00:08
未来の警告
はーい
愛毒警察署の黒沢です。
赤坂みくさんですか?
はい、そうですが。
突然すいません。少しお話よろしいですか?
はい、えっと、何かこの辺りで事件でも?
いえ、あなたの未来に関することでお話が。
仕事や学校、家族や友人、恋愛の悩み、
世界には膨大な楽しいコンテンツがあふれ、週末はお酒をたしなみ、充実ながらも常に何かに覆われている日々の中で、
私たちは少し先の未来、そして大切な今を見逃しているのかもしれない。
土曜日の正午過ぎ、みくの元を訪ねてきた刑事を名乗る男、黒沢。
えっと、どういうことなのか?
いきなり訪ねてきて、戸惑うのも無理はありません。
まず、あなたは未来の私の、その、夫ということですか?
そういうことです。
そして黒沢は、来週金曜日、みくの身に起こる悲劇から救うため、未来からやってきたのだという。
そんなドラマみたいな話あります?
信じられないのはわかっています。でも、信じてくれというしかないんです。
そう言われても…
ちょっとすいません。
はい。
んだよ!今かけてくるのはつっただろ!
後で折り返すから。
すいません。お見苦しいところを。
いえ。
信じてもらえないと思いますが、とにかく今日から1週間、あなたのことを護衛させてほしいんです。
護衛ってそんな…
来週のその日まで、もう時間がありません。
来週、金曜日…
そうです。赤坂さん、あなたは悲しい未来を回避しなくていいんですか?
そう言われても、実感がないので…
無駄に怖がらせることになりかねますので、無事に来週、こうして土曜日を迎えられたら、その時起こった未来のことをお話しします。
わかりました。
ではまず、今の時点でわかっている、明日からの予定を教えていただけますか?
あ、はい。えっと、明日は…
03:02
はーい。
おはようございます。
おはようございます。
次の日の日曜日、みくは美容室を予約していた。
今日美容室に行かれた後は、ずっと自宅にいますよね?
はい。予定を入れる気にもなれなかったので、終わったら買い物して帰ります。
わかりました。
では、終わるまでは向かいのカフェにいますので、ご連絡ください。
くれぐれも一人で美容室を出ないように。
わかりました。
では、私はここで。
はい。
はい、黒沢です。終わりましたか?
はい。これからお会計して出ます。
わかりました。すぐに向かいます。
ねえ、だから違うんですって。
あ、ではまた。
どうしたんですか?
あ、いえ。あの、ここの美容室、ずっとお世話になってるんですが、そのお恥ずかしい話、私はずっと彼氏がいないキャラで。
ああ、なるほど。でも今の私から見ても、赤坂さんはとても魅力的な人ですよ。
みくにとって真摯で、どこかキザな黒沢は新鮮だった。
同時に、みくは今まで付き合ってきた男と全くタイプの違う人を選ぶ未来の自分に驚いてもいた。
はい。
赤坂さん、おはようございます。
おはようございます。
月曜日。
今日は仕事帰り、まっすぐ帰られますよね?
はい。今日は少し残業になるかもしれませんが。
わかりました。ではまた終わったら連絡ください。
あ、ちんぐうじさん、お疲れ様です。これからお戻りですか?って、え?
お疲れ様です、赤坂さん。
黒沢さん、何もこんな会社の正面で待ってなくても。
いえ、何があってからでは遅いので。
あ、ちんぐうじさん。
今の人は?
取引先の担当者です。
そうですか。
はーい。
おはようございます。
おはようございます。
火曜日。
今日は仕事の後、会食ですよね?
あ、はい。業務が終わったらメンバーとタクシーで向かうので、護衛は不要です。
黒沢さん?
その会食というのは、その、昨日の男性も来られるんですか?
昨日の?もしかしてちんぐうじさんのことですか?
はい。
いえ、違いますよ。
そうですか。では会食が終わったら、とりあえずご連絡ください。
わかりました。
はーい。
06:01
おはようございます。
おはようございます。
水曜日。
今日は特にご予定ないですよね?
あ、今日なんですが、よかったら飲みに行きません?2人で。
え?
水曜日は農産業デーなんですよ。どうせ誰かといても金曜日のこと、気になっちゃうし。
では、お店はこちらで手配します。
え?あ、じゃあお願いします。
お疲れ様です、赤坂さん。
だから、こんな正面で待たないでくださいよ。
何があってからでは、遅いので。
遅いので。
茶化さないでください。
じゃあ、かんぱーい。
かんぱい。
ねえ、私たちの慣れそめ、教えてくださいよ。
酔ってます?
酔ってません。
教えません。
ゲッチー、かたぶつ。
あ、お姉さん、おかわりください。
藍徳川岡三丁目まで。
お願いします。
ねえねえ、慣れそめはもう楽しみにしといてあげるからさ、せめて黒沢さんがどうやってこっちに来たか教えてくださいよ。
それは…
あ、不適切には程があるみたいなタイムスリップできるバス?
不適切?
あ、ドラマですか?
そうそう、あれタイムスリップするドラマだったもん。
あ、もしくはあれ?ブラッシュアップライフ?
じゃあまあ、そんな感じです。
えー、何それ。
はい、降りますよ。
はーい。
おはようございます、赤坂さん。
おはようございます。
木曜日。
あのー、黒沢さん。
はい?
昨日、すみませんでした。なんかやらかしてませんか?私。
いえ、特には。
本当ですか?その言い方、なんか怒ってません?
怒ってないです。ただ…
ただ?
飲み方。気をつけてください。
明日のことがなくても、あんなに初対面の人を巻き込んで飲んだりするなら、これからも心配です。
えー、それが楽しいのに。
気をつけてください。
わかりましたよ。本当、未来の私はこんな厳しい人と結婚したなんて信じられない。
その理由は、きっと明日わかりますよ。
そうやってすぐはぐらかすじゃないですか。昨日だって。
覚えてはいるんですね。
記憶はあります、そこは。
そうですか。
おはようございます、赤坂さん。
おはようございます。
金曜日。
今日は…
09:01
どうしたらいいですか?私。
休みませんか?仕事。
え?でも今日は…
実はこの日、みくは数ヶ月かけたプロジェクトの大事なプレゼン発表を控えていた。
難しいですよね。
仕事を終えたらすぐ、黒沢さんのもとに行きます。必ず。
では、今日は近くのカフェにいますので、何時になっても待っています。
チームの命運と自分の未来、2つの緊張を抱えながら臨んだプレゼンは無事に終了した。
少し緊張が解けたみくは、突然ふと今朝の違和感を思い出した。
あれ?なんで今日はカフェで待ってるんだろう。
あ、すみません。今日はちょっと…
プレゼンが無事終了し、業務後、チームでの社内打ち上げが行われた。
飲み会好きのみくが、その後の飲み会の参加を断ると、チームメンバーは目を丸くした。
ちょっと、そんなにドン引きしないでくださいよ。
取引先の代表として打ち上げに参加していた神宮寺に、
お酒好きなんですね、と声をかけられたみくは、この夜がとてつもなく恐ろしくなった。
ただでさえ、この年度末でみくの会社の担当から外れるこの人と、もう会えないのかもしれない。
神宮寺さん、私…
待って?待ってください。
そうですよね。だってもし、今日私に何かあるんだとしたら…
いいえ、大丈夫です。自分で電話します。
もしもし、愛読警察署ですか?
あの、刑事の黒沢さんをお願いしたいんですが…
ったく、みくのやつ、おっせえなあ。
続いてのニュースです。
昨日午後7時ごろ、東京都武蔵愛読警察署に一件の通報がありました。
通報した女性によると、先週土曜日の正午過ぎ、愛読警察署の刑事を名乗り、自宅を訪ねてきた黒沢誠容疑者は、
自分はタイムスリップしてきた未来の夫だ。来週の金曜日、君に起こる悲劇から救いに来た。
などといって、女性を信じ込ませ、つきまとっていたということです。
警察庁は、女性の身辺情報を探って、ストーカー行為がエスカレートした疑いがあるとして、
余罪を調べています。
黒沢容疑者は、警察の調べに対し…
エンドロールです。
主演 黒沢誠
12:02
むしゃラジ DJ 石川
赤坂みく スナックアイトドク オーナー ゆきまま
ナレーション アナウンサー スナックアイトドク 顧客みゆき
サウンドエフェクト 高歌音ラボ
楽曲制作 スノ
脚本 監督 演出 編集
スナックアイトドク オーナーのゆきままでした。
お疲れ様でした。
お疲れ様でした。
噛まなかった。
噛まなかった。
良かった。
皆不安な顔して見てるかなと思ってたけど。
石川さんの前にね、だいぶ盛大に噛んでたからね。
一発目も最初のセリフでやっちゃったからね。
次もどっかでやったしね。
脚本家さんにちょっと相談したいんですけど。
はい、なんでしょう。
最後まで私たちの夢にお付き合い下さりありがとうございます。
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現実世界へいってらっしゃい。
