貫通接辞とは何か?
本日のテーマは、貫通接辞です。 貫通接辞。貫通というのは、そのまま突き刺すというか、突き抜けるということですね。
接辞というのは、簡単に言えば単語の部品みたいなものです。 接辞の中でメジャーなのは、接頭辞とか接尾辞と言われるようなもので、
例えば英語のwrite、書くという動詞に接頭辞のreというのがついて、rewriteというと書き直すという意味になりますね。
このreというのが接頭辞です。 あるいは接尾辞というのは、接頭辞と逆で単語の後ろに現れるようなもので、
寒いに対して寒さと言った場合、これは形容詞から名詞を作っている、さというのは名詞を作る接尾辞だということができます。
あるいはちょっと馴染みがないというか、かなり馴染みがないと思いますが、接中辞というものもあるんですね。
接中辞というのは、語根の中に接辞が入り込むような、そういったものです。
これは日本語や英語にはないんですが、 フィリピンの言語や、あるいはカンボジア語には接中辞があります。
無理やり日本語風に考えてみると、日本語の受け身はれる・られるという接尾辞で表すんですよね。
食べるから食べられる。このられというのが受け身自動体を表す接尾辞です。
もしこのられというのが接中辞だとしたら、食べられるというのは、たられべーるみたいになるということです。
食べるの食べ、語根の食べの間にられというのが入って、たられべーる。
もしこういう言い方があれば、日本語も接中辞があるということになります。
今回は、接頭辞・接尾辞、あるいは接中辞とも違う、貫通接辞、英語ではtransfixと言われるものです。
これを見ていこうと思います。BGM、行けい。
貫通接辞が見られる言語
始まりましたシガ10語のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。川名天吾です。
貫通接辞transfixというのは、代表的なもので言えばアラビア語やヘブライ語で観察されます。
政治的宗教的な話はちょっと置いておいて、アラビア語とヘブライ語っていうのはかなり近しい言語なんですね、実は。
このアラビア語も含めて、セム語系と言われる言語で貫通接辞はよく観察されます。
セム語系は、もうちょっと広く言うとアフロアジア語族の言語です。
アフロアジアというのは、アフロというのはアフリカで、アジアというのはアジアなので、アフリカとアジアにまたがるような、そういった言語のグループがあるんですね。
その中で特にセム語系の言語で見られます。
かつてはセムハム語族とか、あるいはハムセム語族とか言われてたりしたんですけど、今はどちらかというとアフロアジア語族という言い方が主流ではないかと思います。
その中でもアラビア語を含むセム語派ですね。
セム語系の言語で貫通接辞transfixが見られます。
アラビア語の例:カタバ
では、その貫通接辞はどんなものかというと、ちょっと具体例をあげながら考えてみましょう。
アラビア語で彼は書いたという言い方は、カタバと言います。
これが1個の動詞で、このカタバという動詞の活用形としてですね、
主語が三人称単数、さらに男性であるということが、その動詞の変化形だけでわかるんですね。
主語によって動詞の形が変わるというのは日本語にはあまりないんですけど、Cといえば敬語がそうですけど、世界の言語にはそういった言語がたくさんあります。
英語であればB動詞がまずそうですよね。
一人称の単数だったらアム、複数だったらアーになるみたいなことですね。
さらにアラビア語の場合は、その三人称に男性と女性の区別があるので、英語にもBとCの区別があるわけですけど、それが動詞の変化にも現れるんですね。
ですので、カタバというのは男性単数の形なので、これが女性単数だったらまた違う形になります。
このカタバというのは主語の情報だけではなくて、次性、点数が過去であるということも表しているんですね。
このカタバ動詞1個で主語が三人称、単数、男性、さらに次性が過去であるというのが表されています。
では、このカタバのどこの部分が主語の情報になっていて、どこの部分が過去の情報になっているかというのが面白いところなんですね。
これが英語であれば、例えば英語でwriteといった場合、he writes、she writesといった場合、writeという動詞五根、動詞本体に設備字のsがくっついて一個の単語になっているわけですね。
このsというのがいわゆる三単元のsで、主語が三人称、単数で、次性が現在であるというのを設備字で表しています。
では、カタバの場合、カタとバに分かれるのか。つまり英語と同じように、動詞五根がカタで、バの部分が主語が三人称、単数、男性で、さらに次性が過去であることを表しているか。そうではありません。
逆に、カタバのカの部分が接頭字として機能していて、このカ、頭のカが主語やあるいは次性の情報になっているか、そういうわけでもないんですね。
さらに接中字であるというわけでもありません。
では、このカタバのどこの部分が動詞本体、語彙的な部分、五根で、どこが文法的な情報、主語の情報や次性の情報になっているかというと、
貫通接辞の仕組み
シーンが語彙的な情報を持っている五根です。つまり、カタバであればKTBですね。
このクトゥブ、この3つのシーンが書くという語彙的な情報になっていて、その間に挟まっているというか、付け足されている母音、カタバの場合全部母音がアーですけど、
この3つの母音、アーアーアーというのが、主語が三人称、単数、男性で、次性が過去であるということを表しているんですね。
つまり、語彙的な要素、語根と言われるものが連続体を成していないということですね。
飛び飛びになっているというのが、この貫通接字の面白いところです。
英語であれば、write、プラスsというふうに、語根のwriteというのがバラバラになることはないんですよね。
過去形のwroteというのがちょっと今回お話ししているのにやや近いんですけど、writeというのを考えたときは、writeの語根に設備字のsがくっついています。
あるいは書き直すのrewriteの場合も、reという接頭字が語根のwriteにくっついていて、
このwriteというのがこれでひとまとまりという感じなんですよね。
一方、アラビア語のかたばといったときは、くーとぅーぶーという三つのしんが語根であって、その後にあという母音がそれぞれ入って、これが貫通接字なわけですけど、
それで完成した単語を作っているという感じなんですね。
アラビア語における他の接辞との組み合わせ
アラビア語の場合は貫通接字オンリーでやりくりしているわけではなくて、設頭字みたいなのもあるんですよね。
今のだと、彼が書いたというような過去形なわけですけど、これが現在形というか進行形みたいなものになると、やくとぅぶという言い方になります。
ここではやという接頭字が出てきて、くとぅぶというふうに、しんのtoとぶの後にうという母音が入って、やくとぅぶ。
これで彼は書いているみたいな、平たく言えば現在形みたいなものが表されるんですね。
ここでもやはり語彙的な要素、語根のしん、くとぅぶという三つのしんは固定されていて、
それに設頭字がくっついたり、あるいは設尾字がくっつくこともありますが、
それと合わせて、貫通接字という語根のしんの間に入ってくるような母音で動詞が変化していくというのがアラビア語の面白いところなんですね。
日本語との違いと難しさ
この貫通接字はアラビア語を含むセム語系の言語でよく観察されるんですが、
聞いててお分かりになったと思うんですけど、仕組みというのが日本語と全然違うので、
こういったセム語系の言語は日本語母語話者なんかにとっては結構難しい言語だと思います。
三つのしんが語彙的な要素、語根で、その間に母音が入ってくることになるので、
繰り返しですけど、語根というのが連続してないんですよね。連続対応なしでいません。
ある意味、語彙的な要素と文法的な要素というのをスパッと切ることができないんですよね。
こういったタイプの言語は、よく屈折語とか、あるいは融合語という言い方をすることもあります。
そういったタイプの言語もあるんだというね、そういったお話でございました。
エンディング
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローまだの方はよろしくお願いいたします。
お相手はしんが十五でした。