2022-05-16 08:10

人間・田中角栄(1) おやじが倒れた

元総理大臣の田中角栄が亡くなってから30年近くがたちます。裸一貫から権力のトップに登り詰めた「今太閤(いまたいこう)」。行動力と知識がある「コンピューター付きブルドーザー」。そして総理辞任後にロッキード事件で逮捕されても政界を牛耳った「目白の闇将軍」…。さまざまなあだ名がありました。その人間性の端々(はしばし)から、一つの戦後が浮かび上がってきます。

産経新聞に過去に連載された「戦後史開封」などを再構成してお届けします。案内役は、落語家の三遊亭楽八さんです

 

■この番組は
政治、経済、事件、スポーツ、文化、そして風俗・・・。
戦後の歴史の中から、印象深い出来事を再取材して、知られざるエピソード、報道されていなかった面に新たな光を当て、戦後を振り返ります。

 

【原作】「戦後史開封」(「戦後史開封」取材班 /産経新聞社・刊)
【番組制作】産経新聞社

 

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00:01
戦後史開封 人間 田中角栄
第1話 親父が倒れた
案内役は私、落語家の三遊邸落八です。
元総理大臣の田中角栄が亡くなってから30年近くが経ちます。
裸一貫から権力のトップに上り詰めた今太鼓。
行動力と知識があるコンピューター付きブルドーザー。
そして、総理辞任後にロッキード事件で逮捕されてからも
正解を牛耳った目白の闇将軍。
様々なあだ名がありました。
その人間性の橋梁から一つの戦後が浮かび上がってきます。
産経新聞に平成7年に連載された戦後史開封などを再構成してお届けします。
案内役は私、落語家の三遊邸落八です。
田中邸に住み込んでいる学生からだった。
先生が倒れられました。
え、畳の上か、廊下か、砂利の上か。
手洗いに立って気分が悪いと言い、布団に寝ようとした。
救急車を呼ぶな。
東京定心病院の鹿島正明先生に病院の車ですぐ来てもらい。
ナンバープレートは粘着テープで隠して、来客には普段通りに応対しろ。
バタバタ騒ぐな。
早坂は八重場に指示するとアタッシュケースを抱えてタクシーで田中邸に向かった。
早坂は俺が着く前に親父が死んでいたらどうしよう。
そればかり考えていました。
と振り返る。
閣衛は昏睡状態だった。
鹿島や看護船と東京飯田橋の東京定心病院に運んだ。
脇の出入口から集中治療室に入った。
早速脳の写真を撮りましたが左側は真っ黒。脳梗塞を起こしていました。
右手はダラン。左手はピクピク。言語中枢がやられているなと安全たる気持ちになりました。
早坂は手術できるか聞いた。
しかし東京定心病院に脳外科はなかった。
医師の一人があの先生に頼めばできるかもしれないとある東大教授の名を挙げた。
別の医師がしかしあの先生は共産党審査ですからとしぶった。
03:02
早坂は共産党でも何でもいい。まさか宮本健二も反対はしないでしょう。すぐ呼んでくださいと叫んだ。
やってきた東大教授に早坂は手術したら回復しますかと尋ねた。答えはゴブゴブ。
じゃあやってください。しかし手術には家族の承諾書が必要だという。
私のサインではダメですかと聞く早坂に教授はダメですときっぱり言った。
結局家族の承諾が得られず手術は見送られた。
あのとき手術をしていればと早坂は後々まで悔やんだ。
そのときの様子を早坂はこう語る。
閣衛を9階の特別室に入れることになったが特別室には前の建設大臣の渡辺英一が入っていた。
渡辺も田中派の一員だった。早坂は特別室に飛び込んだ。
渡辺は風呂に入っていた。バスタオルを腰に巻いただけの姿で飛び出してきた。
先生早坂です。申し訳ありませんが部屋を変わってください。事情は聞かないでくださいと頼み込んだ。
渡辺は2つ返事で承知。閣衛は特別室に入った。
早坂がおじさんおじさんと繰り返しても反応はなく閣衛の真似をした。
反応はなく閣衛の目は天井を見つめるだけだった。
早坂は中曽根内閣の総務長官だった後藤田雅春。田中派会長の2階でおすすむ。
それに田中派事務局長の小澤達夫に電話をして病院に来てもらった。
いずれも閣衛の腹心、懐がたななどと言われていた人たちである。
早坂は親父が倒れたことは政局に大きな影響を与えます。
ここは嘘800を並べて切り抜けるしかありません。
私が泥をかぶりますからと説得し軽い脳卒中として発表することになった。
3人はそれで結構ですと頷いた。
時計の針は午前4時を回っていた。
早坂は着替えを取り自宅に戻るため病院を出ると赤い三角の旗をつけたNHKの車が停まっていた。
知られてしまった。田中閣衛の政治生命はこれで終わるかもしれないと早坂はあんたんたる気持ちになった。
その場で早坂は閣衛の地元新潟の後援会越山会の青年部長星野勲に電話を入れた。
星野、驚くなよ。親父さんが倒れた。詳しくは朝6時のNHKニュースを見てくれ。
星野は妻を起こしそのまま寝ずに6時まで待ちニュースを見た。
06:03
星野は信じられませんでした。
私は前の日、そう2月26日に目白で先生にお目にかかっていたんですからと振り返る。
星野は26日朝から目白の田中邸にいた。陳情のためである。出てきた閣衛はすでに赤い顔をしていた。
朝から酒が入っていたんですよ。オールドパーをものすごく濃くして飲んでいました。
秘書が酒を取り上げようとするんですが聞かないんですね。
これは俺のだ。秘書のを取るなって。子供みたいでしょ。ジャブジャブという感じで飲んでました。
閣衛はこの濃厚則で一命は取りとめたものの、政治家としては致命傷である言語障害に襲われて影響力を急速に失った。
3年半後の平成元年10月、政界引退を表明した。
星野はあの時酒を取り上げておけばよかったと悔やんでいる。
第2話の次回は田中閣衛が酒に溺れた理由をお送りします。
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08:10

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