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こんにちは。想像してみて欲しいんですが、部屋に入った瞬間、床も壁も境界線がスーッと消え去って、自分自身が果てしない宇宙空間に放り出される感覚ですね。
いいですね、それ。
今回はですね、送ってくださった方からのレポートを読み解きながら、門川武蔵のミュージアムで開催された松本零士展、そして銀河鉄道99の圧倒的な世界に迫っていきます。
私も驚くような発見がたくさんありました。
はい。まずは1階の銀河鉄道99、ザ・ギャラクシー・エクスペリエンスですね。
これ、32台の4Kレーザープロジェクターを使っているんですよね。
32台、すごい数ですね。
そうなんですよ。単に映像を壁に映すっていう次元じゃなくて、立体音響と合わさって、文字通り99号が頭上を駆け抜けていくような体験なんです。空間全体をジャックするような。
なるほど。でも私が一番ハッとさせられたのは、送ってくださった方が、ベースとなった1979年の劇場版を初デートで見たっていうエピソードなんですよ。
青春の大切な思い出ですね。
そうなんです。だから、最新技術が作っているのは、ただの新しい映像体験じゃなくて、実は見る人の過去の記憶とか感情に直接アクセスするタイムマシンなんじゃないかなって。
いや、すごく興味深い視点だと思います。最新のプロジェクションマッピングがなぜこれほど感動を呼ぶかっていうと、圧倒的な没入感で物理的な現実を一旦遮断するからなんですよね。
現実を遮断ですか?
ええ。視覚と聴覚が完全に作品世界に支配されると、人は自然と内面に向かうんです。
自分の内面ですね。
そうです。つまり、初めてその作品に触れたときの強烈なノスタルジーとか、当時の自分自身の感情へと深く引きずり込まれる仕組みになっているんですよ。
なるほど。脳の仕組みごと、過去の宇宙に連れて行かれるわけですね。
まさにそういうことです。
いや、面白いですね。でも、そこから3階の松本霊辞典に進むと、今度はものすごく物理的で小さな世界に直面するじゃないですか。
ええ、原画の展示ですね。
はい。あの無限の宇宙が、実は印刷サイズとほぼ同じくらいのあんな小さな原稿用紙に描かれていたなんて、本当にびっくりしました。
デジタル空間の圧倒的な広がりから一転して、机の上の数センチの世界へ行くわけですからね。
ええ。
このスケール感のコントラストこそが今回の資料の醍醐味ですよ。
しかもですよ、彩色が普通の桜水彩絵の具なんですよね。
そう、皆さんおなじみのあの身近な絵の具です。
どうやったらあんな身近な画材と小さな紙から、私たちが知っているあの壮大で重厚なメカニックとか宇宙空間を生み出せるんですか?
ただ想像力がすごいだけじゃ私はちょっと納得いかないんですけど。
実はそこには明確な視覚的トリックと技術があるんですよ。
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トリックですか?
はい。松本先生の原稿をよく見るとわかるんですが、極端なベタ塗り、つまり漆黒の宇宙空間ですね。
それと極めて細い線で描かれたメーターとかリベットの緻密さ、このコントラストが異様に強いんです。
漆黒の面積と異常なまでの線の細かさの対比っていうことですかね?
その通りです。小さな紙の中に完全な暗闇とミクロの密度を同居させることで、人間の脳が勝手にその間の巨大な空間とかスケール感を錯覚して保管するんですよ。
へー、脳の錯覚を利用しているんですね。
ええ。それに桜水彩絵の具の淡い色使いも効いていて、冷たい宇宙空間の中に体温みたいな生々しさを残す効果を果たしているんです。
人間の錯覚すら計算されていたなんて本当に驚きです。だからこそ、印刷では潰れてしまうペンの筆圧とか絵の具のにじみみたいな生原稿を見ることに大きな意味があるんですね。
そうですね。作家の息遣いそのものですから。
ただ、送ってくださった方はご自身がすごく思い入れのある早川文庫のカバーイラストが展示されていなかったことをちょっと残念がられていましたね。
ああ、ファンにとっての作品体験ってストーリーそのものだけじゃなくて、どの本で出会ったかっていう個人的な記憶とは切り離せないですからね。
そうなんですよ。その個人的な繋がりの保存っていう文脈で、資料の後半に出てくる郡山市とのエピソードがすごく気になったんです。
郡山市のスペースパークですね。
はい。松本先生は2000年からそこの名誉館長を務められていた縁があって、送ってくださった方はそこに原画の常設展示を作ってほしいって熱望されているんですよね。
これ、文化遺産の保存っていう観点ですごくクリティカルな議論なんですよ。
と言いますと?
原画を東京の巨大な美術館の収蔵庫で一括管理する方が物理的な劣化を防げるかもしれないですよね。でもなぜ地方都市なのか。
ああ、なるほど。
それは長年育んできた地域コミュニティの熱量の中に作品を置くことで、単なる物質としてではなくて生きた文化としてファンとクリエイターの魂の繋がりが継承されるからなんです。
物理的な保管とコミュニティによる記憶の継承ですね。そのどちらが欠けても本当の意味での保存にはならないっていうことですか。
はい、その通りだと思います。
深いですね。
それでは送ってくださった方、そして聞いてくださっている皆さんに最後にこんな思考の種を共有したいと思います。
はい、何でしょう。
一人の偉大なクリエイターと地域との間に生まれた見えない縁。私たちはそれをただの思い出で終わらせず、どうすれば未来の世代へ引き継ぐシステムとして定着させられるのでしょうか。
答えのない問いですけれど、作品を愛する全ての人が向き合うべき、本当に重要なテーマですね。
次回の配信もお楽しみに。さよなら。