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はい、シェアする落語のシケです。5月30日土曜日、西巣鴨・庚申塚、スタジオフォーにおきまして『立川談寛、東家千春のブツブツ交換会』に行ってまいりました。
これはですね、お互いの新作をネタ交換するという会です。落語と浪曲でのネタ交換というのは僕は初めてです。なかなかない会だというふうに思います。しかも新作ということでね。
で、オープニングトークは談寛師匠と千春さんのお二人が高座の前で立ちでお話をされていましたが、僕がですね、1月の31日だっけな、に仕切らせていただいた『立川談吉真打昇進壮行落語会』。このですね、舞台裏袖のところにもですね、東家千春さんがお勉強にいらっしゃっていたと。
どうもこの話が始まったのが1月らしいんですね。
で、その後4月の『談吉改め立川談寛真打昇進披露の会』お披露目です。にも袖にいらっしゃっていた。あと3月15日のパーティーですね。にもお手伝いできていたというところで、千春さんから談吉さん、改め、談寛師匠へのアプローチは結構あったんですが、
談寛師匠は台本を、文字の台本を読んだだけで、それを、実演を聴く、音を聴くっていうことはしてないんだそうですよ。で、音を聴かせてほしいって1回、千春さんにお願いをして、なんか1回それを千春さんがスルーしたと。なんかあんまり、自分としては恥ずかしくて聴いてほしくないみたいな。で、もう1回言われたら、お渡ししようかなと思っていたら、
2回目の催促がなかったので、そのまま談寛師匠は、千春さんがやったところを知らない文字の台本だけで、浪曲の落語化に挑んだということなんですね。
一方で、千春さんは、そうやって袖に勉強しに来てますから、このネタを聴いたわけではないかもしれませんが、談吉さん、改め談寛師匠の落語の演じ方みたいなところは見てきたというところなんですね。これがどういうふうにお互いの口演に影響を与えるかっていうのが、このあたり期待が膨らんできたところでございます。
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まずは、1席ずつ自作を自分で披露するというところで、千春さんからですね。4月にあった談寛師匠のお披露目の袖で、昔のホニャララにあったという話。結構衝撃的でしたけども、別にプライバシーに配慮してるわけではなくて、面白い話なのでちょっと伏せときます。
というところからですね、題名がなかなか定まらない噺『バカになる魔法にかけられた勝代』というですね。演目なのか?これ、と。なんか演目は二転三転してるみたいですけども、
この勝代というのは結構有名な勝代さんです。ビジネス業界で有名な勝代さんですね。私も間接的には知ってますけども、彼女本人とほぼ関係なく、できる女のイメージとして使われているわけですね。
このめちゃめちゃできる女だった勝代がですね、バカになる魔法をかけられてバカになってしまうという、そういう噺なんですが、バカになってどうなったかというところがですね、おそらく演劇をやってた頃の千春さんご自身を自らを茶化しているっていう、そういう感じがしますね。
そのあたりが面白いんですけど、とにかく千春さんは結構もう徹底的にキャラクターを造形して、キャラクターによって喋り方、声の高さを区別し、徹底的に切り分けますから、そこも落語とほぼ真逆のところなんですよね。
その徹底して、例えば今回の勝代に関してはですね、できる女でめちゃくちゃ早口で、かつカタカナの比率がすごい高いっていうのを徹底してやるんですよ。その徹底してやるところがですね、まあもう爆笑を呼ぶと、普通の言葉を喋っただけで、その喋り方が面白くて爆笑するっていう、そういう浪曲ですね。で、節が無駄に綺麗というところなんですね。
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で、めちゃめちゃバカ受けしたところで、談寛師匠が後から出てきまして、この談寛師匠がもうすごいやりにくそうな顔をしているわけですよ。ただこのやりにくそうな顔をしている時の談寛師匠というのは、やってくれるんですね。
何をかけるかっていうのは非常に難しいところだったんですが、やっぱりここは談寛師匠の一つの強みであるファンタジーでいくわけです。で、ファンタジーって何かというと『竹とんぼ』ですね。
で、この日やっぱり掛け声がすごいかかっているところから見て、千春さんのファンと両者のファン、どれぐらいの比率かわからないですけど、一定以上千春さんの結構熱狂的なファンの方がいらっしゃったんだと思うんですけど、その方々を唸らせるような談寛ワールドにみんな連れてってくれる、まさにイリュージョンの世界です。
フリーマーケットでキャベツを売っている。そのキャベツがNASAのキャベツであるっていうんですね。もうそこから始まっていく談寛イリュージョンの世界が炸裂して、全体としてはほのぼのとしたファンタジーなんですね。これはもう本当に素晴らしい。名作ですよね、『竹とんぼ』はですね。で、これでもうあの客のハートを鷲掴みにしてしまいました。
で、この後仲入りを挟んで3席目がいよいよですね、談寛師匠による東家千春作浪曲の落語家なんですね。これがですね、よりによってこのネタかというところなんですが『タケルとマミコのヨコハマ★ブギ』です。
このネタ僕は2回聴いてますけど、死ぬほど笑ってます。死ぬほど笑ってます。ある80年代前半ですかね、某なんとかトリオがですね、伏せなくていいか。
たのきんトリオがですね、超絶好調だった時代の映画で近藤真彦の喋り方と、ヒロインのこの作品がデビュー作になる武田久美子の喋り方が面白いので浪曲にしましたという、そういうやつですよ。だからその浪曲の不思議でバカバカしいことを大仰にやってしまうというおかしさと、あともう一つは、浪曲ですから情報はある程度ね、節の分だけ情報は減ってしまうわけですけども、
その中でもそのキャラクターごとの喋り方の違いを徹底して出すことによって、キャラクターをもう暴力的に描き出すっていうあたりが千春さんの面白いところなんですが、
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一方でこれ談寛師匠がね、かなり細かくすごくいいことを書いていて、これをあの落語と浪曲の違いを考える上でものすごく貴重なテキストになっています。
これは談寛師匠のハテナブログですね。2代目ダンカン、立川談寛のブログだったかな。リンクしておきますけど、ここにね、書いてあって、もうまさしくこの通りだなって思ったんですけど、
やっぱり作者ですから、どこをどう工夫したかっていうのが全部自分で言えるんですね。それをもう全部載せてきて、僕はもう先にその千春さんのバージョンを聴いてるんで、談寛師匠がどこに何を乗っけてきてるのかっていうのもやっぱある程度分かったんですけど、こうやって改めて書き出してくれてるとね、やっぱすごいことやったんだなっていうですね。
自分で言ってましたもん。今回は本当頑張ったって。いや頑張ってますよ。頑張った分だけ、元の千春さんのバージョンにはなかった面白さがバンバン出てきて、それはもう明らかに立川談寛ワールドなんですよね。
だからこれはね、本当に千春ファンにとっても衝撃だったと思います。例えば、武田久美子がやってるマミコですね。マミコが友達とカフェでお茶していて、パフェを頼むっていう。
で、浪曲だと情報量が乗せらんないんで、そこはパフェなんですよね。どんなパフェかっていうのをくすぐりで談寛師匠が乗っけてくるんですよ。それが普通の裏語ではなくて、談寛流のイリュージョンワールドですから、イリュージョンのものを乗っけてくるんですね。
ここで爆笑がバーン起きると。本当に談寛師匠が手掛けた新作の中でも、特にこれは今回笑いが多かったんじゃないかなっていうふうに思いますね。次から次へと繰り出される談寛ギャグが、この浪曲にはまるはまる。
これはですね、何度か僕はここで言ってることで、これ、どなたがおっしゃってたのかがね、どうしても思い出せない。多分上方のどなたかなんですけども、
あの、落語作家がいて落語をやるというケースがよくあります。特に上方の方が多いですね。最近では東京でもよくありますけど、ナツノカモ先生であるとか井上新五郎正隆先生であるとか、こういう落語を書く人が増えてきてるというところはあるわけですけど、
落語作家が作る台本というのは、その全体の3割なんだと。3割の土台がないと落語家はその上に7割を載せることができない。だからその落語作家が書くということにすごく意味があるということをおっしゃってたんですね。どなたかが。
で、これでいくとその自作自演というのは10割なんですけども、今回10割でやってた同士がその3割を提供したわけですよ。
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今回であれば、それこそ千春さんのテキストだけの文字情報だけの台本をもとに、談寛師匠がその7割を載せてくると。7割を載せる、何を載せてくるかというと、これは立川談寛でしかできないことを載せるべきであって、それがそのイリュージョンギャグなんですよね。イリュージョンギャグを細かくジャブのように載せていくことに、土台の上に載せていって7割を作っていくことによって、爆笑浪曲が爆笑落語になっていくっていうすごい瞬間を見ることができました。
で、一方で今度は千春さんが談寛作の落語を浪曲にするわけですけども、まず高座に上がって一番最初に言ってたのは「兄さんにトリ取ってもらえばよかった」。この気持ちはわかります。それぐらいバカーンと受けてましたから。
で、演目はですね、談吉時代の作品だから談吉作って書いてありますね。談吉作『竹取物語 ゆかり姫』という演目なんですが、これもまたそのイリュージョンの世界が強いわけです。
で、このイリュージョンの世界を今度は浪曲っていうのは節がある分、情報量が少なめになってしまうというところで、
談寛師匠が細かく詰め込んだイリュージョンギャグをどう整理していくか、一部はなくなって削り、一部は節に乗せるという作業をやっていくんです。だからどっちかっていうと今度はこれ引き算の作業になってくるんで、千春さんの個性は節回しであるとか、キャラクターの声の使い方であるとかそっちに出ていくんですね。この辺がまた面白い。
で、すごく面白かったのがお稽古をするわけですよ。お稽古は曲師さんと一緒にやるわけです。曲師は沢村理緒さんです。この沢村理緒さんが、曲師の皆さんはいつもそうなのかもしれないですけども、
お稽古の時になるべく三味線を弾きながらリアクションをしないようにしている。千春さんの浪曲はもう爆笑ですから、弾いている時に笑っちゃってもおかしくはないわけですけども、そこはもうこらえてリアクションで演者が噺を作っているところに変な影響を与えちゃいけないから、常にクールに三味線を弾いているということらしいんですけども、このゆかり姫に関しては千春さんが唸っているところで、理緒さんはお稽古の最中に笑っちゃったそうです。それは面白かったですね。やっぱり人間が不意打ちをされると笑ってしまうんですね。
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結局これもしっかり千春ワールドにはなって非常に面白い浪曲になったんですが、お互いの芸種の違いによって、お互いが乗せられる個性の出し方の差というのがすごく出てきた。これは非常に画期的だと思います。
同じようなことをやっているのは、春風亭昇輔さんと神田桜子さんが、お互いに昇輔さんが講談の台本を書き、桜子さんが落語の台本を書くということをずっとやっているんですね。ここでも落語と講談の芸種の違いというのがはっきりとわかってくるんですよ。
こういうアプローチは非常に興味深いし、お互いの演者がそれぞれすごくいい刺激を受けているのがわかるんですよね。だからやっぱりこういうことをやると大変だと思いますよ。自分でやるよりも大変だと思うんですけど、客も楽しいし、やってる方も自分の進化みたいなもの、新しい武器が手に入ったという実感があるんじゃないかなという気がすごくしましたね。
帰りがけにお二人に申し上げたのは、今度古典も交換していただきたいということですね。例えば『人情八百屋』という立川談志の得意ネタがありますが、これはもともと浪曲ですね。浪曲を落語化したものなんですよ。
これ前に立川談志の師匠と広沢菊春さん、美舟さんの会でも申し上げましたけど、これはもともと浪曲であるというのはすごく有名な話で、落語家と浪曲師って結構ネタ交換してるんですよね。なので自分で作ったネタをネタ交換するのとまた意味合いが変わってきますけども、古典をまたちょっとやってみていただけないかなっていうところで、千春さんも落語浪曲で『松山鏡』とかやってますから、古典やってみていただけると、これがまた別の面白さが出てくるんじゃないかなというふうに思った次第でございます。
一言で言うとものすごく楽しかったです。あれだけスタジオ・フォーが爆笑に溢れたというのは、本当に久しぶりに体験しましたね。ということで今後もお二人には注目でございます。シェアする落語の四家でした。ではまた。