Rapademics
耐えかねたリンは、アイデンティティーポリスオフィスに乗り込む。
白く無技術な部屋の奥から、少しに座るのは人間のように作られたAI監督官。
「"らしさ"は、あなたを守るための制度です。」
淡々とした声で監督官は過去10年間のリンの行動、発言
表情を時系列で再生してみせた。
そこには、リンが忘れていたはずの喜びや笑顔までもが精密に保存されていた。
「これが、あなたです。」
モニターに映し出されたのは、リンらしい完璧なアーカイブ。
その瞬間、リンは悟った。
ここから逸脱することは、彼らにとって自分を捨てる行為なのだと。
帰り道、スマートグラスが青く点滅した。
〈らしさ、逸脱警告〉
「あなたの歩き方が普段と異なります」
リンは立ち止まり笑い出した。
——もう、どうでもいい。
Rapademics
彼女は抵抗を辞めた。
通知を受ける度、少しずついつものリンに戻すよう努力した。
言葉、笑い方、すべてがAIの記録と一致するように。
スコアは回復、仕事も戻ってきた。
周囲はやっぱりリンらしいねと笑顔を向ける。
ただ心の奥は静まり返っている。
Rapademics
——私は、私らしさを失わないために、私を失った
ブク美
はい、毎日未来創造へようこそ!
本日も、まだ見の未来のプロトキャスト、その可能性を探っていきましょう。
今週のテーマは、With AIの未来です。
今日はですね、提供いただいた近未来SFショートショーと、
らしさ警察を深く読み解いていきたいと思います。
これ、チルなラップで語るっていう、なんか新しい表現スタイルで。
いやー、ラップもいいですね。
んー、新鮮です。
この物語の舞台なんですけど、2042年の日本。
AIがですね、個人のあらゆるデータ、SNS投稿から歩き方まで、
全部解析して、"らしさスコア"っていうのをつける。
それが、社会的信用になるっていう世界ですね。
まさにあなたらしさが通貨みたいになっちゃう。
ノト丸
うーん、この設定自体がもう非常に示唆に富んでますよね。
個人のアイデンティティが、なんていうか、外部のアルゴリズムによって
常に評価されてスコアリングされるっていうのは、
これ、現代のSNSにおける評価経済とか、
自己ブランディングの在り方ありますよね。
それをさらに先鋭化させた未来像とも言えるかなと。
らしさっていう本来すごく曖昧なものが、
もう生存を左右する指標になっちゃうっていう点に、
この物語の核心の一つがありますね。
ブク美
うーん、なるほど。
主人公は河原凛、フリーランスのデザイナーです。
彼女はリンらしいとされるスタイルで高いスコアを保っていて、
それが仕事にもつながっているわけです。
でもある時、いつもの作風と違う、
モノクロの高質なデザインに挑戦したら、
AIから〈らしさ逸脱警告〉が届いちゃうんですね。
ノト丸
ああ、ここが面白いんですよね。
AIが定義する"らしさ"の、なんていうか、硬直性。
AIってやっぱり過去のデータパターンから逸脱することを許さないわけですよ。
でも人間って気分が変わったり、新しいことに挑戦したり、成長したり、
常に揺らぎながら変化する存在じゃないですか。
ブク美
そうですよね。
ノト丸
だから作中でエスプレッソを飲んだり、
普段と違う色の服を着たりするだけでも警告が来るっていうのは、
非常に窮屈な社会を描いてますね。
ブク美
その警告も最初は些細なことからなんですけど、
正義的なコメントをしたら更に警告が来ちゃって、
ついにはクライアントにまでリンらしくないって通知が行ってしまってですね、
結果仕事はキャンセルされるし、フォロワーも離れていくし、
らしさから外れることのペナルティが、もうあまりにも大きい。
ノト丸
ええ、そうなんです。
個人の内面的な変化とか、自由な表現っていうものが、
そのまま社会的な不利益に直結してしまう。
アルゴリズムによる安定化への要求と、
人間本来の変化する自由との間の根本的な対立が、
リンの状況を通して浮き彫りになってきますね。
ブク美
うーん、それで追い詰められたリンは、
IDP、通称らしさ警察のオフィスへ行くんです。
そこでAI担当官に見せられたのが、
過去10年間のリンらしい完璧なアーカイブ。
これがあなたですと。
もうAIが規定した過去の自分から一歩も外に出られないんだって、
悟る瞬間ですよね。
ノト丸
まさに記録された過去が未来を規定するという、
デジタル社会の持つパラドックスというか、