その話を単に短くまとめるだけではありません。
牛が暑い時に出すサイン、呼吸数や食欲の変化、初熱による乳量や乳成分の影響、
送風、水、ミストの使い方、初熱対策にかかる費用、
海外の牧場で行われている対策、消費者の方にどう伝えるか。
こういった複数の視点に分けて、次の発信や研修の資料へつなげていきます。
一つの現場の出来事が音声配信になり、ノートになり、Xやスレッドの投稿になり、
インスタグラムやYouTubeの材料になり、さらに英語のサブスタックにもなっていく。
以前は一つの発信を作ったらそれで終わりでした。
今は一つの経験から何度も学び直すことができます。
これは単なる効率化ではないと思っています。
同じ出来事を別の角度から見直すことができるからです。
落農の現場では毎日いろいろなことが起こります。
牛が餌を食べなかったり、乳量が落ちたり、体細胞数が上がったり、飼料価格が上がったり、機械が壊れたり、人手が足りなかったり、
暑さで牛も人間も疲れたり、普通ならその日の問題を解決するだけで精一杯です。
でもAIと一緒に整理していくと、この問題は他の牧場でも起きているかもしれない。
これは消費者の方にも知ってほしいテーマかもしれない。
この経験は新しく落農を始める人の教材になるかもしれないと考えられるようになります。
日々のトラブルが未来の知識に変わっていく。
ここが僕がAIを使っていて面白いと感じているところです。
牧場のデータの整理にもAIを使っています。
牛群検定の結果、個体ごとの乳量、乳成分、体細胞数、分泌後ミス数、産児数、
こういったデータを見ながら、どの牛を確認した方が良いのか、どんな可能性があるのかを整理してもらいます。
ただしここは誤解してほしくないところなんですが、AIが出した結果だけで牛の病気を決めることはできません。
体細胞数が高いからといって、帳表だけで乳房園だと判断することもできません。
実際に牛を見て、乳房を触って、食欲や半数を確認して、歩き方や立ち方を見て、必要なら獣医師に相談する。
AIは確認すべき牛を見つけるための補助です。
最後に牛を見るのは人間です。
牛舎の臭いや、牛の表情、餌の食べ方、立ち上がる時の動き、こういうものは数字だけではわかりません。
AIが進歩するほど、逆に人間が現場を見る意味は大きくなると思っています。
飼料設計でもGPT-6アストラと一緒に考えることがあります。
配合飼料や素飼料、副産物、間物率、乳量、乳成分、飼料比、これらを別々に見ていると、全体のバランスがわかりにくいです。
現在の設計と実際に給与している量が一致しているのか、エネルギーは足りているのか、タンパク質とのバランスはどうなのか、乳量を上げるために増やした飼料が利益につながっているのか、こうした点を整理していきます。
ただここでも大切なのは、いきなり新しい配合を作ることではありません。
今の飼料設計を確認して、実際の給与量を確認して、飼料の間物率を確認して、牛の乳量と乳成分を確認しています。
現在地がわからないまま、AIに理想の設計を作らせても現場では使えません。
AIを使うからこそ、最初の情報が正しいかどうかを確認する必要があります。
以前、児童給食器・餌やり器が壊れたときにも、AIと一緒に対応策を整理しました。
手作業で配合飼料を給与するのか、PMRと手配合を組み合わせるのか、全量TMRにするのか、レールを活用して重い飼料を牛の前まで運ぶ装置を作れないか、現場の条件を伝えると複数の選択肢を並べて、費用や作業負担、収納性、安全性を比較できます。
もちろん最終的に作るかどうかを決めるのは自分です。
でも一人で考えていると、どうしても思いつく選択肢が限られます。
AIを使うことで、自分の頭の外側にもう一つの考える場所を作ることができます。
黒毛和牛の交配についても、AIやデジタル技術を活用しています。
黒毛和牛の血統を見ながら、均衡係数を計算する、血統がどこで重なっているかを確認する、危険な組み合わせがないか調べる、どの地を残して、どの地を避けるのかを考える、その中で和牛交配チェックというアプリも作りました。
このアプリを作って分かったことがあります。
AIやデジタル技術は大きな企業だけのものではないということです。
現場の人間がここが分かりにくい、こういう道具があったら助かると思ったところから小さなサービスを作ることができる。
もちろん最初から完璧なものはできません。
実際に危険な交配を安全と表示してしまったという失敗もありました。
これは非常に怖い失敗です。
AIやアプリは便利だから使えばいいというものではありません。
間違ったときにどんな被害が出るのか、誰が最終確認するのか、どこまでならAIに任せてよいのか、そこを考えておく必要があります。
AIに任せるのではなく、AIを使う人間の責任をはっきりさせることが重要だと思います。
発信の面でもGPT-6、Astraは大きな役割を持っています。
自分が話した内容を一般の人向けに分かりやすくする。
落の丘向けには専門的な内容を残して整理して、子供向けには難しい言葉を置き換える。
海外向けには英語で背景から説明する。
同じ内容でも読む人によって必要な説明は違います。
AIを使うことで、僕一人では届けきれなかった人に情報を届けられるようになってきました。
今までは島根県出雲市の一つの牧場で起きてきたことを島根県の中で話している感覚でした。
でも今は日本全国の人に届けられる。
さらに海外の落の丘や研究者にも届けられる。
小さな牧場でも世界と繋がることができる。
これはかなり大きな変化だと思います。
ではこれからGPT-6、Astraと何ができるようになるのでしょうか。
まず近い将来にできそうなのは牧場の毎日の判断を整理する仕組みです。
朝、気温や湿度、牛群検定、搾入データ、カメラの通知、資料の在庫などを確認する。
その日の注意点を、この牛を確認してください。
今日は初熱対策を強めてください。
この餌の在庫が少なくなっています。
この作業は後回しにできますという形でまとめます。
牧場の状態を一枚の画面で確認できるようにする、そんな仕組みです。
ただしAIが牧場主に命令するのではありません。
判断材料を出して人間が決める、この形が大切だと思います。
次に牧場独自の知識を蓄積することです。
過去の音声配信、ノート記事、牛群検定の記録、資料設計、病気への対応、機械の故障履歴、研修生への作業指示、これらを川上牧場独自の知識ベースにしていく。
知識データベースにしていく。
例えば、新しく牧場で働く人が、暑い日に牛舎のどこを見ればいいですか?
公主の所有で気をつけることは何ですか?
乳房園が疑われる牛を見つけたら何を確認しますか?と質問したとします。
その時、一般論だけではなく、川上牧場で過去にどう考え、どう対応してきたのかを説明できる。
これは人材育成にとって大きな意味があります。
楽能はベテランの頭の中に知識が残りやすい仕事です。
見ればわかるでしょうとか、経験すればわかるでしょうとか、そう言われてきました。
でもそれでは新人には伝わりません。
AIを使ってベテランの経験を言葉にする。
写真や動画、音声と結びつける。
いつでも質問できるようにする。
そうすれば楽能に挑戦するハードルを下げることができます。
僕は楽能をもっと自由に誰でも挑戦できる仕事にしたいと思っています。
そのためには牛を飼う技術だけではなく、学び方も変えなければいけません。
さらに消費者と牧場が一緒に考える仕組みも作れると思っています。
消費者の方から届いた質問をAIで分類し、何に不安を感じているのか、何を知りたいと思っているのか、
どんな情報が不足しているのか、それを牧場側に戻していきます。
今までは牧場が一方的に発信することが多かったですが、
これからは消費者の声を受け取りながら牧場の発信や企画を変えていく。
発信する牧場から一緒に考える牧場へ変わっていく。
そんな未来も考えています。
そしてGPT-Astraを使えば海外との距離も縮められます。
日本の楽能家が英語で海外へ発信する。
海外の研究や事例を日本の現場に合わせて読み解く。
日本の小さな牧場の失敗や工夫を世界の人に知ってもらう。
以前は言葉の壁が大きな問題でした。
今は翻訳だけではなく、文化や背景を含めて伝えることができます。
出雲市の小さな牧場から世界の楽能家と情報を交換する。