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もしあなたが、大学の期末試験でですね、最新のAIに完璧にまとめさせたはずのノートを持ち込んで、結果的に存在しない架空の歴史を堂々と回答用紙に書いてしまったとしたら、どうでしょう?
いやー、それはかなりゾッとしますよね。
ですよね。しかもそれが一人や二人じゃなくて、クラス単位で一斉に起きたとしたら。
まさに現代ならではの、本当に象徴的なトラブルだと言えますね。
今回のディープダイブは、そんな驚きのエピソードから始まります。
あの分厚い六方全書とか、絶対に変わらないカチカチに冷えた石版みたいな、そういう法律のイメージを根底から薄けいでいきますよ。
ええ、とても楽しみなテーマです。
今日のソース資料なんですが、弁護士であり、法科大学院の教授でもある片山鶴師先生が行った大学の共通科目、日本国憲法の第1回オリエンテーション授業の音声とスライド資料、それから過去の定期試験問題です。
これ、法学部以外の学生に向けて行われた授業というのが大きなポイントなんですよね。
そうなんです。専門家を育成するための授業じゃなくて、文学部とかいろいろなバックグラウンドを持つ学生に向けた内容でして。
なので、単なる条文の暗記ではなくて、なぜ私たちは法律を知る必要があるのかという、いわば社会人としての基礎体力づくりが主眼に置かれている彼なんです。
はい、だからこそ今回の私たちのミッションは、この膨大な資料から単に法律知識を抜き出すことではありません。
なるほど。
現代社会における情報の正しい読み解き方と、物事を論理的に考える法的な思考プロセス、いわゆるリーガルマインドですね。
その面白さをリスナーのあなたと一緒に抽出していくことです。
ええ、この授業のアプローチで突きつすべきは最初の入り口なんです。
と言いますと。
片山先生は、いきなり難解な憲法の理念を語るんじゃなくて、私たちが日々目にしているニュースとか身近なエンタメ作品から法というものを紐解こうとしているんです。
ああ、まさにそこが魅力なんですよね。
法律の意義はわかったとして、じゃあその固い壁をどうやってぶち壊すのかって話で。
はい。
例えば授業の中で、CALL4というプラットフォームが紹介されています。
これ公共訴訟を支援するクラウドファンディングのサイトなんですが、扱っているテーマが本当にリアルなんですよ。
若者の立候補年齢を引き下げる裁判や、同性婚をめぐる訴訟、あるいは母体保護法の下で過去に行われた不妊手術の違憲訴訟などですね。
はい。これらは教科書の中の遠い昔の出来事ではなくて、今まさに法廷で現実の人間同士が争っている社会問題なんです。
そうなんですよ。これについてあなたはどう思う?っていきなり当事者意識を持たされるわけです。
さらに面白いのが、スライドを使ったリアルタイムアンケートで。
あの、学生たちから法律がテーマのエンタメ作品を募集しているところですね。
そう、それです。学生からはドラマの99.9とかゲームの逆転祭壇なんかが上がっていたんですが、片山先生ご自身の推しがまた渋いんですよね。
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先生の推薦リストには、ネットフリックスのシカゴ7裁判とか、うーよんうー弁護士は天才派だ、あとはアマゾンプライムのドイツの裁判劇で、コリーニ事件などが並んでいましたね。
法律って、なんか自分とは無関係の遠い世界の話だと思いがちなんですけど、実はネットフリックスのドラマを見るのと同じくらい人間ドラマの宝庫なんだって気づかされます。
本当にそうですね。だからあなたが昨日見たドラマも、実はディープな憲法問題を扱っていたかもしれないんですよ。
しかも色々な国の裁判ドラマを見ることは、単なる娯楽な枠に収まらないんです。
って言うと何か別の意味が?
捕獲のドラマを通じて、その国の法廷の様子やルールの違いを知ることは、比較文化の素晴らしい教材になります。
あーなるほど。捕獲のシステムを知ることで、逆説的に日本の法制度の特徴や特異性が鮮明に受けおぼりになってくるからです。
そうやって他国と制度を比較すると、日本の法制度のシステマチックな輪郭が見えてきますね。
でも、その堅牢なシステムを実際に動かしているのは、決して完璧な機械じゃなくて、生身の人間だということを思い出させてくれるエピソードが、授業の音声の中にあったんですよ。
あの漫画一系のカラスの裁判長のモデルにもなった、実在の元裁判官、北見昭氏のお話ですね。
そうなんです。片山先生と北見氏が対談した、無罪を見抜くという書籍の出版にまつわる裏話でして。
非常に人間味のあるエピソードでしたね。
本当に、あの厳格な無罪判決の伝説と呼ばれるような元裁判官が、大学での講演に向かう途中に、京王線の電車の中で転倒して骨折してしまったそうなんです。
えー、大変な事態でしたね。
それで片山先生が慌てて駅まで走って救急車を追いかけて、さらに病院から自宅まで介護タクシーを手配してというものすごいドタバタ劇で、
法廷の壇上から見下ろす絶対的な存在としての裁判官も、私たちと同じように転んで怪我をする一人の人間なんだって、なんか一気に距離が縮まりました。
法という冷たいシステムを運用しているのは、血の通った温かい人間であると、その事実を伝えた上で、いよいよ授業は、ではそのルールをどう正確に運用していくかという本題に入っていきます。
いやー、でもここからがこの授業の真骨頂なんですよね。
と言いますと。
エンタメとか人間ドラマから入って法律に興味を持ったとしても、いざ試験とか実務となると、当然ながら正確な知識が求められるじゃないですか。
もちろんです。ドラマの感想文を書いたところで単位はもらえませんからね。
ですよね。そこで現代の学生、そして私たちは、生成AIという超便利なツールに頼ろうとするわけですが、ここに巨大な落とし穴があったんです。
冒頭でお話しした定期試験の持ち込みルールの劇的な変更ですね。
はい。以前の授業ではパソコンで作成したノートを印刷して持ち込むことが許可されていたそうなんですが。
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今年から手書きノートと書き込みをした教科書のみに厳しく制限されました。
そこで起きたのが最初の架空の歴史事件なんです。現代病ともいえるAIのハルシネーション、つまり最もらしいウゾの蔓延ですね。
はい。過去の試験で、ある判例の事案概要と最高裁判決の要点を問う問題が出た時のことですね。
そうです。AIにまとめさせたノートを持ち込んだ学生たちが、一斉に存在しないウソのストーリーを書き始めたんですよね。
具体的には東大ポポロ事件という、実在する有名な事件に関する問題でした。
あの東京大学の学生劇団の演劇に私服警察官が潜入していたことが発覚してもみ合いになったという、学問の自由とか大学の自治に関わる重要な事件ですよね。
ええ。ところが、AIはこれを東京学芸大学で起こった治安維持法の事件などと、時代も場所も法律も全く異なるデタラメな内容で出力したんです。
そして多くの学生が、それを疑いもせずに回答用紙に書き写してしまったのです。
これって、料理のレシピをAIに聞いて、AIが塩と砂糖を間違えて出力したのに、味見もせずにそのままお客さん、つまり教授に出しちゃったようなものですよね。
まさにその通りです。
テクノロジーはめちゃくちゃ便利だけど、最後にファクトチェックをする人間のフィルターを通さないと、大やけどするってことですね。
興味深いのは、片山先生のAIに対するスタンスです。
あ、ということですか。
先生は、AIの利用自体を額しているわけではないんです。むしろ、これからの社会で必須の能力だと明言しています。
はいはい。
しかし同時に、出力結果に対する責任は、最終的にそれを使った人間が追うべきであると強く釘を刺しています。
確かの、明らかなAIの嘘をそのまま回答した場合、その問題がゼロ点になるだけじゃなくて、日頃出席してかさいだコテストなんかの平常点まで失うレベルの大幅なマイナス点にするというルールでしたね。
正直かなり厳しいペナルティだなと思いました。
確かに厳しいですが、音声からは、法学部以外の学生に高度なAIの嘘を見抜く能力をいきなり求めるのは酷かもしれないという教授の葛藤も読み取れました。
なるほど。
だからこそ、物理的にAIのコピペができない手書きノート限定という措置を取ったのです。
ああ、そういうことか。
これは、AI時代において便利さに流されず、一時情報である原点に自ら当たることの重要性が逆説的に高まっていることを示しています。
じゃあ、AIが使えないなら私たちは丸腰なのか?って言うとそうじゃないんですよね?
もちろんです。自分でその一時情報である法律の条文を読み解くスキルを身につければいい。
でも、法律の文章って漢字ばかりで何回じゃないですか。
そうですね。一見するととっつきにくいかもしれません。
ところが、実は法律の文章には厳密な数学やプログラミングのような明確なルールが存在するんですよね。
片山千奈生は授業で、誰でも無料で使えるeガブ法令検索や裁判所の裁判令検索の使い方を具体的に解説しています。
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それから、法律特有の言葉のルールについても触れていましたね。
はい、そうです。
このルールがパズルみたいで、本当に面白いんですよ。リスナーのあなたも少し頭の体操に付き合ってください。
いいですね。
例えば、お呼びと並びに、それから私はと和宿舎。
これ、日常会話だと全部&とかorの意味で同じように使っちゃいますよね。
普段は気にしませんよね。
でも、法律の世界ではこれを混ぜて使うことは絶対に許されないんです。
階層構造ですね。小さなグループと大きなグループを明確に分けるための極めて厳格なルールです。
例えば、犬と猫を一つのグループにします。ここまでは犬および猫ですよね。
その通りです。
では、その犬と猫の小グループ全体と全く別の要素であるチューリップという大グループを並列につなぎたい場合はどうなると思いますか。
そこで違う接着剤が出てくるんですよね。それが並びにだと。
正解です。
つまり、犬および猫並びにチューリップとなるわけですね。
完璧です。同じように選択肢を示すORの場合も、小さなグループをつなぐときは和紙化にお使い、大きなグループをつなぐときはまたはお使います。
なんか日常会話で犬と猫とチューリップっていうのと違って、文法そのものがプログラミング言語みたいに階層化されているんですね。記号の入れ子構造みたいです。
ええ。なぜ法律家があのような特有の言い回しをするのか。それは解釈のブレ、つまり曖昧さを徹底的に排除し、誰に対しても公平にルールを適用するためなのです。
なるほど。
もし法律の文章が人によって違う解釈を許してしまったら、社会の前提が崩れてしまいますからね。
そして、その公平なルールの適用をさらに論理的に行うための最強のツールが、授業で紹介されていた法的三段論法ですね。
はい。これは法律文章だけでなく、論理的思考全般の基本ロジックとなります。ステップは3つです。
はい、教えてください。
第1に規範定律。まずルールを確認します。要件Aを満たせば効果Zが生じると設定します。
次に第2ステップの当てはめですね。事実の確認。今目の前で起きているこの事件では、要件Aが満たされていると評価するわけですね。
その通りです。そして最後の第3ステップが結論です。ゆえに、この事件では効果Zが生じると導き出します。
ルール、事実、結論ですね。
ええ。この3つの段階を踏むことで、感情に流されない判断が可能になります。
これって単なる試験対策のテクニックじゃなくて、ビジネスの企画書を作ったりとか、会議で説得力のある議論を組み立てたりする時にもそのまま使える思考の型ですよね?
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おっしゃる通りです。これを身につけること自体が法学を学ぶ最大のメリットの一つと言っても過言ではありません。
さあ、ルールの構造と論理的な思考の型がわかりました。
じゃあ、その論理を使ってプロの裁判官たちが意見をぶつけ合う日本の最高法、最高裁判所では何が起きているのか?
ここからがまた面白いところですね。
ええ。ここが私たち国民と直接つながってくる熱いポイントなんです。
資料の中で特に目を引くのが、最高裁を受ける個別意見の制度に関する説明です。
はい。
日本の裁判所の中で、最高裁判決にのみ裁判官個人の意見を判決文に書き記すことが制度として認められています。
あのスライドにあった推しのアイドルの例えがすごくわかりやすかったです。
ええ。あれは名解説でしたね。
多数派の意見が、Aは歌が上手いからAを推すだとして、自分もAを推すという結論は同じだけど、Aは歌も上手いけど神対応だから推すんだよと別の理由を付け足すのが補足意見。
はい。
そして、結論はAを推すで同じでも理由が根本的に違って、Aはダンスが素晴らしいから推すとなるのが単なる意見ですね。
で、さらに結論からして真っ向から対立して、いや私は絶対にBを推すとなるのが反対意見ですよね。
その通りです。
でもこれよく考えると不思議ですよね。一般の企業だったら、取締役会で決まった決定事項に対して、私は反対でしたなんて社外に公表したら、組織の輪を乱すとして大問題じゃないですか。
確かにそうですね。なぜ最高裁という国のトップ機関に限って、そんな意見の公開が許容されているんですか。
非常に鋭い視点です。企業と違い、最高裁で個別の意見の公開が義務付けられている理由は、私たち国民に与えられた非常に重要な権利が存在するからです。
権利ですか。
はい。最高裁判所裁判官国民審査ですね。
ああ、衆議院選挙の時に一緒に配られるあの用紙ですね。
リスナーのあなたに聞きたいんですが、選挙の時、よくわからなくて、国民審査の用紙に何も書かずに、そのまま投票箱に入れちゃった経験ありませんか。外しながら私はあります。
まあ、多くの人がそうかもしれませんね。しかし、国民がその裁判官に罰をつけて、罷免すべきかどうかを適切に判断するためには、情報が必要です。
どんな情報ですか。
それぞれの裁判官が過去の重要な事件で、どういう法的思考でどのような判断を下したのかを知る必要があります。
だからこそ、最高裁では個別の反対意見などもはからかに明記することが求められているのです。
つまりあれって、裁判官たちの頭の中のプロセスを公開してくれているレビューサイトみたいなものなんですね。
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ええ、まさにそういう機能を持っています。
それを読んで、この人は少数派の権利をどう考えているのかとか、表現の自由をどう捉えているのかを評価するのは、私たち主権者の義務なんだって気づかされます。
ただ、ここで立ち止まって考えてみてください。
はい。
片山先生はなぜ、法学部以外の学生に対してここまで詳しく裁判の仕組みや判例を教えるのでしょうか。
過去の定期試験の論述問題を見ると、その意図が明確に見えてきます。
過去問かなりヘビーでしたよ。
そうでしたね。
例えば、立候補の年齢制限は、衆議院選が25歳、参院選が30歳と定められていますが、これは若者の政治参加の機会を奪うものであり、憲法違反ではないかという問題。
他にも、国民審査制度は税金の無駄だから廃止すべきという意見についてどう考えるかとか、SNSの誹謗中傷やフェイクニュースに対する規制と表現の自由、そして民主主義の維持についてどう考えるかといったものがありました。
どれも、今まさに答えが出ない問題ばかりです。
そうなんですよ。
そう、過去問に絶対的な正解はありません。
ここで重要になるのが、先ほど学んだ法的三段論法です。
なるほど。
例えば、立候補の年齢制限について、あなたならどう思考を組み立てますか?
やってみましょう。
えっと、まず第一ステップの規範。
憲法には、補の下の平等というルールがありますよね。
年齢によって差別されてはいけないはずです。
18歳で選挙権が与えられているのに、立候補は25歳や30歳まで待たなければならない。
さらに、現代の若者は、SNSなどを通じて、昔の若者以上に多様な情報に触れ、社会に対して意見を発する能力を持っています。
素晴らしい。では、そこから導き出される第三の結論は?
ゆえに、一律に25歳や30歳でなければ、政治家としての能力がないとする現在の制限は、
合理的根拠にかけ、憲法の平等のルールに反する可能性があると、こういうふうに組み立てるわけですね。
その通りです。
もちろん、逆に、国政2枚、一定の社会経験という事実が必要であるという当てはめを行って、
合憲であるという結論を導き出すことも可能です。
あー、どっちの結論でもいいんですね。
大切なのは、正解のない社会問題に対して感情論で終わらせるのではなく、
共通のルールに基づき、現在の事実を当てはめ、自分なりの結論を論理的に導き出せるかどうか。
なるほど。
それこそが、情報化社会を生き抜くための真の教養なのです。
いやー、本当にディープな旅でした。
今回は、あらゆる人が身につけるべき社会のルールの読み解き方を分析してきました。
資料の中で、片山先生が熱弁していた国立国会図書館の
個人向けデジタル化資料送信サービスの話も印象的でしたね。
絶版本など約180万点が自宅のパソコンから無料で読める。
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これを使わないのはもったいないすぎるって。
Eガブ法令検索や裁判所の判例検索を含め、
現代は信じられないほど本物の一時情報へのアクセスが開かれています。
学ぶ意欲さえあれば、誰でも法的な知識の泉にアクセスできる素晴らしい時代です。
かつては図書館の奥深くに埋もれていた法律や判例が
今やあなたの手元のスマホで無料で数秒で検索できる時代になりました。
AIに要約することも一瞬です。
しかし、今日学んだように便利なツールは時に最もらしい嘘をつきます。
情報の壁が完全に取り払われた今、
もし私たちが社会のルールを知らない、
あるいは国民審査で誰に投票していいかわからないのだとしたら、
それは情報がないからではなく、
単に私たちが知ろうとしないからなのかもしれません。
次にニュースで憲法違反という言葉を聞いた時、
あなたならどうやってその真偽をあなた自身で確かめますか?
深い問いですね。
私たちの社会のX線写真は誰かが撮ってくれるのを待つのではなく、
自分でシャッターを切って読み解くことができるんです。
今回のディープダイブはここまでです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また次回、新しい知識の世界でお会いしましょう。