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こんにちは。今回はレオナルドダビンチのモナリザですね。あまりにも有名ですけど、お手元の資料と一緒にその革新に迫っていければなと。このルネサンス絵画の到達点とも言われる作品、一体何がそんなに特別なのか、それを深く探るのが今回の試みです。
まさにこれほど世界中の人々を引き継げ続ける肖像画というのはちょっと他にはないですよね。描かれた正規ルネサンスという時代、それからダビンチ自身の非凡な才能と探求心、これが凝縮されているんですね。
資料によると、モデルはフィレンツセの商人フランシスコ・デル・ジョコンドの奥さんリーザ・ゲラルディーニが有力視されていると。描かれたのが1503年から1519年頃。この時代背景というのがまず大事になってきますか?
そうですね。正規ルネサンスというのはやはり人間中心主義が花開いた時代ですから、単に外見を映しとるんじゃなくて、人間の内面とか精神性ですね、それを表現しようという意識が非常に高まったんです。ダビンチはその最前端にいたというわけです。
なるほど。その内面を描くために革新的な技法が使われている、ここがすごく面白いですよね。資料にもあるスフマート、これって具体的にどういう効果を生んでるんでしょうか?輪郭をぼかすっていうそれだけじゃない感じですか?
まさにその通りです。スフマートってイタリア語で煙のようなっていう意味合いでして、輪郭線をはっきり描かずに色を微妙に変化させて溶け込ませる。これで肌とか衣服がなんか固くならずに、まるで呼吸してるかのようなそういう柔らかさ、生命感を生み出すんですね。特に口元とか目元のあの微妙な陰影に使われていて、これがモナリザの表情の何とも言えない捉えどころの無さに直結してるんですよ。
まるで生きているかのような。そしてもう一つ、空気遠近法。遠くの景色がこう霞んで見える、あれですよね。
はい、そうです。遠くの景色の方が青みがかって細部が不明瞭に描かれてますよね。これは私たちが実際に遠くの風景を見るときに空気の層によって、まあそう見えるっていう観察に基づいているんです。
ダビンチはその科学的な観察眼を絵画に応用して、画面にすごく自然で深い空間の奥行きを与えた、と。背景のあの幻想的な風景と相まって、人物を際立たせる効果も大きいですね。
その背景ですけど、左右非対称でしかも架空の風景だと。これはどうして現実の風景じゃないんでしょうね。何か意図があるんですかね。
特定の場所を描くというよりは、もっと普遍的で理想化された自然を描くことで、モデルの内面の世界とか、あるいは人間と自然の調和といった、より大きなテーマを暗示しているのかもしれないですね。
左右の景色の高さが微妙に違うっていうのも、視覚的な面白さとか、ある種の不安定さ、動きを生み出しているとも言えます。
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なるほど。ポーズにも工夫があるんですよね。少し斜めに座って、こちらを見てるようで見てないような、上半身の三角形の構図と穏やかなS字カーブ、いわゆるコントラポスト。これは安定感とあと優雅さを感じさせますよね。
このコントラポストのポーズは、それまでのちょっと硬直した肖像画の伝統をある意味打ち破るものでした。体に自然な動きとリラックスした印象を与えて、人物をより人間らしく、心理的にも近づきやすい存在として描いているんです。組まれた手の表現も、落ち着きとか内静的な雰囲気を伝えますね。
そして、やはり最大の謎であり魅力でもある、モナ・リザの微笑み。口元は確かに微笑んでる。でも感情が読み取れない。資料にも神秘的、捉えどころがないと。これはあの、先ほどのスフマート技法とどう関係してくるんですか?
まさにスフマートがカギなんです。口角とか目元の陰影をわざと曖昧にすることで、見る角度とか光の加減、あるいはその見る人の心理状態によって、微笑んでるようにも、なんか物ゆげにも見える。
ダ・ヴィンチは解剖学的な知識も多分駆使して、表情筋の微妙な動きまで捉えようとしたんでしょうね。感情の固定じゃなくて揺らぎを描くことで、彼女の内面の複雑さというか深遠さを表現したかったのかもしれません。
技術、構図、表情、そのすべてが連動して、この絵を特別なものにしているわけですね。単なる綺麗な絵じゃなくて、ルネサンスの人間探求が結晶した作品なんだと。
そういうことだと思います。技術的な革新性、人間心理への深い洞察、そして時代を越えて人々を引きつける謎。これらが融合して、単なる肖像画の枠を越えた、普遍的な価値を持つ文化遺産になっているんですね。
77cm×53cmという決して大きくはない画面の中に、西洋美術史を変えるほどのインパクトが凝縮されていると言っていいでしょう。
改めて、資料から浮かび上がってくるのは、計算され尽くした技術と一方で捉えきれない人間性の深さ、その両立ですよね。だからこそ私たちは何世紀も魅了され続けるのかもしれませんね。
ええ、まさに。では最後に一つ皆さんに問いかけてみたいと思います。これまでの知識を踏まえつつも、一旦それを脇に置いてですね、もしあなたがルーブル美術館でモナリザと対峙したとしたら、その表情、その佇まいにあなた自身は何を感じ取るでしょうか。
その解釈の余地、曖昧さの中にどんな個人的な意味を見出すことができるか、ぜひ思いを巡らせてみてください。