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【夜更けの もこカフェ】6月の雨は空から届く思い出 #79
2026-06-09 07:27

【夜更けの もこカフェ】6月の雨は空から届く思い出 #79

雨の日になると、
今でもあの頃を思い出す。
高校生だった私。好きだったのは、野球部の先輩。

放課後になると、
体育館の小さな窓からグラウンドを眺めていた。

晴れの日も。曇りの日も。そして、6月の雨の日も。

雨に濡れながらボールを追う姿。
泥だらけのユニフォーム。
仲間と笑う横顔。

その姿を見ているだけで、
胸が少しあたたかくなった。

先輩と言葉を交わすことはあっても、
特別な関係ではなかった。
それでも、すれ違うたびに嬉しくて。

少し話せただけで、
その日が特別な日になる。そんな存在だった。

ある6月の雨の日。先輩と約束をした。
放課後、グラウンドで会おうと。

たったそれだけの約束なのに、
朝から胸が落ち着かなかった。

空は重たい雲に覆われていて、
雨の匂いがしていた。

放課後。
約束の場所へ向かう。

ぽつり。雨が降り始める。それでも待った。

きっと来る。きっと来る。そう信じながら。
制服が濡れても。
髪が頬に張りついても。
雨はどんどん強くなる。

それでも、先輩は来なかった。
あとになって知った。

先輩はその日、
事故に遭っていたことを。

そして、
もう二度と会えない人になっていたことを。

あの日から、雨が嫌いになった。

雨の音を聞くたびに、
約束の場所で待ち続けた自分を思い出す。
来るはずだった先輩を思い出す。

胸の奥が、静かに痛んだ。

だけど――時は流れる。

不思議なことに、
雨の日に思い出すのは 悲しみだけじゃなくなった。

雨のグラウンド。
泥だらけのユニフォーム。
仲間と笑う先輩。

そして、
体育館の窓から見ていた景色。
あの日は、
雨が大嫌いになった日。

でも今は違う。

6月の雨が降るたびに、
大切な思い出が帰ってくる。

会えなくなった人との時間を、
そっと運んできてくれる。

だから今は、
雨も悪くないと思える。

6月の雨が降るたびに、
今でも先輩を思い出す。

雨のグラウンド。
泥だらけのユニフォーム。
あの優しい笑顔。

もう会うことはできない。
それでも、思い出は消えない。
【6月の雨は、空から届く思い出】
   
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