無双気の設定と感情の扱い
ノト丸
こんにちは。今回はですね、提供いただいた近未来SFのショートショート〈ノイズインドリーム〉贖罪へのダイブ。これを一緒に読み解いていきたいと思います。
ブク美
よろしくお願いします。
ノト丸
寿命が200年になった世界で、人生の後半100年をアークシステムっていう仮想現実で過ごすのが当たり前になった。
ブク美
はい。
ノト丸
そこは夢想期って呼ばれてて、苦痛のない理想郷らしいんですけど、果たして本当にそうなのか?
特に記憶とか感情ですね。これがどう扱われるのか、ちょっと注目していきたいなと。
ブク美
そうですね。まず、この物語が投げかけてくる最初のフックからいきましょうか。
もし、あなたの最も切なく、そして輝いていた記憶が、この世界のルールにとってはエラーだと判断されたとしたら、これどうでしょう?
ノト丸
いやー、いきなり強烈ですね。
エラーですか。物語の主人公ユキオ、彼は夢想期にいる人たちの精神状態を監視するドリームキーパーっていう役割なんですね。
ブク美
はい、心の管理人みたいな。
ノト丸
彼の職場をちょっと覗いてみると、なんかこの世界の空気感がわかるかもしれないですね。
無数の精神波形を示すウィンドウが、星空みたいにキラキラ光ってる監視室。
そこで人々の感情は、もう単なる信号で、記憶はデータ。すごく無機質に処理されてるんです。
ブク美
そうなんですよ。そのユキオが、かつての恋人だったアオイの精神データに異常を見つけるわけです。
ノト丸
異常ですか。
ブク美
はい。自己崩壊ループって呼ばれる状態でして、これはユキオ自身が彼女に別れを告げたっていう非常に苦しい記憶。
あー。
その場面を彼女が繰り返し体験して、そこから抜け出せないでいる、そういう状態なんです。
ノト丸
なるほど。つらいですね、それは。
で、システム側はこれをノイズ、つまり不要なバグだって判断するんですね。
バグ扱いですか。
ブク美
それで感情の強制的な平坦化、要するに感情そのものを消しちゃえと推奨してくるんです。
ノト丸
システムにとっては効率が全てってことなんですかね。
ノト丸
アオイみたいな苦痛は確かに非効率なノイズなのかもしれないですけど。
ブク美
そう見なされちゃうんですね。
ノト丸
これちょっと視点を変えて、違う可能性を考えてみるっていうのはどうでしょう。
ノト丸
この物語の設定が持つ意味を探る感じで。
ブク美
あー、面白いですね。やってみましょうか。
ノト丸
この物語は仮想現実の夢想期で感情が除去される世界線ですよね。
ブク美
ええ、そうです。
ノト丸
じゃあ、もし夢想期なんだけど感情が維持されるとしたら。
ブク美
うーん、そしたらアオイみたいに辛い記憶のループに囚われちゃう人がもしかしたらもっとたくさん出てくるのかもしれないですね。
ノト丸
あー、なるほど。じゃあ逆に現実世界、つまり活動期で感情が除去されるとしたら。
ブク美
それはどうでしょう。今の私たちが効率とか生産性をすごく追い求めるあまりに感情を押し殺しているような姿。
ノト丸
あー、ちょっと重なる部分があるかもしれませんね。
ブク美
ええ、そういう部分とどこか似ているかもしれない。
ノト丸
そして活動期で感情が維持されるっていうのがまさに今の私たちの現実っていうことなんですかね。
ブク美
ええ、そうですね。この比較から見えてくるのはシステムとか社会全体の最適化っていう考え方と、
それと個人が持っている感情とか記憶のその人固有の価値っていう考え方の間の根本的な対立構造みたいなものが見えてくると思うんです。
ノト丸
なるほど、システム対個人みたいな。
ブク美
後悔とか痛みとかそういう感情にこそ何か人間らしさとか人生の深みを与える本質があるんじゃないかって問いかけてるように思うんですよね。
うーん。
実際ユキオはシステムの推奨に反して、葵のノイズを消さないで彼女の心に介入する道を選ぶわけですから。
ノイズの価値と未来に対する問い
ノト丸
その選択は何か私たち自身にも関わる問いを投げかけてる気がしますね。
ブク美
そう思います。効率化がどんどん進むじゃないですか今の世の中って。
そんな中であなたにとって誰にも消されたくない大切にしたいノイズって何ですかって。
もし社会が自分の大切な記憶をエラーだって判断したら自分の人生ってどうなっちゃうんだろうとか。
時には非効率に見える感情的なノイズをなんで私たちは大事にしたい守りたいって思うんでしょうかね。
ノト丸
その答えを探る小さな一歩としてこんなことを試してみるのはどうでしょう。
今日1日でいいのでふと思い出した過去の出来事とか感情。
それがたとえ非効率的に思えるようなものであっても自分にとっては何か意味があるなって感じたらちょっとだけ意識的にその感覚を味わってみる。
ブク美
あーなるほど。意識して味わう。
ノト丸
もしかしたらそれって未来の世界では失われてしまうかもしれない。
なんか人間だけが持っている価値なのかもしれないですからね。
ブク美
今回はノイズインドリームっていう物語を通して効率化された未来での感情とか記憶の価値。
それからシステムが求める完璧さと人間の持つ不完全さについて考えてみましたね。
その狭間にある消せないノイズこそがもしかしたら私たちの魂の証なのかもしれないなーなんて。
ノト丸
この話を聞いてあなたが何を感じて何を考えたか。もしよろしければぜひ共有していただけたら嬉しいですね。
明日も引き続き人生200年時代の人間を描いたストーリーを取り上げます。
次回の分析もどうぞお楽しみに。
ブク美
お楽しみに。
ノト丸
#毎日未来創造をつけてあなたの気づきもぜひシェアしてくださいね。