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みなさん、本日は株式会社愛毒が主催する初めての夏の肝試しイベント、「よみがえれ青春真夏のホラートリップ」にご参加いただき誠にありがとうございます。
この度、皆さんのガイドをさせていただきますのは、私、神宮寺と申します。
普段、我々愛毒は全国各地のB級グルメが集まるフェスや、クリスマスやバレンタインなどの季節のイベントブースを客家店さんに出展させていただいております。
今までどこかで見たことあるなーって方、いらっしゃいますか?
あー、気づかえありがとうございます。
さて、今回皆さんに体験していただく、「よみがえれ青春真夏のホラートリップ」は、私どもが初めて手掛ける夏の肝試しイベントです。
本日が初日ということで、緊張してスタッフ一同ちょっと手が震えております。
本日はそんなイベントにふさわしい夏日で、日差しがもう暑いですね。
ですが、イベントブースの中はもう肝が冷えるぐらい冷え冷えですのでね、早速参りましょう!
それでは皆さん、お準備よろしいでしょうか?
これから、「よみがえれ青春真夏のホラートリップ」に旅立っていただくんですが、安全にイベントにご参加いただくため、いくつか注意点をお伝えいたします。
まず、我々が開発したこの最新ゴーグルですが…
以上、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
では、いよいよスタートです。皆さん、ゴーグルを装着してください。
それでは、いってらっしゃーい!
楽しみだね。
あの夏の夜、これは忘れられない思い出。
うわぁ、映像すっげぇ。
ねぇ、せっかく入り込んでるのにそんな現実的なこと言わないでよ。
あ、ごめんね。
ちゃんとやってよね。
はーい。
ここ、愛徳神社には、地元の人がまことしやかにささやく、ある噂があります。
それは、惹かれ合う二人が、深夜0時に鈴を鳴らすと、永遠に結ばれる、というもの。
ただ、この神社には、男の裏切りによって命を絶った女の霊がさまよい、訪れる二人の仲を引き裂こうとしているというのです。
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ほぉ、本格的。でも、ベタな設定。
ゆめちゃんだって、現実的じゃん。
あ。
今日この満月の夜に訪れた二人はまた、その女の霊に会ってしまうのでしょうか。
その階段を登ってきて。
待って、びっくりした。
かわいい。
え?なんか言った?
うん、うん、なんでもない。
この笠地蔵、めっちゃ古いね。
ほんとだ。
かわいいハンカチ巻いてるね。
古い神社なのかな。
今のところ何もないよね。
まだめちゃくちゃ序盤だと思うよ。
そっか。
ねえ、手、繋いでもいい?
うん、もちろん。
ありがとう。
月明かりを頼りに階段を登った先には、小さな境内、不自然に揺らめくろうそくが一つ。
あのろうそくを取れってことかな。
はずくん、取ってきて。
わかった。じゃあ、ちょっとここで待っててね。
え?やだ、やっぱり一緒に取りに行く。
なんだそりゃ。
ねえねえ、ここに鈴なんてないよね。
ほんとだ。おさいせんばこはあるけど。
実は、今から2年前、ここで火事が起きてしまっていたのです。
そしてこの境内は、その火事の後に建てられたもの。
唯一燃え残った古い本壺鈴は、人の手によって移動させられることはありませんでした。
え?どういうこと?
じゃあ、この鈴の音はどこから聞こえてるの?
とりあえず、このろうそくを持ってその鈴を探しに行けってことかも。
えー、どこにあるの?
あ、ねえ、なに?
今の、さっき聞こえた声と同じだよね。
もう、びっくりした。怖くないけど。
怖くないの?
怖くないよ。
じゃあ、探しに行こう。
うー、よし、これはゲーマー、これはゲーマー。
ちょっとゆめちゃん、現実。
だって。
境内の脇に森の奥へと進める小道が見えます。
暗く気の当たらないその山道は、そこはかとなく誰かが通ったようなぬかるみがありました。
あ、こっちっぽい。
わかったよ。
ねえねえ、見て。
今日のデート楽しみにしてたからさ、新しいスニーカー履いてきたんだよ。
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そのスニーカーもかわいいね。
でしょ?
汚れないように気をつけてね。
うん、ありがとう。
ねえ、かずくん今、スニーカーもかわいいって言った?
い、言ってない。
うそ?言ったよ。
あ、ここじゃない?燃えちゃった神社。
ほんとだ。すっごい立派。
そんなに遠くなかったね。
そうだね。
あ、鈴ってあれのことじゃない?
え?でも、これじゃ鳴らせないよね。
鈴をも燃えちゃったみたいだね。その火事の時に。
火事で鈴をも燃えた今、それは本来鳴るはずのない鈴。
地域住民たちがその本壺鈴を新しい境内へ移そうとするたび、きつな出来事が起き、
住民たちはそれを火事の原因となった女の仕業だというようになりました。
女の仕業?
どういうことだろう。
その火事の原因がわかれば、鈴の鳴らし方がわかるのかな。
うーん、とりあえずこの境内一周してみる?
そうだね。
あ、戻ってきちゃったね。
特に何もヒントはなかったよね。
あ、あれ、ねえゆめちゃん、もしかしてこの鈴をって、あ、ろうそく。
言えちゃったよ。
この辺にどっかライターとか落ちてないかな。
えー、そんな都合よくあるわけ。
あ、かずくん待って。
ほらチャッカマン、よかった、火もつく。
え、ゆめちゃん?ゆめちゃーん、どこ行ったの?
隠れてるなら出てきてよ。
本当は怖いんでしょ。
手離してごめんって。
えー、なんか急にアナウンスも流れなくなったし、え、何?故障?
鈴の鳴らし方、教えてあげる。
うわ、これこのまま続くんだ。
え、じゃあゆめちゃんはどこ行ったんだよ。
笑ってんじゃねえよ。
あら、こんなにしっかり会話ができるの、あなたが初めてだわ。
なんだよそれ、いいから教えろよ。
いいんじゃない、どうせあんたみたいなやつ、自分を守るためなら大切な人だってすぐ裏切るんでしょ。
んなわけないだろ、どこへやったんだって聞いてんだよ。
別に何もしないわよ、彼女は無事、ただ少しだけ眠ってもらってるわ。
え、これゆめちゃんが履いてたスニーカー。
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あら。
いやいやいやいや。
して、あなた、さっき何かに気づいたんじゃないの。
あ、そうだ、鈴の紐、鈴雄がちょっと燃え残ってるんじゃないかなって一周してきて反対側から鈴を見たら見えたんだよ。
そう、簡単よ、その鈴雄に手が届けば鈴は鳴るわ。
でも、どうやっても届かないだろ。
そうねえ、教えてあげてもいいけど、簡単に教えちゃつまんないわよね。
そういうことじゃなくて、とにかくゆめちゃんは無事なんだよな。
しつこいわねえ、無事だって言ってるでしょ。ちょっとくらい私の話に付き合いなさいよ。
わかったよ。
ま、あんたなんかに話しても仕方ないんだけどね。
どっちなんだよ。
あれは、もう二年前ね。私は当時好きだった人とここで待ち合わせをしていたの。夜になったら花火をしようって。
でも彼は来なかった。約束の時間を過ぎても、夜が更けても。私はあの日、彼に会うのは最後にしようって決めてあげてたのに。
彼は真面目な人でね。真面目なくせに、中途半端に優しいから。
私も馬鹿よねえ、わざと気づかないふりをして。なんだかあなたに似てるわ。
はあ?
あなた私のこと全然怖がらないし、つまらない。いっそ告白に付き合ってくれたら、成仏できるかも。
なんでだよ。
いいじゃない。私生きてる間は結構綺麗だったのよ。
いいや、見えねえし。
じゃ、ゆめちゃんの体借りちゃおうかしら。
やめとけよ。
どうして?
人に乗り移って動かしても、気持ちが晴れるわけないだろう。
真面目ねえ。そういうところも彼にそっくりだわ。
それで、待ち合わせに来なかったことに腹を立てて火事を起こしたのかよ。
いいえ、違うわ。本当はわかってたから。私は彼にとって何者にもなれないって。
だからあの日を最後にもう会わないつもりだった。
彼は既婚者だったから。だから持ってきた花火を一人でしようと思ったの。
んー、じゃああくまで火事は事故ってことか。
そうね。でも彼と一緒になれないなら、このまま死んでもいいかって。
炎が木に燃え移った時、私も消そうとしなかったもの。本当は。
なあ、もしかしてそのハンカチって、その男と色違いで持ってた?
え?どうして?
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ここに上がってくる前、階段の下にある笠地蔵が同じのを巻いてたような気がして。
ネイビーの?
いや、色あせてたからわからないけど、似たような刺繍があった気がする。
じゃあ、あの日彼はここに来たってこと?
さあ、自分で見に行って確かめたほうがいいんじゃない?
それはできないの。
なんでだよ。
この境内からそんなに遠く離れられない。きっと見る前に魂がなくなっちゃうわ。
じゃあ、俺の中に入れば?そしたらその地蔵のところまで行けるだろう?
あなたってお人寄しなのね。
いいから。その代わり、ちゃんと戻ってきてユメちゃんのことを解放しろよ。
このハンカチ。
ん?
好きになってごめんって。
ユメちゃん!ユメちゃん!
くん?
よかった、無事で。大丈夫?怪我とかしてない?
うん。
大丈夫?
うん。ちょっと頭痛がして。
なんか、夢に女の人が出てきた。境内の裏の物置に虚脱があるって。
え?そういえば、女の声がしなくなった。
本当は、そこに消防機もあったのって言ってた。何の話?
成仏できたってことだよ。とりあえず。とにかく、ユメちゃんが無事でよかった。
虚脱取りに行こう。立てる?
うん。
あ、ていうか、今何時?
え?11時52分。
やばい!急がなきゃ!
危ないからね。抑えてるから気をつけて登って。
うん。よいしょ。かずかも早く。
うん。行くよ。せーの。
はーい。みなさん、おかえりなさい。
よみがえれ青春真夏のホラートリップはいかがだったでしょうか?
ありがとうございます。
ご参加前にもお伝えさせていただいた通りですね。
こちらの最新ゴーグルは、みなさんの過去の記憶や思い出、そして恋人とこんな夏の青春を過ごしてみたいという夢をですね、
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みなさんの脳内から直接映像に映し出し、バーチャル空間で再現してしまうという、弊社が開発した大変画期的な最新技術です。
楽しんでいただけたようで、われわれ一同とてもうれしく思います。ありがとうございます。
みなさんそれぞれが描く理想のお相手をバーチャル空間に映し出しておりますので、大枠のストーリーに沿ってなんとAIはみなさんの望む受け答えができるようになっているんです。
えー、どなたか感想を伺ってみましょうかね。
そこのブルーのチェックシャツをお召しの方。
え?あ、僕ですか?
はい。お相手はどうでしたか?お兄さんの理想に近かったですか?
えっと、はい。めちゃくちゃタイプの子で、かわいかったです。
わー、よかったです。ありがとうございます。
ストーリーはいかがでしたか?大切な人を救うため立ち向かうという経験もなかなか現実世界ではできないことかなと思いますが。
あー、はい。途中からバーチャル空間なのも忘れるぐらいリアルで、なんかジャンプの主人公みたいになれて嬉しかったです。
あー、ですよね。直接戦うというわけではないですが、すごく非現実的な体験だったかと思います。
はい、楽しかったです。
あー、ありがとうございます。
さて、今回は初の夏のイベントということで、このイベントブースを出られたスペースにて無料でかき氷をプレゼントさせていただきますので、ぜひお好きなお味で召し上がって帰ってください。
もしかしたらバーチャル空間で出会ったようなあなたの理想のお相手がいつかあるかも。最後までお楽しみください。
では改めまして、本日はよみがえれ青春真夏のホラートリップにご参加くださりありがとうございました。
ぜひご感想やご意見など、ハッシュタグホラートーリーでドシドシつぶやいてくださいね。本日はありがとうございました。
って、男ばっかじゃん。
エンドロールです。
主演 鶴谷一希 虫原寺 DJ石川
相川ゆめ スナック愛届 顧客みゆき
イベントスタッフ 案内人 神宮寺 スナック愛届 オーナーゆきまま
女の霊 梁智子
サウンドエフェクト 交換音ラボ NHK音響デザインライブラリー
18:02
楽曲制作 スノ 脚本 監督 演出 編集 スナック愛届 オーナーのゆきままでした。
