改めまして、ドックトレーナーのひらたじゅんです。
今日一緒に考えたいのは、先日実際に担当したクライアントさんのエピソードです。
その子はオールドイングリッシュシープドッグという犬種で、生後8ヶ月。
まあ大きくてふわふわで、見た目の可愛らしさをね、もちろん言うわでもないんですけれども、
このオタクにお邪魔すると、全力で走り回ってお出迎えをしてくれるような、
エネルギーあふれる女の子なんですね。
で、飼い主さんが初めてドックランに連れて行ったときに、
ドックランの中に入った瞬間に固まってしまったそうなんですよ。
で、ドックランの中にあるベンチの下に隠れてもずっと動かない。
で、他の犬が近づいてくると、お腹を上に見せてずっと寝そべっている状態。
で、飼い主さんはいつもエネルギーあふれる様子とは全く真逆のこの様子に戸惑ってしまって、
声をかけたりとか、おもちゃで誘ったりしたんですが、
最終的にその日は諦めて退散することにしたそうです。
後日、私が一緒に同じドックランについて行かせていただきました。
今度はですね、ちょっとアプローチを変えて、結果としてその子は他の犬と普通に触れ合えるようになりました。
1回目と2回目で何が違ったのか、そこに今日のコアポイントがあります。
まず聞いて欲しいんですけれども、固まるという行動、皆さんどういうふうに解釈しているでしょうか。
まあ、怖がっているのか、それとも自信満々なのか、これから遊ぶための準備をしているのか。
実は動物行動学では、固まるという行動に名前がついていて、そのままフリーズと言います。
動物が危険を感じたときに、体の動きを止めて状況を把握しようとする防衛本能の一種です。
動物行動学では、強いストレスや脅威に直面したときに、
動物は大きく4つの反応を取るという説明がされています。
英語の頭文字から4つのFという言い方もあるんですけれども、
ファイト、戦う。
フライト、逃げる。
フリーズ、固まる。
フールアラウンド、落ち着きなく動き回る。
他にフィジェットという言い方もあったりするんですけれども、これを4つのFと呼びます。
ドックランに入って固まる。これがまさにさっき言ったフリーズですね。
ここが重要なんですけれども、このフリーズというのは、余裕のある状態ではありません。
フリーズしているときに、体の中ではストレスホルモンであるコルチゾールというものが分泌されていて、
緊張状態が続いています。
その犬はかなり追い詰められて、体にもダメージが蓄積していっている状態にあります。
つまり、ゲートに入った瞬間に固まったあの子は、
この場所は、もう今の自分には処理できないよという判断を体全体で表して飼い主さんに伝えていたんです。
これが今日の一つ目の発見です。
固まるというのはおかしいことではなくて、固まるのは正常な、正直な反応です。
ドックランの成功はその日で決まるんじゃなくて、その前の積み重ねで全て決まります。
じゃあ実際にどうすればいいのか、5つのステップをお伝えします。
ステップ1、エネルギーの発散です。
まず15分のお散歩をしました。
ここでいつもとは違う環境に興奮している犬を匂いを嗅がせたりとか、歩いてエネルギーを使うことで落ち着いてもらいます。
いつもと違う環境でテンションが上がるのは愛犬も同じです。
ただし全員が新しい環境が得意ではないのも人間と同じなんですね。
新しい環境でエネルギーが高ぶりすぎていないか、逆に警戒心が強まっていないかを見極めます。
この時に観察してほしいポイントは尻尾と姿勢です。
尻尾が高い位置でゆったり右に触れていればOKのサインです。
尻尾の振りが早かったり前傾姿勢で歩いていたら興奮しすぎなので、まずは匂いを嗅がせて落ち着かせてあげましょう。
尻尾が低かったり後傾姿勢だったら恐怖心を持っていますので、まずはベンチなどでゆっくりして新しい環境に慣らしてあげましょう。
ステップ2です。
ステップ2は休憩です。
ドックランから50メートルほど離れたベンチで15分休憩をしました。
ここで犬の鳴き声だったりとか匂いだったりとか音に対して慣れてもらいます。
この時の観察ポイントは耳と鼻です。
耳がキョロキョロ動いてたりとか頻繁に鼻をひくひくさせているようであれば、まだこの場所に慣れていない合図です。
最初のうちは鳴き声などに敏感に反応したり、慣れないいろんな犬たちの匂いに鼻を動かすと思うんですけど、15分もするとその場に座り込んでリラックスしてくるはずです。
ここで前のめりで吠えてしまってたりとか、尻尾を足の間にしまってしまうようであれば刺激が強すぎるので、さらに10メートル20メートル離れて観察を続けましょう。
ステップ3はドックランの周りを歩くです。
今までは遠くから嗅いだりとか聞いたりとかしていた正体との未知との対面です。
いろんな音や匂いがさらに強くなりますが、ここで興奮しすぎないか、恐怖を感じていないかを見極めましょう。
この時の観察ポイントはまっすぐ歩けるか、飼い主の声が届くかです。
自分からフェンスに近づいていったりとか一点を見つめて、飼い主さんが名前を呼んでも全然呼びかけに気づかないならまだ準備ができていません。
逆に歩きたがらなかったりとか尻尾をしまってしまっている場合は少し近すぎるかもしれないので、
フェンスの間に人間が入って犬がいるというような状態であったりとか可能な限りフェンスからあなたの愛犬を離した状態で歩き続けるか、ちょっと離れたベンチにまた戻って休憩をしましょう。
ここで中の犬たちに気をとらえることなくまっすぐに歩けるようになったら次のステップに行きます。
ちなみに僕はこの日犬その子の様子を見ながら3周歩きました。
ステップ4は二重扉の中に入って30秒で退室です。
ドックランは場所によって設備が違います。
芝生が敷いてあるところだったりとかアジリティが設置されている場所など所々によって違いはあるんですけれども認可を受けている場所のほとんどはエアロックと言われる二重扉構造になっています。
まずはこの二重扉の中に入ります。
扉を1枚開けて二重扉の間に入ります。
この時の観察ポイントは尻尾の位置と前身です。
ここで一つ間違ってほしくないのはお座りとか待てとか指示をする必要はありません。
あくまで愛犬がどのように今の状態を受け入れているのかありのままのリアクションを観察してください。
ここでもう他の犬に対して吠えかかっていたりとか隅で固まってしまっていたら即時退散して前のステップに戻ってください。
ここでリラックスしているようであれば新しい友達を作る下準備はほとんど完成しています。
いよいよ最後ステップ5。リードを付けたまま様子見をしてください。
リードを付けた状態でドックランの中に入って隅っこに移動して1分ほど待機しましょう。
ここで愛犬の様子を見ます。
ここが最大の難所ではあるんですけれども、ここを越えれば新たな愛犬の個性が輝く瞬間が待っています。
ここでの観察ポイントは前進です。
足の後ろに隠れる様子はないかとか、いきなり飛びかかったりしないかとか、あくまでリラックスしている状態でいることが一番大切です。
どこかに隠れたり飛びかかったりするようであれば前のステップに戻りましょう。
ちなみに初めましての犬同士の触れ合いは30秒から1分程度にしてあげましょう。
人間目線でいうと、愛犬たちが匂いを嗅ぎ合っている姿って見てて癒されるのは僕も一緒なんですよ。
私も一緒なんですけど、犬にとってはどんな相手か分からない状態での挨拶っていうのはどうしても緊張というのが伴います。
いわば一触即発の状態でもあるんですね。
なのでいきなり長時間接するのではなくて、短い時間から触れ合って本人たちが望むなら一緒に遊ばしてあげましょう。
この私の担当したオールドイングリッシュシープドッグの子、ステップ1から5までスムーズに進んでくれて、
最初に固まってた子とは同じ子とは思えないぐらいに落ち着いて他の犬と一緒に駆け回ってました。
飼い主さんもこんなに変わると思ってなかったっていうふうにありがたくおっしゃっていただいてました。
今日からできることを3つまとめさせていただきますと、
1つ目、まずフリーズというサインを覚えてください。
体が固まる、尻尾が下がる、耳が後ろに倒れる。
これはドックランに限らずにその子がもう今限界に近いです。
もう無理かもしれません。もうそろそろやばいですって飼い主さんに伝えているサインです。
2つ目、次にドックランに行くとき、まずフェンスの外で5分だけ立ってみてください。
その子がどちらに向かうかを見るだけでいいです。
3つ目、もし過去に固まった子を押し込んでしまったという経験があっても、それを引きずらなくていいです。
今日からステップ1に戻れます。
犬は過去の1回の出来事ですべてが決まる生き物ではないので、
必ず段階を踏み直していけば記憶を上書きすることができます。
最後にちょっとだけ話をさせていただきたいんですけれども、
ドックランで固まった日、もしかしたらうちの愛犬は社交的じゃないのかもな、
ドックラン向いてないのかもな、友達作るの苦手なのかもなって思った方もいらっしゃるかと思うんですね。
ただちょっと考えてみてほしいんですけど、知らない場所に連れて行かれて知らない犬が走り回っていて、
飼い主さんもこれで合ってるのか大丈夫か、うちの子は仲良くできるんだろうかちょっと不安そうにしていて、
この状況の中でその子はただ正直なリアクションを返しただけだと思うんですよ。
あなたの愛犬は飼い主さんのことを信頼しているからこそ、
もうちょっと今の状況よくわかんないです、無理かもしれないですっていう状態を固まるという形で飼い主さんに伝えていたんですね。
あなたがもしその日退散を選んだんだったら、それはそのあなたの愛犬の言葉を聞けたということです。
それではまとめてまいりましょう。本日の犬からの伝言です。
新しい場所では尻尾と姿勢と耳と鼻を常に確認してあげてください。
今日はドックランで固まる犬の話をしました。
フリーズは極度のストレス状態なので、慣れさせようとして押し込むのではなくて、
段階を踏んでこの場所は安全だという経験を積み重ねることがドックランを楽しめる犬への一番の近道です。
番組へのご質問やご感想はメールで受け付けています。
メールアドレスはmessagefromdog.comです。
図解や補足はノートの犬からの伝言にも掲載しています。
次回なんですけれども、なぜ吠えるのかというお話をしようと思います。
吠える犬をしつけ直すという話ではありません。
吠えるということには実はいくつかタイプがあって、タイプが違えば対応も全く変わってくるよというお話です。
うちの愛犬の吠えはどのタイプかがわかると、今やっている対応があっているのかどうかも見えてきます。
来週の金曜日お散歩のお供にどうぞ。
それではお気を付けてお帰りください。
ドックトレーナーのひらたじゅんでした。