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スピーカー 2
ただですね、ちょっと現実的な疑問なんですけど。
スピーカー 1
はい、どうぞ。
スピーカー 2
ゲームの中なら高いところから落ちてもボタン一つでリセットできるじゃないですか。
でも現実のプレイパークで火や刃物を使って遊んでいたら大怪我をしますよね。
スピーカー 1
もちろんです。現実世界ですから。
スピーカー 2
大人の管理なしでどうやってその自由と安全を両立させているんですか。
毎日救急車が呼ばれまくる事態にはならないんでしょうか。
スピーカー 1
そこで鍵になるのが安全管理の専門用語であるリスクとハザードの決定的な違いなんです。
スピーカー 2
リスクとハザード。
スピーカー 1
この二つをどう区別するかがプレイパークという空間を成立させる最大のメカニズムになっています。
スピーカー 2
どちらも危険っていう意味の言葉に聞こえますけど、具体的にどう違うんですか。
スピーカー 1
簡単に言うとですね、リスクとは遊びの価値そのものであり、子供の挑戦を促す目に見える危険のことです。
スピーカー 2
目に見える危険、例えば。
スピーカー 1
例えば、高い木に登ることとか、マッチで火をつけることですね。
スピーカー 2
子供自身が危ないかもって認識できるものですね。
じゃあ、ハザードは?
スピーカー 1
一方のハザードは遊びの価値とは全く無関係で、子供には予測不可能な隠れた危険のことです。
スピーカー 2
予測不可能?
スピーカー 1
はい。一見丈夫そうに見えるけど、中が腐っている優遇の木材とか、土の中に埋まって見えないガラスの破片などですね。
スピーカー 2
なるほど。つまり、大人は子供に気づかれないように、ハザードだけを徹底的に排除して、子供が自分で見て判断できるリスクは、あえてそのまま残しておくわけですね?
スピーカー 1
その通りです。プレイリーダーにとって、リスクとは、たどえるならワクチンのようなものなんですよ。
ワクチンですか?病気を防ぐための?
スピーカー 1
はい。知識的な本物の危機に直面したときに備えて、安全な危機回避の免疫システムを心と体に作るために、あえて少量のコントロールされた危険を取り込ませるわけです。
スピーカー 2
ワクチンね。でもちょっと待ってくださいよ。
はい。
スピーカー 2
資料の中に、港区の熟練プレイリーダーの日誌があったんですけど、信じられないエピソードがありましたよね。
ああ、S1君の話ですね。
スピーカー 2
そうです。S1君という男の子が、自転車で斜面を降りて、わざとぶつかって倒れる遊びをしたいと言い出したって。
スピーカー 1
ありましたね、その記録。
スピーカー 2
これ普通の親なら、バカなこと言ってないで絶対やめなさいって即座に止めますよ。
ワクチンどころか、自分から怪我というウイルスに感染しに行ってるじゃないですか。
スピーカー 1
まあ、大人の常識的な目線からすれば完全に無謀な行為にしか移りませんよね。
スピーカー 2
ですよね。
スピーカー 1
しかし、プレイリーダーの分析は違うんです。S君は、ただむやみに自傷行為をしたいわけではないんですよ。
スピーカー 2
違うんですか?
スピーカー 1
はい。自分でもびっくりするくらい突然倒れるにはどうしたらいいか。
そして、どうすればギリギリ大怪我をせうに転べるかを彼なりに真剣に試行錯誤しようとしているんです。
スピーカー 2
なるほど。ギリギリのラインを探っていると。
スピーカー 1
これがまさに自分の限界値を知るためのリスクへの挑戦なんです。
わざと転ぶことで、致命傷にならない転び方を体で学習しているってことですか?
スピーカー 1
ええ。川崎市子ども夢パークの初代所長である西野氏は、現代社会への強い継承としてこんな言葉を残しています。
スピーカー 2
はい。
大人が子どもに完璧を求め、一切の怪我をさせまいと過保護になることで、小さな失敗をする機会をこねこそぎ奪ってしまっていると。
スピーカー 2
失敗を先回りして全部排除しちゃうんですよね、今の社会は。
スピーカー 1
はい。その結果どうなるか。
子どもの頃に安全な転び方を学ばなかった人間は、年齢が上がって社会に出てから初めて大きな失敗に直面した時に、その衝撃を吸収できないんです。
スピーカー 2
うわあ、それは怖いですね。
再起不能なほどの深い挫折感を味わってしまう。
スピーカー 1
怪我と弁当は自分持ち、というルールは、突き詰めれば、ここでは致命傷にならない小さな失敗をいくらでもしていいんだよ、というメッセージなんです。
スピーカー 2
つまり、社会を生き抜くための究極のセーフティーネットなんですね。
まさにその通りです。
スピーカー 2
リスクを排除しすぎることが、逆に将来の最大のハザードを生み出している。すごく腹落ちしました。
スピーカー 1
ええ、逆説的ですが真理です。
スピーカー 2
でもその致命傷にならない小さな失敗を見極めて、ハザードだけをこっそり取り除くって、現場ではとんでもないバランス感覚が必要ですよね。
スピーカー 1
熟練の技ですね。
このプレイリーダーという人たちは、一体どうやってその空間をコントロールしているんですか?
スピーカー 1
興味深いのは、彼らが遊びを教える先生として振る舞うことは絶対にない、という点です。
スピーカー 2
先生じゃないんですね。
スピーカー 1
はい。彼らの心骨頂は、子供たちに介入しないための計算しつくされた見守りにあるんです。
介入しないための計算。これ資料を読んでいて、私が一番驚いたのがまさにそこなんですよ。
スピーカー 1
ほう、どの部分でしょう。
スピーカー 2
彼らって、ただニコニコ微笑んで見守ってるんじゃなくて、頭の中で高度な4Dチェスをやってるみたいですよね。
日誌に、プレイリーダーはその場から最短で抜けられる方法を中心に考えている、って書いてあって。
スピーカー 1
ああ、はいはい。メタ認知の記述ですね。
スピーカー 2
最短で抜けるってすごい発想だなと。
スピーカー 1
普通、大人が子供の遊びに入っていくと、こうやったらもっと面白いよ、と場を盛り上げたり、つい自分が中心になってしまいがちじゃないですか。
スピーカー 2
なりますなります。貸してごらん、おじさんがやってあげるよ、みたいな。
スピーカー 1
そうです。しかし、プレイリーダーは違います。
例えば、子供たちが火起こしに苦戦しているとき、ここに枯葉を入れなさい、とは絶対に言いません。
スピーカー 2
じゃあ、どうするんですか。
同率狩りに、さりげなく乾いた小枝の束を近くに落としておいて、子供たちが気づいたときには、もうその場からいなくなっているんです。
スピーカー 2
うわあ、かっこいい。完全に国威ですね。
スピーカー 1
ええ。
スピーカー 2
つまり、子供たちからすれば、自分たちの力で枝を見つけて、自分たちで火を起こせたぞ、っていう成功体験になるわけですよね。
その通りです。大人の影を感じさせないんです。
スピーカー 2
これ、ちょっと聞いているあなたも思い当たらないですかね。ビジネスの現場でも全く同じだと思いませんか。
と言いますと。
スピーカー 2
優秀なマネージャーって、部下に手取り足取りを教えるマイクロマネジメントはしないじゃないですか。部下が自分で考えて動ける環境だけを整えて、すっと身を引く。
スピーカー 1
全く同じ構造ですね。介入しすぎないことで、相手の当事者意識を育てるわけですから。
スピーカー 2
ですよね。
スピーカー 1
そしてもう一つ、プレイリーダーの極めて重要なスキルに、保護者へのポジティブな通訳というものがあります。
スピーカー 2
ポジティブな通訳ですか。
スピーカー 1
はい。実は、子供が自由に遊べる環境を作るためには、子供以上に親の心理的ハードルを下げる必要があるんです。
スピーカー 2
親の不安を取り除くってことですか。
スピーカー 1
資料にあったエピソードを思い出してみてください。プレイパークの手作りウォータースライダーで、小学3年生の男の子が大はしゃぎして、周りに水しぶきをあげながら遊んでいた時の話です。
スピーカー 2
ありましたね。それを見たお母さんが思わず、「下の子がいるんだから気をつけなさい!」ってきつく怒っちゃった場面ですね。
はい。
いやー、これ親心としてはすごくわかります。本当に危ないと思ったというより、周りの親からしつけがなってない家だと思われないかっていう世間体とかプレッシャーでつい先回りして怒っちゃうんですよね。
スピーカー 1
まさにそこなんです。親は常に社会の目にさらされていますから、その親の焦りやプレッシャーを察知した時、プレイリーダーはさっと前に入って、お母さんに口行為をかけました。
はい。
スピーカー 1
何が楽しいかは遊びの壺がわかってますね。すごくハマって遊んでますよ、と。
スピーカー 2
いや、魔法の言葉ですね、それ。
スピーカー 1
そうなんです。
その一言で、お母さんの、周りに迷惑をかけているダメな子っていうネガティブなレンズが、遊びの本質をつかんで豊かに育っている子っていうポジティブなレンズにパッと切り替わる。
スピーカー 1
その通りです。危険じゃないか、迷惑じゃないかという不安を、こんなに豊かな育ちをしていますよ、と言葉に翻訳して伝えてあげる。
スピーカー 2
なるほどな。
そうやって、親自身の緊張を解きほぐして、社会の目から守ってあげることで、結果的に子どもがのびのびと遊べる環境が守られるんです。
スピーカー 2
その大人の見守る余裕ができると、子どもたち自身の世界が爆発的に広がっていく様子も記録されていましたよね。
スピーカー 1
ええ。面白い記録がたくさんありました。
スピーカー 2
ある女の子が、ダンボールで警察署を作っていたのがきっかけで、いつの間にか周りの子たちにお家作りの大流行が起きたりとか。
あとは、社面で秘密基地を作っていた小学4年生の男の子たちのところに、いつの間にか小さな子たちが集まってきて、社弟として働き始めていたというエピソードもありましたね。
スピーカー 2
そうそう、小学生の社弟。あれ笑っちゃいました。
スピーカー 1
大人から見たら、上下関係なんて作らず、みんなで平等に仲良く遊びなさいって口出ししたくなる場面ですよね。
スピーカー 2
絶対言いたくなります。お兄ちゃんなんだから優しくしなさいとか。でもプレイリーダーはそれも、お前も後から家に来いよなんていうやり取りを見て、面白がっているんですよね。
スピーカー 1
ええ。大人が無理やりコミュニティを設計しなくても、子どもたちはリスクと自由の中で、勝手に社会性を身につけていくんです。
スピーカー 2
彼らは子どものやってみたいっていう心の動きを肯定して、それが自然に発展していくための土壌を耕すプロフェッショナルなんですね。
スピーカー 1
その通りです。ノコギリを使っている時も、社弟ごっこをしている時も、そして、ただ黙々とデジタルゲームの画面を見つめている時でさえも、
ああ、なるほど。
スピーカー 1
すべてはその子の今必要なプロセスとして見守るのです。
スピーカー 2
プレーパークって単に昔ながらのドロンク遊びができる公園だと思ってましたけど、根本から認識が変わりました。
単なる解雇主義ではないんですよね。
スピーカー 2
株に管理された現代社会が失いつつある、自分の人生を自分で決定し、そして失敗する権利を取り戻すための壮大な実験場だったんですね。
スピーカー 1
そして重要なのは、このプレイリーダーたちの哲学をどうやって私たちの日常に応用していくかということです。
スピーカー 2
本当にそうですね。さて、ここまで聞いてくださったあなたはどう感じたでしょうか。
スピーカー 1
職場やご家庭の状況と重ねてみると、いろいろ見えてくるものがあるかもしれません。
スピーカー 2
私たちは今、あらゆる場所から目に見えないハザードだけでなく、成長に必要なリスクまで徹底的に排除しようとする社会を生きています。
公園の看板面持ちろん、学校のルール、あれば職場のコンプライアンスとかマニュアルもそうかもしれません。
でも、もしリスク、つまり挑戦と小さな失敗を許容しない完璧に安全な環境こそが、結果として人間の適応力や生きる力を奪う最大のハザードだとしたらどうでしょう。
非常に恐ろしいことですよね。
スピーカー 2
私たちはよかれをもって過保護になりすぎ、部下や子供の自己決定権を奪っていないでしょうか。
明日からは少しだけ、大人の都合でコントローラーを奪うのをやめて、彼ら自身に、そして自分自身にもリスクを許す遊び心を持ってみてはいかがでしょうか。
スピーカー 1
その小さな余白から思いもよらない成長が生まれるかもしれませんね。
失敗できる環境をデザインし、すっと立ち去る。それが真のマネジメントと言えるのかもしれません。
スピーカー 2
今回の深堀はここまでとなります。
明日からの景色が少しでも違って見えたなら嬉しいです。
それではまた次回。