はじめに
今年が「丙午(ひのえうま)」だという話題をきっかけに、迷信について少し整理してみたい。
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丙午という「仕組み」
丙午に生まれた女性は気が強い。
そう言われるが、これは完全な迷信である。
江戸時代、丙午生まれとされた女性が放火事件を起こしたことが発端だと言われるが、ほとんど言いがかりに近い。
それにもかかわらず、
- 丙午生まれを避ける
- 実際の出生年を翌年にずらして届け出る
といったことまで行われてきた。
なぜそこまでしたのか。
背景には家父長制がある。
「気が強い女性は家制度にそぐわない」という前提があり、その価値観を守るための装置として、60年に一度やってくる丙午は極めて優秀な「リマインダー」になっていたのである。
迷信とは、単なる偶然ではなく、社会構造を補強する仕組みでもある。
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占いとバーナム効果
この構造は占いにも通じる。
星座占い、血液型占い、あらゆる占いに共通するのは「誰にでも当てはまることを、あなただけに向けた言葉だと思わせる」という技法である。
これは心理学でバーナム効果と呼ばれる現象で、実証もされている。
「当たっている」と感じた瞬間、人はその語り手に依存し始める。
困ったとき、迷ったとき、また話を聞きに行く。
新聞や雑誌に占いコーナーが必ず載っているのも同じ理屈である。
人間の脳の性質をハッキングして、継続的な接触を生む仕組みだ。
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なぜ人は不確実性を嫌うのか
では、なぜ人はそこまで占いに惹かれるのか。
それは人間の脳が「予測機械」だからだ。
脳は未来を予測することで生存確率を上げてきた。
危険を予測し、行動を選択し、回避する。
だからこそ、
- わからない状態
- 判断保留の状態
- 予測不能な状態
これらを極端に嫌う。
これは知能の高低の問題ではない。
生存のための仕組みの問題である。
自然界では「わからない」は死に直結した。
だから脳は、無理にでも意味づけをしたがる。
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ラベルを貼れば安心できる
若者世代に対するラベリングも同じだ。
ゆとり世代、Z世代、新人類、宇宙人。
理解できない行動様式に出会うと、とりあえず名前をつける。
ラベルを貼った瞬間、「理解したこと」にできる。
実際は理解していなくてもだ。
これは安心のための操作である。
だが高度に複雑化した現代社会では、この単純化は危険でもある。
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陰謀論の誘惑
陰謀論も同じ構造だ。
世界は本来、非常に複雑である。
明治維新も、第二次世界大戦も、現代の国際情勢も、意思決定の背景は入り組んでいる。
しかし、
「それはロスチャイルド家の陰謀だ」
「ロックフェラーが操っている」
と説明されると、一気にシンプルになる。
善と悪。
完全懲悪。
子どもの頃に見たヒーロー番組の構図で世界を理解できる。
だが現実は、そんなに単純ではない。
ロシアとウクライナの問題も、感情とは別に、歴史的文脈を学べば複雑性は見えてくる。
単純化は気持ちがいい。
しかし、気持ちよさは正確さは大きく乖離している。
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僕が無関心を選ぶ理由
僕は神社に行ってもおみくじを引かない。
占いにも距離を置いている。
なぜか。
自分を強い人間だと思っていないからだ。
もしかすると、依存するかもしれない。
操作されるかもしれない。
だから近づかない。
マザー・テレサは「好きの反対は嫌いではなく無関心だ」と言ったが、僕は意図的に無関心を選んでいる。
関わらないことで、自分を守る。
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「思考の棚」に置いておく
では、わからないことをどう処理しているのか。
僕は「思考の棚」に放り込む。
これはちきりんさんの表現だが、非常に的確である。
わからないまま、棚に入れる。
ただし忘れるわけではない。
思考の0.0何パーセントかは、ずっと動き続けている。
すると、5年後か10年後か、突然つながる瞬間が来る。
「ああ、あれはこういうことだったのか」
この瞬間がたまらなく楽しい。
棚は抽象的なものなのでいくらでも入る。
そして、そこから熟成した思考が生まれる。
快食ボイスで話している内容の多くも、そこから出てきたものだ。
---
不確実性に耐えるということ
占いに頼らない。
陰謀論に飛びつかない。
ラベルで世界を単純化しない。
その代わり、わからないまま置いておく。
これは不安に耐える作業だ。
だが複雑な社会を渡るには、その耐性が不可欠だと僕は考えている。
不確実性に耐える力。
それこそが、現代を生きる上での知的筋力なのではないだろうか。
少し抽象的な話になったが、文章にすることで整理できたと思う。
またどこかで、この棚の中身を一つ取り出して話してみたい。
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今年が「丙午(ひのえうま)」だという話題をきっかけに、迷信について少し整理してみたい。
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丙午という「仕組み」
丙午に生まれた女性は気が強い。
そう言われるが、これは完全な迷信である。
江戸時代、丙午生まれとされた女性が放火事件を起こしたことが発端だと言われるが、ほとんど言いがかりに近い。
それにもかかわらず、
- 丙午生まれを避ける
- 実際の出生年を翌年にずらして届け出る
といったことまで行われてきた。
なぜそこまでしたのか。
背景には家父長制がある。
「気が強い女性は家制度にそぐわない」という前提があり、その価値観を守るための装置として、60年に一度やってくる丙午は極めて優秀な「リマインダー」になっていたのである。
迷信とは、単なる偶然ではなく、社会構造を補強する仕組みでもある。
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占いとバーナム効果
この構造は占いにも通じる。
星座占い、血液型占い、あらゆる占いに共通するのは「誰にでも当てはまることを、あなただけに向けた言葉だと思わせる」という技法である。
これは心理学でバーナム効果と呼ばれる現象で、実証もされている。
「当たっている」と感じた瞬間、人はその語り手に依存し始める。
困ったとき、迷ったとき、また話を聞きに行く。
新聞や雑誌に占いコーナーが必ず載っているのも同じ理屈である。
人間の脳の性質をハッキングして、継続的な接触を生む仕組みだ。
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なぜ人は不確実性を嫌うのか
では、なぜ人はそこまで占いに惹かれるのか。
それは人間の脳が「予測機械」だからだ。
脳は未来を予測することで生存確率を上げてきた。
危険を予測し、行動を選択し、回避する。
だからこそ、
- わからない状態
- 判断保留の状態
- 予測不能な状態
これらを極端に嫌う。
これは知能の高低の問題ではない。
生存のための仕組みの問題である。
自然界では「わからない」は死に直結した。
だから脳は、無理にでも意味づけをしたがる。
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ラベルを貼れば安心できる
若者世代に対するラベリングも同じだ。
ゆとり世代、Z世代、新人類、宇宙人。
理解できない行動様式に出会うと、とりあえず名前をつける。
ラベルを貼った瞬間、「理解したこと」にできる。
実際は理解していなくてもだ。
これは安心のための操作である。
だが高度に複雑化した現代社会では、この単純化は危険でもある。
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陰謀論の誘惑
陰謀論も同じ構造だ。
世界は本来、非常に複雑である。
明治維新も、第二次世界大戦も、現代の国際情勢も、意思決定の背景は入り組んでいる。
しかし、
「それはロスチャイルド家の陰謀だ」
「ロックフェラーが操っている」
と説明されると、一気にシンプルになる。
善と悪。
完全懲悪。
子どもの頃に見たヒーロー番組の構図で世界を理解できる。
だが現実は、そんなに単純ではない。
ロシアとウクライナの問題も、感情とは別に、歴史的文脈を学べば複雑性は見えてくる。
単純化は気持ちがいい。
しかし、気持ちよさは正確さは大きく乖離している。
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僕が無関心を選ぶ理由
僕は神社に行ってもおみくじを引かない。
占いにも距離を置いている。
なぜか。
自分を強い人間だと思っていないからだ。
もしかすると、依存するかもしれない。
操作されるかもしれない。
だから近づかない。
マザー・テレサは「好きの反対は嫌いではなく無関心だ」と言ったが、僕は意図的に無関心を選んでいる。
関わらないことで、自分を守る。
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「思考の棚」に置いておく
では、わからないことをどう処理しているのか。
僕は「思考の棚」に放り込む。
これはちきりんさんの表現だが、非常に的確である。
わからないまま、棚に入れる。
ただし忘れるわけではない。
思考の0.0何パーセントかは、ずっと動き続けている。
すると、5年後か10年後か、突然つながる瞬間が来る。
「ああ、あれはこういうことだったのか」
この瞬間がたまらなく楽しい。
棚は抽象的なものなのでいくらでも入る。
そして、そこから熟成した思考が生まれる。
快食ボイスで話している内容の多くも、そこから出てきたものだ。
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不確実性に耐えるということ
占いに頼らない。
陰謀論に飛びつかない。
ラベルで世界を単純化しない。
その代わり、わからないまま置いておく。
これは不安に耐える作業だ。
だが複雑な社会を渡るには、その耐性が不可欠だと僕は考えている。
不確実性に耐える力。
それこそが、現代を生きる上での知的筋力なのではないだろうか。
少し抽象的な話になったが、文章にすることで整理できたと思う。
またどこかで、この棚の中身を一つ取り出して話してみたい。
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