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こんばんは、今夜もまた、おやすみ歴史ラジオの時間がやってきました。 ベッドに入って、一番リラックスできる姿勢で聞いてね。
前回は、後代将軍である綱吉が、どれほど周囲に誤解され、歴史の悪者として指を刺されようとも、全ての命を慈しむという父の遺言を貫き通した姿を見てきましたね。
彼が命懸けで残した優しさの種は、やがて世界で最も治安が良いとされる穏やかで美しい江戸の街を作り上げました。
それから約150年の歳月が流れ、人々が長く心地よい平和の眠りを貪っていた、ある夏の日のことです。
その穏やかな眠りを一瞬にして吹き飛ばすような、巨大な黒い影が、青い海を切り裂いて日本の海岸へと近づいてきました。
それこそが、アメリカという遠い異国からやってきた、大きな大砲をいくつも積んだ黒船の艦隊であり、その艦隊を率いていたのが、今回の主人公であるマシュ・ペリーです。
後に日本の歴史を大きく動かし、鎖国という古い扉を無理やりこじ開けた乱暴な侵略者のように語られることになるペリーですが、彼の本当の姿は全く違っていました。
彼は、アメリカの海軍の中で誰よりも厳格で、誰よりも部下を思いやり、そして、当時の最新のテクノロジーである蒸気船の可能性を誰よりも信じていた、一人の孤独な老軍人だったのです。
ペリーが日本の裏側の沖合に姿を現した時、彼はすでに60歳近い年齢になっていました。
当時の年齢としては、もう十分に殷居して家族とのんびり過ごしていてもおかしくない老強です。
実際彼の体は長年の過酷な航海によってボロボロに傷ついており、重い寿命の痛みに毎日激しく苦しめられていました。
そんな彼が、なぜ命を縮めるかもしれない決死の覚悟で、わざわざ地球を反襲するほどの危険な大航海に挑み、未知の国である日本を目指したのでしょうか。
ペリーがボロボロの体に鞭を打ってまで、この極東の小さな島国を目指したのには、アメリカという若い国が抱えていた切実な理由がありました。
当時、世界中で鯨を捕る捕鯨の産業が盛んになっており、アメリカの船もまた太平洋の広い海へと次々に進出していたのです。
しかし、長くて過酷な航海の途中、激しい嵐に巻き込まれて船が壊れたり、飲み水や食べ物が底をついたりした時、太平洋の真ん中で船乗りたちが命を落とす危険が常につきまとっていました。
船の燃料となる石炭や、命をつなぐための新鮮な水、そして食料を補給できる安心な港が、広い海のあちこちにどうしても必要だったのです。
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その補給地として、太平洋のまさに要所に位置していたのが、長く門を閉ざし続けていた日本という国でした。
もしも日本がこのまま堅くなに門を閉ざし続け、嵐で遭難した我が国の船乗りたちを見捨てるというのであれば、それは見過ごせない。
自国の人々の命を守るため、そして新しい海のルートを開くため、何としても日本の扉を開け放たなければならない。
それは、大統領からペリーに託された国の一大運命を懸けた絶対に失敗の許されない極秘の任務だったのです。
出発の前、ペリーは自分の書斎にこもり、日本に関するあらゆる書物を集めて、夜を徹して読み込みました。
相手は200年以上もの間、異国との関わりを断ち切ってきた未知の国です。
ただ優しい言葉で頼み込んだところで、まともに話を聞いてくれるはずがない。
ならば、当時の最高峰の科学技術である蒸気船の圧倒的な異様を見せつけ、まずは相手の度肝を抜くしかない。
ペリーは、自らを冷徹な交渉人として演じ切る冷たい仮面を、その心に深くかぶる決意をしました。
すべては、国を背負う軍人としてのプライドと、預かった部下たちの命を守るため。
激しい体の痛みに耐えながら、ペリーは漆黒に塗られた巨大な軍艦の甲板に立ち、水平線の向こうにあるまだ見ぬ日本へと向けて、嵐の海へと静かに漕ぎ出していったのです。
そうして、何ヶ月にも及ぶ命がけの後悔を経て、ペリーの率いる四隻の黒船は、ついに日本の浦賀の沖合へと辿り着いたのです。
それは、穏やかな初夏の日の夕暮れ時のことでした。
海を突き進む巨大な船の煙突からは、真っ黒い煙が黙々と立ち上がり、船体はまるで夜の闇を切り取ってきたかのように、重々しい漆黒に染まっていました。
それまで、風の力で進む木造の小さな白い帆船しか見たことがなかった江戸の人々にとって、蒸気の力で不気味な音を立てながら進むその鉄の塊は、まるで海から現れた怪物のように見えたに違いありません。
江戸の街中がひっくり返ったような大騒ぎになり、武士たちも町人たちも、恐怖と混乱の渦に巻き込まれていきました。
しかし、その騒ぎを黒船の艦長室から静かに見つめていたペリーの心の中もまた、決して穏やかではありませんでした。
もしも日本側がこちらの要求を完全に拒絶し、一斉に大砲を打ち込んでくれば、その瞬間に激しい戦争が始まってしまう。
ボロボロの体に鞭を打ち、持病の激痛を耐えながら、ペリーはただじっと、日本の役人たちが交渉のテーブルに着くのを待っていました。
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彼は決して、日本という国を滅ぼし、人々を傷つけるためにやってきたわけではありませんでした。
ただ、新しい時代の荒波の中で、自国の人々の命を守る港が欲しかった。
そして、堅くなに眠り続けるこの東洋の島国に、世界がどれほど広く、どれほど急速に変化しているかという現実を、突きつけなければならなかったのです。
すべてを恐怖でねじ伏せる侵略者という悪役の仮面をかぶりながら、ペリーは静かに、時代の扉にその大きな手をかけました。
さあ、突然現れた巨大な黒船を前に、長く平和に眠っていた江戸の町は、一体どのようにしてこの国難に立ち向かっていくのでしょうか。
それはまた、次のお話、今夜のお話はこれでおしまいです。
国からの重い使命を背負い、病の痛みと戦いながらも、未知の海の向こうへと突き進んだペリーの、孤独で堅くなな覚悟にそっと思いを馳せながら、今夜はどうか、すべての緊張をほぐして、暖かいお布団の中でゆっくりと深い眠りについてくださいね。
それでは、おやすみなさい。