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さて今回は、フィンセント・ファンゴックの
「夜のカフェテラス」です。
あなたからお預かりした資料をもとに、
このまあ誰もが知る名画のさらに奥にある魅力、
これを探っていきましょうか。
はい、お願いします。
単に美しいだけじゃない、
なんか驚きとか発見がありそうですよね。
そうですね。いただいた資料を見ても、
この絵がいかに革新的で、
ゴッホのその時の気持ちを写してるかっていうのが浮かび上がってきます。
1888年、南フランスのアルルで描かれた作品ですね。
なぜこれほど我々の心を打つのか。
色彩とか光、あと画家の思い、
そういった点から紐解いていけたらと。
まず資料でも特に強調されている点ですけど、
夜の絵なのに黒を一切使ってないと。
これは本当に驚きですよね。
そうなんですよ。
夜空が深い青とか紫で、
カフェの明かりは鮮やかな黄色とオレンジ。
まさにゴッホ自身が、
夜は昼よりももっと色彩が豊かだっていうふうに言ってるんですね。
彼は夜の風景、
特にガストーみたいな人工の光と、
星空っていう自然の光、
これが混ざり合う様子にすごく惹かれていたみたいで。
なるほど。
この絵だとカフェから漏れる暖かい光と、
夜空の深い青、この対比が見事ですよね。
人工の光が決して自然の光に負けてない、
むしろ独自の輝きがあるんだと、
そういうのを見出したんでしょうね。
その夜空ですけど、
星がただ適当に描かれているわけじゃないんですよね。
そうなんです。
資料によると、
描かれた時の実際の星の配置にかなり忠実というか。
これはゴッホの観察眼、
その鋭さを示すすごく興味深い点です。
なんとなくの印象だけじゃなくて、
ちゃんと現実の夜空を見ていたっていう。
構図を見ると、自然と視線が左のカフェテラスにまず行きますよね。
確かに引き寄せられますね。
そこから石畳の道が奥に続いて、
視線がこうスーッと星空の方に上がっていく。
なんかまるで自分はそこに立っているみたいな、
そんな感覚になりませんか?
なりますなります。
石畳の質感とか、
あと道行く人たちとか、
カフェにいる人たちの様子も、
なんとなく当時の活気が伝わってくる感じで。
しかもこのカフェ、今もカフェファンゴフとして
ほぼ同じ場所にあるっていうのが。
そうなんですよ。
なんか行ってみたくなりますよね。
ええ。今もたくさんの人が訪れる場所になっています。
彼にとってアルルっていうのは、
日本の浮世絵みたいな明るい光に憧れて移り住んだ土地で、
創作意欲がすごく高まった場所だったんですね。
でも同時に、孤独とか精神的な不安定さも深まっていった、
そういう時期でもあったわけです。
ゴーギャンとの共同生活がうまくいかなかったり、
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耳切り事件があったり、
そういう彼の人生の激しさを思うと、
この絵のなんていうか、穏やかさとか温かみが逆にすごく際立つような気がしますね。
資料にもそのあたりの背景は触れられてますけど、
この絵そのものからは苦悩というよりは、
むしろ夜の情景に対する愛情とか、
記号みたいなものすら感じられるような。
おっしゃる通りだと思います。
人工の光の温かさ、星々の静かな輝き、
そこにいる人々の営み、
それらが夜の暗さを感じさせないで、むしろ豊かさを与えている。
これこそが感情を色と筆使いで表現しようとした、
ポスト印象派としてのゴッホの一番の特徴でしょうね。
なるほど。
見たものをそのまま描くんじゃなくて、
心で捉えた光景を描くんだっていう、
その強い意志がやっぱり見る人の心を掴むんじゃないでしょうか。
うーん、なるほど。
苦労を使わない夜、正確な星空、光の対比、
そして、あの、画家の人生そのもの。
いろんな要素が複雑に絡み合って、
この一枚の絵に深みを与えてるんですね。
ええ、ゴッホはこのカフェテラスの夜景に、
淡々風景じゃなくて、彼が感じた息の輝き、
みたいなものを捉えようとしたのかもしれませんね。
暗闇の中にも確かにある光とか、
ぬくもりとか、それを見つける視点というか。
さて、では最後に、
あなたにもちょっと考えてみてほしい問いかけを。
ゴッホ自身の人生にあった光と影、
その両方を知った上で、
この一見、暖かくて穏やかにも見える夜のカフェテラスを、
もう一度道で直した時、
あなたの中にはどんな新しい感情とか、
あるいは意味が立ち上がってくるでしょうか。
ぜひもう一度、じっくりと絵と向き合ってみてください。