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おはようございます、鶴岡慶子です。この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。
視界やナレーションを通じて日々感じたことなどを語る声の日記です。日本の秋田県から毎朝更新しています。
熱海事件とハシレ・メロスの誕生
今日は、熱海事件についてお話をします。ご存知の方も多いと思いますが、女優のダン・フミのお父様って、ダン・カズオだよね、と私の姉が話し始めたので、そのお話をしたいと思います。
熱海事件は、ダン・カズオとダザイ・オサムのお話です。
ダザイ・オサムが熱海にこもって執筆をしていたところに、ダン・カズオがやってくるんですけれど、二人で飲みに行っちゃって、そのうちお金がそこをついてしまいます。
お金を苦面してくるということで、ダン・カズオを熱海に置いたまま、ダザイ・オサムは東京に行ってしまいます。
すぐに戻ると言っていたのに、二日経ち、三日経っても戻ってこない。
そして、やがて五日が経過します。
おかしいと思ったら、ダザイ・オサムはなんと東京で遊んでいたということで、当然これはダン・カズオとしては怒りますよね。
そのダン・カズオに対して、ダザイ・オサムがこう言ったんです。
待つ身がつらいか、待たせる身がつらいか。
この出来事を熱海事件と言うそうなんですが、この後生まれたのがおなじみのハシレ・メロスです。
おさらいしますと、
ハシレ・メロスのメロスっていうのは、親友を人質にして、三日後の日没まで帰ってくると約束をします。
もしも約束を守られなければ、親友は処刑されてしまいます。
この設定は、二人分の借金を押し付けられたダン・カズオと、金削をしてくると言って出かけたダザイ・オサムに置き換えてみて、結局ダザイは戻ってこなかったわけなんですが、
その事実を見てみますと、作品となったハシレ・メロスの見え方が変わってきませんか。
ダザイは戻ってこなかったんですが、ハシレ・メロスを描いた時、一緒に熱海で遊んで熱海に残してきてしまったダン・カズオのことをダザイ・オサムは思い出しながら描いたんでしょうか。
現に、新潮社出版のハシレ・メロスの後書きには、親友ダン・カズオと旅をし、共に金がなくなった時の苦しい体験がこの作品のきっかけになっているとあります。
メロスは情に熱くて約束を守ろうとする人物です。
そして、正義感が強くて家族を大事にする、そんな優しい人物として描かれています。
ダザイ・オサムはどう思ったんでしょうね。自分はああはなれないという理想像を描こうとしたんでしょうか。
ハシレ・メロスの結末と美しい友情
ハシレ・メロスの結末っていうのは、ご承知の通りメロスがちゃんと戻ってきて、何度も逃げたいと感じたことを親友に詫びているんです。
一方の親友の方も何度もメロスは戻らないんじゃないかと疑ったことを詫びているんですね。
このお互いを思う美しい友情、本当に感動的な作品なんですよね。
だから国語の教科書にも載っているんだと思います。
待つ身が辛いか、待たせる身が辛いか。
今日はアタミ事件のお話をしたんですが、
辛いのは待つ方か待たせる方か、ダザイ・オサムはそう言ったそうですけれども、
本当はハシレ・メロスを出すことによって約束を守りましょうという自分への戒めとしてその作品を生み出したのかなっていう気も、
この配信はアップルポッドキャスト、他各種プラットフォームでお届けしています。
冬型の気圧配置が続いて、ちょっと寒い日が続いていますが、どうぞ暖かくしてお過ごしください。
ではまた明日もお会いしましょう。
鶴岡恵子でした。