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#60【実は残酷】なぜ平均38歳が「ちいかわ」に沼るのか? 裏に隠された“残酷な世界の真実”——97万人が推す理由【推し活未来研究所】
2026-08-17 31:27

#60【実は残酷】なぜ平均38歳が「ちいかわ」に沼るのか? 裏に隠された“残酷な世界の真実”——97万人が推す理由【推し活未来研究所】

『推し活未来研究所』🎧 毎週月曜あさ7時配信!ビジネスとカルチャーをつなぐ「推し活」の世界を、ほっこりトークでお届けする番組へようこそ!Z世代の推し消費トレンド、社員のエンゲージメントを高める「社内推し活」の可能性、ファンに熱烈に”推される”ブランドやサービスの作り方など、身近でちょっと気になる推し活関連のトピックをピックアップ。難しい専門用語は使わず、「ゆるっと深掘り」していきます。聴いていると元気が出て、明日からのちょっとした活力になるような番組を目指しています☀️▼ パーソナリティ矢澤 綾乃株式会社KAZAORI (https://kazaori.co.jp/) 代表取締役ファンやコミュニティの「好き」や「熱量」を起点に、企業のマーケティング支援、ブランドプロデュース、新規事業開発などを手掛ける。推し活の記念日やイベント等を華やかに彩るバルーン事業なども展開し、「好き」を形にするための多様なサポートを提供している。現役ベーシスト様々なアーティストのライブサポートやレコーディングに参加するミュージシャンとして、現在も活動中。推す側・推される側の視点を持つ「現場あがり」の実践者アーティスト/クリエイター側と、それを応援するファン側の両方のリアルな視点と経験を持つユニークな存在。この経験を活かし、“推し活×ビジネス”の新しい可能性を日々探求し、そのインサイトを番組で分かりやすく発信しています。▼ 応援&メッセージはこちら📣あなたの推し活体験やアイデアが、番組をもっと豊かにします!ぜひお気軽にご参加ください。SNSで参加: 番組へのご感想、あなたの「推し」紹介、熱い推し活エピソード、ビジネス活用アイデアなどを、ハッシュタグ #推し活未来研究所 をつけてぜひ投稿してください!Podcastを応援: SpotifyやApple Podcastで番組をフォローし、レビューや星評価(☆☆☆☆☆)をいただけると、制作の大きな励みになります!専用フォーム: 長文のメッセージや、SNSを使わない方はこちらからどうぞ。 https://forms.gle/zSD7LYrAscxYCoh79▼ 視聴・聴取はこちらから▶️ライフスタイルに合わせて、お好きなプラットフォームでお楽しみください!YouTube: 最新エピソードの視聴やアーカイブはこちら!チャンネル登録もお願いします🔔 https://www.youtube.com/ @oshikatsu_laboSpotify: 通勤・通学中やお休み前など、耳で楽しむならこちら! https://x.gd/9kSbnApple Podcasts: iPhoneユーザーの方はこちらも便利です! https://x.gd/lxYcKそれでは、また月曜あさ7時にお耳にかかりましょう!

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サマリー

このエピソードでは、平均年齢38.4歳の大人たちを魅了する「ちいかわ」の人気の秘密を深掘りします。一見可愛らしいキャラクターとは裏腹に、作品には労働の厳しさや理不尽さが描かれており、これが現代社会を生きる大人たちの共感を呼んでいます。また、作者の願望から始まった物語が、わずか33名の会社によって迅速に展開され、サンリオとは異なるビジネスモデルを築いていること、そしてキャラクターの人気が分散することでIPとしての寿命を延ばしている戦略についても解説します。弱さの消費という現代的な課題にも触れつつ、ちいかわが「推し活」の理想形を体現している可能性を探ります。

はじめに:ちいかわ映画の大ヒットと番組のテーマ紹介
こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤彩乃です。推し活未来研究所へようこそ!
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、 そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
さて、今日のテーマはこちら。【ちいかわ】です。 しかも今回は前編後編の2本立てでお届けします。
いきなりちょっと震える数字からお話しさせてください。 今年の7月24日に公開された映画【ちいかわ】人魚の島の秘密。
初日の興行収入がおよそ9億9千万円だったんです。 全国447巻。配給は東方さんです。
しかも東方シネマズ池袋では、全10スクリーンを使って初日に41回上映されたと報じられていて、 これって鬼滅の刃の無限列車編が公開された時の東方シネマズ新宿の回数に匹敵するレベルなんですよね。
初日で10億円に迫るって、もう完全に国民的コンテンツの数字ですね。 そしてここで正直に白状するんですが、私この映画まだ見てないんです。
すいません。ちいかわ可愛いなと思ってたし、もう町中あちこちで見かけてはいたんですけれども、 ちゃんと追いかけては来なかったんですよ。
でもさすがにここまで映画も話題になっていると気になるじゃないですか。 それで今回初めてちいかわをちゃんと調べてみたんです。
作品の設定から権利を持っている会社の構造から海外での受け止められ方まで。 そしたらもうこれが想像していたものと全然違ったんです。
ちいかわって、もともとは一人のイラストレーターさんがXに投稿していた一枚のイラストから始まっているんです。
連載を始めた2020年1月の時点ではフォロワーはまだ1万人ほどだったと日経クロストレンドが伝えています。
それが2026年7月の今、480万人を突破していると報じられました。 単純計算で480倍です。
サンリオさんみたいに50年の歴史があるわけでもない、ディズニーみたいな巨大資本があるわけでもない。
それどころか、権利を管理している会社は従業員33名で運営されているそうです。
そして何より驚いたのが作品の中身でした。 これは本編でもたっぷりお話します。
かわいい絵柄の下にとんでもないものが埋まっていました。
というわけで、今日は私と同じようにチーカワをまだちゃんと見たことがないなぁという方に、特に大人の方に向けてチーカワという作品とビジネスを一から紹介していく回にしたいと思っています。
きっとこれを聞き終わった後、映画を見に行きたくなるはずです。
というか私がもう一番見たくなっているので、8月中には見に行くぞと意気込んでいます。
そしてもう一つ、今回はちょっと特別なお知らせがあります。
私の個人のSNSなんかでは少しお話ししてたんですけど、実はこのおしかつ未来研究所、英語版のサブスタック、ニュースレターのプラットフォームですね。
こちらでも記事を出してるんです。
このおしかつ未来研究所のポッドキャストをベースに日本のおしかつ文化を海外の読者向けにアレンジして英語で発信しているという感じです。
実はそれを通してハワイ大学の教授と知り合うことができたんです。
ジェイソン・マコト・チャン先生という方で、ハワイ大学ウエストワーク校でアジアの大衆メディア文化を研究されています。
で、そのチャン先生がなんと今年の3月にシーカワ論をすでに2本お書きになっていたんです。
日本編と中国編です。後編はこの2本を丸ごと1本かけてご紹介しようと思います。
先生ご本人から引用の許可もいただきました。
海外からシーカワがどう読まれているのか。
これ多分今回一番の山場になると思うので、ぜひ後編も楽しみにしていてください。
本題に入る前に今回初めて聞いてくださる方もいらっしゃると思うので少しだけ自己紹介させてください。
ちいかわの出発点とビジネス構造
私は普段おしかつをテーマにしたビジネスをしていまして、
例えばファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられるプクートというサービスなどを提供しています。
それと同時にベーシストとしてアーティストさんのバックバンドでベースを弾かせてもらっていて、いわば押される側の空気感も肌で感じているんですよね。
この番組はそんな押す側と押される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくるおしかつの面白さや可能性を皆さんと一緒に探っていきたいなと思って始めました。
YouTubeのチャンネル登録、そしてポッドキャストのフォローも是非よろしくお願いします。
さて本編に入っていきます。
まず、ちりかわの出発点をきちんと押さえていきたいんですよね。
さっき1枚のイラストから始まったとお話ししましたけれど、その1枚が本当に重要なんです。
作者は永野さん。
ちりかわ以前から自分ツッコミ熊というラインスタンプでヒットを出していたイラストレーターさんです。
日経クロストレンドの取材によると、2017年5月に個人アカウントへ二頭身の動物のイラストを投稿していて、その時のキャプションが
こういう風になって暮らしたいだったんです。
こういうキャラを流行らせたいじゃないんですよ。
こういう風になって暮らしたい。
作った人自身の願望から始まっている。
実はここが最後まで聞いてきます。
そこから専用アカウントでの連載が始まったのが2020年の1月で、テレビアニメは2022年4月4日に富士テレビ系目覚ましテレビの中でスタートしました。
単行本は講談社さんから出ていて、2025年11月に発売された8巻の時点で累計460万部を突破しています。
アニメの話数は2026年7月の時点で362話まで来ていて、公式YouTubeの見逃し配信は2026年3月の時点で総再生4億回を超えたと報じられています。
市場のマクロで見てもこの存在感は数字に出ているんです。
矢野経済研究所さんの調査だと、日本のキャラクタービジネス市場は2025年度で2兆8767億円。
前年度比でプラス3.2%まで伸びているんですけれども、そのリリースの中で好調の要因として名指しされているキャラクターの一つが知川なんですよね。
市場全体の伸びを説明する固有名詞になっているということです。
ここで一つ面白い事実をお伝えしたいんですけれども、この巨大なIPが年間いくらの経済系なのか、実は誰も正確には知らないんです。
ネットには3000億円みたいな数字も転がっているんですけど、出典をたどれる第三者の推計は一つだけでした。
キャラクターデータバンクという調査会社の市場規模100億円超えという推計で、これは日経MCAの2022年ヒット商品版付の記事に載ったものです。
なぜわからないかというと、知川の権利周りの会社が全部非上場で財務を公開していないからなんですよね。
この見えなさこそが知川のビジネス構造の核心なんです。
ここから本編に入っていきましょう。
まず知川を支えている会社の話からいきます。
権利の大元は長野さん個人です。
IPを企業に売り渡していない。
作品の著作権は作家側に残したまま、商品化の窓口だけを外の会社に任せているという形なんですね。
その窓口が株式会社スパイラルキュートという会社です。
2009年に設立されて資本金は1000万円。
代表は川上洋一さんという方なんですけれども、ここをびっくりするんですが、もう従業員が33名なんですね。
この規模の会社が2020年から知川のライセンス管理をやっている。
ライセンス管理というのは、このキャラでこういう商品を出したいという企業からの相談を受けて許諾を出してロイヤリティ、つまり使用料をいただく仕事ですね。
さらにグッズの製造と公式のオンラインストアになっているグレイパーカーサービスという会社で、この2社が実はGPSホールディングスという持株会社の参加にあることが2025年12月にわかったんです。
どうやってわかったかというと、上場企業の赤月が出したプレスリリースでした。
赤月さんがこのグループと合弁会社を作るという発表の中で、初めて全体像がクレジットとして表に出たんですよね。
そしてそのGPSホールディングスの代表も川上洋一さん。
おまけに先ほどの映画の公式のサイトを見ると、制作のクレジットに川上洋一さんの名前が並んでいるんです。
つまりまとめると構造はこうです。
作家が著作権を持ったまま、判件の管理とグッズの製造とお店とECと映画への出資までを1人の人が束ねているグループが一気通貫でやっている。
これちょっと異常なくらい意思決定が早い形なんですよね。
私、音楽の現場にいるので余計にそう思うんですけれども、普通は、権利者と製造と流通と宣伝がバラバラの会社で、間に乱者も入っていて倫義が回っているうちに旬が過ぎるなんてこともあるんですが、チーカーはそれがないんです。
最近チーカーってもうめちゃくちゃたくさん、毎日のようにいろんなコラボを見ますよね。
これが理由だったんだなというのがはっきりわかりました。
じゃあこれと真逆のモデルは何かというと、サンリオさんです。
サンリオは保有キャラクターが450体超え、社内のデザイナーが約100名いらっしゃいます。
単体の従業員が約800名ですから、8人に1人がデザイナーなんです。
キャラクターは社員が業務として作るので著作権は会社に残る。
デザイナーが辞めてもIPは資産として残り続ける。
この積み上げで450体です。
そして2026年3月期は売上が1940億円、営業利益が770億円、営業利益率は40.1%という、これも過去最高の数字を出されています。
この2つを並べると、キャラクタービジネスに全く違う2つの正解があるのが見えてきます。
サンリオさんは450体のポートフォリオで、誰かが必ず前線に立っている状態を作る戦略なんですよね。
毎年どこかのキャラが終年を迎えるので需要を計画的に作れる。
一方でチーカーは1人の作家の世界観を最短距離で世の中に流す戦略なんです。
ちなみにスパイラルキュートはチーカー以外にもモフサンド、コーペンちゃん、コップのフチコ、フナッシーなどを出かけています。
川上さんはもともと百貨店とおもちゃメーカーにお勤めで、2009年に独立して2013年に非公認のご当地キャラフナッシーを全国ブームにした方なんです。
つまり日本のSNS初のちょっと弱いキャラブームって、才能ある作家さんが偶然たくさん現れたというより、それを束ねる専業のインフラが裏側に出てきたという話なんですね。
さていよいよ作品の中身に入っていきます。
ちいかわのキャラクター紹介と世界観
今日は、チーカーまだ見たことないなという方向けの回なので、登場人物の紹介からさせてください。
ここを押さえておくと、この後の話が全部面白くなります。
逆にちょっとここを飛ばしてしまうと、たぶん途中で置いてかれちゃうかもしれないので、ぜひ最後までしっかり聞いてくださいね。
まず作品の形から。チーカーって実は正式名称じゃないんですよ。
正式には、なんか小さくて可愛いやつ。それを縮めてチーカーなんです。
もうこの時点で、ちょっと力が抜けてていいですよね。
アニメは1話が1分ほど。さっきお話しした通り、フジテレビ系の目覚ましテレビの中で朝に流れています。
CMより短いくらいの尺で、あの世界観を積み上げてきて362話まで来ている。
そしてもう一つ大事な前提を、セリフが極端に少ないんです。
主役3人のうち、まともに会話できるのはなんと1人だけです。
後の2人はほぼ喋りません。これが後で聞いてきます。
じゃあその3人を紹介します。
1人目はチーカー。タイトルにもなっている主人公です。小さくて白くて丸い可愛いキャラクターです。
そしてほとんど言葉を話せません。
恐怖とか悲しさとか嬉しさとか感じていることが全部内側に溜まったまま出てこなくて、泣き声か言葉にならない声になる。
チーカーの感情表現って基本的に泣くなんですよね。性格はとにかく不安が強い。
初めての場所、初めての人、初めての手続き、そういうものが全部怖い。
後編でラーメン屋さんで注文できずにパニックになる話をするんですけど、もうあれがチーカーの全てだと思ってください。
住まいは一軒家です。ただしこれ、自力で建てたんじゃなくてヨーグルトの抽選で当てた家なんです。
この設定を覚えておくと大事なポイントに後で繋がります。
2人目がハチワレ。耳の先が青い猫のキャラクターです。
ハチワレってそもそも猫の毛の色の呼び名なんですね。
額から鼻にかけて模様がハチの字に割れているタイプの猫のことをそう呼ぶんです。
この子は喋ります。しかもめちゃくちゃ礼儀正しくてめちゃくちゃ前向き。
何が起きてもまあなんとかなるよ脳側に立とうとする3人の中で一番明るくて一番常識人です。
ここがリアリティ溢れるポイントなんですけど、この明るいハチワレが一番貧しいんですよ。
住んでいるのは扉のない洞窟です。だから虫が入ってくる。食器はひび割れていて家具は段ボール箱。
前向きで礼儀正しくてちゃんと働いていてそれで洞窟なんです。これ今日の話の軸にもなります。
そして3人目のウサギ。この子の説明が一番難しいんですよね。黄色くて耳が長くて常にテンションが振り切れてます。
そして言葉を話しません。叫んでます。意味のある単語じゃなくて感情がそのまま声になって出てくるみたいな行動も予測不能です。
急に走り出すし急に踊るし脈絡のない生き方をする。よくわからないけどめちゃくちゃ強いというそういう存在なんですよね。
このウサギが実はこの作品の鍵を握っています。もう一つだけこの3人性別が明示されていないんです。
男のことも女のことも書かれていない。これ海外の記事でも必ず触れられているポイントなんですけど、誰でも自分を重ねられるという意味で実はかなり効いている設計だと思います。
主要3人以外にも覚えておくと今日の話が楽しくなる面々がいます。
まずはモモンガ。もうかまってちゃんでめちゃくちゃ承認欲求が強い。ある意味一番最近の人間臭いキャラクターですね。
そしてクリマンジュ。これはお酒がめちゃくちゃ好きな渋いおじさんキャラです。
次にシーサー。ラーメン屋さんで働いているキャラクターです。
次にヨロイさん。全身鎧の種族でこの世界で仕事を配っている側の人たちです。
次にアノコ。敵側のキャラクターです。この子の話は後でゆっくりさせていただきます。
さてこれで準備完了です。小さくて泣いてばかりのチーカワ。前向きなのに洞窟に住んでいるハチワレ。叫ぶだけなのに妙に強いウサギ。
この3人が一体この世界で何をして暮らしているのでしょうか。
ここからが今日の本題です。なぜ大人に刺さったのか。
ちいかわが大人に刺さる理由:労働の物語
答えを先に言ってしまうと、私はチーカワが労働の物語だからだと思ってます。
今もえ?ってなりますよね。可愛い生き物3人の話をしてたのに急に労働?ってなりますよね。
でも本当にそうなんです。チーカワの世界には貨幣経済があります。住民は生活のために稼がないといけない。
主な仕事は2つあって、1つが草むしり、もう1つが討伐。危険な生き物を退治する仕事です。
討伐には危険手当がついて、難易度が報酬で変わります。
仕事を配っているのはさっき紹介した鎧さんで、受付に窓口があるんです。
もうこの設定だけで職業紹介状だってわかりますよね。
しかもここからがちょっと辛辣なんですけど、仕事は全員に行き渡らないんです。
早いもの順であぶれてしまうんですね。労働史上の受給が描かれているんですよね。
さらに草むしり検定という資格制度があるんです。
等級を取ると報酬が上がって、むしれる縄張りが広がる。
ここでさっき紹介した3人の成績を聞いてほしいんです。
まず主人公の知河は草むしり検定の5級、しかも3回目の受験でようやく合格しているんです。
ハチワレは同じ5級を1発で合格しています。そしてウサギはなんと2級です。
主人公が最下級なんですよね。
そして言葉をほとんど話さないウサギが一番上の資格を持っている。
この序列笑っちゃうくらい現実だなぁと思います。
他にもさっき名前を出したシーさんはスーパーアルバイトの資格を持っていてラーメン屋で働けるし、
栗まんじゅうはお酒の資格を持っている。
しかもその資格には抜き打ちの検査があるんです。取り上げられるリスクまで設計されています。
これを可愛い絵柄でやっているというのがチーカワの正体だと思うんですよね。
じゃあ実際にどれくらいの人に届いているのか、ちょっと段階に分けてお話させてください。
まずはチーカワを知っている人。
LINEリサーチが今年の7月、15歳から69歳の3152人に聞いた調査だと、
チーカワの認知率は93%、女性は97%、そして10代の女の子はほぼ100%知っているという結果が出ています。
ざっくり人口に当てはめると、7000万人以上が知っている計算になります。
そして一番濃いところ、今チーカワを推していますと自分から答えた人が約97万人。
これはジェムパートナーズさんが毎月3万人に聞いている調査の数字で、キャラクター部門の第1位です。
2位のパペットスンスンが24万人ですから、約4倍になります。
この97万人って可愛いって思ってるだけじゃないんですよね。
私の推しですと言い切った人が97万人いるということなんです。
そしてこの調査での推しファンの平均年齢が38.4歳。
1月あたりの平均支出は1人3214円でした。
別のバリューズというウェブ上の行動ロゴを分析している会社の調査でも、
検索している人の年齢ピークは30代で、男女比は1対3という結果が出ています。
草むしり検定に3回落ちる話と抜き打ち検査のある資格の話に38歳が刺さるって、
これ笑うところじゃなくて多分かなり切実な話だと思うんですよね。
自動詞のキャラクターブックを編集されている斉藤雅嗣さんが週刊女性プライムの記事でこう語っています。
危ない生き物に襲われたり、特に理由もなく辛いことや悲しいことが起こり、
労働もしなくてはいけない世界でけなぎに生きる知川は大人にこそ響くキャラクターだと。
海外の反応も驚くほど同じ方向を向いていました。
人民日報の日本語版まで、知川たちが草むしりや討伐といった仕事に従事していること、
受験に失敗するとリベンジに挑むこと、
そして辛いことや悲しいことがたくさんある世界においてささやかな幸せを見つけることを人気の理由として紹介しているんです。
日経グループのエイジメディア、日経アジアの記事も複大に、経済原則の中の若者に知川たちの苦悩が響いているとつけていました。
これ、かわいいキャラクターの輸出じゃないんですよね。働くのしんどいよねっていう心の輸出なんですね。
この海外が知川をどう呼んだかについては、後編で丸ごと1本使ってお話しします。
ちいかわの経済効果と企業コラボ
そしてここまで大人に刺さっているという話をしてきたんですけれども、これ実際どのくらいの規模なのかという話もしておきたいんですよね。
この数字が出ています。
まず倉津市さんです。
これ水産の専門誌に載った言葉なんですけど、平日は普通だったら満席にならない店舗まで満席になったそうです。
そしてここで終わらないのが重要なんです。
倉津市さんの2025年10月期の中間決算で、営業利益が29億300万円-48.5%になっているんです。
現役の要因として明記されているのが、前年の知川コラボの反動源という一文でした。
同じ企業の開示資料で、キャラクターコラボの威力と反動の両方が数字で追えるんですね。
これコラボを検討している企業の方にはものすごく重要な事例だと思います。
爆発するけれど翌年に同じことをやらないと落ちる。コラボにはちょっと麻薬性があるんですよね。
ちなみにセブンイレブンさんも冬の知川コラボの商品数を2024年の8品から2025年は20品へ1年で2.5倍も増やしています。
企業側から見てもそれだけ確実な打ち手になっているということですよね。
さて続いてウサギの話をさせてください。
キャラクター人気とIP戦略:分散の強み
ネットメディアのネトラボリサーチさんが2024年2月に知川のキャラクター人気投票をやっているんです。
総投票数が3231票で結果はこうなりました。
1位がウサギで765票、2位がハチワレで599票、そして3位が知川で468票、4位がモモンガで292票でした。
このタイトルキャラが3位なんですよね。しかも1位はセリフらしいセリフを持たないウサギなんです。
さっきの検定の話と合わせるとウサギは喋らないのに資格は最上位で人気も1位というとんでもないキャラなんですよね。
これ推し数の設計として本当に重要なポイントだと思っていて、推しが分散しているIPほど強いんです。
理由は2つあります。
1つは入り口が増えること。知川に感情移入する人、ハチワレの前向きさに救われる人、ウサギの不条理な強さに笑う人、モモンガの承認欲求に自分を見る人。
1つの作品に4つも5つも入り口があると刺さる確率が上がりますよね。
もう1つは寿命が伸びること。1キャラ依存だとそのキャラが飽きられた瞬間に全部終わってしまうんですね。
でも複数キャラなら誰かが休んでいる間に誰かが前に出られるんです。
これ実は三梁さんが正面から言葉にされているんです。
社長の辻智国さんがこの構造をとても正直に説明されています。
10年前はグローバル売上の約7割がキティを占めていました。現在は約3割に減少していますが、これはキティの売上が落ちたのではなく、他のキャラクターが伸びたからです。
そして多角化によりIPのボラティリティからの脱却を図りました。ボラティリティ、つまり業績の触れ幅ですね。
キャラクターを金融のポートフォリオみたいに語っているのが私はすごく面白いなと思いました。
千居川は三梁のように450体のキャラクターを持っていません。でも6から7体のキャラで同じ効果を出しています。
グループ全体を丸ごと応援する、いわゆる箱押しの設計ですね。
あともう一つだけ、ここが本当に面白いんですけど、千居川のキャラクターの名前の多くは作者が事前に決めたものではないんです。
ファンがつけた相性やグッズ化の都合で後から採用された名前が混ざってるんです。
だから命名規則がバラバラなんですよ。
千居川、ハチワレ、ウサギ、栗まんじゅう、確かに統一感ないですよね。
しかも古本屋というキャラもいて、2023年1月24日に背景キャラから名前付きキャラに昇格しているんです。
これってIPの共同著者にファンが混ざっているということだと思うんですよね。
押し勝つの理想型って実はこれなんじゃないかなって私は思っていて、ファンが勝手に呼んでいた名前が公式になる。
自分の押し方が作品に反映される。この関与感すごく強い体験ですよね。
もう少し踏み込んでいきます。千居川の世界は実は結構残酷なんです。
ちいかわの世界の残酷さと「弱者性の消費」
例えばさっきお話しした通り、ハチワレの家には扉がありません。洞窟なので虫も入ってくる。
千居川の家はヨーグルトの抽選で当てたものです。じりぎり手に入れたわけじゃない。
ハチワレは呪いのアイテムのせいで2度も怪物に変えられてしまっている。
パジャマパーティーズという4人組のキャラは鳥に連れ去られて負傷して、片方は耳を失ってしまっています。
そしてさっき名前だけ出したあの子という強敵は、自分の戦闘力の高さに気づいてから討伐に来た相手をおもちゃにするようになるんです。
香港のエイジメディア、サウスチャイナ、モーニングポスト系の媒体がこれを一文で言い切っていました。
完璧な人生を送るハローキティのような他のキャラとは違い、千居川たちは穴に落ちたり草むしり検定に落ちたりすると。
ブルームバーグも2025年8月に日本の人気キャラ千居川は私たちの現代的な不安を理解しているというタイトルの記事を出しています。
海外の受け止め方がもう癒しじゃないんですよね。ただちょっとここで立ち止まりたいんです。
この回を準備する過程で一番考えさせられた文章に出会いました。
救急のお医者さんで薬師寺自家病院の院長されている薬師寺安政先生が日経メディカルという医療者向けの媒体に書かれた連載なんですが、
タイトルが、弱者性を癒しとして消費する社会。副題が千居川が可愛く見えない医者の話です。
先生はこう書かれています。
可愛いどころか、弱者に対する矛盾した社会構造がむき出しになって見えてしまい、現実社会とのギャップに妙な居心地の悪さを覚えてしまう。
これかなり刺さる指摘でした。
弱さへの共感を私たちはどこまで気持ちよく消費していいんだろうという問いですよね。
しかも共感されたから売れたという説明は多分半分しか当たってないんです。
2024年の心理学の研究で面白い結果が出ています。
ブサカワ。ちょっと不恰好なのに可愛く見えるアレですね。
ああいうデザインって、クスッと笑えるという過程を経由しないと、可愛いにならないらしいんです。
弱いだけでは刺さらない。変なだけでも刺さらない。まず笑えることが必要。
千居川はさにそこなんですよね。
世界観は結構理不尽なのに見ていて重くならない。不条理がちゃんとギャグになっている。
このバランスがいいんですよね。
千居川の不条理が辛いで終わらずに、ちゃんとちょっとしたギャグとしても笑える形になっている。
この設計ものすごく上手いと思うんです。
さて、前編のまとめに入っていきましょう。
前編のまとめと後編への展望
今日お話ししたことを2つに絞ります。
1つ目、可愛いは入り口で、刺さっているのは働くしんどさだった。
草むしり検定に3回落ちる主人公がいて、仕事は早い者順であぶれて、資格には抜き打ち検査がある。
そして、推しファンの返金年齢は38.4歳です。
千居川が国民的になったのは、可愛かったからじゃなくて、可愛い絵で労働と不条理を描いたからなんですよね。
その熱量は倉津市さんの前年比プラス23%という数字にまで出ています。
2つ目は推しは分散させた方が強い。
人気投票で主人公は3位、1位は言葉を話さないウサギでした。
これは弱点ではなくて、入り口が複数あって寿命が延びるという強さなんです。
三梁さんがIPのボラティリティからの脱却と呼んで、キティ比率を7割から3割に減らした話と全く同じ構造です。
皆さんがビジネスでIPやブランドを扱うなら、エースを一人にしない。これはかなり普遍的な学びだと思います。
最後に一つ余談なんですけど、大事なと思っていることをお話しさせてください。
千居川のキャラクターの名前の多くは、ファンがつけた愛称から採用されています。
推し勝つって受け取るだけの行為じゃないんですよね。
ファンの呼び方が公式になる。背景にいたキャラが名前をもらって主役級になる。
これ推す側と推される側の境界線が解けている状態で、私が普段お仕事で目指している世界そのものなんですよね。
千居川は推し勝つの理想系をこっそり実装していたIPなんじゃないかなと私は思っています。
さていかがでしたか?前編は、登場人物の紹介から33人の会社が動かすという構造、
労働の物語としての世界観、ウサギ人気に学ぶ覇行師設計、そして不条理の魅力までお話してきました。
私今回一番考えさせられたのは、救急のお医者さんの弱者性を癒しとして消費する社会という言葉でした。
弱さへの共感を私たちはどこまで気持ちよく消費していいんだろう?
この問い、抱えたまま後編に続いていこうと思います。
というのも、まったく同じところを掘っていた方が冒頭でお話ししたハワイ大学のジェイソン・マカトチャン先生なんです。
後編では先生の書かれた千居川論、日本編と中国編を丸ごと1本かけてご紹介します。
中国で千居川がデジタルイブプロフェンと呼ばれている話、そしてウサギは中国の寝そべりだという読み方まで出てきています。
そして先生と実際にお会いした時のお話も後半でさせてください。
番組を聞いての感想をぜひハッシュタグおしかつ未来研究所でシェアしてくださると嬉しいです。
前編を聞いて千居川を見てみようかなと思った方もぜひ教えてください。
それでは前編はこの辺で、最後までお聞きいただきありがとうございました。後編でまたお会いしましょう。
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