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スピーカー 2
まずはですね、私たちが過去にどれほど最もらしい噂に振り回されてきたか、というお話からなんですが。
スピーカー 1
はい。
スピーカー 2
2002年頃に、日本中で大論争を巻き起こしたゲーム脳という言葉を覚えていますか?
スピーカー 1
えー、よく覚えていますよ。あれはある研究者が提唱したかなりショッキングな主張でしたよね。
スピーカー 2
テレビゲームに熱中すると脳から出るβ波っていう脳波が激減して、認知症の患者さんと同じような波形になるみたいな話でしたよね。
スピーカー 1
そうですそうです。その結果として人頭前夜の働きが低下して、若者が切れやすくなる原因を作っているんだという内容でした。
スピーカー 2
当時はもうニュースでも大々的に取り上げられて、親たちはやっぱりゲームは脳を破壊するんだって大パニックになりましたよね。
スピーカー 1
なりましたね。
スピーカー 2
でも今回資料を見て本当に驚いたんですけど、これ価格でもなんでもない、完全に疑似価格だったんですね。
スピーカー 1
そうなんですよ。なぜ疑似価格として激しい批判を浴びたのか、そのプロセスを知ることが非常に重要でして。
スピーカー 2
プロセスですか?
スピーカー 1
まず第一に、この研究ってサンプル数はわずか10人以下だったんです。
えっと、10人以下。それは科学的根拠を示すにはあまりにも少なすぎますよね。
スピーカー 1
そうなんです。そして何より致命的だったのが、β波という脳波の性質を無視していたことなんですよ。
スピーカー 2
無視していたっていうのはどういうことですか?
スピーカー 1
実はβ波って人間が運動をしている最中にも低下するものなんですね。
スピーカー 2
あ、体を動かしている時にも下がるんですか。
スピーカー 1
そうなんです。でもその研究では運動時のβ波の低下については全く問題なしとスルーしたんです。
スピーカー 2
なのにゲーム時の低下だけを脳が壊れている証拠だみたいに恣意的に解釈していたと。
スピーカー 1
おっしゃる通りです。さらに言うと、医療現場で使われる厳密な脳波系ではなくて独自の簡易的な装置を使って、しかもルールを無視して測定していたんです。
スピーカー 2
ちょっと待ってください。つまりそれって最初からゲームは悪いだっていう結論ありきで都合よくデータを切り張りしていただけってことですか?
スピーカー 1
残念ながらそういうことになりますね。
スピーカー 2
いや、ひどい話ですね。同じように資料の中には青ペンガキ殴り勉強法についての検証もありましたけど。
スピーカー 1
はい。あれも一時期すごく流行りましたよね。
スピーカー 2
青色には神聖効果があるとか印象に残りやすいから記憶に定着するんだとか言われてましたけど、もしかしてこれも嘘だったんですか?
スピーカー 1
嘘というか実際には青色が記憶力の向上に直結するという明確な科学的証拠は確認されていません。
スピーカー 2
全然ないんですね。
スピーカー 1
はい。他にもカルシウム不足でイライラするっていうのも骨の健康には重要ですけど、短期的なイライラに直結するわけではないですし。
スピーカー 2
ああ、それもよく言われますよね。
スピーカー 1
手相占いに至ってはまあ誰にでも当てはまるような一般的な性格描写をまさに自分のことだと思い込むバーナム効果などの心理学的な錯覚に次ぎません。
スピーカー 2
なるほど。つまりゲーム能も青ペン暗記ももっともらしい顔をして白羊皮を着た占い師に手相を見てもらっているのと同じような状態だったわけですね。
スピーカー 1
まさにその通りです。専門用語を使われると私たちはコロッと騙されてしまうんですよね。
これ本当にゾッとしますね。でもここからが今回の探求の深刻調というか。
もしゲームのという前提が崩れたのなら、実際のところゲームは私たちの心身にどんな影響を与えているのか。
スピーカー 1
そうですよね。
スピーカー 2
最新のデータが過去の常識を根底から襲うとんでもない真実を暴き出しましたよね。
スピーカー 1
はい。大阪大学などの研究チームが2024年に発表した約9万7千人を対象とした大規模な調査結果のことですね。
スピーカー 2
9万7千人。すごい数ですね。
スピーカー 1
この研究の何が歴史的に画期的かというと、相関関係ではなく因果関係を証明した世界初の論文だという点なんです。
スピーカー 2
待ってください。そこちょっと突っ込ませてください。
よくゲームをしている人はメンタルが健康だみたいなデータってありますけど。
スピーカー 1
はい。ありますね。
スピーカー 2
それって心に余裕があって健康な人だからゲームをする時間があるだけじゃないんですか。
つまりゲームが原因で健康になったわけじゃないですよね。
スピーカー 1
まさにそこがこれまでの研究が抱えていた最大の壁だったんですよ。
スピーカー 2
おお、やっぱり。
スピーカー 1
健康だからゲームができているのか普通に調査しただけでは見分けがつきません。
スピーカー 2
そうですよね。
スピーカー 1
しかしこの研究チームは天才的な方法を思いついたんです。
スピーカー 2
何ですか。
スピーカー 1
コロナ禍で起きたNintendo Switchとプレイステーション5の抽選販売に目をつけたんです。
スピーカー 2
抽選販売。あの、転売対策でどこのお店もやってたくじ引きみたいなやつですか。
スピーカー 1
そうです。彼らはこの社会現象を自然実験として利用したんです。
スピーカー 2
自然実験。
スピーカー 1
ええ、抽選に当たるか外れるかって年齢も元々の性格もストレスの度合いも関係なく完全にランダムですよね。
スピーカー 2
あ、つまり意図的にゲーム機を手に入れられたグループと手に入れられなかったグループを全くのうんまかせで分けることができたってことですか。
スピーカー 1
その通りです。ランダムな抽選という状況が奇跡的に完璧な科学実験の舞台を作り上げたんです。
スピーカー 2
それはすごい。
スピーカー 1
これによって元々の環境の差を排除して純粋にゲーム機を手に入れたことで、その後のウェルビーング、つまり心身の健康や幸福度がどう変化したかという因果関係を明確に抽出できたんです。
スピーカー 2
すごすぎますね、それ。それで結果はどうだったんですか。
衝撃的でした。なんと、ゲーム機を手に入れてプレイすることはメンタルヘルスを明確に改善し、人生の満足度を大きく向上させることがはっきりと証明されたんです。
スピーカー 1
え?
不満やうつうつといったネガティブな感情が減って日々の幸福感が底上げされたんですよ。
スピーカー 2
ちょっと待ってください。じゃあ、PS5とかスイッチの抽選に当たってよろぼんでいた人たちは、単に欲しかったおもちゃが買えてラッキーだっただけじゃなく、科学的に幸福へのチケットを手に入れていたってことですか?
スピーカー 1
まさにそういうことになります。さらに興味深いのは、デバイスによって効果が出る層が違ったことです。
スピーカー 2
違うんですか?
スピーカー 1
Nintendo Switchは、特に未成年のメンタルヘルスを劇的に改善しました。一方で、PS5は成人・男性独身の層において、メンタルヘルスと人生満足度を最も向上させていたんです。
スピーカー 2
へー、デバイスによって救われる層が違うんですね。でも、私がもし親の立場だったら、一番気になるのはプレイ時間なんですが。
あー、気になりますよね。
スピーカー 2
昔からゲームは1日1時間までって言われて育ちましたけど、やりすぎたらやっぱり悪い影響があるんですよね。
スピーカー 1
そこがこの研究のもう一つの驚くべき発見でして。
はい。
スピーカー 1
データによると、プレイ時間が長くなるにつれて幸福度は上がっていくんですが、1日3時間を超えると、そのポジティブな効果は頭打ちになるんです。
スピーカー 2
つまり、それ以上は上がらないと。
スピーカー 1
そうです。しかし驚くべきことに、どれだけ長時間プレイしても、負の影響、つまり悪い影響は観察されなかったんです。
スピーカー 2
えー、3時間以上やってもメンタルが悪くなるわけじゃないんですか。
スピーカー 1
はい。ゲームは子供の健康に悪いという固定観念は、因果関係のデータによって見事に打ち腐られました。
効果がこれ以上上がらなくなるだけで、マイナスに転じるわけではないんです。
スピーカー 2
それはすごい発見ですね。
スピーカー 1
さらに言えば、ドイツのマックス・プランク研究所が行った別の実験では、スーパーマリオ64などの3Dアクションゲームをプレイすることで、脳の開場や小脳の肺白質という部分が物理的に大きく成長したという報告もあるんです。
スピーカー 2
物理的に脳が大きくなるんですか。
スピーカー 1
そうなんです。
スピーカー 2
ゲームをすると脳が萎縮するゲーム脳どころか、記憶力や空間認識を司る脳の部位が、筋トレみたいに成長していたってことですか。
スピーカー 1
空間を把握してキャラクターを動かすという複雑な処理が脳への良質な刺激になっていたわけですね。
スピーカー 2
完全に常識がひっくり返りましたね。
となると、こうした科学的データが揃ってきた今、社会におけるゲームの立ち位置もずいぶん変わってきてるんじゃないですか。
スピーカー 1
大きく変わってきています。
スピーカー 2
昔はゲームイコール子供と若者の暇つぶしというイメージでしたけど。
スピーカー 1
そのステレオタイプも今や完全に崩壊していますよ。
社会のパラダイムシフトを示す象徴的なデータとして、2023年のシニア女性のゲームに関する調査を見てみましょう。
シニア女性ですか。
スピーカー 1
はい、なんと50歳から84歳のシニア女性の約8割が直近5年以内にゲームを経験し、約65%が月1回以上プレイしているんです。
スピーカー 2
65%、それってクラスの半分以上のおばちゃんがゲーマーってことですか。
スピーカー 1
そういうことになります。
しかも、ただの暇つぶしではありません。
1回の平均プレイ時間は42分です。
42分。
スピーカー 1
シミュレーションRPGや麻雀ゲームをプレイしている層に至っては、さらに長時間遊んでいます。
スピーカー 2
42分ってちょっとしたワークアウトより長いですよ。
シニア女性が毎日リビングで42分間もシミュレーションRPGに熱中している姿を想像すると、これまさにデジタル時代の新しいラジオ体操ですね。
スピーカー 1
素晴らしい例えですね。
まさにその通りで、彼女たちがゲームを選ぶ理由はお金がかからないことと並んで、頭や脳に良さそう、つまりボケ防止や認知機能の維持がトップなんです。
スピーカー 2
なるほど。
スピーカー 1
さらに約半数がオンラインゲームも経験しています。
彼女たちにとってゲームは日常に刺激を与え、脳を若々しく保つための認知メンテナンスのツールとして機能しているんです。
スピーカー 2
脳トレ代わりのラジオ体操として生活の一部に組み込まれているんですね。
一方で子育て世代の親たちはゲームをどう捉えているんでしょうか。
スピーカー 1
2019年の調査では父親と母親で少し意識の違いが見られまして。
スピーカー 2
どんな違いですか。
スピーカー 1
父親はゲームを子供との共通の話題を作るコミュニケーションツールとして一緒に楽しむ傾向があります。
ああ、わかります。
スピーカー 1
一方で母親はただ楽しいだけのゲームにはネガティブな印象を持ちつつも、パズルや地域ゲームに対しては発想力や問題解決力の向上を強く期待して買い雇えています。
スピーカー 2
なるほど。
実際、就学前の幼児の8割以上がスマホアプリに触れているのが現状ですね。
スピーカー 2
うーん、おじいちゃんおばあちゃんにとっては脳のストレッチ、お父さんにとっては親子で囲むデジタルは焚き火、お母さんにとっては問題解決能力を育むデジタルな積み木みたいな。
スピーカー 1
はい。
スピーカー 2
もはやゲームって一部の人がやる娯楽じゃなくて、世代ごとの課題を解決する生活インフラになってきているんですね。
スピーカー 1
その視点は非常に重要です。データが示す通り、ゲームは多くの人々のウェルビーイングを高めています。
もし、いまだにゲームは悪だという思い込みだけで一律に制限するような政策を行えば、社会生活と趣味を両立して幸福度を保っている人々の生活の支えまで奪いかねないということです。
スピーカー 2
確かにそうですね。とはいえですよ。
スピーカー 1
はい。
スピーカー 2
ここまで良いことづくめの話を聞いてきましたけど、私はあえて意地悪な質問をします。
何でしょう。
スピーカー 2
もし、ゲームが脳を成長させてメンタルを改善してシニアのボケ防止にもなる魔法のツールなら、なぜ私たちはいまだにゲーム依存症で人生が破滅したといった恐ろしいニュースを頻繁に耳にするんですか。
スピーカー 1
それは当然の疑問ですよね。
スピーカー 2
手放しでゲームは100%安全だから無限にやりなさいとは言えないですよね。
スピーカー 1
もちろんです。物事には必ず光と影がありますから、ゲーム脳は疑似科学でしたが、だからといってゲームに全くリスクがないというのは極論です。
私たちが本当に警戒すべきリスクはどこにあるのか、それは日本のゲームの歴史を振り返り、ゲームの構造がどう変化してきたかをたどることで見えてきます。
スピーカー 2
歴史と構造ですか。
はい。日本のゲームの歴史は1973年のアーケードゲームから始まりました。当時は100円玉を入れてゲームセンターで数分間だけ遊ぶ非常に有限な体験でしたよね。
お金が尽きたら終わりですもんね。
スピーカー 1
ええ。その後、1983年のファミコン登場でリビングに定着しましたが、これもテレビの前という物理的な制限がありました。
スピーカー 2
確かに。親にテレビ消しなさいって言われたらそこで終わりでしたよね。
スピーカー 1
しかし、2000年代のブロードバンド普及によるオンライン化、そして何よりスマートフォンの登場が全てを変えました。
スピーカー 2
スマホですね。
スピーカー 1
いつでもどこでもポケットの中に無限の世界が広がっている状態です。そしてビジネスモデルも買い切りから基本無料でアイテム課金やガチャで収益を上げる形へと進化しました。
スピーカー 2
つまり、ゲームという体験が終わりのある遊びから無限に続くアルゴイズムに変わったと。
その通りです。現代のスマホゲームの一部には絶えない通知やガチャのような社交信を煽るシステムが精巧に組み込まれています。
スピーカー 1
これによって脳内で何が起きるかというと、ドーパミンという快楽物質が過剰に分泌され続けるんです。
スピーカー 2
出ましたね、ドーパミン。それが依存症に繋がるんですか?
スピーカー 1
ええ。予期せぬ報酬、例えばガチャでレアアイテムが出るなどを得ると脳は強烈な快感を思えます。
スピーカー 2
たまらない瞬間ですよね。
スピーカー 1
しかし、これを四六時中繰り返していると、脳の前頭前脚、特にもっと欲しいと欲求を司る部分と、今はやめておこうとブレーキをかける部分の神経結合が物理的に弱くなってしまうことが分かっているんです。
スピーカー 2
物理的に弱くなる。じゃあブレーキの壊れた車みたいになっちゃうってことですか?
スピーカー 1
まさにそうです。これはゲーム脳のような架空のβ波の話ではなく、ギャンブル依存症の患者の脳に実際に見られるのと同じ衝動のコントロール喪失状態です。
スピーカー 2
なるほど。
スピーカー 1
これが現代における真のリスクなんです。
スピーカー 2
いやー、腑に落ちました。昔の親たちはゲーム脳という正体不明のお化けを怖がっていたけれど、私たちが今本当に向き合わなければいけないのは、スマホというポケットの中に住んでいる無限のドーパミンループという本物のモンスターなんですね。
スピーカー 1
そういうことです。テクノロジーが進化して、デバイスとの接触時間が圧倒的に長くなっているからこそ、私たちはより賢くならなければなりません。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
エビデンスのない疑似科学に踊らされて、むやみにゲーム全体を禁止するのではなく、ゲームがもたらすメンタルヘルスの改善という絶大なメリットと、ドーパミン依存によるコントロール喪失という本質的なリスクを科学的に切り分けて理解することが求められているんです。