元村有希子のZoom Up
2023-09-07 11:28

元村有希子のZoom Up

毎日新聞論説委員 元村有希子
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この時間は、Zoom Up、毎週木曜日は科学です。毎日新聞論説委員の元村有希子さんです。
元村さん、おはようございます。おはようございます。元村さん、今日のテーマ、話題は何でしょうか。
芥川賞に選ばれた作家、市川沙夫さんのメッセージについて考えたいと思います。
ハンチバックという文芸春秋から出ている作品なんですけど、お二人は読まれましたか。まだ読んでないんですよ。
90年近く芥川賞の歴史があるんですけれども、市川沙夫さんは柔道障害者なんですね。柔道障害者が自ら書いた作品というのはほとんどないんだそうです。
それで話題を読んだんですけれども、どんな小説かというと、この主人公は難病を抱えていて、グループホームで暮らす43歳の女性。
様々な屈託を抱えながら、他人のケアを受けながら生きているんですね。
ある日、介助してくれる男性の介護者に、こんな依頼をするんですよ。
私は妊娠したい。そしてその妊娠した子を仲絶したいという、かなり刺激的な提案を男性にするんですね。
そこからどうなっていくかというのは読んでいただくとして、この市川さんが受賞に際して発したメッセージが結構社会的に話題になっています。
一つは、この小説にも盛り込まれているんですけれども、この主人公というのはほぼ市川さんの等身大のモデルになっているんですよね。
つまり当事者が語る、その障害を持って生きることの苦しさというか困難ということですよね。
例えば、私は妊娠したい。そして仲絶したいというメッセージというのは、いわゆる私たちというか、健常者の人たちが今まで忌避してきた優生思想を逆手に取っている感じなんですね。
つまり、昔健常者がやったことは、障がい者は赤ちゃんが育てられないだろうとか、
昔の法律でいうと不良な遺伝子を残すことはダメだろうと言って、障がい者が妊娠しても忠実させていたわけですよね。
市川さんはその歴史を踏まえて、忠実を選ぶのも私が選ぶんだということを言いたいわけですよね。
つまり、障がい者は妊娠する権利もあるし、その妊娠をどうするかというのまで決めたいんだというふうに言っているわけですね。
これがかなり重い問いかけの一つです。
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もう一つは、本に関わる現状者優位の現状というのに、挑戦状を叩きつけているんですね。
例えばこんな記述があるんですけれども、
目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、
5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。
これは作品中で主人公に言わせてるんですけども、
マチズモというのは、マチスモとも言って、男性優位主義という英語、外国語なんですけども、
ここでは、そういう自由に本屋さんに行ける、それから重い本を手に取ってめくって読めるっていう、それは健康な人しかできないんじゃないの?って言ってるわけです。
確かに。
言われてみると、確かに。
かなり刺激的な作品ではありますが、
内川さんというのは先天性のミオパチという筋力が失われていく病気、難病を患っていまして、
治療法がないんですね。
呼吸が苦しくなるので寝るときは人工呼吸器につながれるし、移動には困難を生じるので電動車椅子を使っています。
それでも外出ほとんどしない中で、
iPad miniを使って小説を書いたり、
しているわけですね。
芥川賞というのは、純文学としては初めての受賞ということで、これが本格的な作家デビューということなんですけれども、
彼女は選ばれて記者会見の席でこんなふうに言ってるんですね。
重度障害者の受賞者も作品も初めてと皆さんは書かれるでしょう。
どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか考えてもらいたい。
これもなかなか刺激的ですね。
私たちが報道する立場で言うと、
何かその報道するときにその人の特徴とか初めてとか強調して伝えますよね。
芥川さんは先回りして皆さんそうやって伝えられるでしょうって言ってるわけですけれど、
重度障害者の作家っていう枕言葉で伝えること自身が本来ならちょっとおかしな話なんですね。
芥川さんは重度障害者ではあるけれども、
重度障害者の作家っていうふうに事さらに伝えることによって、
重度障害者は作家になれないだろうっていう常識、無意識の偏見がそこに含まれるわけですよね。
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なので芥川さんはそういう世間の常識に挑んでいるというか、
その挑むやり方を当事者のノンフィクションとしてではなくて、
自分を投影したモデルを主人公にしたフィクションを書くことによって、
より刺激的に伝えるっていうんでしょうかね。
そういう手法を取られたと思うんですね。
芥川さんがいろいろとおっしゃっていた読書文化に関するバリアというのもですね、
現状ちょっと整理しておきたいんですけれども、
読書バリアフリーと呼んだりする考え方で、
障害がある人、例えば目が見えなくても本が読めるように読み上げ機能をつけるとか、
それから朗読したテープをいつでも替えられるとか、
そういう世界のことを読書バリアフリーと言うんですけれども、
日本では2019年に法律ができています。
まだ4年しか経ってないんですが、
視覚障害者とか他のいろんな障害を抱える人が読書にアクセスしやすい環境を、
国や自治体が整えるべきだっていう法律なんですね。
ただ現実はまだまだ紙有為でして、
2022年の出版の売上げの規模で見ますと、
紙の出版物、日本全国で1兆円以上あるんですけれども、
電子媒体、電子書籍とか、
これはその半分ぐらい、5000億円ぐらいなんですね。
だからまだまだ、これ本当は同じ規模に並ぶぐらいじゃないといけないわけでしょ。
そうですね。
しかもジャンル間の格差が大きくて、
例えば若い人、それから子どもたちが読むような漫画ですね。
漫画はかなり電子化が進んでいて、
今、新刊のほとんどは紙もあるし、
電子書籍、スマホでも読めるっていうのもありますけど、
これやっぱりベストセラーになるようなものほど進んでいて、
そうじゃないもの、例えば昔の日本文学とか、
学術書とか、そういったものはなかなか進んでいなくて、
必ずしも全員のニーズには答えられていないんだそうです。
市川さんのこのメッセージっていうのは、いろんな意味で、
私たちの奥底に隠れている意識だとか、
それから当たり前だと思っている世界にちょっと刃を突きつけるような、
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そんな取り組みというか挑戦なので、
本当に自分たちが普通だと思っていることのおかしさっていうのを、
作品を通して私は感じましたね。
確かに。やっぱりノンフィクションで綴られると、
市川沙翁さんのことを我々が読者はやっぱり俯瞰で見てしまう、
客観的に受け止めてしまうと思うんですけど、
フィクションにすることによってその主人公に我々も読者も投影できる、
その視点からいろんなことが見えてくるというのは大事なことなのかなと思いましたね。
無意識っていうのはある意味怖いところでありますので、
そこを気づかせてくれるというのは本当に新たな視点を持ってきてくれたなと思います。
本村さんありがとうございました。
ありがとうございました。
毎日新聞論説委員の本村幸子さんでした。
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ありがとうございました。
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