お吸い物・バーチャルリアリティ・位相幾何学【第126号音声版】 #128

オスカーワイルドの名言

人に仮面を渡してごらんなさいそうすればその人の本当の顔が見られることだろう

いちですおはようございます

このポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター

スティームニュースの音声版ですスティームニュースでは科学技術工学アート数学に関する話題をお届けしています

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冒頭でご紹介したのは作家オスカーワイルドのスティームな言葉

現代風に言い直すと人は匿名 sns で本性を表すということですね

スティームニュースの音声版です

19世紀から20世紀にかけて生きたフランスの数学者、ジュール・アンリ・ポアン彼は、

ポアンカレと位相幾何学

数学者とは不正確な図を見ながら正確な推論のできる人間のことであると常々言っていたそうです。

彼にとって不正確な図とはリアリティのこと、

正確な推論とはそのリアリティから導き出される数学、すなわち本質のことだったと思うんです。

ポアン彼は、位相器科学、あるいはトポロジーと呼ぶ画期的な数学を考え出しました。

彼はコーヒーカップを見て、これは本質的にはドーナッツであると言ったんですね。

これ、口頭で説明するのはなかなかに難しいのですが、

今コーヒーカップ、コーヒーマグを頭に思い浮かべてみてください。

穴いくつありますか?

コーヒーを入れるところっていうのは、そこが貫通していないので、これは穴にカウントしないんですね。

取手のところ、持ち手のところ、指を入れるところ、これは穴が貫通していますから、穴が一つあるということですね。

つまり、コーヒーカップ全体、コーヒーマグ全体で見ると、穴が一個空いているということになるんですね。

これ、ドーナッツと同じですよね。

僕は以前、夏休み、子ども科学、インターネット相談という番組に出させていただいて、

そこでですね、いただいたご質問。

ドーナッツの穴は一つですか?二つですか?

上から見て一つ、下から見て一つじゃないんですか?という質問に対して、

どういうふうに数えるかによって、一つと数えても二つと数えても、どちらも正解ですよ、という回答をさせていただいたのですが、

このポアンカレーの数え方の場合は、これは一つと数えます。

貫通した穴が一つということですね。

ポアンカレーが目をつけたのは、コーヒーカップもドーナッツも穴が一つ空いた形だということでした。

細かいね、細かくはないですけれども、他の形状に関しては目をつぶるわけですね。

そのために、コーヒーカップもドーナッツも数学者には同じに見えるという冗談もあります。

例えば、2本のお茶碗を想像してみてください。

こちらは取っ手がついていないので、少しずつ変形していってもドーナッツにはなりません。

これ変形していくと、お団子と一緒になるんですね。穴がないですよね。

なので、穴のないお団子、お茶碗は穴のないお団子と同じ形、

コーヒーカップは穴が一個あるドーナッツと同じ形というふうに、位相器科学では考えます。

地球の形と輪ゴム

このように、目に見える形を無視してしまって、形の本質、

すなわち穴が開いているかどうかにだけ関心を向ける態度を位相器科学と呼びます。

ポアンカレの思考はここで止まりませんでした。

20世紀になるまで、地球は平らなんじゃないかと疑う人が結構いたんですね。

いや、ひょっとしたら現代でもいるかもしれません。

この論争、人類が宇宙から地球を見ることができるようになって、写真も撮ることができるようになって、

今時、揉めることはないかなと思うのですが、地球が平らなのか、急なのかという論争はもう紀元前からありました。

そして、例えば古代ギリシャの数学者たち、哲学者たちは、地球の上にいながらにして地球が丸い証拠というものをいくつも掴んでいったんですね。

その中には、例えば月に落ちる地球の影といった証拠もあったのですが、証拠の大半は地球上で手に入れられるものでした。

つまり、地球の上空から地球を見ることなく、地球が丸いということを発見していったわけですね。

ここからがポアンカレの考えです。

もし、僕たちの立つ星がボールの形、あるいはドーナツの形のどちらかだったとして、その表面に立っているとします。

上空から自分たちの星を見下ろすことができないとき、どうやって自分たちの大地に穴が開いているのか、開いていないのか知ることができるだろうか。

ここで言う穴はドーナツのように貫通した穴のことです。

ポアンカレは素晴らしいアイディアを持っていました。

もし僕たちの住む星がボールの形、お団子の形であれば、こんな試行実験が成り立つんです。

赤道の周りにまずよく伸びる柔らかい、とても長い輪ゴムをかけたとします。

赤道の周りに輪ゴムをかける。

その輪ゴムをずるずるずるっと北の方へ縮めていくと、やがて北極の周りを小さくまとめる小さな輪ゴムになります。

今度は赤道の周りではなく、日本を通る統計135度の線に沿って輪ゴムをかけていきます。

地球の反対側もかけます。

そうすると地球に縦に輪ゴムがかかったことになります。

これもギュギュギュッと縮めていって、どこかで小さな輪ゴムになるんですが、

それを今度は北にグイグイグイと引っ張っていくと、また北極の周りを回る小さな輪ゴムになっています。

ちょっとイメージしづらいなという方は、ぜひメールでお送りしているsteamnewsの方を見ていただくと図に書いていますので、イメージしていただけるかなと思うのですが、

ポアンカレが示したのは、このボール状の星の上ではどのように輪ゴムをかけても最終的には一種類の輪ゴムを伸ばしたり動かしたりしたものと同じになるということなんです。

一方、僕たちの住む星がもしもドーナッツ型だったとしたら、もし僕たちがドーナッツ星人だったとしたら、

これはですね、どう頑張っても2種類の輪ゴムのかけ方が必要になってしまうんですね。

こちらもメールでお送りしているニュースレターsteamnewsの方に図を掲載していますので、よろしければこちらで見ていただければと思います。

ポアンカレと位相幾何学

このようにしてポアンカレは上空から見下ろすことなく図形の区別がつくことを示したんです。

1904年、ポアンカレは地球に穴があるかどうかの例えを一気に飛躍して、

4次元空間でも同じことが言えるのではないかと予想しました。この予想はポアンカレ予想と言います。

地球の例えでは地球の表面は2次元空間でしたし、地球そのものは3次元の球体です。

地球の表面が2次元というのは、東西の軸と南北の軸の2方向の軸があるという意味です。

現実の地球ではさらに標高があるのですが、今は本質的な球体を考えているので標高はないものと考えます。

ポアンカレ予想は3次元の表面を持つ4次元の球体を考えるんです。

いや、そんなんどこにありまんねんって思ってしまいますよね。もちろんです。

ポアンカレが予想を提出した1904年は、

アメリカの天文学者エドウィン・ハップルが、まだスポーツにのめり込んでいた15歳の少年なんです。

宇宙に大きさがあること、そして宇宙が膨張していることを彼が証明してみせるのは、その20年後です。

ハップルによって修正された宇宙像では、僕たちはおそらく4次元の球体の表面に住んでいるんです。

それゆえポアンカレ予想は重大な意味を持ってくるわけですね。

この予想を証明に変えたのは、ロシアの謎大き数学者グレゴリー・ペレルマンでした。

とても興味深いストーリーがありますので、ご関心のある方、

メールでお送りしているニュースレタースティームニュースの今週の書籍のコーナーをぜひご参考になさってください。

ポアンカレと科学者と詩人

ポアンカレは1928年に「科学者と詩人」という書籍も残しています。

この書籍はポアンカレが個人へ向けて送った追悼を集めたものです。

ポアンカレは高校時代には音楽が苦手だったと言われているのですが、

この書籍読んでみるとなかなかの名分を書き上げているので、

ポアンカレのことをアーティストと呼んでも僕は差し支えないと思います。

こちらも日本語訳が手に入るので、よかったらアマゾンとかで検索してみてください。

というわけでこのエピソードではフランスの数学者アンリ・ポアンカレの仕事、

そのほんの一部をご紹介させていただきました。

今週はバンクーバーで開催されているTEDコンファレンスTED2023のライブ配信、TEDライブがありまして、

僕もリアルタイムに参加させていただいているのですが、時差に苦しんでいます。

これもしね地球が平だったらバンクーバーだろうと日本だろうと時差がないので、

僕特に夜に弱いので、こんな苦しい思いはしなくて済むのになぁと思ってしまったのですが、

残念ながら地球が丸いので時差があります。本当に辛いですね。

なぜ僕がこのTEDライブにリアルタイム参加させていただいているかというと、

このTED2023のトークを皆様と共有するイベント、オンラインイベントですね。

TEDxデジマライブというのを4月29日に開催させていただくからなんですね。

こちらは無料でご参加いただけますが、事前登録が必要になります。

事前登録していただいた方にYouTubeライブのリンクをお送りする形になります。

ポッドキャストの概要欄にこのTEDxデジマライブへのリンクを貼っておりますので、

お時間のある方、ご関心のある方、ぜひ無料登録をお願いします。

TEDxデジマライブではYouTubeライブのコメント欄を開放しますので、

参加者の方、視聴者の方、質問を投げていただいたりとか、

ツッコミを入れていただいたりとか、コメントにコメントを返していただいたりとかで、

交流していただくこともできます。

こちらですね、録画アーカイブを残さないので、心配なく心置きなく書き込んでいただいて結構かなと思います。

YouTubeライブなので僕は顔出しでお送りしますが、参加者、視聴者の方はもちろんカメラは使いませんし、

匿名でご参加もいただけます。

ぜひご検討ください。

最後にお知らせです。

エピソードの冒頭でご紹介した通り、今週からListenというポッドキャストを書き起こしサービスに対応しました。

お送りしているポッドキャストSteam.fmはニュースレターと連動しているので、

もともと文字でお読みいただけるのですが、やはりポッドキャスト独自の内容もいくつもあるので、

書き起こしは僕自身にとってもありがたいですし、リスナーの方にも便利なのではないかと思います。

検索もできますしね。

現在Listenはベータリリースということで、ポッドキャスターを少しずつ募集しているそうです。

僕はリリース前に偶然Listenを見つけて、招待されてもいないのに参加申し込みをしてしまったんですよね。

その後で知ったのですが、Listenを開発されたのは、はてな創業者で、TEDx京都のファウンダーでもある近藤淳也さんでした。

TEDx京都を一緒にしていた頃はよく遊んでいただいていました。

リリースに参加させていただいたことで、再びお話ができて楽しかったです。

淳也さん、本当にありがとうございます。

近藤淳也さんはポッドキャストもされているので、よかったらリスナーの皆さんもSpotifyで検索してみてください。

最後にお知らせです。

格好つけて言ってしまったのですが、尺を見間違えていまして、もう少しお付き合いください。

ニュースレターのQ&A紹介

この番組は25分間、このエピソードは25分間と決めていまして、時計を見ながらお話をさせていただいているんですが、

少しお時間があるので、ニュースレターでお送りしているQ&Aをご紹介します。

ニュースレターのQ&Aコーナーから、今週の質問をご紹介させていただきます。

ご質問は、匿名質問サービスマッシュマロ、Q&Aサイトクォーラーで受け付けています。

今週ご紹介する質問はこちらです。

看護師さんに言われた忘れられない言葉はありますか?

もうね、僕忘れられない言葉があるんですよ。もう僕は若かった頃ですよ。若かった頃に言われた言葉です。

看護師長の女性から言われた言葉。

英科、若い看護師見たら心動くやろうけど、目動かしたらあかんで。

でですね、この後横にいらっしゃった副看護師長、こちらも女性だったんですが、その副看護師長にこんな風に言われたんです。

そら逆や。目動かすのはしゃあないけど、心動かしたらあかんで。

看護師長と副看護師長の2人に撃ちつめされてですね、僕は目も心も動かさないようにしました。

steam.fmでは皆様からのご質問もお待ちしております。

メールでお送りいただいても結構ですし、クオラで質問していただいても結構ですし、概要欄にメールアドレスも書くようにしましたので、メールでお送りいただいても結構です。

また大変厚かましいお願いで恐縮なのですが、概要欄にコーヒーの差し入れというリンクも貼らせていただいています。

このエピソードを気に入っていただいて、コーヒー差し入れしてもいいよという方はですね、よかったらコーヒーの差し入れのリンクから1回400円支援がしていただけます。

こちらはクレジットカードでの決済となります。

これまでにたくさんのコーヒーの差し入れをしていただいております。

また中には定期的に差し入れをしてくださる方もいらっしゃいます。

本当にありがとうございます。心より感謝申し上げます。

またメールでお送りしているニュースレターの方も有料公読のオプションを用意しております。

こちらはですね、基本無料で読めるものと内容変わらないのですが、お気持ちご支援いただければということで、最低金額300円からご自由に値段を設定していただけるようにしております。

こちらもご検討いただければ幸いです。

もちろんsteam.fmを聞いていただいているだけでもご支援になっておりますので、皆様本当にありがとうございます。

番組コーナー紹介

いちでした。

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