2020年代、テクノロジー企業と国家の関係性は大きく変わりつつあります。国家からの「脱出(exit)」を志向してきたリバタリアンたちは、いまなぜ主権国家を強化する方向に向かっているのか。パランティアの株主総会、ピーター・ティールによる教皇批判、スターリンクとウクライナ、アンソロピックと米国防総省の対立に関するパルマー・ラッキーの批判から、国家と企業の新たな関係性と、そうした関係における倫理とガバナンスについて考えました(岡田)。
いまなぜ「主権」が問われるのか?/国家と企業の「デジタル空間」の対立から、「戦場・物理空間」での対立と融合へ/「ソブリンAI」への違和感/パランティア株主総会で否決された、人権と政治献金をめぐる3つの株主提案/米国長老教会と聖ヨセフ平和修道女会──株主になることは「監視する権利」をもつこと/Class A・B・F株──創業者3人が最大49.999999%の議決権を握るガバナンス構造/国家の重要情報を、国家以外の企業が持つことのリスク/国家への貢献を掲げながら、責任は「顧客たる国家」に返す非対称性/ピーター・ティールはなぜ教皇批判を書いたのか──論考「The Pope and the Antichrist」を読み解く/ベネディクト16世とボナヴェントゥラ──理性より神秘と感情につくティール/「我こそは正しいキリスト教徒」という自己認識/『マスキズム』と「サービスとしての主権」/スターリンクとウクライナ戦争──戦場を左右する一企業経営者の判断/「企業準主権(Corporate Quasi-Sovereignty)」とは何か/アンソロピックと米国防総省──利用拒否と「サプライチェーンリスク」指定/パルマー・ラッキーからの批判──軍を統制するのは国家か、企業か/マッドマン理論の思考実験──企業が止められる兵器は抑止力になるのか/責任の押し付け合いではなく、「何を許し、何を許さないのか」の規範を/防衛テックの倫理とは、自分や子どもの死をどう許容できるか
▼「2020s-twenty-twenties-」とは
2020年代を形づくる思想やアイデアとは何か?
テックから哲学、カルチャーまでを横断し、「思想がリアルポリティクスを動かす時代」に迫っていくPodcast番組。AIや防衛産業が立ち上がる米国テクノロジー業界の世界観や価値観を検証し、その戦略に「巻き込まれざるを得ない私たち」にはどのような選択肢や可能性があるのか? 哲学者の柳澤田実と、デサイロ代表の岡田弘太郎が、時にはゲストを招きつつ率直に話し合います。
▼出演
柳澤田実
1973年ニューヨーク生まれ。関西学院大学神学部准教授。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)、宗教を中心に文化的背景とマインドセットについて研究している。最近の関心テーマは米国テックの右傾化、若者のキリスト教回帰と少子化の関係。
岡田弘太郎
1994年東京生まれ。人文・社会科学分野の研究者と協働し、イノベーション創出や新たなる社会制度の提案を行う一般社団法人デサイロ代表理事。最近の関心は、エディターとしては「いま最も重要なテーマを提示すること」。デサイロ代表としては「持続可能な知のエコシステムを構築すること」。個人的には「東京という都市をもっと面白くすること」。
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▼参考文献
アレクサンダー・C・カープ、ニコラス・W・ザミスカ(村井章子訳)『テクノロジカル・リパブリック 国家、軍事力、テクノロジーの未来』日経BP 日本経済新聞出版、2026年3月
ウォルター・アイザックソン(井口耕二訳)『イーロン・マスク(上・下)』文藝春秋、2023年9月
ベンジャミン・ブラットン『The Stack: On Software and Sovereignty』MIT Press、2015年
アヌ・ブラッドフォード『Digital Empires: The Global Battle to Regulate Technology』Oxford University Press、2023年
クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ(樋口武志訳、斎藤幸平解説)『マスキズム 新たな独占の時代』飛鳥新社、2026年5月
マリエッチェ・スハーケ(江口泰子訳)『テクノ・クーデター──民主主義崩壊とシリコンバレーの野望』早川書房、2026年5月
ヤニス・バルファキス(関美和訳、斎藤幸平解説)『テクノ封建制──デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』集英社、2025年2月
ジェームズ・デイル・デヴィッドソン、ウィリアム・リース=モッグ『The Sovereign Individual: Mastering the Transition to the Information Age』Touchstone、2020年
トマス・ホッブズ(水田洋訳)『リヴァイアサン(全4冊)』岩波文庫
岡野原大輔『ヒトとAI』岩波書店(岩波新書)、2026年7月
松尾陽編『アーキテクチャと法──法学のアーキテクチュアルな転回?』弘文堂、2017年
山本龍彦編著『AIと憲法』日本経済新聞出版社、2018年8月
▼参考URL
Chee Hae Chung & Bryce Dietrich「Corporate Quasi-Sovereignty: Big Tech and the Politics of Sovereign Authority in the Digital Age」Policy Studies Journal、2026年
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/psj.70142
Preferred Networks「PFN、防衛装備庁の『生成AI等を用いた作戦環境情報分析支援実現に関する実証』を受託」2026年7月29日
https://www.preferred.jp/ja/news/pr20260729
Preferred Networks「国産生成AI基盤モデルPLaMo 3.0 Primeを正式リリース」2026年6月22日
https://www.preferred.jp/ja/news/pr20260622
Peter Thiel & Sam Wolfe「The Pope and the Antichrist」First Things、2026年7月15日
https://firstthings.com/the-pope-and-the-antichrist/
▼チャプター
オープニング
いまなぜ「主権」が問われるのか?
2010年代の「デジタル空間」におけるプラットフォーム企業と国家の対立
パランティア株主総会で問われた人権・国際人道法・政治献金
ピーター・ティールはなぜ教皇批判の論考を書いたのか
先端テクノロジー、神秘主義、終末論を横断するティールの思想
スターリンクとウクライナ戦争から考える「サービスとしての主権」
防衛テック・スタートアップの上場とガバナンス
アンソロピックと米国防総省の対立に関する、パルマー・ラッキーの問い
主権概念の歴史
日本におけるソブリンAI
防衛テック倫理とは、自分や子どもの死をどう許容できるか
エンディング
▼クレジット
イラスト:髙橋あゆみ
ロゴデザイン:畑ユリエ
企画・制作:一般社団法人デサイロ
└リサーチ:古島海
収録:Unknown Unknown
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