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琴音の音cafe 今夜の朗読
タイトル 誰だっけ
作者は琴音です。 深夜3時
枕元のスマホが小さくピコンと光った。 寝ぼけまなこで画面を覗き込むと、そこには見覚えのない宛先からのメッセージが一見。
私も行きます。
あれ?誰だっけ?
夜更かしをして、くだらない動画でも見ていたせいで、知り合いの誰かがジョークを送ってきたのだろうか。
それともグループチャットの誤爆だろうか。
画面をスクロールして送信者の名前を確認しようとしたが、表示されているのは奇妙な文字列だった。
文字化けなのだろうか。それもアドレス帳のどこにも登録されていない、完全に未知の連絡先。
部屋の中は静まり返り、聞こえるのは自分の浅い呼吸音と冷蔵庫の低い唸り声だけだった。
おせえ、だよね。
スマホを伏せようとした瞬間、再び画面がまぶしく光った。
今度は通知ではなく新しいメッセージがリアルタイムで受信されたのだ。
すぐ後ろに居ます。
背筋に凍りつくような冷気が走った。
心臓がうるさいほど激しく波打つ。
喉の奥がカラカラに乾き、唾液を飲み込むことすらうまくできない。
まさか、そんなはずはない。
この部屋はマンションの最上階。
鍵は確実に閉め切っている。
侵入者など入れるはずがない。
おそるおそり、ゆっくりと、本当にゆっくりと、背後を振り返ろうとした時、
枕元にさっき放り投げたスマホから、けたたましく着信音が鳴り響いた。
画面に表示された着信音は、友達からだった。
通話ボタンを押す指が、さっきの動揺からか激しく震えて止まらない。
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震える指で通話ボタンをスワイプし、耳元へとスマホを近づけた。
早く友達の声を聞いて安心したい。
「もしもし。」
かすれた自分の声が、真夜中の部屋にぽつりと溶ける。
しかし帰ってきたのは人間の声ではなかった。
耳元で聞えるのは風が通り抜けるような乾いた音と、
まるで古いレコードの針が擦れるようなかすかなノイズだけだ。
いやノイズじゃない、それは息の音だ。
それも一人分ではない、無数の途切れ途切れの、
しかし確かにそこにいる者たちの呼吸音が、
地脇の向こうから幾重にも重なって押し寄せてくる。
人数変更なしね。
唐突に耳元でクリアな声が響いた。
聞き覚えのあるようなないような、ひどく冷たい女の声だった。
声の主は電話の向こうからではなく、
まるでこの部屋のすぐ目の前から話しかけているかのように鮮明だった。
誰、あんた一体、返事はない。
ただ地脇の向こうでザッ、ザッと砂利を踏みしめるような足音が近づいてくる。
同時に部屋の空気が急速に冷えていった。
吐く息が白く染まる。
エアコンは切ってあるはずなのに窓の隙間からスーッと冷たい夜風が流れ込み、
カーテンが不気味に揺れた。
私も行きます。
スマホの画面を見ると先ほどのメッセージの送り主が、
いつの間にかグループを作っていた。
参加者一覧に並ぶアイコンはすべて黒塗りで、
名前の欄にはこの世のものとは思えない文字がずらりと並んでいる。
一番下の欄に自分の名前が追加されていた。
目的地、よもつ平坂。
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現在の参加者、十名、全員揃いました。
えっ、私も参加することになってる。
待って待って待って待って。
慌てて画面を閉じようとしたが、タッチパネルが反応しない。
電源を何度連打しても、画面は不気味に明るさを増すばかりだ。
その時、背後の闇の中からカチリと音が聞こえた。
それは部屋のドアノブが回る音だった。
ガチャリと重いラッチが外れる。
鍵をかけたはずの玄関の扉がゆっくりと音もなく内側に向かって開き始める。
暗がりから伸びてきたのは月明かりをも吸い込むようなどこまでも黒く冷たい無数の影だった。
彼らは足音もなく床を踏みしめこちらへと歩み寄ってくる。
その扇頭に立つ何かがスマホの光に照らされてふっと姿を現した。
それは顔のない、ただ白い着物だけをまとった人影だった。
人影は私の耳元で鳴り続けるスマホの向こうの主と同じ、全く同じ声でゆっくりと
さあ、出発の時間です。
逃げ出そうと足を踏み出そうとしたが、地に根が生えたように一歩も動かない。
影たちがすぐ目の前まで迫り、冷たい腕が私の肩にそっと触れた。
真夜中3時、見知らぬ誰かからの私も行きます、という通知は招待状だったのだ。
拒否権など最初から用意されていない、終わりのない旅への確かな切符だった。
おしまい。
ありがとうございました。
今日の朗読、誰だっけ?
私の友達とLINEのアイコンがある日、突然真っ黒になってて、
もうめちゃくちゃ怖くて何かあったのかなってドキドキしてしまったことから、話をちょっと広げてみました。
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まあね、私の友達はさ、単に黒くしたかったらしい。それだけだったんですけど。
一人ね、私大騒ぎになってました。
昔さ、知らない人たちが作ったグループになぜか入ってしまう現象ってリスミミちゃんなかった?
同じ経験した人いるよね絶対に。
あれってさ、何だったんだろうね。不思議よね。
なんか知らないうちにさ、全く関わったこともないような名前の人たちのグループLINEにさ、入れられちゃうっていうね。
それも恐怖だったよね。
なんかその辺を交えてちょっとね、話をね、作ってみました。
なんかこう、脅かすような声を出してもいいかなと思ったんだけど、
なんとなく普通に喋ってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
聞いてくれてありがとうございました。