卒業式の日の情景
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの思い、そして工業高校の教育の魅力をお届けしていきます。
本日は卒業式でした。今年は例年と比べてかなり暖かい日が続いていて、正直桜が咲いちゃうんじゃないかなっていうようなくらいでしたね。
入学式じゃなしに卒業式に桜なんていう季節になってしまったらちょっと変な感じですよね。
そのぐらい暖かい日で空気が柔らかいっていう感じでしたね。
あの独特の背筋が伸びるような緊張感の中にどこか春の匂いが混ざっている。そんなような日に卒業式が行われました。
卒業式の流れ自体は例年と大きくは変わりません。
体育館で式があって、その後クラスに戻って担任から卒業証書が渡されて一言ずつ話していく。
ここまではどのクラスも同じなんですよね。そこから航空機械工学科の2クラスは最後にものづくりプラザという実習室に集合して、そこには飛行機が2機格納されているとこなんですけども、
みんなで写真を撮るっていうのが恒例になっていました。ここまでは例年の通りなんですけども、
でも今年はここから先にもう一つ儀式を立ちました。
儀式の意味と白線流し
実は私ずっと思ってたんです。卒業式ってもちろん大事なんですけども、毎年何か記憶に残ることをしてあげたいなというふうには思ってたんですね。
具体的に言うと岐阜県で有名な行事には白線流しっていうのがあるんです。知ってますか?
高山市の飛田高校という学校が昔からの伝統で白線流しといって、高校の目の前にある川に男子生徒は帽子の紐、女子生徒はセーラー服のリボンをお互い結んで長い紐にするんですよね。それを川に流すという行事なんです。
これテレビ見てるとだいたい恒例の行事ですみたいな感じでやっているので、見たことある方多いんじゃないでしょうか。
私、昔高山工業高校に勤務していた時期があって、その時はこの飛田高校の前に住んでたんです。ちょうど川も見えて、もうこの白線流しが目の前で見れるというふうに思ってたんですけどね。
当然ながら私も3月1日は高校の卒業式の職員として行かなければいけないので、この白線流し結局高山に住んでいながら一度も見ることができませんでした。ちょっと残念なんです。
もっと言うと私、今言った通り卒業式は仕事としてそこにいる側で固定されてしまうので、娘の卒業式も息子の卒業式も実は見たことないんです。
息子はですね、美術科というちょっと特殊な学科にいて、卒業式の日に予備校に行かなきゃいけないってことでほとんどの子が卒業式に出ないみたいな、そんな特殊なクラスでしたけども、
まあその分クラスの絆は強かったっていうふうには言ってましたけどね。
まあいろんな卒業式の形がありますが、卒業式で同じ思い出を共有するってことってすごく重要なことだと思っているんです。
同じ儀式を経験したという経験は強烈に残ると思うんですよね。
そして何年か経って高校時代を思い出した時に共通の話題として立ち上がってくる、あの時ってさあとか、
それがあるかないかで卒業の手触りって思い返すのが全然違ってくるんじゃないでしょうか。
紙飛行機セレモニーの発想
何かないかなと思っていた時にふと思い出したのは、日本航空の入社式で紙飛行機を飛ばす演出を見たことがあるんです。
これ航空機械工学科の卒業式でやったら象徴として残るんじゃないかなと。
まあそう思って今日の卒業式で紙飛行機を飛ばそうと考えたんです。
朝のショートホームルームの時に急遽紙を配って卒業式にセレモニーで飛ばす飛行機を織ろうというふうに指示しました。
急だったので時間も十分ではなかったと思います。
まあだけどもさすが航空機械工学科の生徒ですね。綺麗に飛行機を織ってました。
そして生徒代表ということで一言挨拶してほしいなというふうに思っていましたので応援団長だった生徒に声をかけました。
そうしたら任せてくださいと心強い返事が来ました。
そこから次の日いろんな企画を考えてくれて素晴らしいサプライズだなというふうに思っていました。
生徒たちによるサプライズ演出
どんなサプライズがあったかっていうことなんですけども一つ目は代表の挨拶ということで一人が話すのではなく
みんなで一言ずつ言っていく形にしてくれたんですね。
よく小学校でお父さんお母さんとか先生ありがとうみたいな一人一人が短いセリフを担当してリレーみたいに繋いでいくやつですよね。
内容は親への感謝とか先生への感謝仲間への感謝それをちゃんと言葉にしていきました。
これってなかなか大人になるとできないんですよね。
言葉にする機会があるっていうのはすごく大事なことかなというふうに思いました。
なかなかテレとかタイミングとか立場とかそういったものが邪魔して素直な気持ち言えない時ってありますよね。
でもこういうセレモニーっていう場はそういった言葉を出しても許される特別な場っていうことなんですよね。
儀式っていうのはそういう機能があるなというふうにも思いました。
そして2つ目生徒たちがギターの演奏もしてそれに合わせて歌を歌ってくれました。
レミオロメンの3月9日卒業式では定番ですよね。
でもうちの学科は男子生徒がほとんどで声が重低音でまたものづくりプラザに響くんですよね。
体育館の歌とはまた違う実習室の空間にまっすぐ音が刺さっていく感じですね。
本当に心に刺さりましたね。
それを見ながら私は感じたのは言葉にすると青春ってことですよね。
そしてこれは学生だからできるっていう特権でもあるなっていうふうにも思ってました。
大人になったらみんなの前で歌を歌うことってほとんどないですよね。
しかもそれが大人数で。
みんなで同じ歌を同じタイミングで同じ気持ちで歌う。
それができるのは今この瞬間を共有している仲間がいるからこそなんです。
そしてその時間がもう二度と同じ形では戻らないって本人たちもどこかでわかっているんだと思います。
だから感情がこもってくるんですよね。
ああ今が過ぎ去ったらもう戻ってこれないんだっていう
なんかそういったものを伝わってきましたね。
紙飛行機を飛ばす
そして最後紙飛行機です。
場所はものづくりプラザ2号館の2階の廊下に上がって
そこから代表の生徒が声をかけました。
これからの未来を向けてと一言かけて全員で声を合わせて
テイクオフと言って紙飛行機を投げました。
紙飛行機は一線に飛んでいく。
もちろん上手く飛ぶものもあれば途中で落ちるものもある。
でもまあそれでいいんですよね。
大切なのはみんなで飛ばしたっていう事実なんです。
その特別な行為こそが大事なんです。
紙飛行機みたいにこれからの人生を立派に飛んでってほしいなと
その願いが言葉だけじゃなくて形になった瞬間でしたね。
儀式の価値と心の装置
今日振り返ってみて思うところがあります。
最近タイパとかコスパとか結構効率を求める風潮がありますよね。
だから逆に儀式とかセレモニーって
何かこう一部強制されているものみたいな感じで
無意味なものと捉えられて意味がないとか
時間の無駄とかその気持ちもよくわかりますが
今日の卒業式を見ていて私は強く思ったことがあるんです。
儀式、セレモニーって一見無駄に見えるかもしれませんけど
だけどもみんなで経験することで心がリセットされたり
一つになったりまた普段言えないことが言えたり
そういう特別な場になるということも事実なんですよね。
しかもそれは誰かを押し付けるためじゃなくて
むしろ人が前に進むための心の装置みたいなものじゃないでしょうか。
だから私は今日改めて思いました。
こういう場を大人が随所に作ってあげることも大事なんじゃないかなと。
卒業式みたいに大きな儀式だけじゃなくてもいい。
例えば何かのプロジェクトが終わった時に小さく拍手する。
1年の終わりに短い手紙を書いてみる。
家庭でも年度末に
今年度ありがとうという時間を5分だけ作るとか
まあそういう小さなセレモニーが
人を前に進めることってあると思います。
そしてそれが続くってことが伝統ってことになってるんじゃないかなというふうに思います。
伝統の芽生えと未来への展望
今日それを象徴する出来事がありました。
3年生が紙飛行機を飛ばすのを見ていた2年生の女子生徒が
来年も絶対やりたいって言ってくれたんですよね。
誰かがやれと言ったからじゃない。
本人がやりたいと思ったからこの瞬間に伝統の芽が生まれた気がしました。
来年度はもっとよくできると思っています。
今年は時間がなくて居るだけで精一杯だったかもしれませんけど
今年の様子を見た2年生が来年3年生になった時に
私たちももっといいものを、もっといい思い出を作って卒業していきたいと
いうふうに思うのは自然なことだと思います。
このセレモニーを通じて普段伝えれなかったことを
存分に言葉にして伝えれるといいですね。
最後に卒業生に本当に感謝しております。
ああいう場をみんなで盛り上げて作ってくれた
そういう力があるのが今年の3年生の特徴だったんじゃないでしょうか。
同じ時間を共有した大人として本当に尊敬していますし感謝しています。
人生の節目と特別な取り組み
今日は卒業式がありましたのでその話をさせていただきました。
人生の節目って卒業式だけじゃありませんよね。
いろんな場面であります。
その節目で何か一つ特別なことをやってみるっていうのも
面白い取り組みかもしれませんよ。
それがまた来年も続いていくようであれば
それは立派な伝統ということになっていくんじゃないでしょうか。
来年度もいろんなことを考えていきたいなというふうに思った一日でした。
未来をつなぐものづくりは毎週月曜日朝7時に配信しています。
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ではまた来週お会いしましょう。さようなら。