絵の全体像
ボイスドラマ セザンヌの大水浴
パリのオルセイ美術館でセザンヌの作品が並ぶ部屋で、マリアとトミーは向かい合って立っていました。
ねえ、トミー。今から目の前にある絵について、私が言葉で描いていくわ。
ありがとう、マリア。楽しみだなあ。
この絵のタイトルは、大水浴。縦2メートル、横2.5メートルもある、とっても大きな絵なの。
ずいぶん大きいんだね。
そう、目の前に広がるのは、豊かな自然の中で、たくさんの人々がくつろいでいる光景よ。
絵全体が柔らかくて温かい、独特な雰囲気を持っているわ。
まるで夢の中の出来事みたいに、現実離れした感覚があるの。
ぼんやりと霞がかかっているような、不思議な感じなのかなあ。
そうね。それから、絵の構図は大きな三角形になっているの。
中央にいる人物たちが三角形の頂点で、両側の人物が底辺を形作っているわ。
ナレーターはマリアの手をそっと取り、絵の前に導きました。
絵の中にいるのは男女合わせて15人。
裸の人がほとんどだけど、服を着ている人も少しいるわ。
絵の詳細描写
肌の色は白っぽいピンクから青みかかった色まで様々。
影の部分は青や緑、紫を使って表現されているの。
それは珍しいね。
みんな髪の毛は薄い茶色や金髪、黒髪で色ははっきりしていないわ。
顔の表情もはっきりとはわからないの。
それからどの子も目の色は茶色で遠くを見つめているような感じ。
誰とも視線が合わないのよ。
一人一人がバラバラな方向を向いているんだね。
ええ。服を着ている女の子が一人だけいるわ。
白い布を頭からかぶっているの。
ナレーターは絵に描かれた風景に視線を移しました。
この絵の背景には青々とした木々がいげしげっているわ。
左側の奥には空に届きそうなほど高い木々が何本も描かれていて、
右側には少し色褪せたようなくすんだ緑の木々が見えるわ。
たくさんの木々が描かれているんだね。
そうよ。
それから絵の真ん中には穏やかな川が流れているわ。
水の色は薄い青色。
岸辺には茶色や灰色がかった岩がいくつか転がっているわ。
人々はその岸辺にいるんだね。
そう。でもこの川はまるで鏡みたいに周りの風景を映し出しているの。
そこに描かれた風景も人物もすべてが水に溶け込むように一体となっているわ。
いろいろなものが溶け込んでいるんだね。
とても不思議な絵だね。
そうでしょ。
この絵の全体は空の色も水の色も薄い青色や緑色で描かれているわ。
人物の肌の色や木々の緑色岩の茶色など様々な色が混じり合って独特な調和を生み出しているの。
まるですべてのものが一つの生命体であるかのように見えるわ。
マリアの言葉を聞いていたらこの絵の風景が目に浮かんでくるようだ。
絵の感想
本当にありがとう。
どういたしまして。
言葉で絵を描くって案外楽しいものね。
マリアとトミーはしばらくの間静かにその絵の前に立ち尽くしていました。
彼らの心の中にはそれぞれの大水浴の風景が鮮やかに広がっていました。