1. 寝落ちの本ポッドキャスト
  2. 229三遊亭圓朝「怪談牡丹灯籠..
229三遊亭圓朝「怪談牡丹灯籠」中(朗読)
2026-05-07 1:41:39

229三遊亭圓朝「怪談牡丹灯籠」中(朗読)

【作品】怪談牡丹灯籠

【作者】三遊亭圓朝(1839-1900)

【あらすじ】亡くなった恋人・お露が下女を引き連れ、カランコロンと下駄の音を鳴らして牡丹の灯籠を手に夜ごと愛しい男・新三郎を訪ねる、執念の愛を描いた物語です。幽霊と契りを結んだ男の悲劇、そして金のためにそれを隠した夫婦の因果応報を描く、人間の欲望と情が絡み合うドロドロの長編愛憎劇です。

【こんな方に】寝る前に聴きたい / 名作文学 / 睡眠用BGM / 朗読 / 青空文庫 / 聴き流し


悪党たちはどうなるのか

今回も寝落ちしてくれたら幸いです


Spotify、Appleポッドキャスト、Amazonミュージックからもお聞きいただけます。フォローしてね


--------------

お気に召しましたらどうかおひねりを。

https://note.com/naotaro_neochi/membership/join


--------------

リクエストはこちら

https://forms.gle/EtYeqaKrbeVbem3v7


感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

サマリー

このエピソードでは、三遊亭圓朝による怪談牡丹灯籠の朗読が続きます。主人公の友像は、幽霊であるお露とその女中お嫁から、萩原様が首にかけている観音如来のお守りを盗み出すよう依頼されます。友像夫婦は、その見返りとして百両を受け取るために、お守りを盗む計画を実行します。友像は萩原様の体を洗うふりをしてお守りを盗み出し、代わりに瓦で作った不動明王像を置きます。盗んだお守りは、幽霊が再び現れた際に百両の金と交換されますが、友像は恐怖からお札を剥がす際に足を滑らせて畑に転げ落ちてしまいます。 一方、飯島平左衛門の家では、百両の紛失騒動が起こりますが、それは平左衛門が自分でしまっていたのを忘れていたことが判明します。この騒動の中で、家来の康介が疑われますが、後に疑いは晴れます。しかし、康介は平左衛門の仇討ちのために武術を学んでおり、平左衛門は実は康介の父を殺した人物でした。平左衛門は康介に仇討ちをさせるために、源二郎に変装して康介に斬らせ、自身の命を犠牲にしようとします。康介は平左衛門を斬ってしまったことを深く後悔し、平左衛門から渡された書き置きを手に、仇討ちの旅に出ます。 その後、友像は盗んだ観音像を畑に埋め、お露と再会しますが、お露は友像の悪事を暴露し、友像はお露を殺害します。友像とおみねは逃亡し、裕福になりますが、友像は新たな女性(お国)に心を奪われ、おみねを殺害してしまいます。お国は実は飯島平左衛門の愛人で、源二郎と共謀して平左衛門を殺害し、金品を奪って逃亡した人物でした。友像は医者として振る舞う山本師匠と再会し、悪事が露見しそうになりますが、師匠の助けで逃亡します。物語は、友像の悪事が次々と明らかになり、登場人物たちの因果応報が描かれていきます。

00:07
寝落ちの本ポッドキャスト。 こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
えー、投稿フォームをご用意しております。 概要欄のリンクよりリクエストなどをお寄せください。
それから、まだしてないよという人は、このあなた、ぜひ番組のフォローをよろしくお願いします。
最後に、おひねりを投げてもいいよという方、 概要欄のリンクよりご検討いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いします。
さて、今日は続きですね。
怪談牡丹灯籠。チャッチャと参りましょう。
お化けが出てきてましたね。幽霊が。
幽霊からの依頼とお守りの盗難
娘おつゆと、その女中お嫁が、化けで出てきていて、お札をはがしてほしいとお願いされた人が、
じゃあ、100両ください。
で、本当に100両、どこかから、関係のあるところから、かっぱがれたようだ、みたいなところからでしたね。
どうなっていくんですかね。どうかお付き合いください。
それでは参ります。怪談牡丹灯籠12。
友像の家では、幽霊と友像と物語をしているうち、
女房おみねは戸棚に隠れ、暑さをこらえてボロをかぶり、びっしょり汗をかき、虫の息をころしているうちに、
お嫁は飯島の娘おつゆの手をひいて、姿はもろおとしてかき消すごとく見えなくなりましたから、
友像は戸棚の戸をどんどん叩き、
おみね、もう出ないよ。
まだ、いやーしないかい。
けーってしまった。
出ねえ出ねえ。
どうしたい。
どうにもこうにも、俺が一生懸命に掛け合ったんだから、飲んだ酒も冷めてしまった。
俺は前提酒さえ飲めば、侍でもなんでも置かなくねえように気が強くなるんだが、
幽霊がそばへ来たかと思うと、頭から水を打ちかけられるようになって、すっかり酔いもさめ、口も聞けなくなった。
私が戸棚で聞いていれば、なんだかお前と幽霊と話をしている声がかすかに聞こえて、ほんとうにこうこったよ。
俺は幽霊に百両の金を持ってきておくんなせい。
わっちども夫婦は萩原様のおかげでどうやらこうやら暮らしをつけておりますもんですから、
萩原様にもしものことがありましては、私ども夫婦は暮らし方に困りますから、百両のお金をくださったならきっとお札をはがしましょうと言うと、
幽霊は明日の晩お金を持ってきますからお札をはがしてくれと。
それにまた、萩原様の首にかけていらっしゃる観音如来のお守りがあっては入ることができないから、どうか工夫をしてそのお守りを盗み、他へ取り捨ててくださいと言ったわ。
勤務句で竹は四寸二分の如来様だそうだ。
俺もこないだ五海町のときちょっと見たが、あのとき坊さんがなんか言ってたよ。
そのなんとか言ったっけ、あれにちげえねえ。
なんでも大変な作物だそうだ。
あれを盗むんだが、どうだい?
どうもうまいね。運が生えてきたんだよ。
その如来様はどっかへ売れるだろうね。
いやあ、どうして。江戸では難しいから、どっか知らない田舎へ持って行っているんだな。
たとえ潰しにしても大したもんだ。百両は二百両は堅いもんだ。
そうかい。
まあ二百両あれば、お前と私と二人ぐらいは一生楽に暮らすことができるよ。
それだからね、お前、一生懸命でおやりよ。
やるともさ。だがしかし、首にかかえているんだから容易に話すまい。
どうしたらよかろうな。
うーん、萩原様はこの頃お湯にも入らず、かやをすりきりでお経を読んでばっかりいらっしゃるもんだから、
汗臭いから魚水を使いなさいと言って進めて使わせて、
私が萩原様の体を洗ってやるうちにお前がそっとお盗みな。
うーん、なるほど、うめえや。
うーん、でも、なかなか外へは出まいよ。
そんなら座敷の三畳の畳をあげて、あそこで使わせよ。
と夫婦いろいろ相談をし、翌日湯を沸かし、友像は萩原の家へ出かけて参り、
旦那、きょうは湯を沸かしましたから魚水をお使いなさい。旦那をお発に使わせようと思って。
いやいや、魚水はいけないよ。少し訳があって魚水は使えない。
旦那、この暑いのに魚水を使わないんで毒ですよ。
お飯も汗でびっしょりになっておりますから、お電気ですからようございますが、不利でもすると仕方がありません。
体のお毒になりますからお使いなさいよ。
魚水は日暮れ型表で使うもんで、私は少し訳があって表で出ることができない身分だからいけないよ。
あ、それじゃああそこの三畳の畳をあげてお付けなせ。
いけないよ。裸になることだから。裸になることはできないよ。
隣の占いの八甲堂先生がよく言いますぜ。
なんでも汚くしておくから病気が起こったり幽霊や魔物が入るんだ。
清らかにチェスタを置けば幽霊などは入らねえ。
地味見索しておくと内から病が出る。また、汚くしておくと幽霊がへえってきますよ。
汚くしておくと幽霊が入ってくるか。
食えるところじゃありません。二人で手を引いてきます。
うーん、それでは困る。
うちで魚水を使うから三畳の畳あげてくんな。
というから友相夫婦は占めたと思い。
それ、たらいを持ってきて。
手受け。ほれ、湯を入れてこい。
あと手早く支度をした。
萩原は着物を脱ぎ捨て、首にかけているお守りを外して友相に渡し。
これはもったいないお守りだから紙棚にあげておいてくんな。
ヘヘ、お見え。旦那の体を洗ってあげな。よく丁寧に。いいか。
旦那様、こちらの方をお向きなすっちゃいけませんよ。もっと襟を下の方に伸ばして、もっとずっとこごんでらっしゃい。
と襟を洗うふりをして友相の方を見せるようにしている暇に、友相は蚊の胴巻きをこき、ずるずると出しびれば黒のり艶消しのお寿司で、
扉を開くと中はがたつくから黒い絹でくるんであり、中には竹四寸二部、金木の観音如来、そっと海中へ抜き取り、
代物がなければいかんと思い、かえて用事にして持ってきたような同じような重さの瓦の不動様も中へ押し込み、もとのまもにして紙棚にあげおき。
お見えや。長いの。あまりに長く洗っているとおのぼせがさるから、よいいい加減にしろや。
もうあがろう。と体を拭き、浴衣を着。ああ、いい心持ちになった。
と着た浴衣は今日片日だ。使った行水は愉快となることとは。
神奈川清の萩原信三郎は誠に心持ちよく表を示させ、宵の内からかやを吊り、その内で無法だら二卿をしきりに読んでおります。
こちらは共蔵夫婦は持ちつけない品を持ったもんだから、ほくほく喜び家へ帰りて、
おまえ、立派なもんだね。なかなか高そうなもんだよ。
なに。
おらたちにはなんだかわけがわからねえが、幽霊はこいつがあるとへえれねえというほどな真よけなお守りだ。
本当に運が向いてきたんだね。
だがのう、こいつがあると幽霊が今夜百両の金を持ってきても、俺のところへへえることができねえが、これには困った。
それじゃあおまえ、出かけて行って途中でお目にかかっておいでな。
馬鹿言え。そんなことができるもんか。
どこへ預けたらよかろう。
預けなんぞして共蔵の持ち物には不似合いだ。どういうわけでこんなものを持っていると聞かれた日には、盗んだことが露見して、こっちがお仕置きになってしまうわ。
また、湿地に置くこともできず。
と言って家へ置いて幽霊が札が剥がれたから萩原様の窓からへえって、萩原様を食い殺すか取り殺した後に改めた日には、お守りが体にないもんだが、誰かが盗んだにちげえねえと戦議になると、疑いのかかるのは白狼堂か俺だ。
白狼堂は年寄りのことで正直者だから、こっちはのっけに疑われ、矢探しでもされて、これが出ては大変だからどうしよう。
これを羊羹箱か何か入れて畑へ埋めておき、上へ印の竹を立てておけば、矢探しをされても大丈夫だ。
そこで一旦身を隠して半年か一年も経って、ほとぼりの冷めた自分を蹴ってきて掘り出せば大丈夫。知れる気遣いはね。
うーん、うまいことね。そんなら穴を深く掘って埋めておしまいよ。
と、すぐに友像は羊羹箱の古いのに蚊の像を入れ、畑へ持ち出し土中へ深く埋めて、その上へ印の竹を立ておき立ち帰り、さあこれから百両の鐘の来るのを待つばかり。
まいわいに一杯やろうと夫婦差し迎えで互いに打ち書け組み交わし、もう今に八つになるころだからというので両方は戸棚へ入り、友像一人酒を飲んで待っているうちに、
八つの鐘が忍び川丘に響いて聞こえますと、ひときわ世間が浸透いたし、水の流れも止まり、草木も眠るというくらいで、壁にすだくコオロギの声もかすかに哀れ思いをし、ものすごく清水のもとからいつもの通り細げたの音高く、
カランコロン、カランコロンと聞こえましたから、友像は来たなと思うと身の毛もぞっと縮まるほど恐ろしく固まって様子をうかがっていると、生垣のもとへ見えたかと思うと、いつの間にやら縁側のところへ来て、
友像さん、友像さん、と言われると友像は口がきけない。
よよのことで、
ヘイ、ヘイ、
と言うと、
お嬢様が萩原様に会いたいと私をお責めあそばし、おむずがってまことに困りまするから、どうぞあなた様、二重のものを不便におぼしめし、お札をはがしてくださいまし。
はがします。
ええ、はがしますが、百両の金を持ってきてくださったか。
百目の金巣、たしかに持参いたしましたが、観音如来のお守りをお取り捨てになりましたろうか。
ああ、ヘイ、あれは脇へ隠しました。
さようならば、百目の金巣を受け取りくださいませ。
と、ずっと差し出すと、
友像は読むや金ではあれまいと、手に取り上げてみれば、ずんとした小判の目方。
持ったこともない百両の金を見るより、友像は怖いことも忘れてしまい、震えながら庭へ降り立ち、
ご一緒においでなせ。
と、二軒梯子を持ち出し、萩原の裏窓の下身へ立てかけ、震える足を踏みしめながら、よよをのぼり、手を差し伸ばし、お札をはがそうとしても震えるもんだから、思うようにはがれませんから。
力を入れて無理にはがそうと思い、ぐっと手を引っ張る拍子に、梯子ががくりと揺れるに驚き、足を踏みはずし、
坂トンボを打って畑の中へ転げ落ち、起き上がる力もなく、お札を片手に掴んだまま声を震わし、ただ、
ナムアミダブツ、ナムアミダブツと言っていると、幽霊は嬉しそうに両人顔を見合せ、
女王様、こんばんは。萩原様にお目にかかって、十分にお恨みをおっしゃいます。さあ、いらっしゃい。
と、手を引き、トムゾウの方を見ると、トムゾウはお札を掴んで倒れておりますもんだから、
袖で顔を隠しながら、裏窓からずっと家へ入りました。
十三
百両紛失騒動と康介の仇討ち
飯島平財門の家では、お国が今夜こそかねて玄二郎としゅめし合わせた一大事をたち撃した邪魔者の光介が、
殿様の手打ちになるのだから、つかすましたいと思うところへ、飯島が奥から出て参り、
九二、九二、まことにどんなことをした。
例え今も七度探して人を疑れという通り、紛失した百両の金質が出たよ。
金の入れどころは時々取り違えなければならないもんだから、俺がほかへしまっておいたや、忘れていたんだ。
皆に心配をかけてまことに気の毒だ。出たから、喜んでくれろ。
おや、まあ、おめでとうございます。
と、口には言えど、晴れのうちではちっともめでたいことも何にもない。どうして金が出たのであろうと、不審が晴れないでおりますと、
女どもをみんなここへ呼んでくれ。
お竹どん、お黄身どん、みんなここへおいで。
ただいま受けたまりますればお金が出ましたそうで、おめでとう存じます。
殿様、まことにおめでとうございます。
ああ、光月も玄介もここへ呼んでこい。
光月どん、玄介どん、殿様が召しますよ。
へえへえ、これ、光月、お詫び事をお願いな。
お前は全く取らないようだが、お前の文庫の中から胴巻が出たのが、お前が謝り、詫び事をしなよ。
いいよ。
いよいよお手打ちになる時には、殿様の前で私は並べ立てることがある。それを聞くとお前はさぞ喜ぶだろう。
ん?何?嬉しいことがあるもんか。
殿様があめつから、まあ行こう。
ど、料理に連れ立って参りますと、
光月、玄介、こっちへ来てくれ。
ああ、殿様、ただいま部屋へ行って、だんだん光月へ説得を致しましたが、どんも全く光月は取らないようにございます。
お腹立ちの段は十々困ったものでございますが、お手打ちの機は何とぞ、二十三日までお日の目のほどお願いと存じます。
まあいい。光月、これへ来てくれ。
はい。
お庭でお手打ちになりますか。
御座をこれへ敷きましょうか。血が垂れますから。
縁側へ上がれ。
へえ、これは、お縁側でお手打ち?
これはありがたい。もったいないことで。
そう言っちゃ困るよ。
さて、玄介、光月。
誠に相すまんことであったが、百両の金は実は、俺が姉妹どころを違えておいたのが、ヨーダンスから出たから喜んでくれ。
嫌いだからあんなに疑ってもよいが、他の者でもあっては、俺が言い訳のしようもないくらいなわけで、誠に申し訳ない。
お金が出ましたか。さようならば、私は泥棒ではなく、お疑りは晴れましたか。
そうよ。疑りはすっぱり晴れた。俺が間違いであったんだ。
ええ、ありがとうございます。私はもとよりお手打ちになるのは厭いませんけれども、
ただ全く私が取りませんものを取ったかと思われるのが夜道の騒ぎでございましたが、
ご疑念がありましたならばお手打ちはが厭いません。さささ、お手打ちになされまし。
俺が悪かった。これが家来だからええが、もし放誘か何かであった日には腹を切っても済まないところ。
家来だからといってむやみに疑りをかけては済まない。
飯島が板の前へ手をついてことごとく詫びる。
堪忍してくれ。
ああ、もったいない。誠に嬉しゅうございました。
ね、玄介殿。
誠にどうも。
玄介、手前は康介を疑って康介をついたから謝れ。
へえへえ、康介殿、誠にすみません。
丈は何かも何か少し康介を疑ったろ。
何、疑りは致しませんが、康介殿は普段の秘書にも似合わないことだと存じまして、ちょっとばかり。
やはり疑ったんだから謝れ。君も謝れ。
康介殿、誠におめでとう存じます。先ほどは誠にすみません。
こら、九人。貴様は一番康介を疑り膝をついたり何かしたから余計に謝れ。
俺でさえ手をついて謝ったのではないか。貴様は尚更丁寧に詫びをしろ。
と言われておくには、今度こそ康介がお手打ちになることと思い、心の内でつかすましたいと思っているところへ金水は出て、
康介に謝れというから残念でたまらないけれども、仕方がないから。
康介殿、誠に重々すまないことを致しました。どうか勘弁しておくんなさいましよ。
何、よろしく御座います。お金が出たからいいが、もしお手打ちにでもなるなら、
殿様の前でおためになることを並べ立ててしのうと思って。
と、せき込んで言いかけるを言いじまわ。
康介、何も言ってくれるな。俺に免じて何事も言うな。
恐れ入ります。金水は出ましたが、あの銅巻はどうして私の文庫から出ましたろう。
あれはほら、いつか貴様が銅巻の古いのを一つ欲しいと言ったことがあったっけの。
その時俺が古いのを一つやったじゃないか。
何、さようなことは。
貴様がそれ欲しいと言ったじゃないか。
ゾリトリの実の上でチリメンのお銅巻を頂いたとて仕方がございません。
うーん、こいつ物覚えの悪いやつだ。
私より殿様は百両のお金をしまい忘れるくらいですから、あなたの方が物覚えが悪い。
あ、なるほど、これは俺が悪かった。何しろめざたいから皆にそばでも食わせてやれ。
と、言いじまわ。
こうすけの忠義の志はかねて見抜いてあるから、こうすけが盗み取るようなことはないと知っている上、金属は全く紛失したなれども、
別に百両を封金に募られ、この騒動を我が祖骨にしてぴったりと収まりがつきました。
言いじまわ、かほどまでにこうすけを愛することゆえ、こうすけも主人のためには死んでもよいと思い込んでおりました。
かくてその月も過ぎて八月の三日となり、いよいよ明日はお休みゆえ、
殿様と隣の次男源二郎と中川へ釣りに行く約束の当日なれば、こうすけは心配を致し、
今夜、隣の源二郎が来て当家に泊まるに急いないから、殿様に明日の釣りをおやめいらさるように御意見を申し上げ、
もしどうしてもお聞き入れのないその時は、今夜、客間に寝ている源二郎めが中二階に寝ているお国のところへ廊下伝に忍び行くに急いないから、
廊下で源二郎を槍玉にあげ、中二階へ踏み込んでお国を突き殺し、自分はその場を定らず切腹すれば何事もなく事済みになるに違いない。
これが殿様へ生涯の恩返し。しかし、どうかして明日、主人を廊にやりたくないから、一応は御意見をしてみようと。
殿様、明日は中川へ廊にいらっしゃいますか?
ああ、行くよ。
度々申し上げるようですが、お嬢様がお亡くなりになり、まだ間もないことでございまするから、お見合わせなすってはいかが?
俺は他に楽しみはなく、釣りがごく好きで、晩がこむから、たまには好きな釣りぐらいはしなければならない。それを止めてくれては困るな。
あなたは泳ぎをご存知ないから、水辺のお遊びはよろしくございません。それとも立っていらっしゃいますならば、こうすけ、お供いたしましょう。
どうか、手前お供にお釣りください。
手前は釣りが嫌いじゃないか。友もならんよ。よく人の楽しみを止めるやつだ。止めるな。
じゃあ、今晩寝てしまいます。
なかなかご厄介になりました。
ん?何を?
ねえ、なんでもよろしいございます。こちらのことです。
殿様、私は3月21日に御統計御奉公に参りまして、神参者の私を人が羨ましあがるほど御目をかけて下さり、御恩義のほどは死んでも忘れは致しません。
死ねば幽霊になって、殿様のお体につきまとい、凶児のないように守りはするが、全体あなたはお酒を召し上がれば前後も知らずお休みになる。また、召し上がらねば少しもお休みになることができません。
お酒も全部に気を散じますから、少々は召し上がってもよろしいございますが、多分に召し上がって泳いなすっては、たとえどんなに御剣術が御名人でも、悪者がどんなことをびだしますかもしれません。私はそれが案じられてなりません。
さようなことは言わんどもよろしい。あちらへ参れ。
へえ。
と立ち上がり、廊下を二足三足行きかかりましたが、これがもう主人の顔の見納めかと思えば足も先に進まず、また振り返って主人の顔を見てぽろりと涙を流し、潮潮として行きますから、振り返るを見て飯島も果てなと思い、しばし腕こま抜き、拳かたけて考えておりました。
康介は玄関に参り、乱魔にかかってある槍をはずし、手に取って鞘をはずして改めるに、真っ赤にさびておりましたゆえ、庭へおり、研石を持ち来たり、槍の実をごしごし研ぎ始めていると、
康介、康介。
へい。
なんだ。何をする。どういたすんだ。
これは、槍でございます。
槍を研いでどういたすのだい。
あんまり真っ赤にさびておりますから、何も大変のみをとは思うしながら、蝋石網でも入れますと、その時のお役に立たないと思い、体が暇でございますから研ぎ始めたのでございます。
さびありで人がつけぬようなことでは役に立たんぞ。たとえ向うに一寸幅の手ついたがろうとも、こちらの腕さえ確かならぷっつり突き抜けるわけのもんだ。
さびていようが丸刃であろうが、さようなことにとんじゃくいらんから、特には呼ばん。
また、にくいやつを突き殺すときは、べやりで突いたほうが先のやつが痛いから、こちらがかえっていい心持ちだ。
あ、なるほど。これはそうですな。
と、そのまま槍をもとのところへかけておく。
飯島は奥へ入り、その晩、源二郎が参り、酒盛りが始まり、奥には長歌の字で春雨か何か三味線をかき鳴らし、当時の九時過ぎまで興を添えておりましたが、もうお引きにしましょうと客前かやをいっぱいにつって、源二郎を寝かし、奥には中二階へ寝てしまいました。
奥には誰が泊まっても中二階へ寝なければ、源二郎の来たとき不都合だから、いつでもお客さえあればここへ寝ます。
夜もだんだん更け渡ると、光介は手ぬぐいをまぶかに頬かむりし、本看板に梵天帯をしめ、槍を小脇にかいこんで庭口へ忍び込み、雨戸を少々ずつ二ところあけておいて、
ただのうちへ身をひそめ、隠し、縁の下へ槍を突っ込んで様子をうかがっている。
そのうちに八つの鐘がボーンと鳴り響く。この鐘は明治郎の鐘だから少々早めです。
すると、さらりさらりと障子を分け、抜き足をして廊下を忍び来る者は、寝巻き姿なれば確かに源二郎に添えないと光介は首を差し伸べ様子をうかがうに、暗鈍の灯りがぼんやりと障子に映るのみいて薄暗く。
はっきりそれとは見分けられねえど、だんだん中二階の方へ行くから光介はいよいよ源二郎に違いなしとやり過ごし、
その隙間から脇腹を狙って物を思い出す力に任せて繰り出す槍先は、誤らずぷっつりと火腹へかけて突き通す。
疲れて男はよろめきながら左手を伸ばして、槍先を引き抜き様ぐっと突き返す。
疲れて光介、たじたじと石へつまずき尻文字を作る。
男は槍の穂先を掴み、縁側より下へひょりひょりと降り靴脱ぎ石に腰をかけ、
光介、外の庭へ出ろ出ろと言われて光介、親と言ってみると、びっくりしたは源二郎と思いの他、対応を受けたる主人の暴れへ槍を突きかけたことなれば、
あっとばかりに呆れ果て、ただキョトキョトキョトキョトとしてのぼせあがってしまい、悪権にとられて涙も出ずにいる。
光介、こちらへ来い。
と、貴重な殿様なれば、田元にて傷口をしっかと抑えてはいるものの、海苔はあふれてぼたりぼたりと流れ出す。
飯島は血にしみたる槍を杖として、飛び石自体にひょろひょろと犬人樹垣の他なる花壇の脇のところへ光介を連れてくる。
光介は腰が抜けてしまって、歩けないで這ってきた。
え、間違いでございます。
光介、俺の上締めをとって、傷口を縛れ。早く縛れ。
と言われても、光介は手はブルブルと震えて、思うままに縛らないから、飯島は自ら傷口をぐっと固く締め上げ、なお手を持ってその上をおさえ、寝部側の飛び石の上へぺたぺたと座る。
殿様、とんでもないことをいたしました。
とばかりに泣き言い出す。
静かにしろ。ここはやむを得てはよろしくないぞ。
宮延原次郎めをつこうとして、
謝って、閉鎖もおついたか。
大変なことをいたしました。実は、召使いのお国と、宮延の次男原次郎と特より不義をいたして、
後月二十一日、お泊り晩の時、原次郎がお国のもとへ忍び込み、お国とひそひそを話しているところへうっかり私がお庭へ出て参り、
様子を聞くと、殿様がいらっしゃっては邪魔になるゆえ、来月の四日、中川にて、殿様を釣り舟から突き落として殺してしまい、
定翼、お貸し屋に届けをしてしまい、原次郎を養死に直し、お国と末永く楽しもうとの悪巧み。
聞くに耐えかねえ、怒りにまかせ、思わず唸る声を聞きつけ、お国が出て参り、
彼がおれると、言い合いはしたものの、原次郎の方には、殿様から釣り道具の直しを頼みたいとの手紙を持って証拠を取り出し、
一時は私、言い込められ、弓の折れにて、したたかにぶたれ、今だに残る額の傷、悔しくて溜まりかね、表向きにしようと思ったなれど、こちらは証拠のない聞いたこと、
ことに向こうは次男の勢い、無理でも押さえつけられて私は、老い友になる理想いないと思い諦め、
あの事は胸に畳んでしまっておき、いよいよ明日は釣りにおいでになるお約束日ゆえ、
乙女申しましたが、お聞き入れがないから、ぜひなく、今晩、二人の不義者を殺し、その場を去らずに切腹なし、
殿様の難儀をお救い申そうと思ったことは、いすかの橋と食い違い、とんでもない間違いをいたしました。
主人のために仇を討とうと思ったに、かえって主人を殺すとは、神も仏もないことか、
何たる因果なことであるか、お殿様、ごめんあそばせ。」
と、飛び石へ両手をつき甲介は泣きころがりました。
飯島は苦痛をこらえながら、
「ああ、ふつつかなるこの飯島を主人と思えばこそ、
それほどまでに思うてくれる志、かたじけない。
なんぼ、仇同士とは言いながら、現在、何時のやり先に命を果たすとは、
輪廻横方。ああ、実に、節償はできんもんだな。」
「殿様、仇同士とは名づけない。何で私は、仇同士でございますの?」
双方が統計方向に参ったは、3月21日。
その時、それがし非晩にて、貴様の身の上を尋ねしに、
父は小出の藩中にて、なおば黒川光雄と呼び、
今をすること18年前、本郷三丁目、
藤村や新兵衛という刀屋の前にて、何者とも知れず一手にかかり、
非業の最後を遂げたゆえ、親の仇を討ちたいと、
若年のころより、武家方向を心掛け、
余余の思いで統計方向済みをしたから、
どうか、仇でおいてるよう剣術を教えてくださいと、
手前の物語をした時、びっくりしたというは、
拙者が、まだ兵太郎と申し、部屋済みのおり、
家の構造と居酒屋の討論が基となり、
斬り捨てたるは、科学優飯島平左衛門であるぞ。
と言われて、光月は、ただヘイヘイとばかりに役で果て、
張り詰めた気もひょる抜けて腰が抜け、
ぺたぺたと尻餅をつき、悪剣に取られて、
飯島の顔を打ち眺め、呆然としておりましたが、しばらくして、
父様、
そういうわけなれば、なぜその時にそう言っては下さいません。
お情けのうございます。
現在、親の仇と知らず、主人にとって忠義を尽くす、
汝の心差し、
ことに、後心深きにめで不憫なものと心得、
いつか敵と名乗って、汝に討たれたいと、
さまざまに心痛致したなれど、
仮初めにも、一旦主人とした者に歯向かえば、
衆殺しの罪は逃れがたし、
さらば、いかにもして、汝を罰身に落とさず、
敵と名乗り討たれたいと思いしおりから、
綾川より、汝を養子にしたいとの所望に任せ、
養子に使わし、
一人前の侍と成しておいて、
仇と名乗り、討たれん者と心ぐんだるその所へ、
国と源二郎めが三つ舌をいかって、
二人の命を絶たんとの汝の心底、
最前庭にて錆槍を研ぎし時より悟りしゆえ、
気を外さず討たれん者と、
わざと源二郎の形をして見違えさせ、
槍でつかして、後心の無念をここに晴らさせんと、
閣は計らえたることなり、
今、汝が錆槍にて日腹を疲れし苦痛より、
さきの日、汝が手を合わせ、
親の仇を討てるよう剣術を教えて下さると、
頼まれた時の切なさは百倍増しであったるぞ。
定めて敵を討ちたいであろうが、
我が首を切る時は、
たちまち衆殺しの罪に陥。
されば、我、紛おば切り取って、
これにて胸をおば晴らし、
その方はひとまずここを立ち退いて、
相川慎吾兵衛方へ行き、密々に万事相談いたせ。
この刀は、さきつ頃、
藤村や慎兵衛方にて買わんと思い、
見ているうちに喧嘩となり、
汝の父を討ってる刀、
中身は天章すけ貞なれば、
これを汝に塊として使わすぞ。
また、この罪の内には金数百両と、
詳しくあたかたかのことの頼み状、
これを開いて読み下せば、
我が屋敷の始末のあらましはわかるはず。
汝、いつまでも名残を惜しみて、
ここにいる時は、
汝は衆殺しの罪に陥るのみならず、
飯島の家は戒役となるは当たり前。
この道理を聞き分けて説く前で。
殿様、どんなことが御座いましょうとも、
この場は抜きません。
たとえ、親父をお殺しなさるようが、
その場は親父が悪いから、
書くまで情けある御主人を見捨てて、
他へ立ち抜きましょうか。
忠義の道を書く時は、やはり、
後攻は立たない通り、
一旦主人と頼みし御方を誘おうとは言いながら、
やり責にかけた私の誤り、
御詫びのために、この場にて
切腹致して、哀果てます。
馬鹿なことを思うぞな。
手前に切腹させるくらいなら、
いい島を書くまで心痛を痛さぬのは。
さようなことを思わさず早く行け。
もし、このことが人の耳に入りならば、
いい島の家に関わる大事。
詳しいことは書き置きにあるから、
早く行かぬか。
これ、康介、一旦主従の因縁を結びしことなれば、
仇は仇、恩は恩。
よいか。一旦仇を討ってる後は、
三世も変わらぬ主従と心得てくれ。
敵同士でありながら、
汝の方向に参りつつ時から、
どういうことか、その方が、
我が子のように可愛くてな。
と言われ、
康介はおいおいと泣きながら、
ねえ、
これまでね、
殿様の御賛成を受けまして、
剣術といいやりといい、
なま病法に覚えたが、
今日、かえってあだとなり。
腕が鈍くは、書くまでに深くはつかぬものであったに、
御勘弁なすってくださいまし。
と、泣き沈む。
これ、早く行け。
行かぬと家は潰れるぞ。
と、咳立てられ、
康介はやむを得ず、
包みを片手に立ち上がり、
主人の命に従って、
脇差し抜いて主人の元指をはじき、
大地へどうとう泣き伏し。
おさらばでございます。
と、別れを告げて、
こさこさ門を出て、
早足に水道場となる藍川の屋敷に参り、
お頼みを申します。
お頼みを申します。
禅僧や、
誰か門を叩くようだ。
誤解状が来たのかもしらん。
ちょっと出ろ。禅僧や。
へへ。
何よ。
ただいま、開けます。ただいま。
へえ、真っ暗でさっぱり訳がわからない。
ただいま、ただいま。
へえ、へえ、どっちが出口だか忘れた。
こうついと柱で頭をぶっつけ、
開いた、開いたと、
眠気まなこをこすりながら扉を開いて、
表へを立ち入れ、
外の方がよっぽど明るいくらいだ。
へえ、へえ、どなたさまでございます。
飯島の家来、康介でございますが、
よろしくお取り次ぎを願います。
おお、ご苦労様でございます。
ただいま、開けます。
やったんと開ける。
夜中あがりまして、
お静まりになったところ、
ご迷惑をおかけました。
ああ、まだ殿様はお静まりなされぬようで、
まだ御本能お声が聞こえますくらい、
まずお入り。
戸口へ入れ、禅僧は奥へ参り。
殿様、ただいま飯島様の
康介様がいらっしゃいました。
おお、それじゃあこれ、
あれ、これは、禅僧、寝ぼけてはいかん。
これ、かやのすり手をとって
向こうの方へやっておけ。
これ、ばか、何を寝ぼけているんだ。
つぶやきながら玄関まで出迎え。
うーん、これは康介殿、
さあさあ、お上がり。
いまでは親子の名が、
何も遠慮はいらない。ずっと入れ。
戸座敷へ通し。
さて、康介殿、夜中のお使い、
さだめて下級の御用だろう。
受けたまわりましょう。
ええ、どういう御用か。
何だ、泣いているな。
男が泣くくらいでは
よくよくなわけだろうが。
どうしたんだ。
夜中あがり、恐れいますが、
康介様の御所望にまかせ、
主人徳春の上、
私養子のお取り決めをいたしましたが、
深い司祭がございまして、
どうあっても縁国へ参らんければなりませんゆえ、
この縁談は破断とあさばして、
どうかほかほかから御容赦をのされてくださいませ。
はいなあ、なるほどよろしい。
お前が気に入らければ仕方がないね。
鷹は少なし、娘は二つかなり。
主人はこの通りのそそっかし屋で、
一つとして取り所がない。
だが、娘がお前の忠義を見抜いて
患うまでに思い込んだものながら、
殿様にも話し、
お前の徳心の上で取り決めたことであるのを、
お前一人きて破断をしてくれると言っても、
それはできないな。
殿様がきてお取り決めになったのを、
お前一人で破るには、
何か主意がなければ破れない?
作用じゃござらんか。
どういうわけだか次第を受けたまわりましょう。
娘が気に入らないのか?
仕事が悪いのか?
国が不足なのか?なんだ?
決してそういうわけではございません。
それじゃあ、
どうもただの顔つきではない。
お前は根が忠義のもんだから、
祝辞って張って思い腹でも切ろうか、
遠方でも行こうと言うんだろう?
そんなことはしてはいかん。
祝辞ったなら、私が一緒にいて詫びをしてやろう。
もうお前は優位の馬で取り交わせをしたことだから、
うちのもの。
言いつけて光月殿とは言わせず、
光月様と呼ばせるくらいで、
いわば、うちのせがれを来年の二月婚礼をいたすまで、
先の主人へ預けておくんだ。
少しぐらいの疎走があったって、
しくじらせることがあるもんか。
と、不理屈をいれば、そんなもんだ。
まあ、一緒に行こう。
言ってやろう。
いえ、そういうわけではございません。
なんだ、それじゃあ、どういうわけだ?
申すには、申し切れないほどの深い言い訳がございまして。
ああ、わかった。
よろしい。そうあるべきことだろう。
どうもお前のような忠義の者ゆえ、
飯島様が相変わり言ってやれ。
はい。と、主名を背かず答えはしたものの、
お前の気量だから、
先に約束をした女でもあるんだろう。
ところが、今度のことを、その女が知って、
先が先役だから、ぜひとも女房にしてくれなければ、
主人に書き込んで、このことを告げるとか、
何とか言い出したもんだから、
お前は、はっと思い、そのことが主人へ知れては、
あい、すまん。それじゃあ、お前を一緒に連れて、
遠国へ逃げよう、とか言うんだろう。
何、一人ぐらいの目かけはあってもよろしい。
御頭へちょっと届けておけば、支際用はない。
もったものことだ。
娘は、表向きの御親像として、
来年のところは、その女を御親像として置いてもいい。
私が取る分、毎夜はその女にやりますからよろしい。
私が行って、その女に会って、頼みましょう。
その女は何者じゃ?芸者か何だ?
ああ、そんなことではございません。
ああ、それじゃあ、何だよ。
ええ、何なんだ?
それでは、お話をいたしまするが、
殿様は、手を入れいます。
何、手を入れ。
何故、早く言わん。
それじゃあ、老子気まどが忍び込み、
イージマがさすが手下でも多勢に武勢、
切り立てられているよう、
お前が一歩を切り抜けて知らせに来たんだろう。
よろしい、よろしい。
手前は剣術は知らないが、
若い自分に学んで、槍は少々心得ておる。
参って、お助け立ちを致そう。
ああ、さようではございません。
実は、召使いの九二と隣の玄二郎が、
塔から密通をして。
ええ、やっていますか。
あげれたもんだ。
そういえば、ちらちらそんな噂もあるが、
恩人の重い者も、そんなことをしてにくいやつだ。
忍び人ですね。
それから、それから。
先月の二十一日、
そのように玄二郎が、
ひそかに奥にのもとへ忍び込み、
明日、中川にて、
殿様を船から突き落とし、
殺そうとの悪巧みを、
私、立ち行きをしたところから、
争いとなりましたが、
こちらは、悲しいかな。
憎りとりの海の上、
向こうは、次男の勢いになれば、
喧嘩は負けとなったのみならず、
弓の折れにて頂着され、
額に残るこの傷も、
その時、撃たれた傷でございます。
不届き至極な奴だ。
必ず、向こうには、
殿様から暇があったら、
夜にでも家へ参って、
釣り道具の損じを直してくれとの、
頼みの手紙があることゆえ、
表沙汰にいたしますれば、
主人は必ず隣へ居たし、
義人にも私に置いてもなるに違いはありません。
さすれば、後にて、
二人の者が思うがままに、
殿様を殺しますから、
どうあっても、
あの屋敷は出られんと、
今日まで胸を刺すっておりましたが、
明日は、よいよ、
その場で私が切腹すれば、
殿様の御命に別情はないと思い詰め、
槍を下げて、庭先へしのんで、
様子を伺いました。
うむ。まことに関心勘復。
ああ、それ言ったね。忠義なことだ。
まことにどうも、
それだから娘よりわしが惚れたんだ。
お前の志はあっぱれなもんだ。
そのような奴は突きっぱなしでいいよ。
腹は切らんでもいい。
私がどのようにも、
お頭にお届けを出しておくよ。
それからどうした?
そういたしますると、
繰り出す槍先誤たず、
脇腹深く突き込めましたところ、
間違って主人を突いたのでございます。
おお、やれはや。
それは何たることか。
しかし、傷は浅かろうか。
いえ、不可ででございます。
おお、いやはやどうも。
なぜ玄二郎と声をかけてつかないんだ。
むやみにつくからだ。
ああ、困ったことをやったな。
ああ、だが、誤って主人を突いたので、
お前が不忠者でない、悪人でないことは
ご主人はご存じだろうから、
間違いだということを
ご主人に話したろうね。
主人は時より得心にいて、
わざと玄二郎の姿と見違えさせ、
私につかせたのでございます。
ん?これはまあ、
何故そんな馬鹿なことをしたんだ。
私には深いことはわかりませんが、
このお書き置きに詳しいことがございますから。
と、差し出す包みを。
ふん、拝見いたしましょう。
どれ、これかい。
大きな包みだ。
前掛けが入っている。
何、馬鹿なのだ。
何故こんなとこに置くのだ。
そっちへ持って行け。
これ、本の前に眼鏡があるから取ってくれ。
と、眼鏡を掛け、
安藤の明かり掻き立て読み下して
相川もはっとばかりにため息をついて驚きました。
十四
萩原家の惨劇と友像の悪事
友象は畑へ転がりましたが、
料理人の姿が見えなくなりましたから
震えながら洋々起き上がり、
泥だらけのまま宇宙へ駆け戻り。
おみねや、出なよ。
あいよ、どうしたえ。
私は暑かったこと。
暑くなってたが、我慢をしていたよ。
てめえは暑い汗をかいたのが
俺は冷たい汗をかいた。
幽霊が裏窓から入って行ったから
萩原様は取り殺されてしまうだろうか。
私の考えじゃ
殺すめえと思うよ。
あれは悔しくて出る幽霊ではなく
恋しい恋しいと思っていたのに
お札があって入れなかったんだから。
これが生きている人間ならば
お前様はあんまりね、人だとか何とか言って
苦絶でも言うところだから
殺す気遣いはあるまいよ。
どんなことをしているか、お前、見ておいでよ。
そっと見ておいでよ。
と言われるから
友像は抜き足して萩原の裏手へ回り
しばらくして立ち帰り
大層長かったね。
どうしたい?
おみね。
なるほど、てめえの言う通り
なんだかごちゃごちゃ話し声がするようだから
覗いてみると、かやがつってあって
なんだかわかんないから
裏手の方へ回るうちに話し声がぱったりとやんだようだから
大型仲直りがあって幽霊と寝たのかもしれね。
いやだよ。つまらないことおいでない。
といううちに、夜もしらしらと明け離れましたから。
おみね。夜が明けたから
萩原さんのところへ一緒に行ってみよう。
いやだよ。私は。夜が明けても怖くて嫌だよ。
というのを
まあ、行きねえよ。
と、うち連れ立ち。
おみね。扉を開けねえ。
いやだよ。なんだか怖いもの。
そんなことを言ったって
てめえが毎朝扉を開けるじゃねえか。
ちょっと開けねえな。
扉の間から手を入れてグッと押すと
しんばり棒が落ちるから
お前を開けよ。
てめえ、そんなことを言ったって
それじゃ、てめえ、手を入れて
しんばりだけ外すがいい。
私は嫌だよ。
それじゃ、いいや。
と言いながらしんばりを外し、
灯を引き上げながら
ごめんねえ。旦那。旦那。
夜が明けやしたよ。
明るくなりやしたよ。旦那。
おみねえ。
おともさともんですよ。
それだから嫌だよ。
てめえ、先へへいで。
てめえはここのうちの勝手を
よく知ってるじゃねえか。
旦那。旦那。
ごめんなせえ。
おい、夜が明けたのに
何怖いことがあるもんか。
火の恐れがあるものを
なんで幽霊がいるもんか。
だが、おみねえ、世の中に何が怖いって
このくらい怖いものはねえな。
ああ、嫌だ。
ともぞうはつぶやきながら
中仕切りの承受を開けると真っ暗で
旦那。
ええ、よく寝ていらっしゃる。
まだ承定なくよく寝ていらっしゃるから
大丈夫だ。
旦那。夜が明けましたから
焚きつけましょう。
ごめんなせえ。
わっちが灯をあけやすよ。
旦那。
と言いながら
とこの家をさしのぞき
ともぞうはキャッと声をあげ
おみねえ。
おらあ、もうこのくらい怖いものは
見たことはねえ。
と、おみねえは聞くより
アッと声をあげる。
おお、てめえの声でなお怖くなった。
どうなっているんだよ。
これはてめえとおれと見たばかりじゃ
かかりあいになっちゃていへんだから
白王堂のじいさんをつれてきて
たちあいをさせよ。
と、白王堂のたこへまえり。
せんせえ、せんせえ、ともぞうぜいごぜいあす。
ちょっとおおげなすって。
ああ、そんなにたたかなぐってもいい。
ねえちゃいねえんだ。
とうにめがさめている。
そんなにたたくととうがこわれるわ。
どれどれ、まっていろ。
あったあったあった。
とうをあけたのに
おれのあたまをなぐるやつがあるもんか。
おれのところへいってください。
どうこわしましたよ。
ていへんですよ。
どうしたんだ。
どうにもこうにもわっちがいま
おみねとふたりでいってみて
おどろいたんだから
おまえさんちょっとたちあってください。
と、きくよりゆうさえもおどろいて
あかぞのつえをひき
ぽくぽくとでかけてまえり。
ともぞう、おめえさきへいへいんだよ。
ああ、わっちはこわいからやだ。
じゃあおみね、おめえさきへいへいれ。
やだよ。
まっくらでわけがわからない。
おみね、ちょっとこまどのしょうじをあげろ。
はぎわらうじ、どうなすったか。
おかげんでもわるいかえ。
といいながらとこのうちをさしのぞき
はくおうどうはわなわなとふるえながら
おもわずあとへさがりました。
十五
悪党たちの末路と因果応報
あいかわしんごべいはめがれをかけ
いいじまのかきおきおば
とるておそしとによみくだしまするに
こうすけとはいったんしゅじゅうのちぎりをむすびなれども
かたきどうしであったること。
こうすけのちゅうじつにめで
こうしんのふかきにかんじ
しゅうごろしのつみにおとさずして
かれがほんかいをとげさせんため
わざとみやのべげんじろうとみちがえさせ
うたれしこと。
こうすけをいそぎもんそとにいらしやり
じしんにげんじろうのねまにしのびいり
かれがかたなのおにとなるかくご。
さすればいいじまのうちはめつぼをいたすこと。
かれらりょうりんわれをうってたちのくさきは
ひつじをおくにのおやもとなる
いちごのむらかみならん。
ついてはなんじ
こうすけときをうつさずあとおいかけ
わがあだなるりょうりんのなむくびひっさげてたちかえり
しゅうのかたきをうしたるかどをもって
わがいいじまのかめへさいこうのぎを
かしらにとどけてくれ。
そのときはあいかわさまにも
おこころぞえのほどひとりにねがいたいとのこと。
またなんじはあいかわへ
ようしにまえるやくそくをむすびたれば
むすめおとくどもとたがいにむすましくくらし
りょうりんのあいだにできたこどもは
なんにもにかかわらず
こうすけのちつじをもって
いいじまのそうぞくにんとさだめくれ。
あとはこうこうしかじかと
じつにこまかにとどく
いいじまのけらいおもいのせつなるなさけに
こうすけはあいかわのかきおきをよむまま
いきもつかずきいていながら
ひざのうえぽたりぽたりと
おおつぶらがついなみだをこうしていましたが
いきなりけんまくをかえて
おもてのほうへとびだそうとするを
うん、これはこうすけのけっそうをかえて
どこへいきなさるといわれて
こうすけはなきごえをふるわせ
ただいまおかきおきのごようすにては
主人はわたくしをいそいでだし
あとできゃくまへふみこんで
げんじろうとたたかうとのことですが
いかにげんじろうがけんじつをしらないでも
とのさまがあんなふかでにおたちあいなされては
かれがむだんのやいばのしたに
はかなくおないなされるわしれたこと
みつみつかたけをめのまえにおきながら
おんわりぎりあるご主人をかれらにむごくうたせますわ
じつにざんねんでございますから
すぐにとってかえし
おすけたちをいたす所存でございます
ああ、わからないことをいばっしゃるな
ご主人さまがこれだけのかきおきを
おつかわしなさるは何のためだと思わしゃる
そんなことをしなさると
いいじまのいえがつぶれるから
やしきへ行くことはみようちょうまでおまち
このかきおきのことをこころえて
これをおほごにしてはならんぜ
とかめのこうよりとしのこう
さすがろうこうのしんみいのゆけんに
こうすけはかえすことばもありませんで
くやしがりただみをふるわしてなきふしました
はなしかわっていいじまへいざいもんは
こうすけをもんそとにいだし
いそぎちしをしたたるやりをつえとし
かにのようになって
ようようにえんがわにはいあがり
よろめくあしをふみしめふみしめ
だんだんとろうかをつたい
そっときゃくものしょうじをひらき
いなかへいり
じゅうにじをいっぱいにつってあるかやのつりてをきりはらい
あなたやはねのけぐうぐうとばかりたかいびきで
あとさきもしらずねているげんじろうのほうのあたりへ
ちにしみたやりんのほうさきにいて
ぺたりぺたりとたたきながら
おぎろ
おぎろ
といわれてげんじろうほほがひやりとしたことに
ふとめをさもし
めはちばしり
かおいろはつちけいろになり
ちにしたたるてやりをぴたりとつけ
たっているありさもをみるように
げんじろうははやくもすいし
ああこれはさすがいいじまはちえいしゃだけある
おれとめかけのおくにとふぎしていることがおさとられたか
さなくばれいのあっけいをこうすけめいが
つげぐちしたにそういなし
なにしろよほどのはらだちだ
いいじまはしんかげりゅうのおうぎをきわめたけんじつのめいじんで
はたもとはちまんきのそのなかに
おじさまはかたをならぶるものなき
たつじんのきこえがあるひとに
やりをつけつけられたことだから
げんじろうはぎょっとして
まくらもとのいっとうをてばやくてもとにひきつけながら
ふるえるこえをだして
おじさまなにをなさいます
といっしょうけんめいめんしょく
つちけいろにかわりめいろちばしりました
いいじまもめんしきつちけいろで
めがちばしりているからあいこでございます
げんじろうはいっとう
つばまえにてをかけてはいるものの
きおくれがいたしはむがうことはできませんで
すくんでしまいました
げんじろうはどうなさるおつもりで
いいじまはふかでをおいたえることなれば
ふるえるあしをふみとめながら
なにごととはふらちなやつだ
なんじがとくよりわがめしつかい
くにとふぎいたずらしているのみならず
みょうにちなかがわにて
りょせんよりわれをつきおとし
いのちをとったあかつきに
うまうまこのいいじまのいえをのっとらんとのわるだくみ
おんをあだなるなんじがふしゃぞん
ようようなきにんぴにん
このばにおいてやりだまにあげてくれるから
さようこころえろ
といいはなたれてげんじろうは
けんじつはからっぺたにてほうとうをはたらき
おおつかのしんれいにあずけられるほど
みじゅくふたんれんなものなれども
いいじまはこのふかでにては
かれのやえばにうたれてしするにそういなし
しかしうたれてしぬまでも
このやりにてしたたかにあしをつくかてをついて
でんぼうがびっこにでもしておかば
ごじつこうすけがかたきうちをするとき
いくぶんかのたすけになることもあるだろうから
どっかをつかんとねらいつめられ
おじさまわたくしは
なにもやりでつかれるようなおぼえはございません
だまれ
といかりのこえをふりたてながら
ひとあしすすんでくりだす
やりさきするどくつきかける
げんじろうはあっとおどるきみをかわしたがうけそんじ
ふとももえかけぶっつりとつきつらぬき
いまいっぽんつこうとしましたが
こうすけにつかれたふかでにたいかね
よろよろとするところを
げんじろうはいっぽんつかれしにものぐるいになり
いっとうをぬくよりはやく
とびこみさまいいじまめがけてきりつける
きりつけられてあっといってよろめくところへ
のしかかってまるでかしで
まぐろでもこなすようにきってしまいました
おくにはちゅうにかいでねていましたが
このものおとをききつけ
ぬまきのままにはしごをおり
そっときてようすをうかがうと
このていたらくにおどろき
あわてでにかいへあがったり
したいおりたりしていると
げんじろうがいいじまにとどめをさしたようだから
おくにはそばへかけつけて
げんじさまあなたにおけがはございませんか
げんじろうはかたいきをふうふうとばかりで
へんじもいたしません
あなただまっていてはわかりませんよ
おけがはありませんか
といわれてげんじろうは
ふうふうといいながら
けがはないよ
だれだ
おくにさんか
あなたのわしからたいそおちがでますよ
これはやりでつかれました
てつよいやつと思いのほか
なにわけはなかった
しかしここにいつまでこうしてはいられないから
ふたりでいしょにいずくないでとも
おちのびようからはやくしたけをしな
といわれておくにはなるほどそうだといそぎ
おくへかけもどり
てばやくみじたくをなし
よういのきんすやけっこうなしなじなをもちきたり
げんじさまこのいんろうをおさけなさいよ
このめしものをめせ
とすすめられげんじろうはきものをいくまえもきて
いんろうをなあつさけて
だいしょうをろっぽんさし
おびをさんぼんしめるなどたいへんなさわぎで
よいおしたくがとともったから
おくにとともにてをとってしのびいでようとするところを
なかばたらきのじょちゅうおたけが
さきほどよりそうぞうしいものとききつけ
きてみればこのありさまにおどろいて
はあれひとごろし
というやつをげんじろうがおどろいて
このこえひとにひかれてはと
いっとうぬくよりとびこんで
でっぷりふとっているからだをかたぐちから
せびらへかけてきりつける
きられておたけはきゃっとこえをあげて
そのままいきはたえました
ほかのおんなどももおどろいて
したながしへはいりこむやら
またはまきばこのなかへもごりこむやら
さわいでいるうちにげんじろうおくにのようにんは
ここをしのびいで
いずくともなくおちてゆく
あとでげんすけはおくのさわぎをききつけて
いきなりじぶんのへやをとびだし
こぶしをふるってとなりのへえをうちたたき
やぶれるようなこえをだして
ろうぜきものがはいりました
ろうぜきものがはいりました
とさわぎかてるに
となりのみやのめげんのしんは
これをききつけおもうよう
いいじものごときてしゃのところへ
おしぎるろうぜきもんだから
たいぜいととうしゃにそういないから
なるたけおそくなって
こてすねあてのいよいよ
といっているうちに
よはほのぼのとあけわたりたれば
もうろうぜきものはいるきづかいはなかろうと
げんのしんはけない
ひとりふたりをめしつれてきて
みればこのします
いかがしたることならんと思うところへ
ひとりのじょちゅうがしたながしからはいあがり
げんのしんのまえにりょうてをつかえ
じつはさくばんのろうぜきものは
あなたさまのおしゃてげんじろうさまとおくにさんと
とうからみっつしておいでになって
さくやとのさまをころし
きんすいるいをぬすみとり
げんのしんはおおいにおどるき
さっそくやしきへたちかえり
いさぎおかしらへむけ
げんじろうがしゅっぽんのおもむきのとどきをおだす
いいじまのほうへはおめつけがごけんしにとうらいして
だんだんしがいをあらためみるに
わきばらにやりのつききずがありましたから
げんじろうごときにぶきうでまえにては
とてもいいじまをうつことはかなうもじ
さればかならずいいじまのねまにしのびいり
じゅくすいのよゆだんにつけいりて
やりをもってだましゅうしにしたそののちに
かたなをもってきりこのしたにそういなし
ということで
げんじろうはおたずねものになりましたけれども
いいじまのいえはかいげきときまり
いいじまのしがいはやなかしんばんずいんへおくり
こそいとのべおくりをしてしまいました
こちらはこうすけ
ごじじんがわたくしのために
いちめいをおすてなされたことなるかと思えば
いとどきもふさぎ
うつうつとしていますとあいかんはおかしらからかえって
わあやすこしこうすけどもとそうだんがあるから
こちらへきてはいかんよ
くみなどをだすな
なにかごようで
ようじゃないんだよ
そっちへひっこんでいろ
これこれ茶をいれてこい
それからほとけさまへせんこをあげな
さてこうすけども
すこしはなしたいこともあるから
まあまあこっちへこっちへ
だれにもいわれんが
まずもってごじじんさまのおかきおきどおりになるから
しんぱいするにおよばん
おまえはおやのかたきをうったから
これからはごじじんはごじじんとして
そのかたきをかえし
いいじまのおいえさいこうだよ
おおせにおよばず
おどいのほどおねがいます
ふん
このあいかわはとしおいたれども
そのことはいのちにかけて
いいじまさまのおいえのたつようにはからいます
そこでおまえはいつかたきうちにしゅったつなさるへ
もはやいっこくもゆゆをいたすときでございませんゆえ
みょそうてんしゅったついたすりょうけんです
あしたすぐに
さようかえ
あまりはやすぎるじゃないか
よろしこのことばかりはとめられない
もういちいちしんちとひきひろぐことはできないが
おまえのしゅったつぜんに
わしがおりいってたのみたいことがあるが
どうかかなえてはくださるまいか
どのようなことでもよろしいございます
おまえのしゅったつまえにむすめをおとくと
こんれいのさかずきだけをしてください
ほかにのぞみはない
どうかききすんでください
いったんおやくそく申したことゆえ
こんれいをいたしましてよろしいようなれど
しゅじんよりのおやくそく申したは
来年のにがつことに
めのまえいてしゅじんがあのとおりになられましたのに
ただいまこんれいをいたしましては
しゅじんのいはいへたいしてすみません
かたうきうちのほんかいをとげ立ちかえり
めでたくこんれいをいたしますれば
どうぞそれまでおまちくださるようにねがいます
それはおまえのことだから
とうからずほんかいをとげてごきたくになるだろうが
てきのゆぐえがしれないときは
ごねんでかえるかじゅうねんでおかえりになるか
いくでんかかるかしれず
それにわたしはもうとるとし
あすはもしれぬみのうえなれば
このよろこびをみるうちかえらぬたびに
おもくことがあってはよみじのさわり
ことにむすめもわずらうほどおまえをおもっているのだから
どうかかないだけでさかずきことをすませておいて
あんしんさせてくださいな
それにおまえもいいじまのけらいでは
しんちゅうまきのぼくとをさしてゆかなければならん
それよりあいかわのようしとなり
そのすじへようしのとどけをして
ひとりまえのりっぱなさむらいにいでたっておうらいすれば
とちゅうでにいそくなのにもばかにされずにもよからおうから
どうぞかないだけのしゅくげんをおききすんでください
しゅごくごもっともなるおうせです
かないだけならばいはいはございません
ああごしょうちくださったか
せんばんかたじけない
ああありがたい
あいかわはびんぼうなるともこんれいのいりひのそないとして
ごろくじゅうりょうはかかるとみこんでべつにしておいたが
これはおまえのせんべつにあげるからもっていっておくれ
きんすはしゅじんからもらいましたのがひゃくりょうございますから
もういりません
あああれさいくらあってもよいのはかね
ことにながたびのことなればじゃまでもあろうが
そういわずにもっていってください
そこでわたしがこまかいきんをよって
じゅばんのなかへぬいこんでおくつもりだから
はなみはなさずみにつけておきなさい
どうちゅうにはごまのはいというやつがあるから
ずいぶんおきょうつけなさい
それにこのやたてをさしておいで
またこれなるいっとうはかねてやくそくしておいた
とうしろうよしみつのたち
おもくもあろうがさしておくれ
これとごしゅじんのおかたみ
てんしょうすけさざをさしていけば
しゅうととしゅじんがおまえのうしろかげにつきそっているもどうよう
いさましきはたらきをなさいまし
ありがとうございます
どうかこんやふつつかなむすめだがこんれいをしてくだされ
ああこればあ
かしらつきどのがめでたくごしゅったつだ
そこでめでたいついでにこんやこんれいをするつもりだから
とくにかみでもとりあげさせ
おけしょうでもさせておいておくれ
そのまえにしごとがある
このおかねをじぶんへぬいこんでくれ
ぜんぞうやおまえはすぐにすいどうまちのはなやへいって
めでたくなにかかしらつきのさかなを
さんまえばかりとってこい
ついでにさかやへいってさけをにしょう
みりんをいしょうばかり
それからかえりにはんしをじゅうじょうばかりに
たばこをふたたまに
わらじのいいのをとってまえれ
といいつけそうこうするうちに
しゅたくもととのえましたから
さけさかなをざしきにとりならべ
なこうどなりおやなりけんたいにて
あいかわがしかいなみしずかにとうたい
さんさんくだのさかずきごと
しゅくげんのれいもはて
まずおひだきということになる
ああばあや
まごとにめでたかった
ええまごとにおめでとうぞんじます
わたくしはおじょうさもの
おちいさいじぶんからおつきもうして
いたしましたかとぞんじますと
まことにうれしゅうございます
あなたさぞごはんしんでございましょう
ばあいいかえ
たのむよ
おいらはあしたはさはやくおきるから
おまえめしをたかしてこうすけどのにおかしろつきで
ぽっぽとゆげのたつめしをたべさしてたたせてやりたいから
いいかえゆるりとおやすみ
まずおひだきといたしましょう
こうすけどのどうかいさひさしくおねがいします
むすめはまだとしもいかず
せけんしらずのふつつかもんだから
なりぶんよろしくおたのみもうす
なこうどはよいのうちだから
あなたはたのむたのむとおっしゃってなんでございます
わかんないばあばあだな
じょうのことをさあそこへちょっとびょぐをたてまわして
はずかしくないように
よろしいか
それかさまことにあいつがはずかしがって
もじもじをしているだろうからうまくそえ
だんだんさんはなんのおてつきでございますよ
こいつわからんやつだな
てめえだってていしをもったからこどもができたんだろう
こどもができたのち
ちちちがでてうばにでてたんだろう
ほれむすめはとしがいかないから
いいやんばいにほれいいか
あなたはほんとにいつまで
もおじょうさまをお小さいようにおぼしめしていらっしゃいますよ
だいじょうぶでございますよ
なるほどめでたい
いいかいたのむよ
だんなさまおじょうさま
おやすみあそばせ
といってもこうすけはおくにげんじろうのあとをおいかけ
とやこうといろいろしんぱいなどをしてうでこまねき
とこのうえにそわりこんでいるから
おとくもねるわけにもいかずすわっているから
さようならばだんなさま
ごきげんさまよろしく
おじょうさまさきほどもしましたことはよろしうございますか
あなた
少しおしずまりあそばせな
わたしは少しかんがいことがありますから
あなたおかまいなくさきへおやすみなせてくださいまし
まあいやちょっときておくれ
はいなんでございます
だんなさまがおやすみなさらなくって
といいさしてくちごもる
あなたおしずまりあそばせ
それではおじょうさまがおやすみなさることができませんよ
ただいまねますどうかおかまいなく
まことにどうもかたすぎでおきがつまりましょう
ごきげんさまよろしく
あなた少しおよこにおなりあそばせまし
どうかおさきおやすみなさい
まあいや
こまりますねあなた少しおやすみあそばせ
まあいや
とのべつによんでいるからこうすけもきのどこにおもい
よこになってまくらをつけたまつばきやちおまでと思いをもったふうふなか
はじめてのかたらいまことにおめでたいはなしでございます
あしたになるとくらいうちからこうすけはしたくをいたし
こればあやしたくはできたかい
ごぜんをあけたか
ゆぎはたったかい
ぜんぞうにいたばしまでおくらせてやるつもりだから
にもつはげんかいのしきだいまでだしておきな
こうすけとのごぜんをあがれ
おとすさまごきげんよろしゅう
ながいたびですからずとずとしょめんをあげるわけにもまいりません
ただしんぱいになるのはおとうさまのおからだ
どうかわたくしがほんかいをとげきたくいたすまで
ごじょうぶにおいであそばせよ
かたきのくびをさげておめにかけ
およろこびのおかおがみとうございます
おまえもずいぶんからだをだいじにしてください
どうかりっぱにしゅったつしてください
いろいろといいたいこともあるが
きょうたくとはしていえないからなにもいいません
むすめなんでそでをひっぱるんだ
おとうさまだんなさまはきょうおたちになりましたら
いつごろごきたくになるのでございましょう
まだわからぬことをいう
いつまでもちいさいこどものようなきで
いちゃいけないぜ
だんなさまはごしゅじんのかたきゆうちに
ごしゅったつなさるので
いせいさんぐいやものみゆさんにいくのではない
かたきをうちとげねばおかえりにはならない
でもたいがいいつごろおかえりになりましょうか
おれにもごねんかかるかじゅうねんかかるかわからない
そんならごねんもじゅうねんもおかえりあそばさないの
といいながらさめざめとなきしおれる
これなにがかなしい
しゅうのかたきをうつなどということは
さむらいのうちにもりっぱなことだ
かかるりっぱなていしょうをもったのはありがたいと思え
めでたいしゅったつだ
なぜわらいがおをしてたたせない
てまえがみれんをのごせば
しょうろくのむすめだからみれんだ
いくじがないとこうすけ殿にあいさをつかされたらどうする
ああこうすけ殿
としがいかないこどものようなむすめだから
きにかけてくださるな
ああばあやなにをなく
わたくしだっておなごりがおしいからなきます
あなたもないていらっしゃるではございませんか
おれはとしおりだからよろしい
といいわけをしながらないているとこうすけは
さようならば
ごきげんよろしゅう
とげんかんのしきだいをおりぞおりをはこうとする
そのそばへおとくをあするより
たもとをひかえ
なみだにめもとをうるましながら
ごきげんさまよろしく
とすがりつくをこうすけはなだめ
ぜんぞうにおくられしゅったついたしました
じゅうろく
はくおうどうゆうさいは
はぎわらしんざぶろうのねどこをまくり
じつにぞっとあしのほうからそうけだつほど
こわくなったのもどおり
はぎわらしんざぶろうはこくうをつかみ
はをくいしばりめいしき
しけいろにかわり
ようどのくるしみをしてしんだもののごとく
そのわきへどくろがあって
あしのほねなどがばらばらになって
とこのうちにとりちらしてあるから
ゆうさいはみてびっくりし
ともぞうこれはなんだ
おれはことしろくじゅうきゅうになるが
こんなおそろしいものははじめてみた
しなのしょうせつなどには
よくきつねおにおぼにしたの
ゆうれいにであったなどということもずいぶんあるが
かようなことにならないように
しんばんずいのりょうせきをおしょうにたのんで
ありがたいまよけでおももりをかりうけて
はぎわらのくびをかけさせておいたのに
どうもいんねんはまぬがれないもので
しかたがないが
おももりをとってくれ
こわいからわっちゃいやだ
おみねここへきな
わたくしもいやですよ
なにしろあまどをあけろ
ととうをあけさせ
はこうどうがみずからたって
はぎわらのくびにかけてある
しろもめんのどうまきをとりはずし
ぐっとしごいてこきだせば
くるぬりつやけしのみずしにいて
なおあけばこうはいかに
きんむくのかんのんにょらいと思いのほか
いつしかだれかがぬすんで
すりかえたるものとみえ
なかはかおらにしゃくどうはこをおいた
つしのふどうとけしてあったから
はこうどうはあっとあけれてぼうぜんといたし
ともぞう
これはだれがぬすんだろう
なんとかわっちにはさっぱりわけがわかりません
これはよにもとうときかんのんにょらいのりつどうにて
まかえもおそれてたちさるというほどな
とうといしななれど
しんばんずいのりょうせきおしょうが
あついなさけのこころより
はぎわらしんざぶろうをふびんにおめかしてくだされ
しんざぶろうははだみはなさず
どうしてかよみすりかえられたか
まことにふしぎなことだな
なるほどな
わちどもにはなんだかわけがわからねえが
かんのんさまですか
ともぞう
てまえはうたくるわけじゃねえが
はぎわらのじめんうちにいるものは
おれとてまえばかりだ
よむやてまえはぬすみやしめえが
ひとのものをうばうときはかなずそのそうごにあらわれるもんだ
ともぞうちょっとてまえのにんそをみてやるからかおをだせ
とかいちゅうよりてんがんきょうをとりだされ
ともぞうはおおきにおどろき
みられてはたいへんと思い
しょうがないっちゃいけねえ
わっちゃうようなこんなつらはどうせ
しゅっせいのできねえつらだからみねえでもいい
とことあるようそをはくおうどうははやくもすいし
ははあこいつともぞうがおかしいなと思いましたが
なまなかのことをいいだして
とりねがしてはいかんと思いなおし
ああおみねえや
ことからおなするまではふたえでよくきをつけていて
なるだけひとにいわないようにしてくれ
おれはこれからずんばんいんへいってはなしをしてくる
とあがざのつえをひきながら
ずんばんいんへやってくると
りょうせきようしょうはあさぎもめんのころもをちゃくし
じゃくまくとしてざぶとんのようにそわっているところへ
ゆうさいいりきたり
これはりょうせきようしょう
いつもごきげんよろしく
とかくことしはざんしょのつよいことでございます
いやあでてきたねえこっちへきなさい
まことにはげわらもとんだことになって
とうとうしんだの
ええあなたはよくごぞんじで
そばにわるいやつがついていて
またはげわらものがれられない
あくいんねんでしかたがない
ただまるこっちゃ
いいわしんぱいせんでもよいわ
どうとくたかきめいそうちしきは
ひゃくねんさきのことをみやぶるとのことだが
あなたのごけんしきまことにおそれいりました
つきましてわたくしがすまないことができました
ああかんのんにょらいなどを
ぬすまれたというのだろうが
ありゃあつちのなかにかくしてあるが
あれはらいねんのはちがつにはきっとでるから
しんぱいするな
よいわ
ああわたくしは
おんようをもってようをわたり
みらいのかふくをうらなって
ひとのこころざしをさだめることは
わたくししょうちしておりますけれども
こればかりはきがつきませなんだ
どうでもよいわ
はげわらのしがいはほかにごだいじょもあるだろうが
いいじまのむすめおつゆとは
ふかいいんねんがあることゆえ
あれのはかにならべてうめて
せきとうをたててやれ
おまえもはげわらにせわになったこともあろうから
せしゅになってたってやれ
といわれはくおうどうは
いさいしょうちとうけをして
てらをたちいで
みちみちもどうしておしょうが
あのことをはやくもさそったろうと
ふしぎにおもいながらかえってきて
ともぞう
きさまもはげわらさまにはおうになっているから
のべのおくりのおともをしろ
とあとのしもつをとりつけ
はげわらのしがいは
やなかのしんばんずいんへほむってしまいました
ともぞうはいかにしても
じぶんのあくじをかくそうため
いまのすまようたちのかんとはおもいましたけれども
あわてたことをしたらひとのうたがいがかかろう
じぶんからきんじょのひょに
はげわらさまのところへゆうれいのくるのを
おれがたしかにみたが
ゆうれいがふたりでぼんぼんをしてとおり
ひとりはしまだまげのしんぞで
ひとりはとしまでぼたんのはなのついた
とうろうをさげていた
あれをみるものはみっかんをまたずにしぬから
おれはこわくてあそこにはいられないなぞと
いいふらすときくひとびとはおにおをつけて
はげわらさまのところへはゆうれいがひゃくにんくるとか
ねずのしみずではおんなのなきごえがするなど
さまざまなひょうばんがたって
ちりじりひとがほかへひっこしてしまうから
はくおどもうすきみわるくやおもいけん
ここをひきはらってかんだはたごちょうへんへ
ひっこしました
ともぞうおみねはこれをしおり
なにぶんこわくていられぬとて
くりはしざいはともぞうのうまれこきょうのことなれば
なかせんどうくりはしへひっこしました
じゅうなな
ともぞうはあくじのろけんをおそれ
りょうぶんおみねとくりはしへひっこし
ゆうれいからもらったひゃくりょうあれば
まずしめたとこんいのうまかたきゅうぞうをたのみ
このごろはしょしきがやすいから
にじゅうりょうでりっぱなうちをかいとり
ごじゅうりょうをもとでにおろし
あらむのみせをひらきまして
せきぐちやともぞうとよび
はじめのほどはふうふともいっしょうけんめいはたらいて
やすくしこんでやすくおりましたから
たちまちせけんのひょうばんをおとり
すきぎぐちやのしろものはねがやすくてしながいいと
ほうぼうからおしかけてかいにくるほどゆえ
おおいにはんじょうをきわめました
ぼんぷさかんにかみたたりなし
ひとさかんなるときはてんにかつ
ひとさまっててんひとにかつとは
こじんのきんげんうべなるから
もとよりあぶくぜりのことなれば
みいつくどうりのあるべきわけはなく
よくねんのしがつごろからともぞうは
いぜんのこともうちわすれ
すこしぜいたくがしたくなり
ろのこもんのはおりがきたいとか
おびはけんじょうはかたをしめたいとか
せったがはいてみたいとかいいだして
あるひどうしくのささやというりょうりへあがりこみ
いっぱいやっているそばに
しゃくとりおんなにでたべっぴんは
としはにじゅうななくらいだが
どうしてもにじゅうさんしくらいとしかみえないという
すこぶるしろものをみるよりも
ともぞうはこころをうごかし
にかいをおりてこのやのていしゅに
そのおんなのみのうえをきけば
さるころふうふのりょじんがこのいえへとまりしが
ていしゅはもとあさむらいで
いかなることかあしのきずのいたみ
はげしくたつことならず
いちにちいちにちとのながどうりゅう
ついにりょようおんをつかいはたし
そういつまでもやどやのめしをくっても
いられぬことなりとて
ふうふにはどてしたいしょたいをまたせ
にょうぼはこちらへてづらいばたらきおんなとしておいて
わずかなきゅうきんでていしゅをみついでいる
とかのはなしをきいて
ともぞうはかねさえあればどうにもなると
そのひはいくらかかねをあたえ
きれいにいえにかえりしが
これよりせっせとあしちかくささやにかよい
かねびらきってくどきつけ
ついにかのおんなとあやしいなかになりました
いったいこのおんなは
いいじまへいざいもんのめかけおくににいて
みやのべげんじろうとふぎをはたらき
あまつさえいいじまをてにかけ
きんぎんいるいをうばいとり
えどうたちのきえちごのむらかみへにげらしましたが
おやもとぜっけしてよるべきなきまま
だんだんとおうしゅうろをへめぐりて
しもかいどうへでてまえり
このくりはしにいてわずらいつき
やどやのていしのなさけをうけていまのしまつ
もとよりあくしょうのおくにゆえ
たちまちおもうよう
このひとはいちだいしんじょうにわかぶんげんにそういなし
このひとのいうことをきいたなら
わるいこともあるまいととくしんしたるゆえ
ともぞうはよんじゅうをこして
このようなわかいきれいなべっぺんにもたつかれたことなれば
むちょうてんがいにとびあがり
これよりまいちここばかりかよいきて
ねとおりをいたしておりますと
ともぞうのりょうぼおみねは
こみあがるりんきのかども
ほうこうにんのてまえにめじがまんはしていましたが
あるひのことうまをひいて
みせさきをとおるまごをみつけ
おやきゅうぞうさんすどおりかえ
あんまりひどいね
やあおかみさま
おおきにぶさたをいたしやした
ちょっくりくるのだけど
いまにいつんでさってまでいそいでいくだから
よっているわけにいきましねえが
こらいだはこづかいをくださってありがとうございます
まあいいじゃないか
おまえはうちのしんるいじゃないか
ちょっとおよりよいっぱいあげたいから
そうですかえ
それじゃあごめんなせ
とうまをみせのかたあしにゆいつけ
うらぐちからおくへとおり
おらこっちのだんのおみよいだというんで
みんなにおおきにかわいがられら
このうちのしんしゅうは
きょねんからかねもちになったから
おらもうはながたかい
とはなしのうちにおみねはいくらかかみにすすみ
なんぞあげたいが
あんまりすこしばかりだが
こづかにでもしておいておくれよ
これはどうも
まいどういただいてばかりでいてすまねえよ
いつでもやっけいになりつづけたが
せっかくのおぼしおびしだから
ちょうだいとしておきますべい
かうべいか
友像の破滅と物語の終焉
おおきにありがとうございます
なんだよそんなにおれをよわれては
かえってめがくするよ
ちょいとおまえにききたいのだが
うちのだんなはしゅかつごろから
ささやよくおともになって
おまえもいっしょにいってあそぶそうだが
おまえはなぜわたしにはなしをおしでない
おれしんねえよ
おとぼけてないよ
ちゃんとたねがあがっているよ
たねがあがるかさがるか
おらあしらねえもの
あれさささやのおんなのことさ
やきもちはおばあさんになって
やきもちをやくわけではないが
だんなのためをおもうからいうんで
あのとおりいきなひとだから
すっかりとうちをあけて
わたしにはなしてゆびはわらってしまったんだが
おまえがあんまりしらばっくれて
すどおりするからよんだのさ
いったっていいじゃないかい
だんなどんがいったけ
あれまあわれさえいわなければ
しれるきずけいはねえ
おれがしんぱいだというもんだから
おまえさまのおまえをかくしていたんだ
ふうふうのじょうはいだから
だんだんわたしにいってしまったよ
おまえとときどきいっしょにいくんだろ
あのアマッチョはやしきもんだよ
ていしゅはげんじろうさんとかいって
あしへきずができてたつことができねえで
どてしたいしょたいをもっていて
にょうぼうはささやいはただきおんなをしていて
ていしゅをすごしているのをだんながきいてきのどくにおもい
かわいそうにとおもって
いちばんはじめかねえさんぶぐらいくれて
にどめのときにりょうあとからさんりょう
それからごりょう
いっぺんににじゅうりょうやったこともあった
あれやおくにさんとかいって
にじゅうしちだとかいうが
おめえさんなんぞよりよっぽどき
なにおめえさまとちげえ
やしきもんだからぶいきだが
なかなかいいおんなだよ
なにかいあれはだんながあそびはじめたのはいつだっけねえ
ゆうべきいたがちょいとわすれてしまった
おまえしてるかい
しがつのふつかからかねえ
あきれるよほんとにまあ
しがつからいままでわたしにうちあげて話もしないで
あきれかえったひとだ
しがつのふつかからきいても
なんだのかのとしらばっくれていてありがたいわ
それですっかりわかった
それじゃだんなはいわねえのかい
あたりまえさ
だんながわたしにあらたまって
そんなばかなこというやつがあるもんかねえ
それじゃおらがこまるべえじゃねえが
だんなとんがおれにわれしゃべるなよとゆうたり
こまったなあ
なにおまえのなまえはださないから
しんぱいはしてないよ
それじゃわしのなめえをだしちゃいかねえよ
おおきにありがとうございました
ときゅうぞうはたちかえる
おみねはこみあがるりんきをおさえ
よなべをしてともぞうのかえりをまっていますと
ぶんすけやあげておくれ
おかえりあそぼせ
みせのものもはやくねてしまいな
おくももうねたかえ
といいながらおくへとおる
おおおみねまだねずか
もうよなべはよしねえからだのどくだ
たがいにしておきな
こんやはいっぱいのんでそうしてねよう
なにかさかなはありあいでいいや
なにもないわ
かくやでもこしらえてきてくんな
およしよ
おさけをうちでのんだってうまくもない
さかなはなししゃくをするものは
わたしのようなおばあさんだから
どうせきにいるきづかいはない
それよりはささやへいっておあがりよ
そりゃささやはりょうりやだからなんでもあるが
ねざけをのぶんだから
ちょいとのりでもやいてもってきねえな
さかなはそれでもいいとしたところが
おしゃくがきにがないだろうから
ささやへいっておくにさんに
おしゃくをしておもらいよ
うーんきづのことをいうな
おくにがどうしたんだ
おまえはなぜそうかくすんだえ
かくさなくてもいいじゃないかえ
わたしがじゅうくいやはだしのことならば
おまえのかくすもむりではないが
こうやっておたがにとるとしだから
かくじだてをされては
わたしがまことにこころもちがわるいから
おいいな
なにをよ
おくにさんのことをさ
おれぼれするくらいだから
あれあほれてもいいよ
なんだかさっぱりわからねえ
きょうひるまうまかたのきゅうぞうが
きやしなかったか
いいえきやしないよ
おれもこのうしはよんどころないようで
ときどきうちをあけるもんだから
おめえがそううたかるのももっともだが
そんなことは言わないでもいいじゃねえか
そりゃおとこのはたらきだから
なにをしたっていいが
おまえのためだから言うんだよ
あのおんなのていしゅはりゃんこさんで
そのていしゅのためにあやってるんだそうだから
おまえはそのふつかからかのおんなに
かかりあっていながら
これっぱかしもわたしに言わないのはひどいよ
そういっておしまいだね
そうしていっちゃ本当にこまるな
あれはおれが悪かった
めんぼくねえかんにしてくれ
おれだっておめえに何かついてがあったら
言おうと思っていたが
あらたまってそういう色ができたとも
言いにくいもんだからついてはもっていた
おれもずいぶんどうらくをした人間だから
そうだまされてかねをとられるような心配はねえ
だいじょうぶだ
そうさはじめのときさんぶやって
そのつぎににりょう
それからさんりょうとごりょうにどあって
にじゅうりょういっぺんにやったことがあったってねえ
いろんなこと知っていやがる
おいひるまきゅうぞうがきたんだろ
ふんけいやしないよ
それじゃあおまえこうしな
むこうのおなもていしゅがあるのに
おまえにくっつくくらいだから
ほれているにいちがえないが
ていしゅがあっちゃけんのんだから
もらいきってめかけにしておまえのそばへおおきよ
そうしてわたしはべつになって
せきぐち屋のでみせでございますといって
べつにかぎょうをやってみたいから
おまえはおくにさんとふたりでいっしょになっておかせぎよ
うーんきざなことをいわねえがいい
わかれるものにもねえじゃねえか
あのおなはてりゃんこのめかけ
ぬしがあるもんだから
そういつまでもかかりあっているきはねえんだが
あれやよったまぎれについつまみげにしたんで
おれがわるかったからかんにんしてくれろ
もういようとあそこへ行きさえしなければいいだろ
ふんいってはやるよ
あのおなはていしゅがあってそんなことをするくらいだから
おまえにはれているんだからおいでよ
うーんそんなきざなことばかりいって
しようがねえな
いいからわたしはべつになりましょうよ
とくどくどといわれて
ともぞうはぐっとしゃくにさわり
なってえなってえ
これよんけんまぐちのおもてだのをはっている
あらもの屋のだんなだ
ひとりふたりのいろがあったってなんで
おとこのはたりきであたりめえだ
わけえもんちゃあるめえしやきもちをやくな
それはまことにすみません
わるいことを申しました
よんけんまぐちのおもてだのをはっただんなさもだから
あたりまえだと
たいさもないことをおいでないよ
いまではだんなだといっていばっているが
きょねんまではおまえはなんだい
はぎわらさものほうこうにんどうようにおいつかわれ
ちいさのまごだのをかりていて
はぎわらさまからときどきこづかいをいただいたり
ひとえもののふるいのをいただいたりして
どうやらこうやらやっていたじゃないか
いまこうなったからといってそれをわすれてすむかえ
おいそんなおおきいこえで
いわなくてもいいじゃねえか
たなのものにきこえるといけねえやな
ふんいったっていいよ
よんけんまぐちのおもてだのをはっている
あらものやのだんなだからめかけぐるいが
あたりまえだなんぞといって
せんのことをわすれたかい
なかはしでていきやがれ
はいはいでていきますとも
でていきますからおかねをひゃくりょうをわたしにおくれ
これだけのしんだいになったのはだれのおかけだ
おたかにここまでやったのじゃないか
えびすこうのあきないみたいにたいしたことをいうな
しずかにしろ
ふんいったっていいよ
ほんとにこれまでたかにはだしになって
いっしょうけんめいにはたらいて
はぎわらさものとこにいるときも
おかえはやまをしたかけずれまわり
どうやらこうやらやっていたか
うまいさけものめないからといって
わたしがないしょくをして
たまにはかってのませたりなんぞして
はちねんこのかたはおまえのためには
たいそうくろうをしているんだ
それをなんだえあらものやのだんなだとえ
ごたいそうらしい
わたしはいまこうなったっても
むかしのことをわせないために
いまでもこうやってもめんものをきて
よなべをしているくらいなんだ
それにまだおととしのくれだっけ
おまえがしゃけのせんべいで
わたしはゆうよをいいますよ
それからびんぼうせいたいをはっていたことだから
わたしもいっしょうけんめいに
みわんでないとよなべをして
おさけをさんごをかって
しゃけのせんべいでのませてやったとき
おまえはうれしがって
そのときなんといったい
もつべきものはにょうぼだといって
よろこんなことをわせえたかい
おまえおおきなこえをするな
それだからもうおれはあそこへいかないというに
おおきなこえをしたっていいよ
おまえはおくにさんのところへおいでよ
いってもいいよ
おまえはおまえのままといいながら
こぶしをあげてあたまをうつ
うたれておみねはたけりたち
なきごえをふりたて
なにをぶちやがるんだ
さあひゃくりょうのかねをくれ
わたしはでてまいりましょう
おまえはこのくりはしからでた人だから
みよりもあるだろうが
わたしはえどうまれでこんなところへ
ひっぱられてきてみよりたよりがないと思って
いい気になってわたしがとしをとったもんだから
おんなぐるいなんぞはじめ
いまになってみはなされてはくりかたにこまるから
これだけかねをくれ
ほほほほ
たいそうなことおいでないよ
わたしがかんがえついたことで
ゆうれいからひゃくりょうのかねをもらったじゃないか
こらこらしずかにしね
いったっていいよ
それかそのかねでとりついてこうなったんじゃないか
そればかりじゃねえ
はぎわらさまをころしてかんのんにょらいのおぞをぬすみとって
しみずのかだのなかへうめておいたじゃないか
おーおーしずかにしねえ
ほんとにきちげえだな
ひとのみみでもはいったらどうする
わたしはしばられてくびをきられてもいいよ
そうするとおまえもそのままじゃおかないよ
わたしはべつになりましょう
しようがねえな
おれがわるかったかんにしてくれ
そんなこれまでおめえといっしょになってはいたが
おれにあいそがつきたんなら
このうちはすっかりとおまえにやってしまうわ
というとなにか
おれがあの女でもいっしょにつれて
どこかへにげでもするだろうと思うだろうが
だんだんようそうをきけば
あの女はなにかすじのわるい女だそうだから
もういいかげんきりあげるつもり
それともここのうちを200人おりでも300人おりでも
たたきうってしまって
おまえをいっしょにつれて
いっしょにいったもんだが
おまえもういちどはだしになって
くろうしてくれるきはねえか
わたしだってむりに
わかれたいというわけでも
なんでもありませんが
いまになっておまえがわたしをじゃけんにするもんだから
そうはいったものの
8年このかたついそっていたもんだから
おまえがみせないということなら
どこまでもいっしょにいこうじゃないか
そんななにもはらをたてることはねえんだ
これからなかなおりにいっぺいのんで
ふたりでいっしょにねえよ
といいながら
およしよ
やだよ
せんりゅうに
にょうぼのつのをちんこでたたきおり
でたちまちなかもなおりました
それからよくじつはともぞうが
おみにいすきなきものをかってやるからというので
さっていまえりごふくやでたんものをかい
ここのゆおりやでもいっぱいやって
ふたりつれだち
もうかえろうとさっていをでてどていさしかかると
ともぞうがどてのしたえおりにかかるから
だんなどこへいくの
りつはえどへいしいれにいったときに
あのかんのんにょらいのきんぼくのおもむりを
もってきてここへうめておいたんだから
ほりだそうと思ってきたんだ
あらまおまえはそれまでかくして
わたしにいわないんだよ
そんならはやくひとのめつまにかからないうちに
ほっておしまいよ
これはほりだしてあしたこがのだんなにうるんだ
なんだかあめがぽつぽつふってきたようだな
むこうのわたしぐちのところから
なんだかひとがふたりばかり
だんだんこっちのほうへくるようなあんべえだから
みていてくんね
だれもきやしないよ
どこへさ
むこうのほうへきょうつけろ
そういう
むこうはおおらいがみつまたになっておりまして
かたえはしんとねおおとりのながれにて
おりしもそらはどんよりとあめもよ
かすかにみえるいなかやのぼんどうろうのひも
はやきえなんとし
ゆきひもとだえてものすごく
おみねはなにこころなくむこうのほうへ
めをつけているゆだんをうかがい
ともぞうはこしにさしたどうがねづくりのわきさしを
おとのせぬようにひっこぬき
ものおもいわずうしろから
いっしょうけんめいちからをいれて
おみねのかたさきめがけてきりこめば
きゃっとおみねはたおれながら
ともぞうのすそにしがみつき
それじゃあおまえはわたしをころして
おくにをにょうぼうにもつきだね
しれいたことよ
おれたおんのをにょうぼうにもつんだ
かんねんしろ
といいさまかたなをさかてにもちなおし
かいがらぼねのあたりからちちのしたへかけ
したたかにつきこんであれば
おみねはしてんばっとうのくるしみをなし
おのでそのままにしておこうかと
またもすそへしがみつく
ともぞうはのしかかってとどめをさしたから
おみねはいきがたえましたが
どうしてもしがみついたてをはなしませんから
わきざしにて
いっぽんいっぽんゆびをきりおとし
ようやくかたなをのぐいさやにおさめ
あたおもうみずとぶがごとくにわがやへたしかえり
あわただしくこぶしをあげてかどのとうをうちたたき
ぶんすけ
ちょっとここをあけてくれ
おうどんなぜございますか
でおかえりあそばせ
とおもてのとうをひらく
ともぞうずっとうちにはいり
ぶんすけはたいへんだ
ともぞうのおいはいりがでて
おれのむなぐらをつかまえたのをはらって
ようやくにげてきたが
おみねはどてしたへおりたから
わるくするとけがをしたかもしれない
どうもあんじられる
どうかみんないっしょにいってみてくれ
というのでほうこうにいちどういにおどるき
てにてにはんぼうしんばりぼうなぞたずさえ
ともぞうをさきにたてどてしたへきてみれば
むざんやおみねはめもあてらぬように
きりころされていたから
ともぞうはそらなみだをながしながら
ああかわいそうなことをした
いまひとあしはやかったら
こんなひごうなしをとらせまいものを
とうぞうをつかい
ひとをはせてそのすじへとどけ
ごげんしもすんでうちにひきとり
なにごともなくむらかたへのべのおくりを
してしまいましたが
ともぞうがころしたときがつくものはありません
だんだんひかずもたってなのかめのことゆえ
ともぞうはてらまいりをしてかえってくると
めしつかいのおますという31さいになるじょちゅうが
にわかにがたがたとふるえはじめて
うんとうなってたおれ
なにかわごとをいってこまるとばんとうがゆうから
ともぞうがおんなをねているところへきて
おめえどんなあまいだ
うーんともぞうさん
かえがらぼねからちちのしたへかけて
ずぶずぶとつきとおされたときの
いたかったこと
だんなさまへんなことをいいやす
おますきをたしかにしろ
かぜでもひいてねつでもねてたんだろうから
ふとんをたんとかけてねかしてしまえ
とよぎをかけるとおますは
おもいやぎやかいまきをいちどにはねのけて
ふとんのめにちょんとすわり
じっとともぞうのかおをにやむから
へんなあんべいですな
おますしっかりしろ
きついでもつかれたんじゃないか
ともぞうさん
こんなくるしいことはありません
かえがらぼねのところからちちのところまで
わきざしのさきがでるほどまで
ずぶずぶとつかれたときのくるしさは
なんともかともいいようがありません
といわれてともぞうもうすきみわるくなり
何をよんだきでもちがいはしないか
お互いこうして、八年この方貧乏世帯を張り、やっとの思いで今はこれまでになったの。お前は私を殺して、お国を女房にしようとは、まあ、あんまりひどいじゃないか。
これは変な安倍だ。
というものの、腹の内では大いに驚き、早く療治をして直したいと思うところへ、この節、去ってに江戸から来ている名人の医者があるというから、それを呼ぼうと人を馳せて呼びにやりました。
十八
友像は、女房が死んで七日目に寺参りから帰ったその晩より、下女の御末がおかしな上事を言い、幽霊に頼まれて百両の金をもらい、これまでの身の処理に取り憑いたの、萩原慎三郎様を殺したの、観音如来のお守りを盗み出し、根津之水の火壇の中へ埋めたんだと喋りたてるに。
方向人たちは何だか様子のわからぬことゆえ、ただ馬鹿な上事を言うと思っておりましたが、友像の腹の中では、両房の御末が俺に取り憑くことのできないところから、この女に取り憑いて俺の悪事を喋らせて、御神の耳に聞こえさせ、俺を召し取り、お仕置きにさせて恨みを晴らす料金に違いなし、あの下女さえいなければかようなこともあるまいから、いっそ宿もとへ下げてしまおうか。
いやいや待てよ。宿へ下げ、あの通りに喋られては大変だ。俺はうっかりしたことはできないと、視案に行かれているところへ。先ほど去って使いになりました下男の直介が、医者堂々で帰ってきて、
旦那、ただいま明け入りやした。江戸から追い出すったお上手なお医者様だそうだが、やっと願いやして御一緒に来てもらいやした。
ああ、これはこれは御苦労様。手前方はこういう商売柄、店も散らかっておりますから、まずこちらへお通り下さいまし。
と、奥の前案内をして上谷障司。友像は因縁に両手を使え。
はじめまして、梅通りをいたします。私は関口屋友像と申しますもの。こんにちは。早速のお入りで、誠に御苦労様に存じまする。
はいはい、はじめまして。何か急病人の御様子。
ははー、お熱で。変なわごとなどを言うと。
と言いながら、ふと友像を見て。
おや、これは誠にしばらく。これはどうも、誠にどうも。
どうなつって、友像さん。まず、一別来、相変わらず御機嫌よろしく。どうもまあ、計らざるところで御目にかかりました。
これは、君の御神託かい?
はあ、恐れ言ったね。
しかし、君は確あるべきことだろうと、君が萩原慎三郎様のとこにいる自分から。
あの、友像さん御姉さんの夫婦は、どうも起点の利き方、才智のもあるところから、なかなかただの人ではない。今にあれは偉い人になると言っていたが。
実子の指差すところ、眼鏡はたがわず。実に君は大した表玉を張り、立派なことに御成りなすったな。
ああいや、これは山本師匠さん。誠に思いかけねえところで御目にかかりやした。
実は私も人には言えねえが、江戸を食いつめ、医者もしていられねえから、猫の額のような内田が売って、その金属を路用として日光編のシルベを頼って行く途中、
去っての宿屋で、あいあどの漁人が熱病で悩むとて、漁師を頼まれ、その魅惑を取れば運よく全開したが、実は僕が直したんじゃねえ。一人でに直ったんだが。
運にかなってたちまちに、あれは名人だ、名医だとの評が立ち、あっちこっちから漁師を頼まれ、実はいい加減にやってはいるが、相応に薬で栄養をよこすから。
足を止めていたものの、実は俺は医者はできねえんだ。もっとも、松刊論の一冊くらいは読んだことはあるが、一体病人は綺麗だ。
あの臭い寝床のそば寄るのは嫌だから、金さえあればつい一杯飲む気になるようなもんだから、江戸を食い詰めてきたんだが、あの細君はお達謝かい?
いやさ、小峰さんには久しく配額を得ないが、お達謝かい?」
あれは土口小森氏が、「8日後の晩、土手下で泥棒に切り殺されましたよ。それから予約引き取って弔いを出しました。」
ああ、やれはや、これはどうも存外な。さあぞ、お収拾。お馴染みだけ尚更お差し申します。
あのお方は誠にお定説な良いお方であったが、これが物価でいう因縁とでも申しますのか。さあぞ、まあ残念なことでありましたろう。
それでは、ご病人はお金ではないね。
ええ、うちの女ですが、なんだか熱に浮かされて、妙なことを言って困ります。
ああ、それじゃあまたちょっと見てあげて、後でまたいろいろ昔の話をしながらゆるりと一杯やろうじゃないか。
知らない土地へ来て馴染みの人に会うとなんだか懐かしいもんだ。病人は熱なら造作もないからね。
ええ。
ふみすけや、先生は甘いものは召し上がらねえが、お茶とお菓子等を持って来ておけ。先生、こっちへおいでなせ。ここが女部屋で。
ああ、さようか。まあ、暑いから羽織を脱ごうよ。
おもすや、お医者様がいらっしゃったからよく見ていただきな。気をしっかりしていろ。変なことを言うな。
どれ、どういう御様子、どのなんばいで?
と言いながらそばへ近寄ると、病人は重い貝巻をはねのけて、布団の上にちゃんと座り、師匠の顔をじっと見つめている。
おん、お前どういうなんばいで、大方風がこうじて熱となったんだろう。寒気でもするかい?
山本師匠さん、まことに久しくお目にかかりませんでした。
おん、これは妙だ。僕の名を呼んだぜ。
こいつは妙な上言ばっかり言っていますよ。
だって僕の名を知っているのが妙だ。
うーん、どういう様子だい?
私はね、この貝殻骨から乳のところまでズブズブと友像さんにつかれた時の。
おお、これこれ、何をつまらないことを言うんだ。
よろしいよ。心配したもんな。それからどうしたい?
あなたの御存じの通り、私ども夫婦は萩原慎三郎様の方向に同様に追いつかわれ、裸足になって掛けずり回っていましたが、
萩原様が幽霊に取り憑かれたもんだから、万寸院の和尚から魔除けのお札を裏窓へ貼り付けておいて、幽霊の入れないようにしたところから、友像さんが幽霊に百両の金をもらってそのお札を剥がし。
おお、何を言うんだな。
うん、よろしいよ。僕だから。これは妙だ妙だ。
へい、そこで?
その金から取り憑いて今はこれだけの身の代となり、それのみならず、萩原様のお首に掛けている金木の観音如来のお守りを盗み出し、
水の、清水の花壇に埋め、余った萩原様を蹴殺して定翼、跡を取り繕い。
何を、とんでもないことを言うもんだ。
よろしいよ。僕だから。
妙だ妙だ。
へい、それから?
そしてお前、そんなあぶくぜにで、これまでになったに。
お前は女狂いを始め、私を邪魔にして殺すとはあんまりひどい。
どうもしようがないの。何を言うんだ。
よろしいよ。妙だ。心配したもんだ。
これは早速、宿へ下げたまえ。
というと、宿でまたこんなあぶことを言うとおぼしめしそうだが、下げればきっと言わない。
このうちにいるから言うんだ。
僕も、壮年のおり、こういう病人を二度ほど先生の代脈で手掛けたことがあるが、
宿へ下げればきっと言わないから、下げべし下げべし。
と言われて、友像は小気味が悪いけれども、山本の勧めに任せ、早速に宿を呼び寄せ引き渡し、
表へ出るや否や正気に帰った様子となれば、友像も安心していると、今度は腕頭の分付がうんとうなって余儀をかむり。
寝たかと思うと起き上がり、幽霊にもらった百両の金でこれだけの身の所要になり上がり、と言い出したれば、また宿を呼んで下げてしまうと、
今度は小僧がうなり出したれば、また宿へ下げてしまい、方向に残らずを返し、後には友像と師匠と二人きりになりました。
友像さん、今度うなればおいらの番だが、妙だったね。
だが友像さん打ち明けて話をしてくんなせ。
萩原さんが幽霊に見いられ、骨と一緒に死んでいたとの評判もあり、また首にかけた大地の守りがすり替わっていたというが、その感情はどうもわからなかった。
もっとも、白王堂という二層身の親父が少しはけどって、審判随員の和尚に話すと、和尚は遠より悟っていて、盗んだ奴が土中へ埋め隠してあると言ったそうだが、
今日初めてこの病人の話によれば、僕の感情では確かにお前と見てとったが、もうこうなったら隠さずに行っておしまい。
そうすれば、僕もお前と一つになって事を図ろうじゃないか。
善悪共に相談しようから打ち明けたまえ。
それから君は、おかみさんが邪魔になるもんだから殺しておいて、泥棒が斬り殺したのだと言うんだろう?
そうでしょ?そうでしょ?
と言われて、友像をもはや隠し終わせることもいかず。
実は幽霊に頼まれたというのも、萩原様のああいう怪しい姿で死んだというのも、いろいろ訳があって、みんなわっちがこしらえたこと。
というのは、私が萩原様の油を蹴って殺しておいて、こっそりと審判随位の墓場へ忍び、神塚を掘り起こし、砂利骨を取り出し、持ち帰って萩原の床の中へ並べておき、怪しい神様に見せかけて白狼堂の親父を一併はめ込み、また観音如来のお守りもまんまと守備をくねすみ出し、水の清水の火壇の中へ埋めておき、
それから俺がいろいろとホラーを吹いて近所の者を怖がらせ、みんなあちこちへ引っ越したをよいしようにして、俺もまたお峯を連れ、百両の金を掴んでこの土地へ引っ込んで今の身の上。
ところが俺が脇の女にかかり合ったところから、カカアが臨機を起こし、以前の悪事をガーガーガーガーと怒鳴り立てられ仕方なくうまくだまして土手下へ連れ出して、俺が手にかけ殺しておいて、追い吐きに殺されたと空涙で人をだまかし、弔いも済ましてしまったわけなんだ。
ああ、よく言った。まことに冠服。大概のもんならそう打ち明けては言えぬもんなのに、俺が殺したと隅家かに言うなどは、これは悪党は悪党。お前にそう打ち明けられてみれば、私はおしゃべりな人間だが、こればっかりは後悔はしないよ。
そのかわり、少し好みがあるがどうか叶えておくれ。
というと、何か君の身の代でもあてにするようだが、そんなわけではない。
ああ、それはいいとも。どんなことでも聞きましょうから、どうか後悔はしてくださるな。
と言いながら、懐中より二十五両ずつ身を取り出し、市場の前に差し置いて。少ねえが、切餅をたった一つ取っておいてくんね。
ああ、これは言わないちんかえ。薬礼ではないね。
よろしい。心得た。なんだかこう金が入ると浮気になったようだから、一杯飲みながらゆるりと昔語りしているんだが、このうちは陰気だから、これからどっか行って一杯やろうじゃねえか。
ああ、そいつはよかろう。そんなら、おいらのなじみのささややゆきでしょう。
と、家連れ立って家を出たち、ささやや上がり込み、差し迎えにて酒を組み交わし。
男ばかりじゃ上手くねえから、女を呼びにやろう。と、奥人を呼び寄せる。
おや旦那。ご無沙汰をして。よくいらっしゃって。
うかがえませれば、おかみさまは不良のことがございましたと、定めてご主張なことで。
私も旦那にちょいとお目にかかりたいと思っておりましたわ。
うちの人の傷もようやく治り、近々のうち越後へ向けて今ひとたび行きたいと言っておりますから、
行った日にはあなたにお目にかかることのできないと思っているところへお使いで、あまりうれしいから飛んできたんですよ。
奥人。お連れの方になぜご挨拶しないんだ。
これはあなた。ごめんあそばせ。と言いながら師匠の顔を見て。
おやおや。山本師匠さん。まことにしばらく。
おお、これは妙。どうも不思議。奥人さんがここにおいでになるとは計らざることで。これは妙。
ないない、ご様子を聞けば、思うお方といっしょなら、三山の奥までというようなる行きすじごとで。
まことに不思議。これは期待だ。妙だ妙だ。
と言われて奥人はぎっくり驚いたわ。
師匠は奥人の身の上をば詳しく知ったものゆえ、もし友相にしゃべられてはならんと思い。
師匠さん。ちょっとごめんあそばせ。と次の前立ち。
旦那。ちょっといらっしゃい。
あいよ。師匠さん。ちょっと待っといておくれよ。
ああ、よろしいよろしい。ゆっくり話をしてきたまえ。僕は作業のことには慣れておるから苦しくない。お構いなく。ゆっくりと話をしていらっしゃい。
旦那。どういうわけであの師匠さんを連れてきたの。
あれはうちに病人があったから呼んだんだよ。
旦那。あの医者の言うことを何でも本当にしちゃいけませんよ。あんな嘘つきの奴ありません。
あいつの言うことを本当にするととんでもない間違いができますよ。
人のあいなかをつっつくひどいやつですから。今夜はあの医者をどっかへやって、あなた一人ここに泊まっていてくださいな。
そうすれば、うちの人を寝かしておいて、あなたのところへ来て、いろいろお話もしたいことがありますから。ようございますか。
師匠さん。
よしよし。それじゃあ、うちの方をいい安倍にして。きっと来ねえよ。
旦那。きっと来ますから。待っておいでよ。
と奥人は共々に別れ、帰りゆく。
旦那。では、師匠さん。誠にお待ちどう。
誠にどうも。
はっはっは。あの女はもう四十に近いだろうが若いねえ。君もなかなかお腕前だね。
大方君はあの婦人を食っているんだろうが、これからはもう君と善悪を一つにしようと約束をした以上は、君のためにならねえことは僕は言うよ。
一体君はあの女の身の上を知って世話をするのか?知らないのか?
俺は知らねえが、お姉さんは心安いのか?
あの婦人には男がついている。宮延原次郎と言って旗元の地なんだが、そいつが悪人で、萩原慎三郎さんを恋したった娘の親子、飯島平在門という旗元の奥様好きで来た女中で、奥様が亡くなったところから手がついて目掛けとなったが今の国で。
原次郎と不義を働き、恩ある主人の飯島を斬り殺し、ありがね二百六十両に大将を三つ越しとか陰謀を幾つとか盗み取り蓄然した人殺しの泥棒だ。
すると後から忠義の家来、遠助とか甲助とかいう男が、主人の仇を討ちたいとか追っかけて出たそうだ。
私の思うのは、あれは君に惚れたのではなく、原次郎が可愛いからお前の言うことを聞いたなら、邸主のためになるだろうと心得身を任せ、相対真男ではないかと僕は感情するが、今聞けば急に意地を得たつと言い、僕を這いて君一人で寝ているところへ原次郎が踏み込んで揺そりかけ、二百両くらいの手切れは取る木さんにちげえねえが、君は承知かい?
だから君や今夜ここに泊まってはいけねえから、僕と一緒にどこかへ徐郎家に行ってしまい、あいつら二人に姿をかわせるとはどうだい?
うーん、なるほど。そうか、それじゃあそうしよう。
と、それだってここを立ち入れ、鶴谷という徐郎家へ上がり込む。後へ奥にと原次郎が笹谷へ来て様子を聞けば、さっき帰ったということに二人はしおれて立ち返り。
奥に、もうこうなれば仕方がないから、あしたは俺が関口へ駆け合いに行き、もし向うで白を切ったそのときは、
私が行って喋りつけ口をあかざずたんまりいすってやろう。
と、その晩は寝てしまいました。
緑鳥になり友像を足場を連れて我が家へ帰り、いろいろ夕べののろけなどを言っている店先へ。
お頼もうす、お頼もうす。
あきんどの店先へお頼もうすというはおかしいが、誰だろう。
ふん。大方、夕べ話した原次郎が来たのかもしれね。
そんならおめえそっちへ隠れていてくれ。
ふん。いよいよ難しくなったら飛び出そうか。
いいから引っ込んでいなよ。
へいへい。少々うちに取り込みがありまして店を閉めておりますが、何か御用ならば店を開けてからお願いとございます。
いや、買い物では御座らん。御邸主に少々御面談いたしたくまいったのだ。ちょっと開けて下さい。
さようで御座いますか。まずお上がり。
はい。
早朝よりまかり出まして御名役。あなたが御主人か。
ええ。関口はともぞ私でございます。ここは店先。どうぞ奥へお通り下さいまし。
しかれば御面を拷問る。
と、ロイロ座や茶使の刀を右の手に下げたままに、邸主にかまわずずっと通り神座に出す。
どなた様でございますか。
これは初めてお目にかかりました。
手前は土手下に書体を持っている宮上玄二郎と申す祖骨の浪人。
かない国こと、ささやかたにて働き女をなし、わずかな窮境にて、よいおその日を送り致したるところ。
旦那より深く御悲喜をいただくよし、毎度国より受けたまありおりますれど、
何分祖骨よりて歩行もなりかねますれば、存じながら御無沙汰。従々御無礼を致した。
ああ、これは御発に御目通りを致しました。
ともぞと申す不調者。幾久しく御行為を願います。
お前様の安倍の悪いということは聞いていましたが、
よくまあ御前回、わっちもお国さんを悲喜にするというものの、悲喜の引き倒しで何の役にも立ちません。
旦那の御親像がね、どうも恐れ入った。もったいねえ、孫や私のようなものの、
機嫌気妻を取りなさるかと思えば気の毒だ。それがために失礼もたびたび致しやした。
ああ、どういたしまして。
ともぞと産にちとおりって願いたいことがありますが、私ども夫婦はもはや旅費を使いなくし、
ことには病中の入れ目、薬入れや何やかんやで全く財布の底をはたき、
ようやく前回しましたれば、越後寺へ出発したくもいかにも旅費が乏しく、どうしたらよかろうと師庵のそばから、
女婆が関口家の旦那は御親切のお方ゆえ、泣きついてお話をしたら御見継ぎ下さることもあろうとのすすめに任せまいりましたが、
どうか露銀を少々拝借ができますればありがとう存じます。
おお、これはどうも。そうあなたのように手を下げて頼まれては面目がありませんが。
と、中はいくらかしら紙に包んで玄次郎の前に差し置き。ほんのわらじせんでございますが、おげとり下せ。
と言われて玄次郎は取り上げてみれば、金千匹。
これは二両二部。いやさ御主人、二両二部で越後まで足弱を連れて行かれると思いなさるか。御親切ついでにもそっとお恵みが願いたい。
千匹で少ないとおっしゃるなら、いくらあげたらよいのでございます。
どうか百均お恵みを願いたい。
一本え?冗談言っちゃいけねえ。巻かなんぞじゃあるめえし。一本の二本のと転がっちゃいねえよ、旦那。
え?こういうことは一体こっちであげる心持ちの指定で、いくらかくらかとふかげられるもんじゃねえやと思いなす。百両くれろと呼ばれちゃあげられねえ。
また道中も主要で霧のないもの、千両も持って出てたりずに家へ取りによこすものもあり、四百の税にで伊勢三宮をするものもあり、
二部の金をもってコンピュラ回りをしたという話もあるから、旅はどうとも主要によるもんだから、そんなことを言ったってできはしません。
まことにアキンドナズはそんな金はないもんで、表玉を立派に張っていても、内々は一両の税に困ることもあるんだ。
百両くれろと言っても、そんなに祝っちゃおめえさんにお恵みをする縁がねえ。
国が別段ご卑怯になっているから、とにかく面倒言わず、千別として百金もらおうじゃねえか。何も言わずにさ。
おめえさんはおつおかしなことを言わしちゃる。何かお国さんとわっちがくっついててもいるというのか?
おおさ。真男の角で適度に百両を取りに来たんだ。
むむ。わっちが不義をしたが、どうした?
黙れ。
やい不義をしたとは何だ。捨て置きがたい奴だ。
と言いながら刀をそばへ引き寄せ、親指にて小い口をぶっつりと切り。
この間から何かとうさんのこともあったれど、こらえこらえてこれまでおんびんざたに致し置き、昨晩それとなく国を責めたところ、
国の申すには、実はすまないことだが貧に迫ってやむを得ず、あの人に身を任せたと申したから、その場において手打ちにしようとは思ったれども、
こういう身の上だから勘弁致し、こと穏やかに話をしたに、
てめえの口から不義したと公害されては捨て置きがたい。おむて向きに致さん。
と、たけりたって怒鳴ると。
静かにお知らせ。
怒鳴りはないが名刺のない村じゃないよ。
お前さんがそうたけりたって小い口を切り、わっちのビンタを打ち切る賢幕を恐れて、はいさようならとお金を出すような人間と思うのは間違えだ。
私なんざ首が三つあっても足りねえ体だ。
隆一の時から狂い出して、ぬけめえりから江戸へ流れ、悪いという悪いことは二三の水だし、
やらずのもなか野田町藩の花っぱり、やーの堂まで追ってきたんだ。
今は日々赤切れを城たびで隠し、生皿を使っているもの、悪いことはお前より上だよ。
それに、真男真男というか、あの女は飯島平財門様の目かけで、それとお前がくっついて殿様を殺し、大将や有金をひっさらえ高飛びしたんだから、
やばばお前も盗み者。
それに奥にも、俺なんぞに惚れた腫れたのじゃなく、お前がかわいいばっかりで病気の薬剤にでもするつもりでこっちにも仕掛けたのを幸いに、
俺もそうとは知りながら、つい男の意地汚な手を出したのはこちらの誤りだから、何も言わずに千引きを出し、別の花向けにしろと思い、
これこの通り二十五両をやろうと思っているところ、一方によこせと言われちゃう。
どうせ細った首だから側首が飛んでも一文もやれねえ。
それにお前、よく聞きねえ。江戸直のこんなところにマゴマゴしていると危ねえぜ。
こうすけとかが主人の仇だとか言ってお前を狙ってるから、お前の首が先へ飛ぶよ。冗談じゃねえ。
と言われて玄二郎は戸胸をついて大いに驚き、
さようなご苦労人とも知らず、ただの仇の旦那と心得、脅して金を取ろうとしたのは誠に恐縮の至り、
しからば、あいすみませんが、これを拝借願います。
早く行きなせ。賢能だよ。
さようなら。老人も申します。
後を締めて行ってくんな。
師匠は戸棚より潜り出し、
上手かったなあ。貫復だ。実に貫復。君の二三の水だし、やらずの重な方は貫復。
ああ、どうもそこが悪党。ああ、悪党。
これより伴象は師匠と二人連れ立って江戸へ参り、
根津の始密の火壇より観音如来の象を掘り出すところから、
悪事、露見の一脱はこの次までお預かりにいたしましょう。
1963年発行。世界文庫。近代文芸資料復刻草書。延長全集。観音二。
より一部独領。読み終わりです。
はい。物語状がこちら側へ、読み手側、観客側へ呼びかける感じになってきたので、
ここで一旦聞きますかね。
この辺で一旦お話はお預かりでございますみたいなの書いてありましたからね。
どうなりましたっけ?お化けが。
おつゆとお嫁のお化けは侍のところへ行けて、侍も死んじゃって、
奪った金。金を奪った悪党は嫁を殺し、その間くっついてきてた女の人も殺し、
男と二人連れ立って、悪党になっている感じでしたよね。
はい。そんな感じでした。どうなっていくんでしょうか。
観音如来の象を掘り出してどうなっていくのかなって感じですね。
はい。なぜか上中下になろうとは。長いね。
無事に寝落ちできていることでしょう。
さあ、今日のところはこの辺で終わりにしておきます。
無事に寝落ちできた方も最後までお付き合いいただけた方も大変にお疲れ様でした。
といったところで今日のところはこの辺で。また次回お会いしましょう。おやすみなさい。
01:41:39

コメント

スクロール