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スピーカー 2
いやー、もしですね、ある一つの原因で、日本経済が毎年およそ15兆円、ドルにして138億ドルもの損失を出しているとしたら、あなたはどう思いますか?
スピーカー 1
15兆円ってとんでもない額ですよね。まあ、日本の国家予算の1割を軽く超える規模ですから。
スピーカー 2
そうなんですよ。巨大なインフラの崩壊とか、深刻な資源不足なんかを想像するかもしれないんですけど、
実はこれ、睡眠不足がもたらしている経済損失の推計データなんですよね。
スピーカー 1
私たちは毎晩、本当に無意識のうちに、この莫大な損失を生み出し続けているということになりますね。
スピーカー 2
今回のこの深掘りでは、日本社会が長年抱え続けてきた、この巨大な睡眠不細の真実に徹底的に迫っていきたいと思います。
スピーカー 1
はい、よろしくお願いします。単なる健康話ではなくて、経済やテクノロジーの視点からも解き明かしていきましょう。
スピーカー 2
ええ。まずは現状なんですが、OACDのデータを見ると、日本人の平均睡眠時間って7時間22分で、なんと世界最低レベルなんですよね。
世界平均より1時間以上も短いんです。
スピーカー 1
1時間以上の差はかなり深刻な数字ですよね。
スピーカー 2
これって例えるなら、車のメンテナンスをするときに、ガソリンという名の栄養を満タンにして、定期的なオイル交換、つまり運動にはすごく気を配るのに、
オーバーヒートしそうなエンジンを冷やす、休養のプロセスだけを完全に忘れたまま、高速道路を猛スピードで走り続けているような状態じゃないですか?
スピーカー 1
それはすごくわかりやすい例えですね。エンジンが焼き切れるのはもう時間の問題ですよ。
ここで非常に重要なポイントになるのが、なぜ日本社会がこれまで休養、つまり睡眠をそこまで軽視してきたのかっていう、歴史的背景なんです。
スピーカー 2
歴史的背景ですか?
スピーカー 1
睡眠研究者の上田泰志の指摘が非常に興味深いんですが、戦後の日本では1952年の栄養改善法に始まって、2000年代にはメタボ改作の特定検診とか、とにかく栄養と運動に関する政策ばかりが先行してきたんですよね。
スピーカー 2
確かにそう言われてみれば、国も企業もバランスの良い食事をとか、1日1万歩歩こうみたいなスローガンはずっと声高に叫んできましたよね。
スピーカー 1
そうそうそう。でも睡眠に関しては、個人の怠慢とか気合の問題として片付けられてきた印象が強くないですか?
スピーカー 2
えー、寝てないアピールがかっこいいみたいな風潮すらありましたもんね。なぜ、栄養や運動みたいに国レベルで管理しようっていう発想にならなかったんでしょうか?
最大の理由はですね、客観的な測定が難しかったっていう技術的な壁なんです。
スピーカー 2
あーなるほど。食事や運動なら意識があるから記録できるけど。
まさにそれです。食事や運動は私たちが意識のある状態で行う活動なので、カロリー計算とか歩数として簡単に記録できますよね。でも睡眠は意識がない状態での活動ですから。
スピーカー 2
確かに寝ている間のことなんて自分じゃわからないですもんね。
スピーカー 1
えー。体重計に乗ったり血圧を測ったりするように、家庭で正確な睡眠データを取得する技術がこれまでは存在しなかったんですよ。
スピーカー 2
見えないから管理のしようがなかったってことですね。でも見えないからといって放置できる段階はもうとうに過ぎてますよね。
スピーカー 1
おっしゃる通りです。
スピーカー 2
実際、出社はしていても睡眠不足で頭が働いていない、いわゆるプレゼンティーズムによる損失だけで年間約3.5兆円に上るっていうデータもありますし、
上田氏は睡眠を憲法第25条の生存権に基づく基本的人権の一つとして捉えるべきだと主張していますが、私も全く同感です。
私も全面的に同意します。ただここで私たちが陥りがちな罠が一つあるんですよ。
罠ですか?何でしょう?
スピーカー 1
じゃあ、睡眠不採を返すためにとにかく長く寝ればいいんだっていう単純な足し算の思考ですね。
あー、やっちゃいがちですね。休日に10時間くらい寝ためしてスッキリしようとする、あれですよね。
スピーカー 1
ええ、まさにそれです。でも厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023のデータを見ると、その8時間異常主義みたいな考え方はむしろ危険なんじゃないかと思えてくるんです。
スピーカー 2
危険ってどういうことですか?
スピーカー 1
睡眠時間と死亡リスクの関係がですね、見事なU字曲線を描いているんですよ。
スピーカー 2
U字曲線ってことは、短すぎても長すぎてもダメってことですか?
6時間未満の短時間睡眠が神経管疾患などのリスクを高めるのはイメージしやすいんですけど。
スピーカー 1
ええ、実は9時間から10時間以上の長すぎる睡眠も同様に全死亡リスクを高めることが疫学的に示されているんです。
スピーカー 2
長すぎるのもダメなんですか?つまり寝不足と同じくらい寝すぎも致死的なリスクになり得るということですよね。
スピーカー 1
そうなんです。特に高齢者のガイドラインの項目を見ると、8時間以上の過剰な化粧時間を抑制すると書かれているくらいですから。
スピーカー 2
これ長年、健康のために8時間は寝なきゃって信じてきた人にとっては、なんかかなりパラダイムシフトですよね。
でも眠くもないのに無理してベッドにいること自体が、実は睡眠の質を破壊しているっていうことなんでしょうか?
スピーカー 1
実はそのメカニズムこそが問題なんですよ。ここでカギとなるのが睡眠効率という指標です。
睡眠効率。
スピーカー 1
はい。ベッドにいる相次がんに対して、実際に脳波が睡眠状態にある時間の割合を示すもので、85%以上が合格ラインとされています。
スピーカー 2
なるほど。例えばベッドに8時間いて、実際に眠っている時間が7時間弱であれば、大体85%ですよね。
スピーカー 1
その計算であっています。
スピーカー 2
でも恒例になって生理的に6時間しか眠れないのに、無理して8時間ベッドにいると、睡眠効率は75%まで落ちてしまうと。
その通りです。で、睡眠効率が落ちると何が起きるかというと、夜中に何度も目が覚める中途覚醒が増えて、浅いレム睡眠や軽いノンレム睡眠ばかりになってしまうんです。
スピーカー 2
熟睡できないわけですね。
スピーカー 1
ええ、すると脳の老廃物を洗い流す役割を持つ深いノンレム睡眠、いわゆる除波睡眠に到達しづらくなります。
さらに厄介なのは、暗い部屋で眠れずにモンモンとする時間が長くなると、脳がベッドを休息の場所ではなくて、苦痛と緊張を味わう場所として語覚収してしまうんですよ。
うわあ、条件反射みたいになっちゃうんですね。ベッドイコールストレスみたいな。
スピーカー 1
ええ、本当にそうなんです。
スピーカー 2
だとすれば、眠れないならいっそ起きてしまった方が睡眠効率を上げるには利にかなっているわけですね。
スピーカー 2
さて、ここまでは個人がどうやって睡眠の質をハックするかという話でしたが、私がこのソース資料を読んでいて一番ワクワクしたのは、個人の意思に任せる段階から社会や企業がシステムとして眠りを取り込み始めている点なんです。
スピーカー 1
ああ、そこは非常に面白い動きですよね。
スピーカー 2
いくら家で睡眠効率を上げても、人間のサーカディアンリズム、つまり体内時計を考えると、どうしても午後2時とか3時ごろって猛烈な眠気に襲われますからね。個人の努力だけでは限界があるじゃないですか。
スピーカー 1
ええ。まさに働き方改革から休み方改革への移行ですね。従業員の睡眠を個人の自己責任ではなくて、人的資本への投資、つまり経営課題として捉えるパラダイムシフトが起きているんです。
スピーカー 2
ええ。例えば富山県の老歩芸化メーカー、日の出や製菓産業が導入した勤務間インターバル制度なんかは象徴的ですよね。
はい。あれは素晴らしい取り組みです。
スピーカー 2
大社から翌日の出社まで最低9時間は必ず空けるというルールで、これ会社側が強制的に休む環境をインフラとして提供しているのが素晴らしいですよね。
スピーカー 1
本当にそうですね。そして日中のパフォーマンス低下を防ぐために企業が戦略的に導入し始めているのがパワーナップ、つまり積極的加眠です。
スピーカー 2
出ました、パワーナップ。ここからが本当に面白いところなんですよね。
スピーカー 1
ええ。NASAの実験データが非常に有名なんですが、宇宙飛行士が26分間の加眠を取るだけで認知能力が34%、注意力が54%も向上したという結果が出ています。
スピーカー 2
26分でそこまで上がるんですね。でもこれデスクで適当にツップして1時間くらい爆睡すればいいっていうものじゃないんですよね。
スピーカー 1
そうなんですよ。科学的に計算された黄金ルールが存在します。
最大のポイントは時間の長さですよね。15分から長くても30分以内。なぜかというと、人間は眠りについてからおよそ30分経過すると、先ほどお話に出た深いノンレム睡眠に入ってしまうから。
スピーカー 1
その通りです。深い眠りに入った状態で無理やりアラームで起こされると、脳がまだ休止状態を維持しようとする睡眠難性が働いて、かえって強烈なだるさを引き起こしてしまうんです。
スピーカー 2
余計に眠くなっちゃうやつですね。
スピーカー 1
ええ。だから浅い睡眠のステージにいるうちに、さっと起きる必要があるわけです。
スピーカー 2
そのためには、寝る姿勢も重要で、完全に横たわるんじゃなくて、ソファーや椅子で座った姿勢のまま寝るんですよね。
はい。心臓から頭へ血液を送るのに一定の血圧を維持させることで、脳に今は完全に休む時間ではないと錯覚させて、深すぎる眠りへの移行を防ぐんです。
なるほど。あと、ソースの中にあったコーヒーナップ、寝る直前にカフェインを摂るというテクニックも面白いメカニズムですよね。普通、寝る前にカフェインなんてご放題だと思いがちですが。
ええ。一見矛盾しているように見えますが、そこにはカフェインの薬理作用が関係しているんです。
スピーカー 2
と言いますと。
スピーカー 1
カフェインが胃から吸収されて、脳に到達して、眠気をもたらす物質であるアデノシンの需要帯をブロックし始めるまでに、およそ20分から30分のタイムラグがあるんですよ。
つまり、コーヒーを飲んですぐに目を閉じれば、ちょうど15分から20分後にカフェインが脳内で効き始めて、血流の中に次元爆弾式のアラーム時計をセットしておくようなもので、自然とすっきり目覚めさせてくれる。完璧なハックじゃないですか。
スピーカー 1
そうなんです。このメカニズムを理解した上で、企業は環境整備に乗り出しています。三菱自所がリクライニングチェアを備えた専用仮眠ブースを設置したり、福岡の高校で昼休みに15分の昼寝を導入して、大学入試の成績を上げたりと、実例は着実に増えていますよね。
北海道の企業が開発したジラフナップというプロダクトには驚きましたよ。公衆電話ボックスのような縦長の空間で、頭、お尻、すね、足裏の4点を支えることで、立ったまま理想的な仮眠姿勢を作り出すっていう。
スピーカー 1
あれはユニークですよね。
スピーカー 2
これなら省スペースだし、先ほどの深く眠りすぎないための姿勢も理にかなっている。空間デザインの観点からも、コモタイズのエナジーポッドのようなシェアオフィス向けプロダクトも出てきていて、市場はかなり活況ですよね。
スピーカー 1
ただここで企業が直面する課題が一つあります。
スピーカー 2
何でしょうか。
スピーカー 1
パワーナップの導入は素晴らしいんですが、個人の夜間の睡眠の質がどうなっているのか、その根本的な状態を把握しなければ結局のところ、根本的な生産性の向上にはつながらないんですよ。
スピーカー 2
ああ、そこなんですよね。最初の方で、睡眠は意識がないから客観的な測定が難しく、長年放置されてきたという歴史的背景がありましたけど、そのブラックボックスはどうやって解決されているんですか。
スピーカー 1
そこで爆発的に進化しているのがスリープテックなんです。日本国内の市場規模は、2027年には約175億円へと約3倍に急成長すると予測されています。
175億円ですか。
スピーカー 1
ええ、このテクノロジーの進化がかつての見えないという壁を完全に打ち破りました。
スピーカー 2
デバイスの進化が本当に凄ましいですよね。私が注目したのは、ソクサイのスマートリングです。わずか3gの指輪をつけて寝るだけで、睡眠の深さまで測れてしまう。
昔みたいに、頭にペタペタと電極を貼らなくてもいいわけじゃないですか。でもこれ、指輪だけでどうやってノウハウの状態、つまり睡眠のステージを推測しているんですか。
スピーカー 1
これは非常に良いポイントですね。スマートリングや最新のウェアラブルデバイスは、主に心拍変動、いわゆるHRVという微細なデータから自律神経のバランスを解析しているんです。
スピーカー 2
心拍の変動からですか。
スピーカー 1
ええ、睡眠中私たちは、肛関神経と副肛関神経の優位性がリズマリカルに入れ替わります。深いノンレム睡眠時は、副肛関神経が極端に優位になって心拍が安定するんです。
スピーカー 2
なるほど、じゃあ逆にレム睡眠の時はどうなるんですか。
レム睡眠時は脳が活発に動いているため、自律神経の揺らぎが大きくなるんです。
スピーカー 2
なるほど、心臓の僅かなリズムの揺れから、自律神経の働きを読み取って、間接的に脳の状態を通しているようなものなんですね。
さらに睡眠という企業のデバイスは、より直接的にノウハウを測定して、医療レベルに近い精度を出していると。
ええ、精度はどんどん上がっています。
スピーカー 2
センシング技術は大人だけじゃなくて、ユニファが提供しているような保育園児向けのうつ伏せで検知センサーなんかにも応用されていますよね。
怠惰をモニタリングして重大な事故を防ぐなど、インフラとしての見守り機能も果たしている。
スピーカー 1
はい、そしてテクノロジーの進化は、単なる可視化のフェーズから、いかに人間の行動を変容させるかという次のステージに入っているんですよ。
スピーカー 2
行動変容ですか。
ええ。
スピーカー 2
OKのWellbit Sleepというサービスがまさにそれですよね。これ専用のウェアラブルデバイスすら使わないアプローチで驚きましたよ。
スピーカー 1
そうなんですよ。
スピーカー 2
行動変容理論、つまり心理学に基づいたアルゴリズムを使って、従業員一人一人の特性に合わせて最適なタイミングでパーソナライズされたメッセージをスマホに送る。
例えば今日は少し早めにリラックスしましょうといった絶妙なナッチを行うことで、従業員の生産性指標であるWL級スコアが明確に改善している。
スピーカー 1
ええ。ただ数字を見せるだけじゃなくて、人間の無意識の行動をどうデザインするかに踏み込んでいるわけです。
しかしですね、これは重要な問題を提起しているともいえます。市場の急成長に伴うリスクについても触れておかなければなりません。
スピーカー 2
リスクですか。
スピーカー 1
市場が盛り上がれば盛り上がるほど、科学的根拠に乏しい、いわゆるフェイク科学の製品やサービスが蔓延する危険性があるんです。
スピーカー 2
ああ、なるほど。この音楽を聴くだけで絶対眠れるとか、謎の電磁波で睡眠を深くするマットレスみたいなものですね。企業が健康経営のために導入しようとしても、魂混合すぎて担当者が選べないという問題は絶対起きますよね。
スピーカー 1
ええ。その混沌とした市場に秩序をもたらすため、睡眠ヘルスケア協議会、通称SHAによるスリープサポート認証制度がスタートした意義は非常に大きいといえます。
スピーカー 2
認証制度ができたんですね。
スピーカー 1
はい。これはアカデミアを中心とした睡眠の専門家たちが、製品やサービスのエビデンス、つまり科学的な裏付けを客観的に厳格に審査して認証を与える仕組みなんです。
スピーカー 2
食品のカロリー表示や医薬部外品の認定みたいなものがついに睡眠の分野にもできたわけだ。これでようやく睡眠が栄養や運動と完全に同じレベルで正確に管理、評価される土俵に乗ったといえますね。
スピーカー 1
はい。半世紀以上遅れをとっていた給養の概念が最新の科学とテクノロジー、そして社会の仕組みの変化によってようやく本来あるべき場所に戻りつつあるんです。
スピーカー 2
いやー、今回ひも解いてきた日本の巨大な睡眠不細と最前線の取り組みいかがだったでしょうか。睡眠は決して個人の怠慢でも削っていい余暇でもありません。年間15兆円もの経済を左右し、プレゼンティーズムを引き起こす国家規模の重要課題なんですよね。
スピーカー 1
ええ、本当にその通りです。
スピーカー 2
でも同時に私たちが今日から実践できることもたくさんあります。今夜あなたがベッドに入るとき8時間という呪縛を捨ててご自身の睡眠効率を少しだけ意識してみてください。あるいは明日午後のデスクで睡魔と無駄に戦う代わりに思い切ってコーヒーを一杯飲んでから20分のパワーナップをとってみてはいかがでしょうか。
スピーカー 1
最後に今回のソース資料が示唆する少し踏み込んだ試行実験をあなたに提案したいと思います。もし睡眠が憲法で保障された基本的人権であり国家や企業の経済を左右する最も重要な指標として完全に確立されたとしたらどうなるでしょうか。
スピーカー 2
どうなるでしょう。
スピーカー 1
近い将来従業員に十分な睡眠を取らせないあるいは慢性的な睡眠不足に陥らせるような労働環境は工場で有毒ガスを吸わせるのと同じ労働安全衛生法違反として厳しく裁かれるそんな時代が来るのかもしれません。
今、企業があなたの毎日の睡眠データを監視し昨晩は睡眠効率が悪いから今日は出社禁止と命じられる世界、睡眠が完全に保護され管理されるその社会をあなたは究極の健康ユートピアと呼びますか。それとも少し窮屈な監視社会だと感じますか。
スピーカー 2
健康のためとはいえ自分の眠りまで会社に管理されるというのはなかなかスリリングな問いですね。自分のエンジンをいつどうやって冷やすのか。それは他でもない私たち自身がコントロールすべき最も重要なスキルなのかもしれません。
次回もまた私たちの常識を揺さぶる深い探究の世界でお会いしましょう。