00:01
のらじお
こんにちは、のらじおのMuroです。
こんにちは、かえです。
えーと、僕が昔から好きなポッドキャストで、
本と雑談ラジオっていうポッドキャストがあるんですよ。
はい。
あの、歌人、単歌書く人、歌人の増野光一っていう人と、漫画家の小泉智洋っていう人がやってる、あの、
最近、なんかペンレームを変えたのかな。最近、自己紹介の時に吉住智洋っていうのが載ってるんですけど、
あの、が二人でやってるラジオで、僕最近聞いてなかった、あの、コロンビアに行ってから聞いてなかったんですけど、
あの、最近ちょっと最近の配信を聞いてみて、やっぱ面白いなと思って、
このラジオが何をやってるかっていうと、課題図書を設定して、
で、その課題図書について二人で話すっていうのをやってて、
で、間に課題図書を選定するための雑談会が入るみたいな。
本読み終わらなかったら雑談みたいな感じで。
その、何の本にするかっていうのも番組になってるってことですか?
番組になってるんですよ。
番組になってて、あの、二人がマジディスコミュニケーションなのがすげえ面白い。
えーそうなんですか。
そんなにずっとやってるのに。
あの、漫画家の南久太って知ってる?読んだことある?
知らない。
南久太っていう漫画家がいるんですけど、
で、その人と増野孝一は結婚してて、離婚されちゃうんだよね、南久太に。
で、結婚失格っていう本を書いてるんだけど、その結婚失格すごい面白いんだけど、
マジ結婚向いてない感じなんだよね、増野さんは。
で、結婚向いてない感じのそのコミュニケーション、
なんかね、増野さん絶対悪い人じゃない感じなんだけど、
やっぱコミュニケーションが難しい。
増野さんが思っていることを、増野さんがその他人が増野さんが思っているようには思ってないみたいなのをうまくこうアジャストできるみたいな感じの人で、
で、それが実に顕著に出ててすごい面白い。
お互いに、なんかいろんなお互いのことを察さないタイプで、
全然察してねーじゃんっていうのがすごい面白い。
聞いてみよう。
聞いてみてください。
えっとね、君の名は?君の名はって映画があったじゃん。
君の名はについての論評の回があるから、それすごい面白いから。
ちょっと聞いてみます。君の名はならわかるし。
その回で僕知ったんだ、そのラジオのことを。
03:00
そうなんで、ちょっと聞いてみます。
で、それやってみたいから、かえちゃんに読書課題図書を設定して本読んでみましょうっていうのを提案して、
かえちゃんがいいよって言ってくれたんで、
僕、お互いに課題図書を設定して、
そうですね、1冊ずつ。
1冊ずつ。で、僕が課題図書として出させてもらったのが、
今村夏子さんの星の子っていう小説です。
はい。
朝日文庫から出てる。
今村夏子さんは、この本に書いている経歴だと1980年広島県生まれ、僕たちのちょっと上だね。
2010年、新しい娘で太宰治を賞受賞。
こちら阿弥呼と解題し、同作と新作中編、ピクニックを収めたこちら阿弥呼で2011年に三島由紀夫賞。
2017年、アヒルで可愛原雄賞。
星の子で野間文芸新人賞。
2019年、紫のスカートの女で芥川賞を受賞。
著書に、父と私の桜を通り商店街、木になった朝って書いてて、
僕はこの中では、アヒルとこちら阿弥呼だけ読んだ。
芥川賞を取った紫のスカートの女は、読めなかったんだよね。
コロンビアで芥川賞を持ってる雑誌が来てたんだけど、
借りたまんま仕事が忙しくて読めなくて帰国しちゃったので、
読めなくて、それで星の子を読んでみたいなと。
この作者、結構気に入ってたんだよ。
この今村夏子さんを紹介してもらったのも、
その本と雑談ラジオで紹介してもらった。
そうだったんですね。
私は初めて読みました。今村夏子さん。
星の子で初めて読みました。
星の子すごい面白かったんだけど、
こちら阿弥呼でやればよかったなってちょっと思った。
そうなんですか。
こちら阿弥呼は、
もう1ページ目から結構ゾクゾクするような今村節なんだよね。
これもすごく今村節なんだけど、
阿弥呼の方が順度が高いっていう感じ。
ちょっと阿弥呼も読んでみよう。
どうでした?星の子。
面白かったですね。
なんていうか、すごい超主観。
主人公の超主観で最後まで行くのが面白かったです。
06:02
阿弥呼もこちら阿弥呼も同じなんだよね。
けど、
阿弥呼とかこちら阿弥呼の主人公は、
主人公自体が結構変わった人っていう感じ。
だから、僕たちからすると普通の日常みたいなのが描かれるんだけど、
ちょっと変わった人が普通の世界を見てるから、
慣れ親しんでいたはずの世界なのに、
まるで見知らぬところにいるような現象が次々に起こるみたいな感じなんだよね。
で、星の子はどっちかというと、主人公は結構普通っていうか、
普通の感覚に近いみたいなのがあるかなと思って。
変わってるんだけど、星の子の主人公も。
けど、こちら阿弥呼の阿弥呼ほどじゃないっていう感じ。
それが今村節の順度がちょっと低いく感じだっていう、僕の感想になります。
これはどうしますか?一通りのあらすじを言っていく感じですか?
せとももバンバン感想を言っていく感じですか?
ちょっと一通りあらすじようか。
じゃああらすじ読んで、ぜひ皆さん読んでからこのポッドキャスト聞いてください。
はい。
あらすじは、あらすじってほどの誤答はないよね、この本。
そうですね。
特に何かが起きるわけじゃなく、主人公の名前が林千尋ちゃんって言うんだけど、
この子が現在中学3年生だと。
で、現在中学3年生なんだけど、出生直後からの自分の人生について丹念に語っていく。
で、この林千尋ちゃんが生まれた時にすごく病弱で、病弱だったことが原因で、
両親がどうも信仰宗教にはまってるらしい。
で、両親はその信仰宗教にはまっていったがために、家も結構貧乏になっちゃったし、
この千尋ちゃんにはお姉ちゃんがいるんだけど、お姉ちゃんもぐれちゃってるっていう感じで、
信仰宗教のせいで家庭がちょっと普通じゃなくなっちゃった女の子の視点で、
淡々と何が起きたかっていうことがずっと描かれていく。
で、一番最後にその信仰宗教の研修旅行で、
その信仰宗教の本部みたいなところがあって、その本部に研修旅行で行って、
行くっていうところで、話が終わるってなってるんだよね。
15歳の時に研修旅行に行きましたっていうところまでの、
09:00
そこの時点からの、そこの時点までの千尋ちゃんの人生の回想っていう形式の小説になってる。
お父さんとお母さんっていうのは、娘の病気に効いたっていうその確信っていうか、
あの金の星の水かな。
なんかその水が子供の病気に効いたっていうので、はっとこう目覚めるじゃないですか。
この力に、力が存在、この水が素晴らしいものだっていうことに、
こう典型を受けるじゃないけど、気づいてそこから信じるようになる。
で、その下で千尋っていうのは、もう物心ついた時からその典型を受けた良心の中で育つ。
で、お姉ちゃんっていうのは、この千尋が生まれた時5歳なんですよね。
だから、おそらくお姉ちゃんは良心が変わってしまったっていうその認識がある人として、
そこに疑問を持つんだと思うんですけど、このお姉ちゃんと千尋の違いみたいなのがめっちゃ面白い。
千尋の視点で全部描かれてるから、どうしてお姉ちゃんはこうなんだろうみたいな感じで、その違いが描かれてるのが面白いですよね。
誰かが客観的に違うっていう判断してるんじゃなくて、千尋の視点でお姉ちゃんは一体どういうことなんだろうみたいな。
そうだよね、千尋ちゃんはすでに宗教にハマっているお父さんとお母さんに育てられたから、
その宗教にハマっている状態っていうのが普通になっちゃってるから、
そうそうそうそう。
分かんないんだよね。
そうそう。
宗教にハマってないっていうのがどういう状態か。
そうそう、知らないんですよね。
けどお姉ちゃんは宗教にハマってなかった状態からハマってる状態になっちゃったから、
その変わってしまったお父さんとお母さんっていうストレスを感じてるんだよね。
その幼い子供が変化に抵抗する感じの描かれがすごいリアルな感じだった。
あのシーンがすごい。
この水を進められた上司の家にまだ小さい時の千尋とお姉ちゃんがいて、
そしたらすごいおいしそうなお菓子がいっぱいテーブルの上にあって、
12:04
ジュースも出されて千尋は大喜びでむさぼるんだけど、
お姉ちゃんは一口も口をつけないみたいな、
言葉にできないけど抵抗する子供みたいな描かれ方が面白かったですね。
確かにね。
お姉ちゃんは嫌なんだよね、宗教にハマっちゃってるお父さんとお母さん。
そうそう。
水を売ってるんだよね、その宗教団体が。
その水が霊的なパワーがあって、スピリチュアルなパワーがあって、
何にでも効くってなってて、お父さんとお母さん水をたくさん買ってるんだよね。
で、その水で千尋ちゃんも病気が良くなったっていう。
で、食べ物とかね、飲み物とかにね、水が入ってるんだよね。
だから嫌なんだよね、お姉ちゃんはね。
手作りのお菓子。
だったんだよね。
で、帰りに駅でお母さんに買ってもらったコアラのマーチはめっちゃ食べる。
だからお腹が空いてないわけじゃなくって、拒否をしてるんだ。
小さいながらに抵抗してるんだっていう描写が面白かった。
千尋はなんでお姉ちゃんは食べないんだろうみたいな、こんなに美味しいのにみたいな無邪気に。
もうあまりにも思想、お母さんとお父さんの思想を千尋の中に内包してしまっていて、
疑いの余地も発想もないみたいな。
のの、その描かれ方がすごい、あーなるほどなみたいな。
これがさ、15歳の千尋が回想しているにも関わらず、
その時にお姉ちゃんが両親に対して抵抗していたんだっていう、
その同情とかシンパシーみたいなのが全くないんだよね。
ないない、ないですね。
これがなんかすごく今村夏子の本っぽくて、
あ、そうなんだ。
全ての出来事がものすごい植物的なんだよね。
あーそうですね。
確かにそう。
これが大きく、なんかハードボイルドなんだよね。
心理みたいなのがないみたいな。
そのまま全面的に受け止めてはいるけど、みたいな。
その、だからものすごく不穏な感じするんだよね。
あーそうですね。
この小説、多分今村夏子さんの小説どれもそうだと思うんだけど、
全体的にずっと不穏なんだよね。
なんかハラハラするんですよね。
15:02
なんかずーっとホワイトノイズが入ってるみたいな感じなんだよね。
なんか、じゃあその不吉な予感がどーんってどこかで当たるわけじゃなくて、
ずっと微妙に嫌だ。
緩和がないよね。
確かに確かに。
普通だったらね、このホワイトノイズがだんだんだんだん大きくなって、
だんだん大きくなって、どーんみたいになるはずなのに、
そういうの全然ないんだよね。
最後まで、最後の最後までだから、
おーい!終わった!みたいな感じ。
びっくりした。
なんかまだ結構あるなって思ったら、
小川陽子さんとの対談が入ってて、
あれ?って思って、ここで終わるの?みたいなところで突然終わるんだよね。
その不安さが、研修旅行がより不安で、
研修旅行の不安さはやばいよね。
ずっとお母さんとお父さんに会えないっていうところが、すごい不安な感じなんですよ。
別に何があるわけでもずっとすれ違い続ける、何回も何回も、
さっきお母さん来たのに会えなかった?みたいなのが何回もあって、
何か予感、予感をさせられるんですけど、これは?みたいな。
結局、星を見に行ったらそれで終わりなんですよね。
だから、ずっとなんかこれ、
で、しかもその合間に、宗教団体の集団認知の話がいきなり、
なんかこう話の流れでチラッとだけ出て、
こんな重要っぽい話、なんかついでみたいにして、
ちょっとだけ見せてきたぞって思って、
これちょっとなんか山に登ってるし、大丈夫か?みたいな。
命の危険まで想像させられて、結局流れ星が綺麗、みたいな。
どういうことだ?みたいな。
これがさ、僕たちの視点からすると、
その信仰宗教みたいなものがさ、やっぱ僕たちオム心理教育をさ、
やっぱあんまりいいイメージないじゃん。
で、水を高く売ってるみたいなのもすごいステレオタイプじゃん。
けどさ、この千尋ちゃんの視点からすると、それがあんまりにも普通で、
家族で富士山陸の風光明媚なところで流れ星を探して、ずっと座るみたいなのってさ、
カメラを寄ってるとさ、すごい幸福な家族なんだよね。
親子3人で肩を寄せ合ってさ、
けどさ、僕たちのカメラって引いちゃってるからさ、
18:01
大丈夫なの?みたいな。
そうそう。
そうですね。だから千尋の世界は結構幸福、ずっと幸福なんですよ。
失恋とかあるけど、それも当たり前の若い子の挫折っていう感じで。
中学生の女の子ってこんな感じだよね、みたいな。
あんまり千尋の生活に大きく宗教が、ちょっと貧しいぐらいのことだけど、
それについても千尋はあんまり大して気にしてない。
辛いとかもないし、うちは結構家族でよく話す方みたいな。
どっちかって言ったら仲良しで、不満も特にないみたいなぐらいのことなのが、
だからその千尋の世界、見えてる世界を見せられてるんだけど、
それとこっちが引いてみてるギャップの不穏さみたいな感じかな。
教団の中で若い子たちの取りまとめをやっているカップルが出てくるんだよね。
このカップルがいい大学に通ってるんだよね、両方とも。
エリートで、教団の子供たちからもすごい慕われていて、美男美女のカップルなんだけど、
その人たちが大学で勧誘しようとして、自分たちの宗教団体に後輩かなんかを勧誘しようとして、
その子をマンションに閉じ込めたかなんかで、訴訟に発展してる。
みたいなのが、なんてことのない感じで出てくるんだよね。
集まったら時々話題になるんだけど、それが教堂、大きな浴場とかお風呂場、温泉みたいなところで、
私はこうやって聞いたよ、私はこうやって聞いた、みたいな。
何が本当なの?みたいな、ぐらいの。
あははじゃねえよっていう話なんだけど、そんな感じなんだよね。
あの人がそんなことするわけないよ、みたいな、あんなににまいめなのにさ、優しいしさ、みたいな。
相手の女がおかしいんだよ、お母さんもそう言ってた、みたいな。
とにかくね、その人とのカップルもよくいる集会場みたいな、中がめっちゃユートピアっぽいんですよね。
子供が年齢関係なく走り回って楽しそうで、
21:00
カイジさん、カイジさんでしたっけ、リーダーの男の人が、
今日はうのをやるためだけに来た、みたいな人がわーって子供が集まってきて、
手抜きなしで真剣勝負、ちっちゃい子も大きい子もみんな混ざってやる、みたいな感じが、
すごい幸せそうなんですよね、この集会場が。
そこに千尋は、千尋は学校には小学生の時の友達がいなくって、
たまに出来た友達も、その集会場の宗教のお祭りとかに連れて行ったりしてしまうと、
そのことをお母さんに喋ったりして、お母さんが警戒して、
もうあの子と遊んじゃダメみたいなことを言われて、
友達ができない、みたいな状況があって、
でもそのことの千尋の評価が、
いや、それは私が宗教に入ってたり、あの集会場がおかしいからじゃなくて、
そこで友達をほったらかしにする私の能力っていうか、
人間性みたいな。
そうそう、人間性に問題があるんで、
思想とか集会場に問題があるわけじゃない、みたいな評価をしているのがめっちゃ面白かった。
宗教団って、なんかそれあれだよね。
萩尾本みたい。
萩尾本の。
めっちゃ思ったんですよね。
あの竹宮慶子に。
なんで怒られてるかイメージピンときてないやつね。
わからなくて、私がノロマだからだって言ったらめっちゃ似てると思った。
違うよっていう。
同じじゃんと思った。
あまりにも内包しすぎてて、気づかないみたいな。
そうだよね、自分が宗教団体に入っていることっていうのが、
この子の中で全然評価できないんだよね。
そうそう、当然すぎて。
千尋が初めて外部っていうものを意識するのが、
車で送ってくれた先生に、頭に水をかけ合う親を見られたときだと思うんですよね。
千尋が人生で初めて外の視点っていうのを意識した瞬間が、
緑のジャージで頭のタオルに水をかけ合う両親を好きな人に見られたっていう事件なのかな。
でもさ、あれもさ、お父さんとお母さんの教会のバザーで買ってきた変な服を着てたなみたいなさ、
改修着てたし、確かに見たら変に見えるよねみたいな反応じゃなかった?千尋ちゃん。
24:08
その時はそうだったんだけど、
帰ってからすごいお父さんとお母さんにやつ当たりして、
で、様子がおかしいから自分も頭に水をかけられそうになって、
それをバーンって手で跳ねのけて布団に潜って泣いたみたいな。
確かにね、確かに。
マーちゃんが家を出て口を聞か聞けないふりをしてた同じ宗教団体の子供、男の子が、
口を聞けないふりをし続けた理由が初めてわかったみたいなのがあるから。
なるほどなるほど、そういうことか。
その時、外からどう見られてるかとか、外と別の価値観との差異みたいなのを初めて意識して、
お姉ちゃんの気持ちがちょっとわかったんじゃないかなって。
お姉ちゃんはずっとその違いの間で苦しんでたけど、
確かに。
でも先生に否定されて廊下で、結局千尋は両親の方を選ぶことに決めたのが、
先生あれ私のお母さんとお父さんですって言ったっていうのは、
やっぱり私はその狭間でお父さんとお母さんの方に選択するっていう判断をしたんだと思う。
それを告白するっていうのが、あの辺が面白いな。
確かにね、それすごく面白い。
これあれなんでね、千尋ちゃんがすごくかっこいい2枚目の若い先生に恋してるんだよね。
で、その先生が千尋ちゃんと他に生徒何人か乗せて、車に乗っけて送ってくれたんだけど、
そこで両親見られちゃうんだよね。
で、このシーンでさ、この先生がさ、不審者がいるなって気がつくんだよね。
気がついた後に2匹いるなっていうわけ。
27:00
すごいんだよね、この先生が2枚目で若いんだけど、
人間としてはクソダメなやつであることが分かるんだよね。
それは結構細かく出してきますよね。
で、すごく即物的にこいつが人間としてクソダメなことを題してくるのに、千尋ちゃんは全然気がつかない。
そういうところもすごく不穏なんだよね。
そうですね。
で、あれがこの最後の対談の方を読んでて、なるほどなって思ったんだけど、
多分同じとこだと思う。
両親ですって言った時に、先生の目の向こうが、なんか棒なんだっけな、
もっと明かりが灯ったみたいな感じなのかな。
先生の目の奥に、もっと明かりが灯ったって書いてるんだよね。
これの意味が分からないんだよね、確かに。
私はね、この小川陽子さんと今村さんの対談の中で、その話に触れてるじゃないですか。
触れてる触れてる。
私は完全に小川陽子と同じ受け取りをした。
小川陽子さんは何て言ってる?
小川陽子は、その光が灯ったっていうこと、何て言ってたかな、正確には。
ちょっとどこだったかな。
ほっと明かりが灯った気がした。
で、小川さんが今村さんにあれはどういう意味ですかって質問して、
今村さんは南先生が恥をかいたシーンだって言うんですよ。
南先生は生徒たちの前でいい格好をするんだけど、
それを千尋が先生が私たちを守ろうとやり過ごした、
あの不信者は私の親なんですよということで、
先生がちょっと傷つく、というか恥をかくことを表現したかった、
みたいに今村さんは言ってるんだけど、
小川さんは、私の私っていうのは千尋の親があんな変わったやつだということを知って、
ひとつ材料をもらったと感じたんじゃないか、みたいな。
だから弱みを握ったじゃないけど、すごく残酷な意地悪な感じで、
千尋の恥をゲットした、みたいなちょっと喜び的な目の光なんじゃないかっていう、
たぶんそういう意味だと思うんですけど、私もそういう意味だと思った。
30:01
なるほどね。
ちょっと何て言うんだろう、嘲笑っていうか、ウケるみたいな、草生えるみたいな意味かなって思った。
確かにね、その後そのように動くからね、この人がね。
だけど今村さん、逆に今村さん、これ傷つくっていう意味だったのってびっくりした。
いや、だからさ、だからだよ。ここがすごいと思うんだけど、たぶん小川さんが正しいんだよね。
たぶん小川さんが正しいんだが、今村さんはそのような状況を観察しているときに、
常にこの人は傷ついたんだとしか思ってなかったんだよ。
で、今村さんはこの人間というのは、なんか恥ずかしくなった後にこんな感じのリアクションするなっていう経験がたぶんあるんだよね。
だからこの後のこの先生のすごい残忍な対応っていうのを描けるんだけど、
それを何て言うのかな、その時のこの目の奥にポッと明かりが灯るみたいなのを、
残忍さが出てきて喜んだっていうふうには、たぶん今村さんは解釈してなかったんじゃないかなと思って。
なんかそれすごいですね。同じひとつの表現に、残忍だっていう評価と、傷ついてるっていう評価があって、
でも状況だけが描写されてるから、それぞれの取り方を知ってるのすごいですよね。
この人本当はいないのに。
だから、たぶんこのどっちも本当だっていう、今村さんがそういう状況のことを、この人は残忍だと評価しない人であるから、
この小説の全体的な不穏さが出てるんだよね。
あーそうか、もう本当に千尋とかなり、何て言うか、同じ感覚で見てるっていうか、観察してる、そのまま描写してるって感じ。
じゃないかなって。
いやー、恐ろしい。
でもさ、千尋ちゃんはさ、宗教にハマってるっていう感じだけどさ、
こちらあみ子は、本当にね、あみ子っていうのは、本当に恐ろしいほどよくわかんない存在なんだよ。
へー、読んでみよう。
33:01
なんかね、突然、冒頭のところで、あみ子の歯が欠けてるみたいなの出てくるんだけど、
なんかね、あみ子が突然殴られるんだよね。
うん、誰に?
なんかその時好きだった男の子かなんかに。
でも、何て言うかな、あみ子はなぜ殴られたのかわからないみたいな感じで、ずーっと進んでいくんだ。
なんかちょっとごめん、内容うる覚えだな、読んでもらった方がいいや。
みたいな感じで、すごくこう、何て言うかな、そういうふうに世界見えてるんだみたいな。
そうですね、そういうふうに世界見えてるんだみたいな感じすごいありますね。
ずっと千尋の視点で、千尋が何の疑いも持たないから。
すごいよね。
千尋ちゃんが、何て言うの、ちょっと頭悪そうみたいなのもすごいなと思って。
うん。
けどやっぱちょっと頭悪いっていうのはちょっと違うか。
なんか、千尋は自分のことを友達をおったらがしにしたりとかして、うまくできないみたいな評価はしてるんだけど、
こう、自己肯定感みたいなのがめちゃくちゃ高い感じがあるんですよ。
そういう自分を受け入れてる。
だから私ってダメなんだ、みたいなとこが全然なくて、できないんだよね、みたいなぐらいで。
この子のさ、食べ物に対する執着がすごいんだよね。
あー、そうですね。
そうですね、そうか、ほうじのお弁当。
ほうじのお弁当とか、食べ物に関する描写だけ異様に詳しいんだよ。
あー、確かに。
あの時のあの食べ物はこんな感じで、あのいう風に美味しかったみたいなのをすごい描写してあって、
食べ物のシーンになった瞬間千尋のテンションが上がっているのがわかるんですよね。
美味しくなかったとかでテンションが普通に下がっているのがわかって、
この食うこと、なんていうかな、で、あと男の子が好きなんだよね。
うん、すぐ好きになっちゃう。
すぐ好きになっちゃうよね。
その時好きな男の子と食べ物の話でだけテンションが上がっているんだよね。
あとの子とかすごいどうでもよさそうなのがすげーなーと思って。
そうですね、友達がいないことの別に大したことはなくさそうだし。
36:02
そうそう、たぶんなんか勉強ができている感じじゃないんだけど、
勉強ができないこととかも気にしている感じじゃないし。
うん、そうですね。
家が貧乏なのも気にしてないし。
全然気にしてないですね。
だから、もっと家が裕福だったらもっと美味しい食べ物が食べれるのに、みたいな風にはならないですよね。
ただただ目の前に今現れたものに上がったり下がったりしただけで、
もっとこうだったら、みたいなのが全然ないですよね。
全然ないね。
今しかないみたいな感じで。
未来とか過去があんまり。
お父さんをこの宗教に勧誘したその地区の支部長みたいな人いるんだよね。
うん。
で、その人は金持ちなんだよね。
うん、落合さん。
落合さん。
落合さんの息子がいるんだよね。
うん。
息子はおそらく親の宗教がすごく嫌いで、
親に対しては口が聞けないふりをしてるんだよね。
うんうん。
で、しかも引きこもりなんだよね。
うん。
で、その落合さん家の息子が千尋に会いに行くんだよね、ある日。
うん。
で、会いに来て千尋にドーナツを送ってあげるんだよね。
うん。
で、千尋はドーナツのところでめちゃくちゃテンションが上がってて、
で、その落合さん家の息子とドーナツ屋を出た後に、
突然その息子にキスされそうになるんだよね。
うん。
けど、そのキスされそうになったということが気がつかずに、
うん。
なんか殴っちゃうんだよね、落合さん家の子。
うんうん。
殴っちゃうか突き飛ばしちゃうかするか。
うんうんうん。
だから避けるんだよね。
うん。
で、なんていうかな、そのことに対する評価はしないんだよね、千尋は。
そのドーナツがいかにおいしかったかっていう、
ドーナツがどのような食感だったかみたいなことはすごく書いてるのに、
うんうん。
その、なぜこの男の子は自分にキスしようとしたかみたいなこと全然考察しないんだよね。
考察しないですね。
嫌だったっていうわけ。
うん。
なぜドーナツをおごってくれたのかみたいなことを考えたりしないんだよね。
そうですね。
ドーナツはおいしかった、キスされそうになったのは嫌だったみたいな。
めちゃくちゃですもんね、意味がわからないですからね。
ね。
突然来て、ドーナツをおごってきて、いきなりキスしそうにする意味はわからない。
意味わかんない。
けど、確かにその考察はしないですね。
嫌だったっていうだけ。
意味を全然考えないんだよね、このね。
ほんとですね、意味考えないですね。
全然意味考えない。
39:00
意味考えないからこんな感じなのか。
お姉ちゃんがなんで家を出たのか、なんでだろう、で終わりだもんね。
お姉ちゃんが、お母さんのお兄さんが宗教をやめさせようとしてるんだよね、この家族に。
で、ある日、買ってくる水を全部水道水に入れ替えちゃうんだよね。
で、この水がただの水に過ぎないっていうことを示すためにそれをやるんだけど、それはお姉ちゃんが協力するんだよね、おじさんに。
で、おじさんに協力してるっていうのが後でバレるんだけど、千尋ちゃんはそのことに関して考察しないんだよね。
なんでお姉ちゃんそんなことしたんだろう、終わりみたいな。
そうそう、でもこのエピソードのすごいなと思うのは、千尋の視点で起こっている状況だけで、
で、あとお姉ちゃんが後々、実はあの時私がおじさんを助けて、自分も共謀して水の中に入れ替えたっていう告白だけで、
お姉ちゃんのすごい複雑な心理状態みたいなのが見えるのがすごい。
そうなんだよね、千尋ちゃんには分からないけど、僕たちには分かる。
分かる、そうそうそうそう、それがすごい、それがすごいですよね。
この子は分かってない、この子の視点でずっと喋られたのに、この子には分かってないのに、こっちには分かる感じがすごい。
お姉ちゃん、共謀したのにお姉ちゃんは包丁を出して帰れって言うんですよ、おじさんに。
おじさんが水を捨てたことに、おじさんが宗教をやめるっていうことに、お父さんもお母さんもすごく温等に対応してたんだよね。
そんなこと言いますけど、みたいな感じで温等に対応してたのに、水を入れ替えたっていうことをばらした瞬間、両親が激行するんだよね。
激行しておじさんに帰れって言うんだけど、おじさんは帰らずに、なんかせめて子供だけは連れて行こうとか、そんな感じのことをするんだよね。
そしたら、お姉ちゃんが包丁を出してきて、おじさんに帰れって言うと。
おじさんからしてみたら、家族の中で唯一、この宗教おかしいって思ってるお姉ちゃんの方が、包丁を持ち出してきたからびっくりして、なんか絶望して帰っちゃうんだよね。
42:03
たぶん、ほんとに一番絶望したのは、お姉ちゃんだったんでしょう。
きっと水詰めながら、お母さんたちの目が覚めて、そうだったんだ、何にも意味がなかったって言って、元に戻る希望でいっぱいだったかもしれない、お姉ちゃんは。
おじさんに水を入れ替えさせて、これで何もかも好転するってだったのに、幸せなイメージだったのに、状況がもっと悪くなったから、びっくりしてパニックになって、絶望してそういう行動に出たんだろうなっていうのが、
何なんだろうって思ってる、千尋の視点から全部読めるのが。
千尋は何でおじさんそんなことしたのかなーって思ってたよね。何でじゃねえだろうっていう。
このおじさんがね、千尋ちゃんを引き取りたいって言ってくるんだよね。
千尋ちゃんはそれ断るんだよな。
進学と一緒に、高校はうちから通ったらみたいな提案をされるんですよ。だけど一個一個断る。
なんかその辺も難しいよね。
この場面の千尋だけはちょっと客観性があるような喋りをするかな。
うちが貧しいこともわかってますみたいな。
あなたたちが私がこの家にいる続けない方がいいって思ってることもわかってる。
でも私はこっちを選ぶみたいな感じがある。
そうなんだよね。そうなんだよね。
だから千尋ちゃんが何がわかってて何がわかってないのかがよくわかんないんだよね。
さっき言ったさ、宗教団体の施設でさ、リンチェが起きたとかも知ってるわけじゃん。
みんなに慕われてる若手のホープのカップルがさ、訴訟を抱えてるのを知ってて、
だからこの子は全部わかっててそっちにコミットしてるのか、
45:00
分からずにこうなのかみたいなのが全然見えないみたいなすごい、その辺が不穏感出してると思うんだよな。
私の印象としては全部その客観的な視点が全くないわけじゃなくて、
事実としてはいろいろ、うちが他の家と違うこととか認識はあるんだけど、形みたいなものとしては。
でも信念みたいな、信条みたいなものからはしっかり理解してないというか、
言ってる意味はわかるんだけどみたいな状態。
だからその友達ができないのが私の能力不足だみたいなと同じ感じで、
宗教団体でリンチェが起きたのをこちらの視点からではパッと宗教と結びつけるけど、
もしかしたら千尋は何か揉めたんだろうって評価をしてるかもしれないし。
なるほどね。
だって宗教をしてない人の中でも殺人事件があったりするわけじゃないですか。
私たちは宗教っていうのでパッと結びつけちゃうけど、千尋はそういう事件と同じように、
そこでは昔人が死んだらしいぐらいの感じなのかなみたいな。
確かにそうかもしれない。
で、女の子の友達はある意味でっていうか、ある部分でそういう視点に介入してこない、
みたいな共感があるんじゃないかな、千尋、誰だっけ、女の子の友達。
美人の友達?
そうそう、美人の友達。
なんかその水おかしいみたいなこと言ってくるけど、それで千尋を避けたりはしないっていうか、それを理由に。
おかしいけど、そのことと千尋と付き合うことは別みたいな。
でもそれはね、なんか多分そっちの子はミラー戦術なんだと思うんだよね。
多分その美人の子は、その一足一脚、一足一頭足?
一脚一度、ちょっとあの熟語がわかんないや。
が、全部意味で充足されることみたいなのが多分嫌なタイプなんだと思うんだよね。
48:01
で、千尋はそれをしないわけじゃん。
彼女が美人であるという事実は認めるんだけど、美人であるからどう?みたいな評価を千尋はしないわけだよね。
できないんだよね。
できないから、だから彼女は千尋と友達でいたいわけだよ、多分ね。
彼女は千尋のそういった部分を評価してるから、千尋ちゃんにそういうことをしない。
あー、なるほどな。
そうそう、そうじゃないと、あの美波先生の行動に対する千尋ちゃんへの彼女のフォローにならないんだよね。
あー。
彼女は賢いから、すごく賢くて、何もかもわかった、何もかもわかった上でそうやってるっていう。
そうか、そうか。
だから、彼女が出ることによってさ、
確かに相対化されるよね。
だって千尋ちゃんは、何て言うかな、彼女は宗教には入っていないけれども、
みんなと一緒であることによって疲弊してるわけじゃん、多分。
美人であることに疲弊してる。
美人であることで色々な評価をされることに疲弊してて、
普通なんだけど、その普通であることで別に幸福ではないんだよね。
千尋ちゃんは確かに美人ではないし、みんなに差別されてるんだけど、
彼女は幸福なんだよね。
みたいなことが、すごく相対化されて出てきてて、
なるほどなって思いますね。
なるほど。付き合ってる彼氏もバカっぽい。
カッパかと思ったっていうところがめっちゃ面白かった。
千尋の親を見て。
死ぬほど頭悪そうだけど性格の良さそうな男と付き合ってる。
そういうセンスだよねって思うよね。
だから彼女はみなみ先生のこと初めから嫌いなんだよね。
かっこいいけど、すごく残忍だって分かってんだよね。
そういうのがすごくいいよね。
あのシーンが一番好きなんですよね。
クラスの女の子、千尋がみなみ先生の似顔絵描いてるのを見て、
51:12
これ誰って言われて、千尋がターミネーターの男の子だって言って、
話をした女の子にみなみ先生にみんなの前でひどいことを言われた後に、
その女の子がみなみ先生の似顔絵の髪を全部計算用紙にするシーンがすごく好き。
裏も表も顔の上から全部計算で潰したっていうシーンがめちゃくちゃ好き。
なんかすごい意味のあったものを、全然意味のなかったものにしてしまうのがちょっと魔法みたいで好き。
確かにね。やっぱその辺にあるのかもね。この本のテーマみたいなのが。
意味みたいな。
意味って本質的にはないじゃん。
けどあるようになっちゃうじゃん、どうしても。
みたいなことに関することかなって思いました。
はい、面白かった。
なんかあります?あと。
いや、そんな感じかな。
だいぶ全部出した感じですか。
終わりましょうか。
はい。
ありがとうございました。
ありがとうございました。