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今晩は、今夜もまた、おやすみ歴史ラジオの時間がやってきました。 ベッドに入って、一番リラックスできる姿勢で聞いてね。
さて、西郷隆盛の物語も、今夜で第3話。 いよいよ激動のクライマックスへと向かっていきます。
前回は、新しい主君である島津久光の怒りを嗅い、 さらに過酷な地獄の島へと二度目の島流しにされてしまった隆盛の苦難を見てきましたね。
狭い牢屋の中で生死をさまよいながらも、 全てを包み込むような広い心、敬天愛人の境地へと達した隆盛。
時代の強烈な要請によって呼び戻された彼は、 ついに歴史の表舞台へと完全復帰を果たしました。
島から帰ってきた隆盛を待っていたのは、 まさに地獄のように混乱した京都の街でした。
当時の薩摩藩は過激な行動を繰り返す長州藩と激しく対立しており、
ついに京都の御所の前で薩摩と長州が直接大砲を撃ち合うという、 金門の変と呼ばれる大戦争が勃発してしまいます。
高森は薩摩軍の総隊長として前線で指揮を取り、 圧倒的な武力で長州軍を打ち破りました。
この戦いによって長州藩は朝廷に弓を引いた大逆賊として日本中から孤立し、 幕府から徹底的に叩き潰される寸前まで追い詰められることになります。
薩摩と長州、両者の間にはお互いに多くの仲間を殺し合ったという、 絶対に埋まることのない深く地に染まった溝が出来上がってしまったのです。
しかし、そんな誰もが敵味方に分かれて憎しみ合っていた絶望の時代に、 一人の男が高森の元を訪ねてきました。
それこそが、あの年の脱藩浪人、坂本龍馬でした。
龍馬は、このまま日本人同士が憎しみ合って戦いを続けていれば、 その隙を突かれて異国に日本が乗っ取られてしまうという、強い危機感を抱いていました。
そして、日本を救うためには、今最も強い武力と財力を持つ薩摩藩と、 最も激しい投資を持つ長州藩が、過去の恨みを捨てて手を結ぶしかないという、 誰もが不可能だと笑うような大逆転のアイデアを持っていたのです。
初めて高森と対面した龍馬は彼のことをこのように評価しました。
西郷という男は、大きな鐘のような人だ。
小さく叩けば小さく響き、大きく叩けば大きく響く。
地獄の島を生き抜き、そこ知れない器の大きさを身につけた高森は、 龍馬の命がけの提案をじっと静かに聞いていました。
坂本龍馬が持ってきた薩摩藩と長州藩が手を結ぶというあまりにも大胆な策。
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高森は、その言葉の裏にある龍馬の並々ならぬ覚悟と、 日本の未来を見据えた圧倒的な先見性を、その深い目で見抜いていました。
よし、その策、乗った。
高森は、かつて力でねじ伏せたはずの長州藩を救い、 共に新しい国を作るための巨大な決断を下したのです。
こうして京都の秘密の邸宅で、薩摩藩の代表である高森と、 長州藩の代表である桂小五郎が、歴史的な対面を果たすことになりました。
しかし、いざ二人が向かい合うと、 部屋の中には凍りつくような重苦しい沈黙が流れました。
それもそのはずです。
つい先日前まで、京都の町で激しく血を流しあって戦った宿敵同士なのです。
長州藩の桂小五郎は、幕府から追い詰められて滅びかけているという弱みを見せまいと、
激しいプライドをむき出しにして、 自分たちからは決して助けてくれとは口にしませんでした。
一方で、薩摩藩の他の幹部たちも、
なぜ自分たちがかつての裏切り者である長州を助けなければならないのかと不満を募らせていました。
話し合いは一歩も進まないまま、何日もの時間が虚しく過ぎていきました。
しびれを切らした坂本龍馬が部屋に飛び込み、
長州のプライドも薩摩のメンツもそんな小さなことにこだわっている場合か、と激しい怒りをぶつけました。
今ここで手を結ばなければ日本は本当に終わってしまうのだと、命がけで二人に訴えかけたのです。
龍馬の熱い叫びを聞いたとき、高森はじっと閉じていた目を開けました。
そして隣に座っていた薩摩の仲間たちの反対を押し切るようにして、
静かにしかし自響きがするような重みのある声で、かつら小五郎に向かってこう言ったのです。
わかり申した必要な武器も米も、すべて薩摩の命義で手配いたしましょう。
長州の皆さんが戦うための力は、私たちがすべて保証します。
それは、もしこの同盟が幕府に知れ渡れば、薩摩藩そのものが滅ぼされかねない、まさに命がけの約束でした。
すべての責任はこの西郷が引き受ける、地獄の島で生死をさまよい、
自らの命をすでに天に預けていた高森だからこそ、
自分の藩の利益やメンツを完全に捨て去り、
日本という国全体の未来のために、この巨大なリスクをすべて背負うことができたのです。
高森がすべてを背負うという凄まじい覚悟を示したことで、
ついに不可能と言われた薩長同盟が結ばれました。
この歴史的な大逆転劇をきっかけに、時代の歯車は一気に加速していきます。
勢いづいた薩摩と長州は、ついに幕府を打倒し、
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天皇を中心とする新しい明治政府を立ち上げることに成功しました。
しかし、2万を超える幕府の巨大な大軍が、
新政府を叩き潰すために江戸から京都へと押し寄せてきたのです。
日本人同士が再び激しく血を流し合う、母親戦争という最後の巨大な内戦が幕を開けました。
高森は、新政府軍の総対象として前線に立ち、
圧倒的な作戦勝ちによって幕府軍を江戸へと追い詰めていきました。
そして、新政府軍がいよいよ幕府の本拠地である江戸城へと総攻撃を仕掛けようとした、
まさにその直前のことです。
もし江戸の街で大戦争が始まれば、
100万人の罪のない江戸の民衆が戦火に巻き込まれ、
街は完全に焼き尽くされてしまいます。
さらに、その混乱に乗じてイギリスやフランスといった異国が
日本を植民地にするために攻め込んでくるという最大の危機が迫っていました。
この未曾有の危機を前に、幕府の代表であった葛藩衆は、
高森のもとを訪れ、命がけの直談判を試みました。
戦争を避けて江戸の街を救いたいという葛藩衆の必死の訴えを、
高森はじっと黙って聞いていました。
もしここで攻撃を止めれば、長年戦ってきた仲間たちから、
なぜ敵を逃がすのかと激しい非難を浴びることは確実でした。
総大将としてのメンツも、これまでの苦労も、
全てが水の泡になるかもしれないという張り詰めた状況でした。
しかし、高森の心は、かつて沖の選ぶ島の牢屋で達した
景天愛人の境地のままでした。
自分の立場がどうなろうとかまわない、
大事なのは日本という国の未来であり、そこに生きる民の命なのだ。
高森は、静かに葛藩衆の手を握り、
全軍に向けて江戸城への総攻撃を今すぐ中止せよ、
という驚くべき命令を下しました。
これによって、江戸の街は一つの火をあげることもなく平和に引き渡され、
百万人の命が救われるという、世界の歴史にも類を見ない奇跡、
江戸城無血会場が成し遂げられたのです。
誰よりも情が厚く、誰よりも大きな覚悟で、
誰もが想像もしなかった平和な夜明けを日本にもたらした高森。
しかし、新しい明治の時代が始まった時、
このあまりにも優しすぎた英雄を、
誰も予想しなかった悲劇的な運命が待ち受けていたのです。
しかし、そのお話はまた次のお話。
今夜のお話はこれでおしまいです。
自分の名誉やメンツをすべて捨てて、
ただひたすらに人々の命を救うために生きぬい戦森の大きな優しさにそっと包まれるように、
今夜はどうか、すべての不安や緊張を解きほぐして、
静かで穏やかな眠りについてくださいね。
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それでは、おやすみなさい。