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本日のエピソードのテーマは、接近可能性階層でございます。接近可能性階層。
英語だと Accessibility Hierarchy という言い方をするんですね。これは相当マニアックというか、言語学をやる人間でないと、なかなか触れる機会がないというか、知ることがない用語ではないかと思います。
これは関係節の作りやすい名詞にある程度傾向があるというような、そういった言語普遍性の一つです。なんのこっちゃという感じだと思いますが、BGMです。
始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。ベニー・グッドマンです。
この接近可能性階層については、実は過去にエピソードをとったことがあります。
シャープ550と551で連続して、接近可能性階層とボイスというエピソードをとっていますので、これ聞き終わった後で、またこの関連エピソードも聞いていただけたらと思います。
この接近可能性階層というのは、金安と小森という二人の言語学者が指摘した階層性で、冒頭言ったように関係節になりやすい名詞というのにある程度序列があるんですね。
そもそも関係節とは何ぞやということですが、平たく言えば、文でもって名詞を修飾するというのが関係節です。
例えば、昨日買った本みたいな。これは昨日買ったという文的なものが本という名詞を修飾しています。
ここで昨日買ったというのが関係節で、本のことを主要部の名詞とかヘッドの名詞ということがあります。
今回のテーマである接近可能性階層が言っているのは、今の例で言うと本ですね。主要部。ヘッドの名詞になりやすいものに序列があるということで、
どういうことかというと、昨日買った本というのは、ある意味元の文に戻せば、昨日本を買ったですね。
つまりこの本というのは目的語にあたるわけです。
ただ、この主要部の名詞になれるのは目的語だけではなくて、昨日本を買った男という言い方もできますよね。
こちらも元の文に戻せば、昨日男が本を買ったですね。つまり男というのが主語にあたるわけです。
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こういうふうに主語や目的語、あるいはその他の要素、いろんなものが関係節の主要部、ヘッドになることができるんですが、
その主要部になりやすさというのが、世界の言語を見回してみるとランキングというのがあるんですね。
それが接近可能性階層です。
接近可能というのがちょっとわかりづらいですけど、ここでは関係節によって収束されやすい要素、そのような認識でいいと思います。
ランキング1位から順番に見ていきますと、関係節の主要部になりやすい要素、第1位は主語です。
つまり、昨日本を買った男、こういった言い方はいろんな言語でできると考えられます。
主要部になりやすい要素第2位が直接目的語です。
だから昨日買った本みたいなものですね。これが第2位。
第3位間接目的語、第4位社格語。
社格語っていうのは直接目的語でも間接目的語でもないその他って感じですね。
社格語が第4位、第5位が続格、つまり誰々のっていうやつですね。
英語だとwho'sを使うようなもの。
そして最後に比較の対象、英語だとthanを使うようなものですけど、
ちょっとね、日本語で考えるときにこの下の方、続格とか比較の対象とかわかりづらいんで今回あんまり触れませんが、
こういうふうにランキングがあります。
主語、直接目的語、間接目的語、社格語、続格、そして比較の対象。
このランキングが表しているのは単にランキングというよりは階層性になっていて、
つまりこの階層性の序列の中で、ある要素が関係説化できるんだったら、それよりランキングの高い階層性が上の要素も関係説化できる。
というのがキーナンとコムリの主張です。
すなわちある言語で、昨日買った本みたいな目的語を関係説化できるんだったら、
昨日本を買った男みたいな主語の関係説化もできると考えられるんですね。
あるいは、昨日男が本を貸した子供みたいなものは、これは元の文に直すと、
昨日男が子供に本を貸したというふうに、子供にという間接目的語にあたるわけですけど、
昨日男が本を貸した子供、こういう言い方ができる。
つまり、間接目的語を関係説化できるのであれば、直接目的語も主語も関係説化できる。
そういうふうに考えられるんですね。
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日本語の場合は今見たように、間接目的語を関係説化することができます。
昨日男が本を貸した子供、これが言えますので、
昨日買った本みたいな目的語も言えれば、
昨日本を買った男みたいな主語も言えると、
この接近可能性階層が日本語ではうまく当てはまっているということができます。
逆に言うと、階層性の上の方、
ランキングが高いものが関係説化できたとしても、
その下の要素、階層性の下のものが関係説化できるとは言えないんですね。
例えばマダガスカルで話されているマダガスカル語、マラガシ語と言われることもありますが、
この言語は、昨日本を買った男という言い方はできます。
つまり、主語を関係説化することはできるんですね。
ですが、第2位の直接目的語以下の要素を関係説化することはできないんですね。
これは非常に極端な例ですが、
マダガスカル語は主語しか関係説化することができないんですね。
それって結構不便だなという感じがすると思うんですよね。
つまり、昨日買った本とか直接目的語を関係説化した文がマダガスカル語では言うことができないということです。
日本語だったら何の意識もなくね、そういう言い方は平気でしているわけですが、
ただマダガスカル語でもそういう言い方ができないこともない。
では、昨日買った本というのをマダガスカル語でどのように表すかというと、
これは本というのが目的語だから、直接目的語だからダメなのであって、
これを主語にしてしまえばいいんですよね。
つまり、本を買ったを一旦本が買われたにしてしまえば、
昨日買われた本ということはできます。
なぜなら本が主語だからですね。
こういうふうに受動態というか受け身的なものを使って一回主語にしてしまえば、
マダガスカル語でも関係説化することができます。
この辺の話は関連エピソードで深く掘り下げていると思いますので、
もしかしたら例も同じようなものを使っているかもしれませんが、
ぜひこの後関連エピソードも聞いていただけたらと思います。
というわけでマダガスカル語というかマダガシ語というのは、
階層性の一番上、ナンバーワンの主語しか関係説化できません。
あるいはウェールズ語というのは主語と直接目的語しか関係説化できなくて、それ以下はダメ。
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あるいはバスク語、これはスペインとフランスの国境付近で話されている、
ヨーロッパ系ではないヨーロッパの言語なんですけど、
このバスク語は主語と直接目的語と間接目的語、ランキング第3位まで関係説化できるんですが、
それ以下は無理っていう風になってるんですね。
だからどんな言語でも主語っていうのは関係説化できると考えられています、おそらく。
主語は関係説化できないけど直接目的語はOKです。
主語と間接目的語は関係説化できますが、
ナンバー2の直接目的語は関係説化できません。
そういった言語は考えられないんですね。
こういった階層性というのが、接近可能性階層と言われるものです。
つまりその階層性、ランキングでギャップができるっていうのは想定できないということですね。
この接近可能性階層に限らず、階層性っていうのは言語学で結構問題になります。
いろんなものが指摘されています。
例えば、角田多作先生が提案した二項述語階層というものがあります。
この二項述語階層についても関連エピソードがあるので、ぜひ合わせて聞いていただけたらと思います。
言語っていうのがどの程度普遍的か、つまりどんな言語にも共通して見られる特徴は何かっていうのは、ずっと議論されていることですが、
この階層性っていうのもそういった取り組みの一つと言えると思いますね。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローまだの方はよろしくお願いいたします。
お会いしては、シガ15でした。
またねー。