
小規模農家は高齢化し、その耕作地は耕作放棄地になっていく。
続けられる規模の経営に収束させる必要があるが、進んでいない。
米は規模がないと収益が上がらない。小さな田んぼをたくさん持つ形では難しい。
棚田のような文化的景観も、これからの農業では文化的価値でしか残せなくなるだろう。
そして一番怖いのは、用水路を含めて全部が田んぼだということだ。
誰かが途中でやめると水路の管理ができなくなり、ドミノ倒しに集落の田んぼがバタバタと潰れていく。
数字で見ると、もっとはっきりする
日本の米を食べる量は激減している。1962年が118キロ、2024年が53キロ。半分以下だ。
人口減で需要はどんどん減る。それに合わせて需給を取るだけだと、作り手がいなくなる。
作り手がいなくなれば、外国から輸入するしかない。
その国が占領を企てたり、戦争を始めたり、海を封鎖したら——という話になる。
燃料と、肥料と、種を残しておく
日本は島国で、トラクターの燃料も肥料もほぼ全量を輸入に頼っている。リンのような地下資源がないからだ。
だから作る形だけ残しても、という面はある。
でも燃料も肥料も種も貯蓄はできる。これをやっておいて、何かあった時に自国で米だけは作れる形にしておかないとまずい。
第二次世界大戦のきっかけは、戦前の日本が石油の約8割をアメリカに頼り、それを止められたことだ。
資源がないとわかっていたから大陸へ出ていった。それは、いまだに解決されていない。
米は、戦略的な作物だ
米を増やせ、安くしろ、という話ではない。農家は縮み、食べる人も減っていく。
その中で、米を生産する力をどれだけ残すか、という話だ。人も、ノウハウも、田んぼの設計や水路も全部含めてだ。
日本の農村風景は米作りに特化して最適化されている。それが今、イノシシやシカに荒らされている。
一度野に帰ると、このシステムを作り直すのにめちゃくちゃ時間がかかる。一回壊したら戻らない。
だから今のうちに、ここは残す、こう生産する、と決めておかないと、なし崩しにダメになる。
関係者は理解していて国も取り組んでいるが、全然間に合っていない。
卸の赤字をザマーみろと笑っている状態ではない。石油は備蓄していたから今そんなに困っていない。同じことを米でもやっておかないとまずい。
あまり短絡的に溜飲を下げるんじゃなくて、米って結構やばいぞ、という危機感を、ある程度の人は持った方がいい。
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米の卸売業者が大量の在庫を抱えて投げ売りするしかなくなっている、という話がXのトレンドに出ていた。
これに「高い時に買い占めたんだから自業自得だ」「ザマーみろ」というコメントがとにかく多い。
気持ちはわからなくもない。少し前まで米は高かったし、儲けていたはずの業者が損をすれば溜飲が下がる。
ただ、これは米問題の本質から外れている。
たとえれば、屋根から雨漏りがしている。その水滴が頭の上に落ちてくる。これが米が高かった時代だ。
今、その同じ水が卸売業者の頭の上に落ちている。次はまたこっちに落ちてくるかもしれない。
大切なのは、どこに水が落ちるかではなく、屋根を直すことだ。
「買い占め」という言葉が、実態に合っていない
卸売業者は、農家やJAから米を仕入れて、スーパーや飲食店に卸す。仕入れて在庫を持って売るのは商売そのものだ。
彼らが高く買ったと言うが、好きで買ったわけではない。
米の値段は農家への支払いの段階で決まっていて、卸はその値段でしか仕入れられない。安い米はその時売っていない。
スーパーに米が並ぶのは、卸が間に入って調整しているからだ。みんなが個別に農家と交渉する話にはならない。
去年の秋に新米を仕入れた時点では、誰もこの暴落を予想できていなかった。直前まで米が足りないと言われていたのだ。
それが豊作と米離れ、在庫統計の発表と重なって相場がひっくり返った。それだけの話だ。
ボラティリティの高さそのものが問題
米相場は、減反政策、補助金、消費量の減少など、いろんな要素が複雑に絡んで乱高下する。
ボラティリティ、つまり上下の振り幅がとても大きい。これはこれからも直らない。
少し需給が崩れるだけで値段が跳ねたり崩れたりする。
このボラティリティの高さそのものが問題で、誰かが買い占めたから悪い、という話ではない。
その先にある、もっと大きな問題
問題のさらに先には、日本で米作りを続けられるのか、という大きな問題がある。
これは待ったなしで、もうタイマーが鳴りそうな時間制限付きの課題だ。
主食を輸入に頼るのはめちゃくちゃ危ない。ウクライナの戦争で、小麦の穀倉地帯ゆえに影響を受けた国は多い。
主食を人質に取られると、相手国に強いことを言えなくなる。
日本のカロリー自給率は4割に満たないが、米だけはほぼ自分たちでまかなえている。
小麦は2割を切り、大豆や油はもっと低い。何かあった時に米がある、というのはすごく重要なのだ。
米を作る力が、どんどん落ちている
その米を作る力が落ちている。補助金を出すから作るな、という歪な減反政策もあった。
小規模農家は高齢化し、その耕作地は耕作放棄地になっていく。
続けられる規模の経営に収束させる必要があるが、進んでいない。
米は規模がないと収益が上がらない。小さな田んぼをたくさん持つ形では難しい。
棚田のような文化的景観も、これからの農業では文化的価値でしか残せなくなるだろう。
そして一番怖いのは、用水路を含めて全部が田んぼだということだ。
誰かが途中でやめると水路の管理ができなくなり、ドミノ倒しに集落の田んぼがバタバタと潰れていく。
数字で見ると、もっとはっきりする
日本の米を食べる量は激減している。1962年が118キロ、2024年が53キロ。半分以下だ。
人口減で需要はどんどん減る。それに合わせて需給を取るだけだと、作り手がいなくなる。
作り手がいなくなれば、外国から輸入するしかない。
その国が占領を企てたり、戦争を始めたり、海を封鎖したら——という話になる。
燃料と、肥料と、種を残しておく
日本は島国で、トラクターの燃料も肥料もほぼ全量を輸入に頼っている。リンのような地下資源がないからだ。
だから作る形だけ残しても、という面はある。
でも燃料も肥料も種も貯蓄はできる。これをやっておいて、何かあった時に自国で米だけは作れる形にしておかないとまずい。
第二次世界大戦のきっかけは、戦前の日本が石油の約8割をアメリカに頼り、それを止められたことだ。
資源がないとわかっていたから大陸へ出ていった。それは、いまだに解決されていない。
米は、戦略的な作物だ
米を増やせ、安くしろ、という話ではない。農家は縮み、食べる人も減っていく。
その中で、米を生産する力をどれだけ残すか、という話だ。人も、ノウハウも、田んぼの設計や水路も全部含めてだ。
日本の農村風景は米作りに特化して最適化されている。それが今、イノシシやシカに荒らされている。
一度野に帰ると、このシステムを作り直すのにめちゃくちゃ時間がかかる。一回壊したら戻らない。
だから今のうちに、ここは残す、こう生産する、と決めておかないと、なし崩しにダメになる。
関係者は理解していて国も取り組んでいるが、全然間に合っていない。
卸の赤字をザマーみろと笑っている状態ではない。石油は備蓄していたから今そんなに困っていない。同じことを米でもやっておかないとまずい。
あまり短絡的に溜飲を下げるんじゃなくて、米って結構やばいぞ、という危機感を、ある程度の人は持った方がいい。
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