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地域活動者とゲーマーの交差点:eスポーツによる地域創生と社会課題解決(関わり創出のためにできること)
2026-10-23 17:29

地域活動者とゲーマーの交差点:eスポーツによる地域創生と社会課題解決(関わり創出のためにできること)

関わり創出のためにできること:eスポーツ、ゲーミフィケーション、官民連携が導く地域再生とコミュニティ再構築の包括的分析

1. エグゼクティブ・サマリー

日本の地方部において、人口減少、少子高齢化、若者の都市部流出、地域コミュニティの希薄化、既存産業の縮小といった複合的課題が深刻化している。これに対し、従来の行政主導型単発イベントや補助金依存型施策からの脱却を目指す「地方創生2.0」の文脈のもと、デジタル技術を活用した持続可能な「関わり(関係人口・多世代交流・官民共創)」の創出が不可欠となっている。

本ブリーフィング・ドキュメントは、提供された各種施策・実践事例の分析に基づき、地域社会における「関わり」を創出・拡大するための具体的手法、成功要因、および構造的フレームワークを網羅的に取りまとめたものである。

主要な分析結果および示唆は以下の通りである。

  • eスポーツによる包摂的コミュニティと産業基盤の創出: eスポーツは年齢、性別、身体的条件、地理的制約を超越する「ユニバーサルスポーツ」として機能する。若者の地元定着やDX人材育成(動画編集、配信、イベント運営等)の機会を提供するのみならず、高齢者の認知機能維持・介護予防、異世代交流、商店街や観光地の活性化、さらには企業における採用・ブランディングや社内コミュニケーション強化に貢献している。
  • ゲーミフィケーションによる自発的行動変容と課題解決: ゲーム的要素(ポイント、ミッション、報酬、競い合い等)を非ゲーム分野に応用することで、「やらないといけない課題」を「やりたい体験」へと変換する。都市インフラの危険箇所特定、健康増進、環境負荷低減(CO2削減)、メディアリテラシー向上、寄付やマイクロ融資の推進など、多様な社会課題解決において実証された効果を発揮している。
  • 「暮らし起点」の官民共創(PPP)と持続的運営構造: 地域再生を成功に導く鍵は、単なる成功事例の模倣ではなく、自地域の課題に合わせた施策の「再設計」にある。空き家・廃校等の地域資源の再編集、多主体(自治体・民間企業・大学・金融機関・住民)による明確な役割分担、そして補助金終了後も見据えた自走可能な収益モデルの構築が求められる。

2. eスポーツを活用した包摂的交流と地域活性化

2.1 eスポーツの市場的・社会的背景

eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)は、コンピューターゲームやビデオゲームを用いた競技活動であり、2024年時点で世界の市場規模は20億ドルを突破している。日本国内の競技人口も約750万人(2023年時点)に達し、単なるエンターテインメントを超えた重要な社会的インフラとして定着しつつある。

地方都市において、eスポーツは以下の特性により高効率な地域創生ツールとして機能する。

  • 地理的制約の排除: インタネット環境とデバイス(PC、ゲーム機)があれば、都市部と地方の格差なく世界中と接続可能。
  • 高い包摂性(インクルーシブ): 身体的負荷が少なく、子どもから高齢者、障がいの有無に関わらず対等に参加可能。
  • 若年層への訴求力: 高校における部活動導入が進んでおり(eスポーツ部・同好会設置校の約85.1%が大会参加実績を保有/2022年には2,060校・約6,728人が大会参加)、若者のコミュニティ形成や地元定着の動機となる。

2.2 eスポーツ導入が地域にもたらす5つの主要メリット

メリット項目具体的効果と機序該当事例・データ
1. 若者の流入と地元定着地方における就学・就職・娯楽の選択肢不足に対し、デジタル活動の場とコミュニティを提供。自己表現や挑戦の機会を作る。神奈川県横須賀市(部活動支援・PC無償貸与)、福島県南相馬市(若者の居場所・復興支援)
2. 雇用創出・地域ビジネス活性大会運営、映像配信、実況解説、店舗運営、観光・飲食・宿泊への波及効果。新たなデジタルスキル需要を創出。香川県高松市(商店街空き店舗のeスポーツカフェ)、京都府亀岡市(スタジアム併設e-SPORTS ZONE)
3. 高齢者福祉・予防医療手指の操作や戦略的思考が認知機能(判断力・反応速度・集中力)の維持・向上に寄与。孤独感の軽減と社会参加の促進。愛知県大府市(「espoいしがせ」/ねんりんピック出場)、AARP(全米退職者協会)2023年研究報告
4. 異世代交流・コミュニティ再構築世代間の分断を解消し、高齢者と子ども・若者が「共通の遊び」を通じて関わる「デジタル時代の縁側」を創出。北海道釧路市(三世代参加型大会)、東京都多摩・島しょ地域(福祉・教育・多世代交流調査報告)
5. 暮らしの質・利便性向上eスポーツ導入に伴う通信環境(Wi-Fi等)整備や交通網の見直し、顔の見える関係性構築による子育て・防災力の底上げ。公共施設の通信インフラ整備事例、各自治体の交流拠点化施策

2.3 国内外における先駆的活用事例

【国内自治体・地域の取り組み】

  • 富山県 / 滑川市: 県主導の「eスポーツ関係人口創出事業補助金」を整備。"eスポーツ選手"を地域おこし協力隊として採用し、観光PRや高齢者交流を推進。滑川市では古民家を活用した「BURNING CORE TOYAMA GAMING BASE(FUSION)」を開設し、子ども向け教室やプロチーム連携拠点を構築。
  • 愛知県 / 名古屋市 / 大府市: 2026年愛知・名古屋アジア競技大会でのeスポーツ正式採用を見据え、「高校eスポーツ部支援プロジェクト」や国際交流イベント「ASIA esports EXPO」を展開。大府市では公民館を改装した「espoいしがせ」を拠点にシニアチームを育成し、全国健康福祉祭(ねんりんピック)へ出場。星城大学の学生が操作サポートとして関与。
  • 宮崎県高原町: 人気ゲーム「マインクラフト(教育版)」を活用し、子どもたちが町の仮想空間上で遊休地や公共施設の利活用案を提案するワークショップを開催。
  • 群馬県: 常設型拠点「Gunma eSports」を核に、学生・企業・住民が交流するIT人材育成プラットフォームを運営。
  • 新潟県三条市 / 福井県: 高齢者や障がい者を対象とした体験イベントを実施し、健康寿命延伸と共生社会づくりを展開。
  • 沖縄県石垣市: 観光×IT人材育成×eスポーツを複合し、中高生向けにプログラミングや動画編集講座を開講。
  • 大分県別府市: 温泉とeスポーツを掛け合わせた滞在型LANパーティを開催し、オフシーズンの誘客を実現。
  • 佐賀県: 「SAGA e-Sports Boot Camp Project」による高校生向け配信・実況技術育成、および産官学連携の「ALL-SAGA eスポーツコンソーシアム」を設立。

【海外の都市戦略事例】

  • 韓国(ソウル市・地方都市): ソウル市は「LoL Park」等の専用スタジアムを観光資源化し、デジタル教育やIT雇用創出に結びつける都市戦略を展開。釜山(BEXCO周辺アリーナ)、大田、光州などの地方都市も公設アリーナ整備やスタートアップ支援を実施。
  • 中国(浙江省杭州市): 「eスポーツタウン」として都市エリア全体を再開発。約6,000席規模の「2022杭州アジア大会eスポーツセンター」を中心に、プロチーム施設、専門学校、企業街を集約し、産業・教育・観光の一体化を達成。

2.4 企業活動・教育機関との連携

企業の参画メリットと効果

  • 社内コミュニケーションの促進: リモートワーク環境下においても、部署や世代を超えたチーム形成が可能。
  • 採用・ブランディング: 大会協賛や合同イベント開催を通じて、若い世代に対する企業認知度や親近感を向上。
  • 地域貢献とビジネス拡大: イベント制作、配信技術、機器販売、飲食・宿泊業など、地域企業との連携により経済循環を生み出す。

教育機関(星城大学等)における実践

  • 学びと現場実践の融合: 学生が地域イベントの運営、受付、進行、高齢者や子どもへのデジタル操作支援を担うことで、コミュニケーション力や企画力、社会人基礎力を育成。
  • DX人材教育の入口: ゲームプレイにとどまらず、動画編集、配信技術、イベントマネジメント、チーム運営など、デジタル社会で求められる多角的なスキル習得の手段として機能。

3. ゲーミフィケーションによる社会的課題解決と行動変容

3.1 ゲーミフィケーションの定義とメカニズム

ゲーミフィケーション(Gamification)とは、ゲームの要素やデザイン手法(ポイント付与、レベル設定、ランキング、ミッション、報酬など)を非ゲームの領域に応用する仕組みである。行動経済学や心理学の知見に基づき、「実行のハードルが高い課題」を「自発的にやりたい体験」へと変化させ、ユーザーが没頭するプロセスの中で自然と社会貢献や自己改善を達成させる。

3.2 分野別ゲーミフィケーション活用事例

① 都市問題・インフラ整備・学習

[課題: 道路の危険箇所把握のコスト / 都市問題への関心向上]
   │
   ├─► 【Oslo, Norway】「Traffic Agent」
   │     子どもたちが「スパイ」として通学路の危険箇所を捜査・報告 ──► 効率的なインフラ整備
   │
   └─► 【NYC, USA】「NYC Haunts」
         位置情報連動ARゲーム。ゴースト探偵として街を歩き、格差・環境・歴史課題を学習

② 子供の健康管理・途上国支援

  • スマート歯ブラシ(Benjamin Brush): 歯磨き中に音楽が流れる防水スピーカーを搭載。家族間で歯磨き時間や回数を競うゲーム機能により、子どもの歯磨きストレスを解消。
  • Kid Power Bands: 子どもが装着して運動しアプリのミッションをクリアするとポイントが貯まり、そのポイント数に応じて途上国の栄養失調児へ支援食料が届けられる仕組み。

③ ネットリテラシー・デジタル依存対策

  • Troll Factory(フィンランド国営放送): プレイヤーが「ネット荒らし」になりきり、フェイクニュース拡散や差別発言の手口を体験・理解することで、過激情報に惑わされないメディアリテラシーを育成。
  • Hold(ノルウェー): アプリを起動しスマホを放置した時間に応じてポイントが貯まり、コーヒー、映画チケット、奨学金などの「ごほうび」と交換できるスマホ依存克服アプリ。

④ 環境保護・モビリティ・気候変動

  • Trashbot(シカゴ): 遠隔操作ゴミ収集ロボットをオンラインゲーム化。世界中のゲーマーが遠隔でシカゴ川の清掃に参加。
  • DO Black(スウェーデン): 購入商品のCO2排出量を自動計算するクレジットカード。利用許容量を超えると決済が制限される仕組みにより、環境負荷意識を高める。
  • CitiCAP(フィンランド・ラフティ): 市民の移動手段によるCO2排出量を算出し、自転車や公共交通等のエコな手段を選択した市民にバス割引券やクーポンを給付。
  • The Climate Trail: NASAの予測データに基づき、気候変動が進んだ未来のアメリカで熱波や竜巻を回避しながら生き残るシミュレーションゲーム。

⑤ 社会啓発・ソーシャルポリティカル

  • Arranged(パキスタン): 望まない強制結婚(見合い婚)から逃れる手段をカードゲーム化し、伝統的慣習を気軽に見直し女性の意思決定権を啓発するボードゲーム。
  • Virtual Village: 360度VR動画でアフリカの村を歩き、現地の人々の暮らしや医療・教育課題に触れながら、ゲーム内で特定のチャリティへ直接寄付を行うシステム。
  • Play Seeds: ゲームアプリ内での課金の一部が、途上国で経済的自立を目指す人々への「マイクロローン(少額融資)」に充てられるプラットフォーム。

4. 官民共創(PPP)と「暮らし起点」の地域持続モデル

4.1 「地方創生2.0」への移行と官民連携(PPP)

従来の補助金依存型・行政単独型の取り組みは継続性に課題を残した。現代の「地方創生2.0」においては、**「官民連携(PPP)」と「デジタル活用」**を前提とし、一時的なイベント誘致ではなく、域内で経済と関係性が循環し続ける構造を作ることが求められる。

【従来の地方創生】             【地方創生 2.0】
・一過性のイベント/観光       ・日常の「暮らし」と「関係性」の構築
・単体行政主導 / 補助金依存    ・官民共創 (PPP) / 自走可能な収益モデル
・単一課題への個別対処         ・複数課題(雇用・医療・交通)の横断的解決

4.2 成功自治体にみる地域資源の再編集と複合的アプローチ

成果を上げている地域は、新しい設備を一から作るのではなく、既存の「地域資源」を再編集し、暮らしの基盤と結びつけている。

主要な実践パターンと事例

パターン具体的施策内容代表的自治体事例
ハード・遊休資産の再編集廃校、未利用地、古民家、歴史的建造物を官民連携で交流・商業・宿泊拠点へ再生。紫波町(オガールプロジェクト)、鋸南町(道の駅 保田小学校)、田原本町(マルト醤油再生)
小さな拠点づくり(生活機能維持)買い物、交通、福祉、配食、見守り機能を集落や商店街の拠点に集約し、生活基盤を守る。津山市阿波地区(あば商店)、山口市阿東地福(ほほえみの郷トイトイ)、南丹市美山町(たなせん)
教育・人材を核とした地域再生高校の魅力化やIT環境整備により、島外・地域外から若い世代を引き込み、担い手を育成。海士町(隠岐島前高校魅力化)、神山町(サテライトオフィス・高速通信環境整備)
地域通貨・資源循環システムエコ活動やリサイクルと地域通貨を結びつけ、住民参加と域内経済循環を同時に達成。香美市(地域電子マネー「kamica」)、真庭市(バイオマスエネルギー循環)

5. 「関わり創出」を成功に導く共通原則と実践的要件

eスポーツ、ゲーミフィケーション、官民連携による地域施策の分析から導き出された、施策の立案・実行における**「5つの共通原則」**は以下の通りである。

                     ┌─────────────────────────┐
                     │ 1. 明確な課題設定とKPI  │
                     └────────────┬────────────┘
                                  │
┌─────────────────────────┐       │       ┌─────────────────────────┐
│ 2. 地域資源の「再編集力」├───────┼───────┤ 3. 住民主体の共創姿勢   │
└─────────────────────────┘       │       └─────────────────────────┘
                                  │
                     ┌────────────┴────────────┐
                     │ 4. 脱・補助金(自走構造)│
                     └────────────┬────────────┘
                                  │
                     ┌────────────┴────────────┐
                     │ 5. スモールスタート     │
                     │    & 人材育成への接続   │
                     └─────────────────────────┘

1. 明確な課題設定とKPIの可視化

「単なるエンタメや娯楽」で終わらせず、「若者の流出防止」「健康寿命の延伸」「観光オフシーズンの集客」「空き店舗の解消」など、解くべき地域課題を明確化する。数値・状態で指標(KPI)を設定し、改善プロセスを回す。

2. 地域資源の「再編集力」

「資金がない」「場所がない」という制約に対し、今ある施設(公民館、古民家、商店街、歴史建造物、既存交通網)をデジタルやデザインの発想で再構成(アップデート)し、最小の投資で最大の体験価値を生み出す。

3. 住民主体の合意形成と共創姿勢(シビックプライドの醸成)

行政や外部事業者が「上から与える」構造を避け、企画段階から地域住民、地元高校生、高齢者、商店街などを巻き込む。住民自身がプレイヤーや運営者となることで、愛着(シビックプライド)と持続的な協力体制が形成される。

4. 脱・補助金依存の継続的収益構造

初期投資に補助金を活用する場合であっても、運用フェーズでは民間企業の事業性(スポンサーシップ、利用料、特産品販売、併設サービスの収益等)を組み込み、自走可能な資金繰りと運営体制を担保する。

5. スモールスタートと教育・人材育成への接続

大規模なインフラ整備から始めるのではなく、集会所での体験会や小規模イベント等の「スモールスタート」でノウハウと信頼を蓄積する。同時に、映像制作・イベント運営・プログラミングなどの学び(教育)と接続し、地域の未来を担う次世代の人材育成へと還元する。

6. 結論

地域社会における「関わり」の創出とは、単に外部からの一時的な観光客を呼び込むことではない。eスポーツやゲーミフィケーションといった新しい手法を媒介にしながら、**「若者が地元で挑戦できる場」「多世代が自然に支え合うコミュニティ」「暮らしを支える経済と生活の基盤」**を多面的かつ一体的に再構築していくプロセスそのものである。

都市部にはない地域独自の資源や歴史をデジタル技術および官民共創の力で「再編集」し、持続可能な自走モデルへと昇華させることが、これからの地方創生における最決定的要因となる。

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サマリー

地域活動への参加を妨げる「認知・動機・継続」の三つの壁を、ゲーミフィケーションで乗り越える方法を考える。CO2排出量で決済を制限するクレジットカードや、運動を途上国支援につなげるウェアラブル、通学路の危険箇所をスパイごっこで報告する事例を通じ、義務を挑戦や遊びに変える仕組みを紹介する。岐阜県水戸家町の「水戸クエスト」では、鉄道問題を街歩きや住民との交流に結びつけ、即時の黒字化ではなく地域コミットメントの基盤を作った。後半では、愛知県大府市の「espoいしがせ」などのeスポーツ事例を取り上げ、高齢者と若者の役割逆転、三世代交流、空き家や寺院の再編集について語る。イベントを持続的なシビックプライドへ育てるには、住民を消費者から生産者へ移し、地域ごとに施策を再設計し、交流件数や担い手定着率などのKPIと自走できる収益構造を設ける必要がある。

地域活動の三つの壁とゲーミフィケーション
スピーカー 1
もし私が,地方のお年寄りたちが,地域を活性化させた秘密は,退屈な町内会議に出席したからじゃなくて,
若者たちと一緒に対戦型のビデオゲームで白熱したからだって言ったら信じますか?
スピーカー 2
まあ,なんか冗談みたいに聞こえるかもしれないですけど,これ実際に起きている現実なんですよね。
しかも,現代社会が抱える結構頑固な問題を解決する大きな糸口にもなっていたりします。
スピーカー 1
なるほど。というわけで,今日の深堀へようこそ。今回もですね,すごく興味深い資料の束を色々と用意しました。
清浄大学のコラムとか,地域創生やゲーミフィケーションに関する複数の事例研究,あとは土木学会の論文なんかも入ってますね。
はい,かなり滝に渡る資料ですよね。
スピーカー 1
そうなんですよ。で,今日の私たちのミッションなんですけど,リスナーのあなたも一度は感じたことがあるであろう,
地域との関わり方っていうのを根本から考え直すことです。社会課題とか地域の活動に対して,なんかやらなきゃいけないっていう,
おもぐるしい義務感から,どうすれば自分から関わりたいっていう欲求にマインドシフトを起こせるのか,そこを解き明かしていきたいと思います。
スピーカー 2
そうですね。正直なところ,休日の庁内会の掃除とか防災訓練って聞くと,誰もが思わずため息をつきたくなるじゃないですか。
ああ,わかります。ちょっと面倒だなって思っちゃいますよね。
スピーカー 1
頭では重要だってわかっていても,いざ行動に移すとなると,とてつもない心理的摩擦,つまりブレーキがかかっちゃうんですよね。
スピーカー 2
まさにその通りですよね。資料の中でも私たちが地域活動に関われない理由っていうのを,三重の壁として明確に定義してるんですよ。
スピーカー 1
はい,ありましたね。
スピーカー 2
一つ目が,そもそも活動を知らないっていう認知の壁,二つ目が,知っていても面倒くさいと感じてしまう動機の壁,そして三つ目が,一度参加しても効果が実感できずにやめてしまう継続の壁ですね。
ゲームで社会課題への行動を促す仕組み
スピーカー 1
中でも厄介なのが,この最後の継続の壁なんですよ。人間の心理って,即時的なフィードバックをすごく強く求める傾向があって,
スピーカー 2
ああ,すぐに結果が見たいみたいな?
スピーカー 1
そうです。例えば地域の防災訓練に参加しても,よし,今日災害を一つ防げたぞっていう実感って,すぐには得られないじゃないですか?
スピーカー 2
確かに,まあ何も起きないことが成果ですからね。
スピーカー 1
そうなんですよ。報酬が抽象的すぎて,しかも未来の話すぎるので,モチベーションがどうしても維持できないんです。
スピーカー 2
そこで資料が提示している突破口が,ゲーミフィケーションなんですよね。ゲームの要素をゲーム以外の領域に応用するっていう手法ですけど。
スピーカー 1
そうです。でもこれ単なる事例の紹介じゃなくて,それがなぜ機能するのか,そのメカニズムをちょっと掘り下げたいなと.
例えばあのスウェーデンのDoBlackっていうクレジットカード,あれは本当に衝撃的でしたね。
スピーカー 2
あれは行動経済学の応用として本当に完璧な事例ですね。
あのクレジットカードは買い物がもたらすCO2排出量を自動で計算してくれるんですけど,
スピーカー 1
へえ,自動で?
スピーカー 2
ええ.で,単にグラフで表示するだけじゃなくて,1ヶ月のCO2排出量の上限に達すると,なんとカード自体が物理的にロックされて,一切の決済ができなくなるんです。
スピーカー 1
いや,それめちゃくちゃ怖くないですか?
怖いですよね.買い物ができなくなるカードなんて,普通なら誰も持ちたがらないじゃないですか.何でわざわざそんな厳しい制限を自分に課すんでしょうか?
スピーカー 1
ここがゲーミフィケーションの魔法なんですよ。罰則のフレーミング,つまり枠組みを変えてるんです。
スピーカー 2
枠組みを変える?
はい.もし政府から,あなたはCO2を出しすぎたから税金を徴収しますって言われたら,それは外部からのただの弾圧に感じられますよね。
スピーカー 2
うーん,絶対反発しますね。
でも,自分で上限を決めて,それに達したらカードが止まるっていうのは,まるでゲームのゲームオーバー画面みたいなものなんです。
スピーカー 2
ああ,なるほど。
スピーカー 1
ルールに同意した上で,よし,今月は制限内に収めてみせるぞっていう,自分自身との戦いというか,内発的なチャレンジに変換されているわけなんですよ。
スピーカー 2
ああ,なるほど。つまりそれって,あのメリーポピンズの一さじのお砂糖みたいなアプローチですよね。
あ,いい例えですね。
スピーカー 2
CO2削減っていうちょっと苦い薬を飲み込ませるために,ゲーム性っていうお砂糖をまぶしていると。
しかも,そのお砂糖は必ずしも甘いご褒美である必要はなくて,挑戦っていう形でも機能するわけだ。
スピーカー 2
ええ,まさに。もちろんポジティブなフィードバックの例もあって,例えば,キットパワーバンズっていうウェアラブルバンドの事例だと,自分が走ったり運動したりしてポイントがたまると,それが途上国の子供たちへの
本物の食糧支援に変換される仕組みなんです。
ああ,それなら,継続の壁も突破できそうですね。
スピーカー 2
そうなんですよ。
スピーカー 1
10年後の地球環境のためじゃなくて,今日の自分のジョギングで手元の画面のゲージがぐんぐん満タンになるのがすぐに見える。即時的なフィードバックがあるから続くんだ。
スピーカー 2
はい。ノルウェーのオスロで,子供たちをスパイに見立てて通学路の危険なスポットを報告させるアプリの事例もこれと全く同じ心理メカニズムですね。
スピーカー 1
ああ,子供たちはただスパイごっこだと思って遊んでるだけなのに,結果として行政側に貴重なインフラの点検データが集まっていくみたいな。
スピーカー 2
そうなんです。義務を遊びに変換することで,人々は気づかないうちに社会的な役割をしっかり果たしているということですね。
なるほどなあ.
水戸クエストと地域コミットメント
スピーカー 1
いや,ヨーロッパのハイテクな事例とかアプリの仕組みはすごくよくわかりました。
でもこれ,日本のリアルな地方都市に持ち込んだらどうなるんでしょう?
スピーカー 2
と言いますと?
スピーカー 1
いや,潤沢な予算があるようなIT都市じゃなくて,人口減少に悩むような地方の課題ですよね。
ここでちょっと注目したいのが,岐阜県水戸家町の水戸クエストの事例なんです。
ああ,明鉄広見線という利用者の減少で存続の危機に立たされていたローカル線の事例ですね。
通常こういう赤字路線の問題が起きると,行政は皆さん電車に乗りましょうっていう啓発ポスターをベタベタ貼るか,あるいは住民側が猛烈な敗戦反対運動を起こすか,大体どっちかになりがちなんですよ。
スピーカー 2
でもそれだと絶対不満がたまりますよね。
普段車に乗っている人は,なんで自分たちの税金で?って反発するし,逆にお年寄りとか学生は見捨てられるって危機感を持つ,意見が真っ二つに割れちゃうじゃないですか。
スピーカー 1
ええ,そうなりがちです。
そこで彼らは会議室で怒鳴り合って議論する代わりに,街全体を舞台にしたリアルRPG,水戸クエストっていうのを開催したんですよね。
スピーカー 2
はい,子供たちが実際に電車に乗って歴史ある宿場町を歩き回りながらクエストをクリアしていくイベントですね。
スピーカー 1
しかも単にデジタルでピピーとスタンプを集めるだけじゃなくて,地元住民の方の家の軒先を借りて,住民の方とゴム鉄砲で勝負をするようなかなり泥臭いクエストも用意されていたんです。
スピーカー 2
80歳のおじいちゃんと小学生が軒先でゴム鉄砲で本気の勝負をしている景色って,なんか最高ですよね。
スピーカー 1
本当にいい光景ですよね。
スピーカー 2
でも,あえてちょっと意地悪な見方をさせてもらいますけど,
スピーカー 1
はい,どうぞ。
スピーカー 2
休日に子供たちがゴム鉄砲で遊んで,その日だけ電車が満員になったとしてもローカル船の構造的な大分かじって全く解決してないじゃないですか。
スピーカー 1
結局なんか楽しいイベントやりましたねっていう,一時的な伴奏効に過ぎないんじゃないですか?
スピーカー 2
いや,非常に鋭い指摘だと思います。
そしてそれこそが,この取り組みが直面した最大の摩擦でもあるんですよね。
スピーカー 1
やっぱりそうなんですか?
スピーカー 2
おっしゃる通り,RPGを一回やったからといって鉄道の何千万っていう年間赤字が魔法のようにパッと消えるわけじゃありません。
スピーカー 1
ですよね。
スピーカー 2
しかし,三丈クエストの真の目的って,即座に黒字化することではなくて,社会学で言う地域コミットメントの基盤を作ることだったんです。
スピーカー 1
基盤作りですか?
スピーカー 2
赤字路線に税金を投入するかどうかっていうすごく痛みを伴う議論をする前に,コミュニティにはどうしても共有された成功体験が必要なんですよ。
このイベントを通じて,普段は鉄道に全然関心がなかった大人たちも子どもたちをもてなす側に言い回りましたよね。
自分の街が子どもたちの笑顔であふれて,誰かに頼りにされる喜びっていうのを体験したんです。
スピーカー 1
ああ,なるほど。いきなり体育館に集められて,税金か配線かってどなり合うんじゃなくて,まずは,あれ,この街ってまだまだ捨てたもんじゃないなっていうポジティブな感情をみんなで共有するわけだ。
その通りです。
スピーカー 1
それが後々やってくる未来の厳しい議論を協力して乗り越えるための土台になるってことですね。
スピーカー 2
理屈とかデータだけで人はなかなか説得できません。
スピーカー 1
感情とか体験を通じた関わりの実績っていうのが人々の望遠本能を解除して,やっと建設的な議論を可能にするんですよ。
eスポーツが生む高齢者と若者の交流
スピーカー 2
なるほどなあ,物理的な移動とか交流がどれほど強力な職場になるかすごくよくわかりました。
はい。
スピーカー 2
でも,ここでまた別の壁にぶつかる気がして,そもそも街を何キロも歩き回ったりゴム鉄砲を撃ったりする体力がない人はどうすればいいんでしょうか?
スピーカー 1
特に日本の地方は高齢化がどんどん進んでいますからね。
スピーカー 2
そうなんですよ。
そこで資料が示しているもう一つの革新的なツールがeスポーツなんですよね。
スピーカー 1
はい。地域創生において身体的な障壁とか年齢の壁を無効化するこのeスポーツのポテンシャルって本当に計り知れなくて,
従来のスポーツ大会とか地域の草刈りみたいな活動ってどうしても参加できる人の体力は限定しちゃいますからね。
スピーカー 2
ですね。私愛知県大富士のエスポ石ヶ瀬っていう事例を読んだときeスポーツへの見方が完全にひっくり返りましたよ。
スピーカー 1
あの事例ですね。
スピーカー 2
はい。地元の公民館を改装して拠点を立ち上げたらなんと高齢者だけのeスポーツチームが誕生して全国健康福祉祭いわゆる年輪ピックに出場してしまったっていう。
スピーカー 1
すごいですよね。でもこの事例で注目すべきメカニズムって単にお年寄りがゲームを楽しんでるっていう表面的な事実だけじゃないんですよ。
スピーカー 2
え?他にもあるんですか?
スピーカー 1
お年寄りが最新のゲーム機とかコントローラーを操作しようとしたとき誰がその使い方を教えることになったと思いますか?もしかして地元の若者とか子供たちですか?
スピーカー 2
その通りです。ここに極めて自然な役割の逆転が発生しているんです。
スピーカー 1
役割の逆転?
スピーカー 2
はい。通常地域社会では高齢者が教える側で若者が教えられる側になりがちですよね。でもeスポーツというデジタルの土俵では若者がメンターつまり指導者になって高齢者が生徒になるんです。
スピーカー 1
なるほど。北海道九州路市の事例でも祖父母親孫の3世代が同じチームを組む大会が開催されてましたね。
世代間の断絶を一瞬でつないでしまったわけだ。つまりこれリスナーの皆さん、eスポーツって現代における新しい近所の公園のベンチみたいなものなんですよね。
スピーカー 2
素晴らしい表現ですね。
スピーカー 1
オンラインっていう全く対等な空間で高校生とおばあちゃんが本気で遊んでコミュニケーションを取る。でもちょっと気になったんですけど、伝統的な公民館にビデオゲームを持ち込むなんて最初はやっぱり相当な反発が
あったんじゃないですか?
スピーカー 2
もちろんです。なんで税金を使ってゲームなんかで遊ばせるんだとか目に悪いみたいな批判は必ず起きます。新しい取り組みには摩擦がつきものですから。
やっぱりそうですよね。
スピーカー 2
しかしお年寄りがゲームを通じて生き甲斐を見つけて孤立から抜け出したり、若者たちが地域で自分にも教えられることがあるんだって自己肯定感を得たりする。そういう様子を目の当たりにすることで徐々にその反発は消
えていったんです。
空き家・寺院を活用する地域資源の再編集
スピーカー 1
しかもなんか巨大でピカピカなeスポーツアリーナを新しく建てる必要すらないんですよね。
スピーカー 2
ええ、全く必要ありません。富山県舐川市ではごく普通の空き家をeスポーツの拠点に改装してましたし、愛知県の豊川稲荷では夜のお寺にプロジェクションマッピングを組み合わせてeスポーツ大会を開いてましたよね。
これがまさに資料で言及されている再編集の力です。
スピーカー 2
再編集。
莫大な予算をかけて新しい箱物を作るんじゃなくて、すでにそこにある空き家とか歴史的な寺院にデジタルな公共空間っていう新しい意味を上書きして再定義しているんです。
シビックプライドと持続可能な地域運営
スピーカー 1
スパイごっこにゴム鉄砲、そしてお寺でeスポーツ。人を集めるための素晴らしいフックが出そろいましたね。
スピーカー 2
そうですね。
スピーカー 1
でもここからが一番難しいところだと思うんです。これをただの楽しかったねっていう週末のイベントで終わらせずに、持続可能な地域の力、いわゆるシビックプライドへとどうやって育てていくんでしょうか。
スピーカー 2
いい質問です。シビックプライドっていうのは単なるこの街が好きっていう共同愛ではなくて、この街をより良くするために自ら関わりたいっていう当事者意識のことなんです。
当事者意識、なるほど。
スピーカー 2
これを定着させるにはイベントの消費者から生産者へと住民の役割をシフトさせる必要があるんですね。
スピーカー 1
例えば埼玉県戸田市のレゴブロックを使ったワークショップみたいなことですか。
スピーカー 2
まさにそれです。
スピーカー 1
新しく引っ越してきた住民と昔からの住民が一緒にレゴを使って戸田市の理想の未来の形を組み立てるっていう。
あと熊谷市では観光協会が業者に丸投げするんじゃなくて、住民自身が記者になって地元を取材して全顧配付のガイドブックを作り上げたってありましたね。
スピーカー 2
つまりプロセスそのものがプロダクト、成果物になっているんです。
プロセスが成果物。
自分たちで手を動かして未来の形を作ったり、記事を書いたりする過程そのもので、自分と地域とのつながりが強固になっていくんです。
なるほどな。
スピーカー 2
ただ、宝霊弁の競争プロジェクトに関する研究では非常に厳しい現実も突きつけられているんですよ。
スピーカー 1
え、なんですか?
それはどこかの有名な成功例をそのままコピペしてはいけないということです。
スピーカー 1
え、ダメなんですか?
戸田市のレゴが成功したなら、私の町でもとりあえずレゴを買ってきてやればいいんじゃないんですか?
スピーカー 2
それが失敗の典型的なパターンなんです。
スピーカー 1
あ、そうなんだ。
スピーカー 2
地域のDNA、つまり抱えている課題の性質とか利用できる資源って、町によって全く異なりますからね。
スピーカー 1
確かに。
スピーカー 2
だから宝霊弁の報告書は、成功のためにはその地域の生活者基点での再設計が必須だと強調しています。
それに加えて課題設定とKPIの明確化、そして補助金に頼らない継続できる収益構造が不可欠だと言っているんです。
スピーカー 1
ちょっと待ってください。ここでいきなりKPIっていう、いわゆる従業業績評価指標みたいなビジネス用語が出てくると、なんかすごい違和感があるんですけど。
スピーカー 2
急に現実的になりましたよね。
スピーカー 1
さっきまでゴム鉄砲とかおばあちゃんのeスポーツの話をしてたのに、地域コミュニティにおけるKPIって具体的に何を測るんですか?
1時間あたりの笑顔の数とかですか?
スピーカー 2
いや、すごくいい質問だと思います。
企業におけるKPIって通常、利益とか売り上げですよね。でもコミュニティにおけるKPIは異なります。
例えば、月間の異世代交流の発生件数とか、ボランティアスタッフの定着率、あるいは特定の商店街における空き店舗の減少数なんかがKPIになりうるんです。
なるほど。しっかり数値化できるものですね。
そうです。ただ、みんなで楽しくやろうよっていうふわっとした目標しか持たないプロジェクトって、最初の熱狂が冷めたり、行政からの補助金が打ち切られた瞬間に必ず消滅してしまうんですよ。
スピーカー 1
うわー、すごく腑に落ちました。楽しい魔法の空間を守るためだからこそ、KPIっていう冷徹な骨組みが裏側に必要なんですね。
ええ。
自分たちの足元にある一見何の変哲もない資源をしっかり見つめ直して、それをどう再編集できるか、そのプロセス自体をデザインしていくことが重要なんだと。
スピーカー 2
はい。知見とかデータっていうのは、実社会に応用されて初めて価値を持ちますからね。
日常に応用する小さなゲーミフィケーション
スピーカー 1
義務感や正論で人を縛りつけるんじゃなくて、行動経済学やゲームの仕組みを使って、人が自然と関わりたくなる環境をデザインする。それがこれからの社会インフラになっていくはずです。
なるほど。さて、リスナーのあなたはこの深掘りを聞いてどう感じましたか?
スピーカー 2
関わりを創出するためのヒントは、地域社会の課題だけじゃなくて、きっとあなたの明日からの日常にも応用できるはずです。
スピーカー 1
そうですね。仕事や家庭でも使える考え方だと思います。
スピーカー 2
ちょっとあなたの職場を思い浮かべてみてください。チームに業務報告書を出させるために、あるいは子どもに部屋の片付けをさせるために、ルールとか義務の無知ばかりを振りかざして、なんだかうまくいってないなって
ことはありませんか?
耳が痛い人も多いかもしれませんね。
スピーカー 2
もしそのメールや声かけに、今日学んだメリーポピンズのお砂糖、つまり小さなゲイミフィケーションやルールの再編集の魔法をひとつまみ加えたらどうなるでしょう?
スピーカー 1
きっと相手の反応は劇的に変わるかもしれませんよ。
スピーカー 2
そうですね。あなたなら身近な人たちのためにどんなクエストをデザインしますか?
次回の深掘りまでにぜひ少しだけ考えてみてください。
それではまたお会いしましょう。
17:29

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