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#65 ウマ娘・刀剣乱舞|なぜ日本人は擬人化を推すのか?
2026-09-28 27:45

#65 ウマ娘・刀剣乱舞|なぜ日本人は擬人化を推すのか?

ウマ娘、刀剣乱舞、はたらく細胞、アンパンマン。
日本人はなぜ、動物や道具、細胞にまで心を感じ、「推し」として愛するのでしょうか?

今回は「擬人化」と「推し活」のつながりを、文化の歴史と身近な作品からひもときます。
鳥獣戯画や付喪神から、初音ミク、艦これ、刀剣乱舞、ウマ娘まで。キャラクターへの「好き」が、学びや旅、文化財や引退馬の支援へと広がる背景を、矢澤綾乃がお話しします。

▼ 今回の聴きどころ
・日本の文化に根づく「物に心を感じる」感覚
・アンパンマンや海外作品から考える、擬人化の違い
・「推し」が歴史や体の仕組みを知る入り口になる理由
・キャラクターへの愛が、現実の世界を動かすとき

▼ チャプター
ごあいさつ・近況報告
擬人化と推し活
鳥獣戯画と付喪神
アンパンマンとトーマス
ネットで広がる擬人化・初音ミク
好きが学びの入り口になる
艦これと地域のつながり
刀剣乱舞と文化財
ウマ娘と引退馬の支援
海外との比較から考える3つの視点
けものフレンズと世界への広がり
まとめ

あなたが初めて好きになった「擬人化キャラクター」は誰ですか?
作品がきっかけで訪れた場所や、知りたくなったことも、ぜひコメントで教えてください。SNSでの感想は #推し活未来研究所 へ。

▼ 番組について 🎧
『推し活未来研究所』毎週月曜あさ7時配信!
ビジネスとカルチャーをつなぐ「推し活」の世界を、ほっこりトークでお届けします。
Z世代の推し消費、社内のエンゲージメント、ファンに推されるブランドやサービスづくりなど、身近な話題をゆるっと深掘り。聴くと元気が出て、明日へのちょっとした活力になる番組を目指しています。

▼ パーソナリティ
矢澤 綾乃|株式会社KAZAORI代表取締役・現役ベーシスト
ファンやコミュニティの「好き」や「熱量」を起点に、マーケティング支援、ブランドプロデュース、新規事業開発などを手掛ける。推し活の記念日やイベントを彩るバルーン事業も展開。
ミュージシャンとしてライブサポートやレコーディングにも参加し、アーティスト側とファン側、両方の経験から「推し活×ビジネス」の可能性をお届けします。

▼ 応援&メッセージ 📣
ご感想や推し活エピソード、番組で取り上げてほしいテーマは、コメントや #推し活未来研究所 でお寄せください。
長文のお便りはこちら:https://forms.gle/zSD7LYrAscxYCoh79
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▼ 公式サイト
推し活未来研究所:https://oshifuturelab.com/
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それでは、また月曜あさ7時にお耳にかかりましょう!

#擬人化 #推し活 #推し活未来研究所 #ウマ娘 #刀剣乱舞 #はたらく細胞

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サマリー

擬人化と推し活のつながりを、約900年前の『鳥獣人物戯画』や付喪神の考え方から、アンパンマン、初音ミク、艦これ、刀剣乱舞、ウマ娘までたどる。キャラクターへの興味が文学や歴史、体の仕組みを学ぶ入口になり、地域観光や文化財保護、引退馬支援にも発展する具体例が紹介される。日本の擬人化文化について、海外作品との違いとして、物語を離れて愛されるキャラクター、対象の幅広さ、ファン創作の広がりという三つの視点から考察する。海外展開では、キャラクターの背景や元になったものへの敬意まで伝える必要があるとまとめる。

擬人化と推し活の広がり
こんにちは、株式会社KAZAORIの矢沢彩乃です。推し活未来研究所へようこそ。 この番組では、推し活をビジネスの視点から、そして私自身の経験も交えながら、楽しく深く読み解いていきます。
さて、本題に入る前に、今日はちょっとだけ緊急報告をさせてください。 この2、3週間で本当にいろんなことが一気に起きまして、
まず、YouTubeの方でイコラブの回が結構回ってくれて、たくさんコメントをいただきました。 本当にありがとうございます。
そして、いろんなご意見をいただいたり、実はこんなんですよって教えていただいたりして、私自身すごく勉強になりました。
あんなにたくさんコメントをもらえることってなかなかないので、素直に嬉しかったです。 それと同時に、イコラブって本当に愛されてるんだなぁっていうのを改めて感じた出来事でした。
また、ノイミーの新メンバーオーディションの密着ドキュメンタリーも始まるという発表があったので、こちらもぜひ追っていきたいと思っています。
そしてもう一つ、9月17日の木曜日、夕方にXで海外から見たチーカは世界を救わない主人公はアメリカで愛されるのかっていう記事を書いたんですよね。
CNNの取材で質問されたことをハワイ大学の教授にそのまま聞いてみたんですよ。
で、その流れでこの記事を割とライトに書いたんですが、そしたらこれがなんとバズりまして、この収録の時点で104万インプレッションになっています。
書いた次の日の朝、起きたらXの通知がとんでもないことになってて、「え、何これ?」ってめっちゃびっくりして、そこからもう携帯が鳴り止まないってこういうことなんだっていう状態でした。
あっという間に夕方には60万インプレッションとかになってて、Xの本日のニュースにも取り上げられて、そこからさらに広がって次の日には100万インプレッションを超えてました。
実はこれ、裏でずっと時系列でスクショとかも撮っていて、いただいたコメントも全部チェックしてたんです。
そしたら、こういう流れで広がっていくんだっていう傾向がだんだん見えてきて、これはこれですごく面白いので、今度記事にするか、この番組でお話しするかしてみたいなと思ってます。
こちらもぜひお楽しみに。
そしてそして、9月25日の金曜日、こちらに私が取材協力をしたCNNのちいかわの記事が公開されました。
こちらは英語の記事なんですけど、よかったらぜひ読んでみてください。
今日話した記事とか内容とかは全部ノートにまとめておきますので、そちらも合わせて読んでいただけたら嬉しいです。
ということで、緊急報告はこの辺にして、今日の本題に入っていきたいと思います。
さて、今日のテーマはこちら。
擬人化と推し勝つ。日本人はなぜあらゆるものを擬人化するのか。
実はこれ、私が海外の友人と話をしていた時に、日本人はいろんなものに顔をつけたり、人間の姿にしたりするけど、それはなぜなの?と聞かれたんです。
それで、そんなこと今まで考えたことがなかったんですが、確かにそうだよなと思って、その時はうまく答えられなかったので、今回リサーチをしてみたんです。
調べてみると、日本刀をイケメンにした刀剣乱舞、軍艦を女の子にしたカンコレ、競争馬をアスリートにしたウマ娘、細胞をキャラクターにした働く細胞など、本当にジャンルにとらわれずたくさんのものが擬人化されていて驚きました。
刀や船や細胞に人の姿を与えて、本気で推してグッズを買って、聖地まで足を運んでいるわけです。
ウマ娘プリティダービーは調査会社の推計で、リリースされた2021年だけでアプリ売上がおよそ1000億円に達したとされています。
でも、物に人の姿を与えて親しむ歓声は、実は最近のブームではありません。
なんと900年近く前、ウサギとカエルが相撲をとる国宝、長寿ギガにもその姿が見られるんです。
昔の絵巻物から現代のゲームまで、擬人化はどう繋がっているのか、そしてなぜ教えの愛が文化財や引退した競争馬を支える経済圏になるのか、今日はそこを考えていきます。
さて、そもそもなぜ今このテーマなのか。実は2026年って擬人化IPの記念日ラッシュなんですよ。
まず、国を擬人化したヘタリアがつい先日、8月16日に生誕20周年のアニマーサリーパーティーを開催しました。
国の擬人化が20年続くコンテンツになったって、冷静に考えると凄くないですか?
そして、刀剣乱舞は去年2025年に10周年を迎えて、今年の春には累計ユーザーが1500万人を突破。
馬娘は今年の2月にアプリ5周年で、しかも同じ2月には劇場版新時代の扉が北米で公開されて、アメリカだけでおよそ600巻で上映されていました。
日本の擬人化がいよいよ本格的に世界へ出ていく年になってるんですね。
推し勝市場全体の話をしておくと、推し勝総研が今年1月に発表した最新調査では、市場規模は年間およそ4.1兆円、推し勝人口は約1940万人。
1年で550万人以上増えて、いよいよ2000万人の大台の目前になっています。
調査の対象になった15歳から69歳で見ると、およそ4人に1人が何かを推している計算になるんです。
その推し勝の一大ジャンルとして、擬人化キャラを推す文化がどっしり根を張ってるんですね。
今日は900年近く前の起源、アンパンマン、ネットで広がった擬人化、カンコレ、刀剣乱舞、馬娘のビジネス、そしてディズニーとの比較という順番で見ていきます。
身近なキャラクターの背後にある歴史とお金の流れをたどってみましょう。
鳥獣人物戯画と付喪神の歴史
まず起源の話からいきます。
皆さん、超重義画って聞いたことありますか?
ウサギとカエルが相撲をとっている、あの白黒の絵巻物です。
教科書で見たことがある方も多いと思います。
正式な名前は超重人物義画。
京都の高山寺というお寺に伝わってきた国宝です。
この絵巻物、実は4巻あるんですね。
その中で一番有名な1巻目、ウサギとカエルが出てくる巻が描かれたのが平安時代の終わり頃。
だいたい900年近く前です。
どんな絵かというと、ウサギとカエルが相撲をとっていて、投げ飛ばされたウサギを見てカエルたちがお腹を抱えて笑っている。
そのそばではお坊さんの格好した猿がお経をあげている。
動物たちがまるで人間みたいに振る舞っているんです。
誰が描いたのか、何のために描いたのか実はよくわかっていないんです。
でも900年近く前の絵なのに、今の私たちが見てもフフッて笑えるんですよね。
そしてこの絵巻、今でもすごい人気なんです。
東京国立博物館で展覧会が開かれた時は、ウサギとカエルの場面の前に何時間も待つ大行列ができました。
2021年の展覧会では、なんと動く歩道が登場したんです。空港とかにあるあの動く歩道です。
みんなが最前列でゆっくり見られるように、絵巻の前に動く歩道を置いたんですね。
ちなみに千振の高畑勲監督も、この超重義眼に注目していた一人です。
昔の絵巻物には、アニメや映画みたいな見せ方がすでにある、と本まで書いています。
日本最古の漫画と言い切るのは慎重にした方がいいんですが、今のアニメや漫画につながる面白さがあるということですね。
さてもう一つ大事なキーワードがあります。
つくもがみです。
つくもがみっていうのは、ざっくり言うと長く使われた道具に宿る魂のことです。
室町時代に描かれた、つくもがみ絵巻という絵巻物があります。
これはちょっと怖くて、ちょっと切ないお話なんです。
年末の大掃除で古くなった道具たちがポイッと捨てられてしまう。
捨てられた道具たちはずっと働いてきたのにひどいと怒って、妖怪になって人間に仕返しをするんです。
でも最後はちゃんと反省して仏様の道に入るんですけどね。
この絵巻の最初には、道具は100年経つと魂を持つという考えが書かれています。
これなんとなくわかりますよね。
子供の頃から持っているぬいぐるみとか、ずっと使ってきたお茶碗とか、古くなってもなかなか捨てられないものってありますよね。
長く一緒にいたものには、なんだか気持ちが宿っている気がする。
だから道具を大切にする。
使い終わった針に感謝する針供養や、人形を丁寧に送り出す人形供養も同じ感覚から来ているんです。
そしてここで今日のテーマとつなげます。
ゲームの刀剣乱舞に出てくるイケメンの刀のキャラクターたち、刀剣男子と呼ばれています。
実はこのキャラクターたち、刀に宿ったツクモ神という設定なんです。
つまり室町時代の長く使ったものには魂が宿るという考えが、今のゲームの中にもそのまま生きているということなんですね。
アンパンマンとトーマスが生む親しみと観光
そしてその感性を私たちが子供の頃から身近にしてくれている存在がアンパンマンです。
柳瀬隆さんの絵本アンパンマンが出たのは1973年、テレビアニメの開始は1988年。
バンダイの子供の好きなキャラクター調査では2000年代から長く1位の常連で、
2009年には登場キャラクター1768体でギネス世界記録も認定されました。
人生で最初に覚えたキャラがアンパンマンだったという方も多いのではないでしょうか。
世界のキャラクタービジネスの類型売上を比べた海外の推計では、アンパンマンは世界6位、およそ384億ドルとされています。
監査された売上ではなく、国内の年間売上から逆算した推計ですが、驚くのはその大部分が日本国内で生まれたとされることなんです。
世界で稼ぐハリーポッターなどと並ぶ規模をアンパンのキャラクターが築いているんですよね。
この数字で注目したいのは、映画一本のヒットで終わらないことです。
子供が毎日使うものにキャラが登場し、生活の中で何度も出会う。その親しさが次の世代にも受け継がれる。
キャラクターを長く愛してもらうビジネスの強さが見えてきます。
一方海外では、自分の顔を食べさせるという設定に戸惑う人もいるんだそうです。
戦争で飢えを経験した柳地さんは、お腹を空かせた人に食べ物を分けることを正義として書きました。
日本では自己犠牲のヒーローでも、別の文化では怖く見えることがある。
キャラ弁も顔のある食べ物を作って食べるという点では似ていますよね。
食べ物に親しみを持ち感謝していただく。私はそこに、物に心を感じる文化との繋がりを感じています。
乗り物の擬人化なら、イギリス生まれの機関車トーマスもありますね。
静岡県の大井川鉄道は、2014年アジアで初めて実際に走るトーマス号を運行し、親子連れが訪れる観光の目玉にしました。
2026年には、ハーシー号もアジアで初めて実際に走り始めて、イベントは初の通年開催に、海外のキャラクターが日本の地方鉄道を支えている例です。
普通なら、移動のために乗る電車が、あいにく相手になるわけです。
親子で乗車日を決めて、現地で食事をして周辺を観光する。
こう考えると、擬人化の価値はキャラのグッズが売れることだけではありません。そこに行きたいという理由まで作れるんですね。
ネット発の擬人化と学びの入口
さて、千年の土台と国民的王道、その次はインターネットの話です。
2000年代に入って、擬人化はプロが作るものからみんなが作るものに変わりました。
例えば、ネット掲示板で生まれたOSタム。動作が不安定だと言われがちだった基本ソフトWindowsMeを、転びやすいドジっ子の女の子として描いたんです。
不具合に起こるだけでなく、キャラの個性として親しんでしまう。その発想が面白いですよね。
2007年には初音ミクが登場します。
もともとは歌声を合成するソフトですが、キャラクターの姿が与えられ、発売元がファンの二次創作を認める仕組みも整えました。
楽曲は世界で10万曲以上とも言われます。
マジカル未来は14年間で累計67万人以上。
海外ツアーミクエキスポはこれまでに世界50都市120公演を重ねています。
ソフトウェイから世界を回るアーティストが生まれたんです。
二次創作というのは、元のキャラクターを使ってファンが自分の歌や絵、動画などを作ることです。
初音ミクの場合、誰かの曲に別の人が絵を描き、映像を付け、さらに別の人が聴く。作る人が増えるほど出会い方も増えていきます。
公式が作品を出す度に待つだけでなく、ファンもキャラの活動を広げられるんですね。
実は私、ボーカロイドのIAという女の子とライブで共演したことがあるんです。
どういうこと?ってなりますよね。
昔、横浜にVRシアターっていうのがあって、そこで映像を立体に見せるライブができたんです。
今はもうないんですけど、割と当時は最先端だったんですよね。
ギターとベースの間に客席からは等身大のIAちゃんが見えてるんです。
でも私の横にはIAちゃんはいないんです。
同じステージでも見える景色は違うのに、客席の熱気は生身のライブと全然変わらなくて驚いたのを覚えてます。
さて、ズンダモンもファンの利用から広がったキャラです。
先代名物ズンダの妖精で、2021年に無料の音声読み上げソフト、ボイスボックスに入ったことをきっかけに、YouTubeの解説動画でおなじみの声になりました。
東北の企業なら申請なし、無料で商用利用できる仕組みも特徴的です。
ファンが使い、作品を作ることがキャラの認知を広げているんですね。
擬人化は学びの入り口にもなります。
国をキャラクターにしたヘタリアは、ファンの間では世界史に興味を持つきっかけになったという声もあります。
文豪ストレイドックスは、太宰治や中島敦などの作家をキャラクター化した作品です。
2016年に門川文庫がアニメ書き下ろしのコラボカバーを出すと、「人間失格」などの名作が売れ、十貫を重ねました。
好きなキャラから、元になった文学へ進む道ができたんです。
文学を勉強しようと言われると見がいまえてしまっても、推しの名前の元になった作家を知りたいなら、自分から本を開ける。
入り口はキャラへの興味でも、その先で作品や歴史に出会えます。
好きが学ぶ利用になるということです。
そして、働く細胞。
赤血球や白血球をキャラクターにした漫画で、シリーズ累計1000万部を超えています。
アニメの素材が学校や医療施設に無料提供され、日本赤十字社と献血コラボも行われました。
実写映画の興業収入は約64億円。作品を通じて自分の体や健康に興味を持てるんですよね。
眠っている間も推しが体の中で酸素を運んでくれている。
そう考えると少し身近に感じませんか?
艦これ・刀剣乱舞と地域・文化財
さてここからは、かんこれ、桃献乱舞、ウマ娘を通じて、ファンの愛情が現実の場所や支援にどう繋がるのかを見ていきます。
まずは2013年に始まったかんこれ。
正式には艦隊コレクションで、旧日本海軍の軍艦をカンムスという女の子にしたゲームです。
ゲーム内の課金を控えめにし、グッズや現地のイベントに繋げるのが特徴なんです。
サセボ、クレ、マイズルなどかつての軍港の街でコラボが行われています。
2019年のサセボでは4日間で2万人以上が集まり、市の試算で経済効果は約14億円。
クレでも2022年のイベントの時、市内のホテルが満室になるなどキャラへの愛が街を訪れる理由になりました。
ビジネスとして見ると、ゲームの利用者を街を訪れるお客さんへと繋いでいるんですね。
現地で泊まり、食事をし、買い物をする。その街の人と話す機会も生まれる。
ゲームの中で育った親しみが地域との関係に変わっていくところに、この仕組みの面白さがあります。
ただ、カンコレやヘタリアが題材にする戦争や国家の歴史は、国や地域によって受け止め方が違います。
可愛さやかっこよさが歴史を知る入り口になる一方で、痛ましい記憶を見えにくくすることもある。
その点への目配りも必要だと感じています。
さて、次は2015年に始まったカオケンランブ。
2018年に京都国立博物館、都の刀には25万人を超える人が来場。
栃木県足利市で2017年にヤマンバギリ国廣が展示された時も、30日間で約37,800人が訪れました。
刀を目当てに若い女性が博物館に集まる新しい流れが生まれたんです。
展示室にあるのはゲームのイラストではなく、本物の刀です。
でもキャラクターを通して名前や来歴を知っていると、昔の刀が並んでいる場所が、推しの元になった刀に会える場所になる。
同じ展示でも、見る人と対象との距離が変わるんですね。
今回色々調べてきて感じたんですが、刀剣乱舞のファンって、いわゆる推しの本体が現実に存在するんですよね。
だから推し勝つのお金が文化財の保護につながります。
熊本の阿蘇神社に伝わった大立蛍丸は、戦後に行方不明になりました。
復元のためのクラウドファンディングが始まると、目標550万円をわすか半日たらずで達成し、
最終的には約3,200人から4,512万円が集まり、復元された写しが神社に収められました。
岡山県瀬戸内市が上杉謙信の愛と三丁目を里帰りさせるための寄付を募ったときは、
目標およそ5億1,300万円に対して寄付の総額は8億円を超えました。
山んば切り国広の取得を支えた募金にも、5,700人以上と81団体から1億7千万円超えが寄せられました。
推し活が文化財を守る新しい財源になっているんです。
さらに東京乱舞はミュージカルで紅白歌合戦に出演し、
ミュージカル10周年の祝賀祭では東京ドーム2日間で延べ8万人以上を動員。
歌舞伎にもなりましたね。
刀の物語が舞台や伝統芸能にも広がっています。
ゲームやアニメのキャラを生身の俳優が演じる舞台は2.5次元と呼ばれます。
ゲームで出会った推しを舞台で応援し、その刀を博物館で見る。
一つのキャラクターを違う場所や表現を通して楽しめるんですね。
ウマ娘と引退馬への支援
そして馬娘プリティダービーです。
実在の競争場を擬人化し、実際のレースや馬の歩みを元に育成するゲームです。
リリース年の売上は推定およそ1000億円。
3周年時点のアプリの世界累計は推計24億ドルとされています。
馬娘は競争場に関心を持つきっかけとしても注目されています。
ただ競馬の売上増加にはネット投票の普及などもあり、馬娘だけの効果とは言えないようです。
私が調べていて特に好きだったお話がナイスネイチャーの話です。
有馬記念で3年連続3着。
勝ち切れなくても愛された馬が馬娘で再び注目されました。
2021年の33歳のバースデイドネーション。
つまり誕生日の寄付企画は引退場を支えるため目標200万円で始まりました。
ところが集まったのはなんと3600万円。
16000人以上が参加し目標の10倍以上が集まったんですね。
ずっと一番だったわけではない。
それでも応援したくなる。
勝ち切れないところまで含めて好きになる感覚はスポーツやアイドルを推す気持ちとも重なりますよね。
擬人化によってその馬の歩みを知る人が増えたんです。
ナイスネイチャーの毎年の誕生日の寄付企画と亡くなった後の追悼寄付企画を合わせると
累計約29800万円が90頭の引退場の受け入れにつながっています。
ゲームで知った馬への愛情が現実の馬の穏やかな暮らしを支える。
現役を退いた後まで応援が続くというのは心動かされるストーリーですね。
ただここで大事なのはゲームへの課金がそのまま寄付になるわけではないという点です。
キャラを好きになった人が現実の馬や引退後の暮らしを知り自分で支援を選ぶ。
その間にあるもっと知りたい、何かしたいという気持ちが現実のお金の流れを生んでいるんですね。
日本の擬人化文化を考える三つの視点
そしてもちろん擬人化は日本だけのものではありません。
ミッキーマウスはネズミのキャラクターですし、美女と野獣ではホットやロウソクタテが歌います。
カーズやズートピアにも車や動物の擬人化が登場します。
じゃあ何が違うのか?今回調べて私は3つあると思ってます。
1つ目はキャラクターが元の物語を離れても愛されること。
物語の結末を知った後も誕生日を祝ったりグッズを集めたり、ファンが新しい話を作ったりできますよね。
この楽しみ方を考える手がかりが、批評家のあずまひろきさんが動物化するポストモダンを論じたデータベース消費です。
少し難しい名前なんですけど、ここでのデータベースは作品をまたいで蓄積されてきたキャラを好きになる要素の集まりと考えるとわかりやすいです。
例えば猫耳、眼鏡といった見た目や無口、世話好きといった性格。
こうした要素が様々な作品で組み合わされ、ファンはそこに自分の好みを見つけます。
この物語が好きという楽しみ方に加えて、この見た目や性格の組み合わせに弱いという楽しみ方があるんですね。
その仕組みに注目した考え方です。
別の作品なのに、また似たタイプのキャラを好きになっていたという経験はありませんか?
作品の枠を超えて自分が惹かれる要素がある。
もちろん物語を楽しむことと両立しますし、ファン全員の行動をこれだけで説明できるわけでもありません。
この見方を手がかりに冒険乱舞を考えると、刀の名前や持ち主との歴史がキャラの性格や関係性を楽しむ入り口にもなります。
この組み合わせが好きから、元になった刀の歴史を調べたり、自分で物語を想像したりする。
そうやって公式の物語の外にも楽しみが広がっていくんですね。
2つ目は対象の幅広さです。
国、軍艦、刀、城、競争場、細胞、OS、ずんだ持ちまで。
その背景には八百万の神、つまりあらゆるものに神や魂を感じる文化もあると思います。
文化人類学者のアン・アリスンさんは、日本のおもちゃやキャラクター商品に見られるこうした感性をテクノアニズムと呼びました。
古い感性が新しい技術の中でも生きてるんですね。
ここで言うアニミズムは、人間以外の動物や自然、物にも魂や意志を感じる考え方です。
だからといって、今のファン全員が宗教的な意識で推しているという話ではありません。
物に親しみを感じる発想が日常の中にあるということです。
3つ目はファンの創作が広がりを支えること。
コミケや初音ミクのピアプロのように、ファンが作り発表する場があります。
さらに、博物館、競馬場、軍港、献血ルームなど現実の場所へ向かうきっかけにもなる。
元になったものや場所とキャラへの愛情が結びつくところに強みがあります。
もちろん二次創作には作品ごとの利用条件があります。
その範囲でファンが参加できると作品を受け取るだけでなく、自分も何かを作って誰かに届けられる。
曲やイラストから興味を持った人が原作や関連イベントへ進むこともあります。
公式の発信とファンの活動が互いに出会いを増やしていくんですね。
けものフレンズと世界への広がり
最後に、けものフレンズの霊王。
東武動物公園にフンボルトペンギンのキャラフルルのパネルを置いたところ、
恒例のペンギングレープくんがそばを離れなくなりました。
アニメキャラに恋したペンギンとして海外でも話題になり、亡くなった際にはBBCにも報道されました。
絵には花を備える場所が設けられ、キャラクター原案の吉崎美音さんもグレープくんを忍ぶ絵を描きました。
グレープくんの気持ちは断定できませんが、その姿に心を動かされた人は世界中にいたんですね。
こうした文化は海外にも広がっています。
ウマ娘の英語版や初音ミクの海外公演に加え、
中国初の観戦ゲームアズールレーンが日本で人気になってきている動きもあります。
日本で育った擬人化の楽しみ方が国境を越えて共有されているのかもしれません。
ただし、擬人化の手法が広がっても、その顔に込めた意味までは同じように伝わるとは限りません。
アンパンマンの受け止められ方の違いは、その難しさを教えてくれました。
日本では自然に伝わる設定でも、海外ではなぜその姿なのか、どんな歴史があるのかを説明した方がわかりやすい。
顔を可愛くするだけで背景まで共有できるわけではないんですよね。
元になったものへの敬意も含めて届けることが、長く愛してもらう上で大切だと思います。
さて、今日は昔の絵巻からアンパンマン、初音ミク、カンコレ、冬県乱舞、ウマ娘まで、
擬人化とお仕事の繋がりを見てきました。
名前や物語を知ることで、それまで遠かったものを大切に思えるようになる。
その気持ちが文化財や動物の支援にも繋がる。そこに擬人化を推す面白さと可能性を感じました。
番組を聞いての感想や、あなたの推し擬人化キャラ、それからこれを擬人化してほしいというもの、
ぜひハッシュタグおしかつ未来研究所でシェアしてくださると嬉しいです。
それでは今日のおしかつ未来研究所はこの辺で、最後までお聞きいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
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