1. メディアは死んでいた -検証 北朝鮮拉致報道-
  2. 第7話 横田めぐみさん 後編
2022-03-17 13:38

第7話 横田めぐみさん 後編

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あなたは「拉致」をいつ知りましたか?

北朝鮮による日本人拉致を最初に報じたのは産経新聞でした。
40年以上前、若き一人の記者が凶悪かつ理不尽な国家犯罪を暴いたのです。
拉致報道の第一人者による著書「メディアは死んでいた」(阿部雅美著、産経新聞出版)を音声ドキュメント版でお届けします。

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拉致事件の被害者とその家族
第7話 横田恵美さん 後編
産経新聞社がお届けする音声ドキュメント 北朝鮮による日本人拉致事件
原作 産経新聞出版 安倍政美著 メディアは死んでいた 検証 北朝鮮拉致報道
2018年5月28日 初版発行 制作 産経新聞社
案内役は私、話科の劉邸一光です。
横田恵美さんの存在を知った安倍は、父親の茂さん、母親の崎恵さん夫婦から話を聞いた。
神奈川県内の横田家を訪ねると、恵美さんの父、茂さんが一人で留守番をしていた。
え?昔、あの記事を書いた人ですか?
17年前、近所の人が持ってきた産経新聞で、
安倍区産組、謎の蒸発、外国情報機関が関与、の記事を読んだ母、崎恵さんが、産経の新潟市局へ、
もしや、うちの娘も、と問い合わせに出かけたことをこの時知った。
茂さんは、二昔近くも前に、あの記事を書いた記者が現れたことに驚かれたようだった。
確かに、17年間も同じ事件に関わるなど、聞いたことがない。
というより、それほど長期に渡って継続する事件など、滅多にあるものではない。
私の場合、たまたまそうなっただけだ。
拉致が頭から消えたことはないが、一貫して執念深く追ってきたなどという、テレビドラマのようなことではない。
茂さんは、恵さんが通っていた中学校から自宅、日本海の浜までの地図を紙に丁寧に書き、長く保管してきた。
恵さん失踪を伝える新潟日報の切り抜き記事や、写真が大きく載る公開手配のポスターなどを示しながら、娘がいなくなった日の状況を細かく説明してくれた。
恵さん拉致を簡単に振り返る。
捜査の苦悩と報道の役割
昭和52年、1977年、11月15日の午後6時半前だった。
恵さんはバドミントンのクラブ活動を終え、仲間の友人2人と一緒にヨリー中学校の校門を出た。
新潟大学理学部跡地前のバス通りの坂道を日本海に向かって歩いた。
手には紺の手下鞄とラケットを入れた赤いスポーツバッグ。
つるべ落としの秋の日は遠に暮れ、通学路の街灯は頼りなかった。
校門から家までは500メートル足らず。
途中、友人一人とはすぐに別れ、もう一人とも家まで残り250メートルほどの交差点で手を振ってさよならした。
それが最後の姿だった。
そこから日本海に向かって150メートルの平次路を左に曲がれば、家までは残りわずか100メートル。
巡視艇やヘリコプターが出動して、陸海空から大捜索が行われ、ボランティアで参加したダイバーも海に潜ったが、何一つ見つからなかったという。
校門からめぐみさんの匂いを追ってきた警察犬は、自宅と目と鼻の先の平次路まで来て動かなくなった。
平次路から日本海、よりい浜までは300メートルもない。
両親はひたすらめぐみに似た少女を探し求めてきた。
雑誌・新聞の写真に面影の似た少女が写っていると、雑誌社・新聞社へ問い合わせた。
テレビのワイドショーの人探しコーナーには4度も出演した。新潟県から神奈川県に引っ越してからこんなこともあったそうだ。
新聞の地方版にある女流画家の古典開催の案内記事があった。
少女を描いた日本画が載っていた。とても似ている。
夫婦で展覧会へ出かけて実際に絵を見ると、やはりよく似ている。
めぐみはどこかで記憶を失ってモデルをしているのではないか。
画家に再会し直接確かめると全くの別人だった。
根拠のない曖昧な情報であっても万一に期待を繋いだ。
その夜のしぎるさんへの取材で鮮明に覚えている話がある。
めぐみさんの双子の弟の一人が秋に結婚を控えているが、行方知れずの姉がいることを向こうの家に言えずにいる。
めぐみさん拉致疑惑発覚後に催された披露宴では横田家のテーブルにめぐみさんの席も設けられて料理が並んだ。
と後に聞いた。
報道に伴う倫理的問題と報道の行方
20年前、13歳少女拉致。
北朝鮮亡命工作員証言。
新潟の失踪事件と告示。
韓国から情報。
1997年2月3日付。
産経長官一面中央の五段見出した。
リードと呼ばれる導入部の文章を引用する。
昭和52年に新潟県で失踪した女子中学生。
当時13歳が北朝鮮に拉致されていた可能性が2日までに強まった。
韓国当局側から日本政府公安当局にももたらされた亡命工作員の証言が少女の失踪当時の状況と告示しているためで、公安当局は重大な関心を示している。
実名官。
匿名官。
横田茂さん、酒井さん夫妻の意見が割れていることは知っていたが、横田恵美と実名で書いた。
中学の制服姿の写真も載せた。
恵美さんは風神のため中学の入学式を欠席したが、早くしないと桜が散ってしまうと、茂さんがその後に校門へ連れ出して撮った写真だという。
被害者・犠牲者を実名報道すべきか。
匿名報道にすべきか。
犯罪や事故・災害の報道につきまとう難題だ。
相反する意見がある。
実名報道の重要性
すべて匿名とすべし。
との極論もあるが、私は苦味しない。
匿名報道は、官公庁や警察の匿名発表、匿名社会へとつながり、情報捜査や知る権利の侵害へ向かう懸念を持つ。
実名で報じることによって、記事は事実の重みを伝えることができる。
読者や社会への訴求力を持つ。
性犯罪などの例外があることは言うまでもないが、記者という職に就いた時からずっとそう考えてきた。
被害者の名前は事実の確信であり、記事が本当かどうか、第三者による検証も可能になる。
もちろん考えた。
横田恵と実名で報じた場合と、顔も良心も見えず、具体的な成長過程などが明かされない場合と、読者や社会が示す反応はどう違うのか、違わないのか。
それによって救出への動きは、北朝鮮の対応はどう違ってくるのか、違わないのか。
家族は誰だって匿名を望む、と思われるかもしれないが、そうとは言い切れない。
名前が報じられることで娘のみに危害が及ぶのではないか、という先恵さんの心配は痛いほど分かっていたが、私は実名報道にこだわった。
横田家から匿名報道を要請された事実はないが、恵さんを顔の見えない少女Aとすることはできなかった。
家族との対立
実名派だった茂さんは次のように言われたと記憶する。
匿名では信憑性が薄れてしまう。危険なことがあるかもしれないが、本名を公開して、輿論に訴える方がいいと思う。
双子の弟たちは、このことが報道されれば自分たちの将来に悪い影響があるんじゃないかと悩んでいた。
でも恵には何の落ち度もないのです。これは我が家の恥ではないのだと説得して分かってもらいました。
課長として苦渋の判断だったと思う。
この作品は、元産経新聞・社会部記者・安倍政美による著書、メディアは死んでいたを再構成したものです。
第8話 再開
産経の拉致報道が正しいことが証明されます。
では、次回。
あなたは拉致をいつ知りましたか。
13:38

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