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【7月15日放送分】PodCast_20260715_2105
2026-07-15 10:12

【7月15日放送分】PodCast_20260715_2105

琴音の音cafe-朗読タイムー の最新エピソードです。

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00:07
琴音の音カフェ
今夜の朗読は、タイトル 幸せ味のクッキー
作者は琴音です。 ここは町外れにある古いレンガ作りの小さなお菓子屋さん
木漏れ日です。 古びた看板が風に揺れるこの店を切り盛りするのは
双子のハリネズミ ハリーとプリンです。
兄のハリーは気長面で職人気質 オーブンの温度を一度単位で管理し小麦粉の産地やバターの溶け具合
生地のサクサクとした食感に至るまで 完璧を求める完璧主義者です。
対する妹のプリンはお天馬で好奇心旺盛。 ハリーが軽量スプーンで粉をはかる横で
今日はこのくらいの日だまりの匂いがあればいいんじゃない? と直感で森の草花のエッセンスを加えてしまうような自由人です。
そんな正反対の二人が焼くクッキーには不思議な噂がありました。 木漏れ日で作ったクッキーを食べると忘れていた自分の幸せな記憶が蘇るというのです。
ある金曜日の夜、広告代理店で働く葵は極度の疲労に包まれていました。
クライアントからの理不尽な要求、チームのトラブル、そして締め切りに追われる日々。
やっと仕事が終わり電車から降りる時、葵の体は鉛のように重く、心はすっかり乾ききっていました。
さっきからスマホが鳴り止みません。ため息をつきながら画面を見ると、すべて上司からのメッセージでした。
反射的に電話に出ましたが、自分の名前を呼ぶ上司の声すら、今は遠くの雑音にしか聞こえませんでした。
あれ、私どこを歩いているんだろう。どうやら見慣れない道に迷い込んでしまったみたいです。
葵の足は吸い寄せられるようにひっそりと佇む一軒の店の前に立っていました。葵はそっとドアを押しました。
03:12
カランコロンという優しい音とともに、店内にあふれていたバターと焼きたての小麦、そしてどこか懐かしい森の香りが冷え切った葵の体をふわりと包み込みました。
いらっしゃいませ。今夜は特に冷えますね。お疲れのようですね。
カウンターの奥から顔を出したのは、小さなエプロンをつけたハリネズミの双子でした。兄のハリーが丁寧に礼儀正しくお辞儀をし、妹のプリンがぴょこんと跳ねるようにして、葵の前に焼きたてのクッキーを置きました。
それは四つ葉の形のクッキーでした。お題はいりません。その代わり一口でいいからゆっくり味わってください。プリンがいたずらっぽく微笑みながら話しかけてきました。
葵は少し警戒しながらもそのクッキーをゆっくりと口に運びました。サクッと心地よい音がした瞬間、葵は目を見開いたまま言葉を失いました。口の中に広がったのはお菓子の味だけではありませんでした。
何年も前のあの日の朝の空気、早朝のキッチンに差し込む柔らかい光、そこにはまだ幼かった二人の娘の姿がありました。
寝癖のついた髪を揺らしながら、「まあまあ今日の卵焼き四つ葉のお花みたいな形だね。」と笑いかけてくれたあのキッチン。忙しさで余裕なんてなかったはずなのに。
それでも卵焼きをまく手に込めたおいしく食べてほしいという純粋な思い、焦げついてしまった一口分をママの分ねとこっそり隠して食べたあの時の胸の温かさ。
あんなに大切で何よりも暖かい時間だったはずなのに、最近は日々の業務、農機、終わりのない評価に追いかけられるうちに葵はすっかり忘れてしまっていました。
06:07
自分が誰かを心から愛し、そして誰かに必要とされていたという幸せな時間を頬を伝う一筋の雫に葵は驚きました。
恥ずかしさよりも先に胸の奥底でカチリとパズルの最後のピースがはまるような音がして深い安堵感が広がっていきます。
張りつめていた糸が静かに溶けていくのがわかりました。
おいしい。本当に懐かしい味がするわ。
葵がつぶやくと、ハリーが静かに微笑みました。
このクッキーの隠し味はね、誰かを思って笑った瞬間の記憶を僕たちが少しだけ魔法で練り込んだものなんだ。
君の心の中にずっとしまわれていた宝物だよ。
私たち特別なことは何もしてないの。
ただあなたが持っているその温かさを思い出せるように手伝っただけ。
プリンが優しくつけ加えます。
店を出ると冷え切っていたはずの夜風がなぜか春の陽気のように心地よく感じられました。
カバンの重さは変わらないはずなのに、今の葵にはまるで羽が生えたかのように体が軽く感じられます。
葵はスマホを取り出してずっと通知を無視していた家族のグループのトーク画面を開きました。
画面の向こうには待っていてくれる日常があります。
今度の休みの日は久しぶりに夜中までお菓子を食べながら三人でパジャマパーティーで女子会をしない?
そう打ち込んで送信ボタンを押したとき、
街はずれの夜空に木漏れ日のような柔らかな月の光が差し込みました。
お菓子屋さん木漏れ日の窓辺からハリーとプリンが見守っています。
ハリーは満足げにオーブンのタイマーを止め、プリンはまた新しい誰かの幸せを探しに森の奥へと駆け出しました。
09:00
誰かの心にある忘れてしまった幸せを明日もまた彼らは静かに焼き上げ続けるのです。
忙しい日々を生きる全ての人のために、その小さなお店は今日という日も森の奥で扉を開けています。
もしあなたが何かを見失いそうになったら、あるいは少しだけ心が疲れてしまったら、きっとどこかでハリーとプリンの焼くクッキーの香りがあなたを呼んでいるはずです。
その時は迷わず扉を叩いてください。
温かい記憶とささやかな幸せがそこでいつもあなたを待っています。
おしまい。ありがとうございました。
アフタートークは次のコーナーです。
10:12

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