狂人日記⑪/魯迅
作品名:狂人日記
作者:魯迅
翻訳:井上 紅梅
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/001124/card42936.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
BGMタイトル: そりのこし
作者: もっぴーさうんど
作者ページ: https://dova-s.jp/_mobile/_contents/author/profile060.html
DOVA - SYNDROME楽曲リンク: https://dova-s.jp/_mobile/bgm/play17520.html
10・15・20・23・31日更新予定
#青空文庫 #朗読 #podcast
【活動まとめ】 https://lit.link/azekura
作品名:狂人日記
作者:魯迅
翻訳:井上 紅梅
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BGMタイトル: そりのこし
作者: もっぴーさうんど
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サマリー
語り手は兄に、人類がかつては食人をしていたが、やがて改心して人間になった者と、そうでない者に分かれたと語る。しかし、人々は語り手を狂人扱いし、食人の秘密を隠蔽しようとする。語り手は、食人を行う者たちはやがて滅びるだろうと警告し、人々に真心を込めて戒めるよう訴える。
兄への語りかけ
10. 朝早く兄貴のところへ行ってみると、 彼は道門の外で空を眺めていた。
私は彼の後ろから近寄って門前に立ちふさがり、 いとも静かに、いとも親しげに彼に向かって行った。
兄さん、私はあなたに言いたいことがある。 お前、言ってごらん。
彼は顔をこちらに向けて頭を動かした。 私は二つ三つ話をすればいいのだが、うまく言い出せるかしら。
兄さん、たいてい初めの野蛮人は皆人を食っていた。
後になると心の持ち方が違ってきて、 中には人を食わぬ者もあり、
その人たちは太刀のいい方で人間になり変わり、 真の人間になり変わった。
またある者は虫けら同様にいつまでも人を食っていた。
またある者は魚鳥や猿に変化し、 それから人間になり変わった。
またある者は良いことをしようとは思わず、 今でもやはり虫けらだ。
この人を食う人たちは人を食わぬ人たちに比べてみると、 いかにも忌まわしい、はずべきものではないか。
おそらく虫けらが猿に劣るよりももっと華々しい。
エキガが彼の子供を無視して血中に食わせたのはずっと昔のことで、 誰だってよくわからぬが。
バンコが天地を壊滅してからずっとエキガの時代まで子供を食い続け、 エキガの子からずっとジョシャクリンまで。
ジョシャクリンからローソンで捕まった男までずっと食い続けてきたのかもしれない。
去年も城内で犯人が殺されると、老少病みの人が彼の血をまんじゅうに浸して食った。
あの人たちが私を食おうとすれば、まったくあなた一人ではほう返しがつくまい。
しかし、何も向うへ行って仲間入りをしなければならぬということはあるまい。
あの人たちが私を食えば、あなたもまた食われる。
結局仲間同士の食い合いだ。
けれどちょっと方針を変えてこの場ですぐに改めれば、
人々はたいへい無事で、たとい今までのしきたりがどうあろうとも、
私どもは今日特別の改良をすることができる。
何、できないとおっしゃるのか。
兄さん、あなたがやればきっとできると思う。
こないだ小作人が元素を要求したとき、あなたができないとはねつけたように。
最初、彼はただ礼招するのみであったが、
まもなく目がきみ悪く光ってきて、
彼らの秘密を解き破ったころには顔じゅうが真っ青になった。
表門の外には大勢の人が立っていて、
長じいさんと彼の犬もその中にまじって、
みなおそるおそる近寄ってきた。
あるものは顔を見られぬようにほうかぶりをしていたようでもあった。
あるものはやはりいつもの青面で出っ歯を押さえて笑っていた。
私は彼らがみな一つ仲間の食人種であることを知っているが、
彼らの考えがみな一様でないことも知っている。
その一種は昔からのしきたりで、
人を食ってもかまわないと思っているもので、
ほかの一種は人を食ってはいけないと知りながら、
やはり食いたいと思っているものである。
彼らは他人に説破されることを恐れているので、
私の話を聞くとますます腹を立て、
口を尖らせて礼招している。
この時兄貴はたちまち狂騒をあらわし、大活一生した。
人々の企みと警告
みな出て行け。
キチガイを見て何がおもしろい。
同時に私は彼らの巧妙な手段を悟った。
彼らは戒心しないばかりか、
すでに用心深く手配して、
キチガイという名を私にかぶせ、
いずれ私を食べる時に、
無事に辻妻をあわせるつもりだ。
みなが一人の悪人を喰った小作人の話もまさにこの方法で、
これこそ彼らの常用手段だ。
陳老後はプンプンしながらやってきた。
どんなに私の口をおさえようが、
私はどこまでも言ってやる。
お前たちは戒心せよ。
真心から戒心せよ。
うん。
わかったか?
人を喰う人は将来世の中に入れられず、
生きてゆかれるはずがない。
お前たちが戒心せずにいれば、
自分もまた喰いつくされてしまう。
仲間が増えれば増えるほど、
本当の人間によって滅亡されてしまう。
漁師が狼を狩り尽くすように、
虫けら同様に、
彼らはみな陳老後に追い払われてしまった。
重圧と最後の訴え
陳老後は私に勧めて部屋に帰らせた。
部屋の中は真っ暗で、
横張とたるきが頭の上で震えていた。
しばらく震えているうちに、
大いに持ち上がって私の体の上に退席した。
何という重みだろう。
跳ね返すこともできない。
彼らの考えは、
私が死ねばいいと思っているのだ。
私はこの重みが嘘であることを知っているから、
押しのけると体中の汗が出た。
しかし、どこまでも言ってやる。
お前はすぐに戒心しろ。
真心から戒心しろ。
うん、わかったか。
人を喰う奴は将来入れられるはずがない。
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