こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤 彩乃です。 推し活未来研究所へようこそ!
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、 そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
さて、今日のテーマはこちら。 フラワースタンドと推し活です。
フラワースタンド、通称フラスタ。 ライブ会場の入り口にずらりと並ぶ巨大なアレンジメントのお花たち。
1基あたり3万円から大型のものになると40万円を超えるものも。 それが1公演で50基100基多い時には200基並ぶんです。
事務所関係者からのものもあれば、ファンが自発的に送っているものもたくさんあります。 しかもこの推し活フラスタ。
ちょっと前までは韓国アイドルの現場の文化だと思われていたんです。 日本にもフラスタを送る文化はありましたが、関係者からのお祝いや開店記念などが一般的で、ファンが大きなフラスタを送るようになったのは割と最近の文化なんです。
今は舞台俳優、2.5次元、声優、地下アイドル、ホスト、VTuber、あらゆる推し活ジャンルで1公演あたり1000万円を超えるフラスタ掲載が動く現場まで出てきています。
でも一方で最近のSNSを見ているとこんな声も増えているんです。 連名で出したのに納品物が全然違う。
公演翌日に大量廃棄されている。劇場が持ち込み禁止になってしまった。 愛の結晶だったはずのフラスタがいつの間にか事件を起こすようになっているんですよね。
じゃあなぜここまで巨大化したのか。そしてなぜ光と同じだけ闇も生まれているのか。 今日はこの推し活フラスタ文化をビジネスと問題の両側面から徹底的に掘り下げていきます。
本題に入る前に少しだけ自己紹介させてください。 私は普段推し活をテーマにしたビジネスをしていましてファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられる
プクートというサービスなどを提供しています。 それと同時にベーシストとしてアーティストさんのバックで弾かせてもらっていて
いわば押される側の空気感も肌で感じているんですよね。 この番組は押す側と押される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくる
推し活の面白さや可能性を探る場です。 YouTube のチャンネル登録、ポッドキャストのフォローも是非よろしくお願いします。
さてそれではまずちょっとだけ前提の話をさせてください。 フラスタというのはファンが推しの公演やイベント
誕生日、デビュー記念日などに合わせて会場へ送る大型の祝い花アレンジメントのことなんです。 新規オープンのお店に並ぶ
小長蘭やスタンド花を推し活仕様に進化させたものと思っていただくのが一番近いですね。 具体的に何が違うかというと推しの担当カラーを基調にする
推しが好きな動物やキャラクター、楽器などを花で再現する。 推しのキャッチコピーや代表曲名のメッセージボードをつけている。
ぬいぐるみやアクスタを配置する。 もうただの祝い花じゃなくて推しの世界観を花で表現する一つの作品になっているんですね。
業界用語もどんどん細分化していて、個人スタ、連名スタ、企業スタ、ぬいスタ、ケーキスタなど、私もイベント制作でフラスタの担当したことがありますが、この数年でジャンルが急速に細分化していったのを肌で感じています。
フラスタって韓国発祥なんでしょって言われることが多いんですけど、これ半分本当で半分違うんです。
日本にも実は1970年代からフラワースタンドを送る文化はあったんです。
宝塚歌劇のファンとか、舞台俳優さんへの楽屋花とか、花を並べて推しを応援するという行為そのものは日本にも昔からあったそうです。
じゃあ何が韓国から来たのかというと、今みたいにものすごく豪華で、何十人何百人の連名でSNS映えする巨大な装飾になって寄付までついてくる、あの現代型のフラスタのスタイル、あれは間違いなく韓国のK-POPファンカルチャーから持ち込まれたものなんですね。
韓国のアイドル業界には、昔からファンサポート文化、韓国語でペンソポトというのがあるんです。
ファンが推しの仕事現場まで物資を持って行って応援するカルチャーで、コーヒーケータリング、コピ茶、お弁当ケータリング、応援横断幕、そしてフラワーアレンジメント、この4つが中核です。
そしてここからが特に面白い話なんですが、韓国にはサルファファン、日本語で米花輪と訳される習慣があるんです。
花輪の形をした装飾の下に、お米袋が20キロ、30キロ、時には何百キロというレベルでどさーっと積み上げられる。
推しの誕生日やデビュー記念日に、この米花輪を会場に届けて、お祝いが終わったら、そのお米を全部子供食堂や福祉施設に寄付するんです。
人気のアーティストだと、1日で数トン規模のお米が集まることもあるそうです。
ここすごく重要なポイントなんですね。ただ豪華な花を並べて推しに見せびらかして終わりじゃない。
推しの名前で社会に良いことをするところまでセットになっている。お祝いとチャリティーがガッチリ結びついているんです。
これ後で日本のフラスタ文化と比較するときにめちゃくちゃ効いてくる話なので、ぜひ覚えておいてください。
そしてこうした大規模なファンサポートを支えているのが、1つは事務所公式のペンカフェ。
これは韓国の事務所が公式に運営している大規模なファンコミュニティサイトのことです。
会員数が数万人数十万人いるグループもあります。ここで募金の呼びかけをするとお金がワーッと集まるわけですね。
2つ目は追っかけ写真家ホムマ。ホームページマスターの存在です。
ホムマたちが声をかけてペンカフェの会員さんが資金を出し合って巨大なフラスタや米花輪を作るという流れで韓国のフラスタはどんどん大型化していったそうです。
ぜひ米花輪を一度検索して写真を見てみてください。きっとなるほどと思うはずです。
これは推し勝未来研究所のノートにも何枚か写真をアップしておこうと思います。
こうした韓国カルチャーが日本に本格的に流入し始めたのが2010年代後半。きっかけはやっぱりBTSの世界的ブレイクでした。
日本公演会場に本国スタイルの豪華なフラスタが持ち込まれるようになり、それを見た日本の推し勝民がうちの現場でもこれをやりたいって気づいたんです。
もともと日本にあった素朴なフラスタ文化に韓国流の大型化、連名化、SNS映え、寄付付きというアップデートが乗っかって、今の日本のフラスタ文化が出来上がっていったという流れなんですね。
フラスタは推し勝におけるK-POPの最大の文化輸出品の一つだと私は捉えているんです。
韓国から輸入されたフラスタ文化は日本に入った瞬間、想像以上の速度で他ジャンルに横展開しました。
まず舞台。2.5次元の現場。
東京ランプミュージカル通称東ミュでは、キャラクターの担当カラー、所有等の衣装、本家撮りをした和歌のメッセージボード、もう舞台美術の延長戦になっています。
俳句の舞台ではキャラクターの背番号やチームカラー、キャラクターのモチーフまで再現される。
声優アニソン現場でも水木奈々さん、宮野まもるさんといったソロライブにファンクラブ連盟で大型フラスタが並ぶのが定番です。
アイマスやラブライブではキャラクター単位とキャストさん単位の二重連盟みたいな構造まで生まれています。
そして私が一番面白いと思っているのが地下アイドルやホストクラブの現場です。
もともとシャンパンタワーのような愛の僧侶を可視化する文化があって、フラスタ文化と完全に共鳴したんです。
ホストクラブの誕生日で一晩でフラスタだけで数百万という現場、決して珍しくないんです。
自分が一番大きく出していることを誇示する文化的機能までになっています。
VTuber配信者の執念記念にもファンメイドのフラスタが現実会場に並び、3D配信スタジオにも映り込むようになった。
バーチャルキャラクターへの愛がリアルな花の塊として可視化される。もうフラスタは推し活の標準装備なんですよね。
推しに見てほしいから推しのファン全員に見てほしいへ、フラスタの目的そのものが拡張していったんですね。
ここからはフラスタをビジネスとして見てみたいんですよ。
調べれば調べるほど、え、そんなお金が動いているの?という数字がポンポン出てくる世界なんです。
価格はグレードによってびっくりするくらい幅があります。
ざっくりとした価格帯をご紹介しておきますが、あくまで参考価格程度にお聞きください。
一人で出すフラスタが2万円から5万円、これが基本セットですね。
それでもお花に5万円ってすごいなぁと私は思うんですけどね。
友達何人かで出す中規模連盟が10人から50人で10万円から20万円くらい。
ちゃんと専門デザイナーに発注して推しモチーフを盛り込んだ凝ったデザインに仕上げるレベルです。
100人以上の連盟で作る大規模スタンドが20万円から50万円程度。
ぬいぐるみ、アクスタ、キャラケーキ、LEDメッセージボードが組み込まれていて、もう作品って呼んだ方がいいレベルです。
最近はベンチを置くスタイルも人気みたいですね。
さらにその上がスーパースタンド。
30万円から100万円程度で複数スタンドを横に連結したり、会場入り口エリアを丸ごと埋め尽くす設計だったり。
これを1公園単位で集計するとどうなるか。
実際、2025年11月のとある人気コンテンツのイベントでは、1日で約300基のフラスタが集まって、推定2000万から3000万規模の発注が動いたという報告があるんです。
300基ってもう想像つかないですよね。
人気アーティストのソロデビュー公演になると、1日で軽く1000万を超えるフラスタ経済が動くことも珍しくないです。
これがフラスタ市場の規模感なんですよね。
最近はフラスタ主催代行を有料で受けようプロまで出てきているそうです。
そしてここがフラスタ経済の本当に面白いところなんですけど、フラスタはSNSのバズを生む装置として機能しているんです。
会場に並んだ豪華なフラスタを推し本人がすごいありがとうって公式のSNSで写真をシェアしてくれる瞬間、
出資した連名ファンの満足度は最高潮に達して推しの公式アカウントから何万何十万のフォロワーに拡散されていく。
つまりこれってファンがファンのために作った広告をブランド本体、つまり推し自身が無料で世界中に拡散してくれる構造なんですよ。
マーケティングの世界から見たらこれ以上に効率がいいんです。
だからフラスタ経済の本質は二重構造なんですね。
愛の表現と推しのプロモーション装置、この二つが結びついている。
だから私はフラスタは推し活の中で一番重要なプロダクトだと考えています。
ここまで明るいビジネスサイドの話をしてきましたが、今日一番語りたいのはここからなんです。
フラスタ文化の闇の側面です。
一つ目の闇、連名出資のマネートラブルです。
連名フラスタは、仕組み上不特定多数のファンから主催者個人の口座にお金が集まる構造です。
10万円のフラスタを出すために、一人500円から1000円を100人200人から集めて、主催個人が業者に発注して当日搬入する。
この個人が他人のお金を預かるという構造がいろんな問題を生んでいます。
集めた金額より、明らかにグレードの低い納品物が出てくる中抜き疑惑、当日届かない、主催と連絡がつかない、公演中止なのに返金されない、会計報告がない。
連名フラスタは全員の前提で成り立っていた仕組みなんです。
だから振り込み先は個人口座、レシートも開示されない、会計報告も任意という運用がなかなか楽スタンダードだった。
でもフラスタが大型化していて、一案件で100万円単位のお金が動くようになると、悪意ある主催者が紛れ込むリスクが跳ね上がります。
SNS上で〇〇さん主催のフラスタは要注意というブラックリストが出回り、ファン同士の相互不信が広がる。
愛を可視化するはずの仕組みがファンコミュニティに亀裂を生む、本当にもったいない構造の問題なんです。
2つ目の闇、フラスタの廃棄問題です。
生花って本質的になかなか長持ちはできないですよね。
フラスタ用に作り込まれたアレンジメントだと、搬入から72時間が美しさのピークで、1週間以内くらいでは廃棄しないといけない。
公演会場にずらっと並んだ100基のフラスタって、終演後どうなるの?という疑問がありますが、これは結構誤解されてるんですけど、会場側が処分しているわけじゃないんです。
フラスタは花屋さんに発注するときに、公演が終わったら回収にも来てくださいって、回収までセットで頼むのが業界標準です。
アリーナクラスなら公演終了から数時間以内、舞台公演なら先週落終演後にまとめて引き取り、回収されたフラスタは花屋さんの作業場で解体され、スタンド本体は次の仕事のために洗って再利用、お花の部分は基本的に廃棄されることが多いです。
お花屋さんに実際に聞いてみたところ、綺麗な状態のお花なら再利用できることもあるけど、現実的には難しいことの方がほとんどだという意見でした。
出演者や関係者が一部を持ち帰ることはあります。でも50機100機あるフラスタを全部持って帰るのは物理的に不可能ですよね。だからほとんどは結局廃棄に回ってしまうんです。
これ、SNSではもう何年もフラスタ廃棄問題というキーワードで、バズと炎上を繰り返しています。
愛で出したはずなのにゴミになっちゃうのってなんか悲しい。1人1万円ずつ出して翌日に廃棄ってそれ意味あるの?SDGsの時代にこれ完全に逆行してるよね。ファン自身が自分たちの行為に矛盾を感じ始めているのかもしれません。
最近一部の現場では、終演後にフラスタを花束単位で解体して、来場したファンが小分けに持ち帰れるようにする取り組みが始まっています。
捨てられるはずだった花が誰かのお家に持ち帰られて、もうしばらく生きていける。美しい取り組みだなと思うんですよ。
ただ会場側の衛生ルールや運営負荷の問題で、全体としてはまだ解決していないというのが正直なところです。
じゃあこれからのフラスタ文化はどこに向かうのか?
整理すると、フラスタ文化の構造的課題は3つあります。
1.参加の透明性の欠如。
連名出資が個人口座に集まり、会計が個人主催の任意申告になっている状態。
これってお金を出すファンの心理的負担を不必要に重くしてしまっているんですよね。
いくら集まったのか、どこに使われたのか、残額はあるのかが仕組みとしてしっかり可視化されれば、
主催への過剰な不信も、悪意ある主催の参入余地も両方が大きく減るんですよね。
透明性は信頼の前提。
これはファン共同プロジェクトを設計する上で最重要原則だと私は考えています。
2.参加のハードルの高さ。
連名フラスタって実は知っている人しか参加できない閉じた構造だったりするんですよね。
Xなどで募集情報が回ってきて、DMでやり取り、主催者の口座に振り込んで初めて参加できる。
新規ファン、海外ファン、地方ファンが参加するにはいくつものハードルがあると思うんですよね。
推しを応援したいという気持ちは万人共通なのに、その気持ちを行動に移すルートが極端に狭い。
これは推し勝つビジネスとしてものすごくもったいないなと感じています。
3.収援後の循環の不在。
透明性は信頼の前提。
これはファン共同プロジェクトを設計する上で最重要原則だと私は考えています。
そしてここからが本当に最近の動きで、私これを知った時にすごくいいなと思ったんですが、
業界の採用手がついに本格的に動き始めたニュースを紹介させてください。
ソニーミュージックエンターテインメント、SMEが2025年2月にリブルームフラワープロジェクトを正式に立ち上げたんです。
リ、再び、プラスブルーム、咲く。もう一度花を咲かせようという意味のネーミングです。
何をやっているかというと、コンサート会場に贈られた祝い花を捨てずに回収して再活用するという取り組みです。
組んでいるパートナーは、日本サステナブルフラワー協会という廃棄花を救うことを目的とした日本初の団体です。
スタートは2024年6月、横浜アリーナで開かれた緑黄色社会のライブ、緑黄色ダイヤ祭。
その後、木村かえらさんのライブ、おはらい芸人のにひきごいさんのライブなんかでも回収を続けていって、これまでに計18公園、総計500キロ以上の生花を回収しているそうです。
500キロのお花がゴミになる運命を回避して、別の形で生き延びている。
回収された花は装飾に使われたり、子供向けワークショップの素材になったり、アーティストグッズに加工される予定もあるそうです。
さらにソニーグループ全体に波及していて、映画2人で終わらせる、It Ends With Usの劇場展示の装飾、ソニー銀行受付の花としても活用されている。
何が画期的かというと、これまでフラワーロスってブライダル業界の問題として語られることが多かったんです。
それが、ライブ・コンサート業界という推し活経済のど真ん中に対して、業界最大手のSMEが本格的にメスを入れに行ったということなんです。
ファンが愛情込めて贈った花が、終演翌日にゴミ袋に消えるんじゃなくて、子供のワークショップの素材になったり、別のアーティストのMV撮影現場の装飾になったり、ファン向けグッズに生まれ変わって戻ってくる。
これって推し活の文脈で言うと、愛が二重に巡る構造なんですよね。
その花が、また誰かの暮らしを彩る別の何かに変わっていく。
これが業界スタンダードになっていけば、フラスタイコール1日で消えるという前提そのものを書き換えられる可能性がある。
私はこの動きが、今後の推し活サステナビリティの一つのモデルケースになっていくと思っているんです。
私自身、プクートを通じてファン共同プロジェクトの安全と訪問性をどう作るかに取り組んできた立場として、フラスタ文化の課題には強い問題意識を持っています。
だからこそ、推す側と推される側の両方の視点を持つ、私だから提案したい未来のフラスタ像。
フラスタというよりも、もっと大きなみんなで作り上げる空間を提供したいと思っています。
愛は変わらないまま、仕組みだけが循環型、透明型に進化する未来。
これが私がプクートを通じて推し活の現場と一緒に作っていきたい次の景色なんですよね。